gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

羌活勝湿湯から清暑益気湯の季節へ

2012-08-10 07:00:00 | うんちく・小ネタ

高校野球が甲子園で始まった。ロンドンでは五輪の最中である。町の漢方医としては梅雨から本格的な夏への処方の変化時期でもある。定期処方ではなく臨時処方となる。梅雨時の漢方健康法から本格的な暑さの時期への健康法ということだ。梅雨時の胃腸症状の特徴梅雨時には、空腹なのに食欲が無く、食べられないという状態である。高度の湿気は胃腸を傷害する。漢方の世界では「脾(=胃腸機能)は燥を喜び湿を憎む」という。湿が、脾を衰弱させると、食欲の低下が起こる。これを「湿困脾胃」というが、湿困脾胃により脾の運化失調が起これば、さらにそれ自身が内湿を生む原因となり悪循環をきたす。暑湿内侵(症状:身熱汗少 汗出不?(不?とは流暢でない、スムーズでないという意味 ?は日本語の暢に相当する)口渇煩悶 乾嘔不食)があれば黄連香薷飲(効能:清暑化湿)に藿香 蘭 薄荷 竹茹 知母を加減すると中医学の清書には記載がある。但し、保険の効くエキス剤はない。

梅雨時には「湿」と「冷え」「気圧の低下」が関節痛とくに慢性関節リウマチの症状の悪化、肩こり背部痛腰痛頭痛の発症につながる。梅雨時の気圧の低下は、ヒスタミンなどの炎症惹起物質が血管を収縮させ、交感神経を興奮させ、結果として、血行が悪くなり、病変部分の酸素不足や、疲労物質の蓄積が、痛みの原因となる。筋肉のストレッチを行い、体を冷やさない事が大切である。交感神経が興奮すると脳の血流は逆に増える為に、梅雨時には偏頭痛が出やすい。梅雨時は精神的に憂鬱になる。精神的には「巷に雨の降るごとく、わが心にも雨ぞ降る」となり、肉体的には古傷が痛みだす。梅雨時は、冷えに気をつけて、エアコンは除湿にする。入浴して体を温める浮腫みは軽くなり、関節痛にも効果的だ。多湿で知られる四川盆地の四川料理が超辛いのは発汗により内湿を発散させるのが目的である。

羌活勝湿湯きょうかつしょうしつとう)清代「内外傷弁惑論」組成は羌活 独活 炙甘草 藁本 防風  ?である。寒湿が原因の症(ひしょう)や頭痛に用いられる方剤である。診察して寒証が診てある場合は、適宜、干姜 肉桂などを加味すると頭痛、関節痛が共に改善する。頭痛、関節痛などの特徴は、冬季や雨天の際の増悪であり、舌苔が厚く白?苔(はくじたい)が多く(舌の苔がびっしりと白く厚くなった状態)、胸悶(むなぐるしさ)眩暈(めまい)などの他に、悪心や下痢または軟便、悪心嘔吐を伴う。四肢には軽度の浮腫が見られることもある。蔓?子(まんけいし)は頭痛に効果がある風勝湿剤である。風湿頭痛という中国医学の概念があり、頭痛の特徴は「物がかぶさっているような感じのする頭痛」である。このタイプの頭痛は、高温多湿な夏場に症状が悪化する場合が多い。

エキス剤のある苓姜甘湯(保険が利くの意味である) 保険の利かない独活寄生湯 との比較 

苓姜甘湯りょうきょうじゅっかんとう) 漢代「金匱要略」「金匱要略」の「腎着病(じんちゃくびょう)」に記載されている方剤である。腰から下が水風呂に入っているように冷え、小便が近く、腰痛がある場合に使用される。組成は茯苓 干姜 白朮 甘草である。散寒除湿に働く。茯苓の利水滲湿作用、白朮の健脾燥湿作用、甘草の益気健脾作用を総合すれば、中国医学でいう脾虚湿盛の浮腫み(むくみ)に使用される。干姜の温里散寒作用をあわせれば、冷えを併発している場合に使用される。補陽薬、補腎薬の配合は無いものの、最も基本的な方剤である。梅雨時の関節痛にも応用できる。

腎着病の概念は、寒邪、湿邪の陰邪が腎の外腑の腰部に侵入するために①冷寒の感じ(腰中冷)②腰痛(腰以下冷痛) ③重い感じ(身体重)などの陽気が阻まれる為の証候と、④浮腫(形如水状)の脾虚の証候が出現する病の概念である。病は下焦に属するが腎の真臓ではなく外腑の腰部であるとする点が特徴で、結果として⑤小便自利であるとする。腎気丸(八味地黄丸)が虚労腰痛、小便不利に用いられるのと対照的である。

独活寄生湯どっかつきせいとう)唐代「備急千金要方」独活 防風  細辛 桑寄生 肉桂 杜仲 牛膝 人参 茯苓 甘草 当帰 熟地黄 生地黄 白芍 の組成である。風湿、鎮痛、益肝腎、益気養血に作用する。症日久、つまり症が慢性化し、肝腎不足に陥り、気血ともに失われた症例に使用される。独活 防風 秦 細辛は風湿、鎮痛に、桑寄生 肉桂 杜仲 牛膝は益肝腎に、人参 茯苓 甘草は補気に、熟地黄 白芍 当帰 川 は四物湯であり養血に働く。生地黄を加える場合もあるが、これは温薬による「燥」防止の「滋陰」の意味である。温薬が多いため、やはり冷えを伴う症(ひしょう)に効果的である。冷えが強ければ附子 干姜を、湿が強ければ防己などを加味する。苓姜甘湯(りょうきょうじゅっかんとう)に比較して、生薬の数も多く、関節、腰の「慢性の痛み」を伴う冷えに効果的である。直接の補肝腎薬が配合されているのが特徴である。年配者が腰周りの冷え、頻尿、腰痛を訴えて漢方外来を受診することが多い。大別して、腎陽虚によるものは腎気丸(八味地黄丸)加減を行う。浮腫がある場合には、牛車腎気丸、あるいは腎気丸に五苓散などを加減する場合がある。羌活勝湿湯は寒湿による頭痛にまで配慮した方剤である。梅雨時の「勝湿」にお勧めしたい。

肩こりと羌活勝湿湯 

風寒タイプ:肩こりを伴う、寒気を主症状とするカゼの場合です。葛根湯がよく効く。

肝陽亢進タイプ:高血圧などが合併することがある、イライラ 眩暈 耳鳴などの特徴がある。天麻鈎藤飲や釣藤散に葛根湯を併用する。

淤血タイプ:刺されるような痛みがある、気分が塞ぐ、月経不順などの特徴がある。身痛逐湯や疎経活血湯に葛根湯を併用すると効果的である。

肝血虚タイプ:眼精疲労、目のかすみ、喉の乾燥感、眩暈、顔色や唇に艶がない、月経量が少ない、または生理が止まってしまうなどの特徴がある。四物湯に葛根湯を併用する。

寒湿タイプ:雨天時、特に梅雨時に悪化する、温めると緩和する、肩の重い感じがある。羌活勝湿湯や葛根湯と五苓散などを併用すると効果的である。

日本の気候は変わりつつあるのではないか?と思うようになった。異常な暑さが続いている。亜熱帯気候帯ではないか?と思う。

梅雨(高湿度、低気圧、冷え)から移行期(高湿度、高気圧と低気圧の繰り返し、暑さ)そして(やや低湿度、高気圧、本格的な夏、暑さ、熱中症の多発)の時期に移行して秋を迎える。

     清暑益気湯へ続く