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康仁(こうじん)堂28味生髪方

2012-08-07 10:47:42 | ブログ

使用生薬の解説その一

康仁堂28味生髪方杜仲 桑寄生 菟絲子 肉蓯蓉 枸杞子 何首烏 熟地黄 当帰 白芍 川芎 桑椹子 益智仁 酸棗仁 五味子 黄耆6g 桂枝4.5g 竜眼肉 側柏葉 補骨脂 女貞子 旱蓮草 茯苓6g 白朮4.5g 遠志 牡蠣 丹参山薬 大棗6g

使用生薬について説明する。味、温熱涼寒平、帰経、作用、補記の順で行う。

杜仲和名とちゅう 中国名トウジョン)甘温 肝腎 補肝腎 強筋骨 安胎

杜仲と続断の共通点は補肝腎作用、強筋骨作用であり、整形外科的用法として、肝腎両虚による足腰の無力感に使用される。共に補肝腎作用による安胎作用がある。

杜仲は腰痛の要薬と称される。蜂蜜で炮制したものを焦杜仲という。塩水で炮制したものを炙杜仲あるいは炒杜仲といい補腎効果が増強されるという。近年、降圧作用が確認され、高血圧症に杜仲が使用されている。杜仲には男性機能の増強効果がある。上海中医薬科大学腎内科では腎虚の腰酸(腰痛)に対して、成人に牛膝10g+杜仲10gが効果的とされ処方されている。但し、塩分制限という意味か?炒杜仲は腎内科では使用されない。牛膝は杜仲の補肝腎、強筋骨作用を強調させる。腎虚的腰痛膝乏力と小便頻数、高血圧に対して腎内科で使用されている。補陽薬で安胎作用のある薬物を3つあげるとすれば 杜仲、菟絲子、続断の3薬である。桑寄生(中国名サンジャーシャン)も安胎作用があり、いずれも補肝腎作用がある。但し、分類上では桑寄生は風湿強筋骨薬に分類されることが多い。風湿作用の為である。

したがって、補肝腎作用で安胎作用のある生薬は?の問いには、杜仲、菟絲子、続断、桑寄生の4薬となる。安胎(あんたい)とは、文字どおり胎児を安んずるという意味で、妊娠を正常に維持し、流早産を防止することである。

良質の杜仲は、杜仲樹皮を折り左右に引っ張ると内側にびっしりと銀糸が貼りついているものが上等(良質)である。パキンと音を立て簡単に折れてしまうものは下等品である。以前ブームになった杜仲茶は杜仲の葉を材料としているが、漢方薬として使用するのはあくまで樹皮である。杜仲エキスも市販されているが材料が純粋な樹皮であるかどうか疑わしい。

杜仲や桑寄生が配合されている有名方剤には、以下の2つがある。

寒湿腰痛に対して、独活寄生湯(備急千金用方):独活 桑寄生 秦艽 防風 細辛 当帰 白芍 川芎 干地黄 杜仲 牛膝 人参 茯苓 甘草 桂心

肝陽上亢(上実下虚)の眩暈に対して、天麻鈎藤飲(雑病証治新義):

効能:平肝息風 清熱安神 補益肝腎 組成:天麻9鈎藤12(後下)石决明18(先煎)山梔子 黄芩各9牛膝12益母草 杜仲 桑寄生 夜交藤 茯神各9「とちゅうきせい(途中帰省)で補肝腎」と覚えると語呂がいい。

難しい話はやめて杜仲酒とちゅうしゅ トウジョンジュウ)を紹介する。

高血圧初期や、精力を使い果たして疲れきった肉体にお勧めである。

材料は生の杜仲100g 氷砂糖200g 焼酎1リットル。杜仲は料理用ハサミで細かく切った方が良い。仕込んでから1月で服用できる。水か果汁で割って服用する。少し渋みがあるので、ラ フランスやル レクチェなどの洋梨や豊水などの和梨を食べる際に一緒に飲むと旨い。

杜仲酒の効能 血液循環を改善し、衰弱した肝、腎の機能を高め、高血圧症の初期に特に効果がある。腰痛や膝の関節痛に効果があり、元気を増す。精根尽き果てた状態に服用すると、疲労の回復が早い。昔は精力の衰えた男性の強精剤として珍重された。男性機能の回復維持機能があるためである。

桑寄生中国名サンジャーシャン 和名 そうきせい 或いは くわきせい

苦 甘 平 肝腎 祛風湿 補肝腎 強筋骨 養血安胎

祛風湿薬である五加皮中国名ウージャーピー 和名 ごかひ)と比較すると、五加皮は桑寄生と同様に祛風湿 強筋骨 補肝腎 補精気に作用するが、桑寄生に比して補肝腎作用は小さく、利水作用を有することである。共に慢性の風湿による痹症に用いる。安胎作用は胎動不安、習慣性流早産に常用される。通名はヤドリギ、オオバヤドリギである。

菟絲子中国名トウスーズ 和名 としし)辛 甘 平 肝腎 補陽益陰 固精縮尿

明目止瀉 補肝腎安胎 通名ネナシカズラの成熟種子である。日本では微温とする清書もあるが中国の清書には平と記されることが多い。平補ではあるが補陽に偏すると注釈をつけている日本の清書もある。帰経に関しては肝腎とのみ記されている清書や肝腎脾と「脾」を入れている清書もある。止瀉作用を有するからであろう。腎虚のEDや早漏に効果がある。また尿に精液が混じる精液尿や、夜間頻尿、尿失禁にも奏効する。補肝腎作用は安胎作用につながり、古来より胎動不安がある流産の防止薬としても有名である。補肝腎薬の中で補骨脂(ほこつし)仙茅(せんぼう)と共に止瀉(ししゃ:下痢を止める)作用があることでも特徴であり、腎虚、胃腸虚弱による下痢などに奏効する。古来より「燥にも?にも偏らず、補陽すると同時に益精に働く良薬」とされる。また養肝明目に働き老化による目のかすみに効果がある。

七宝美髯丹しちほうびぜんたん 明代)を紹介する。

髯(ぜん)は訓読みすれば「ひげ」で、髪(かみ)と置き換えても可である。 何首烏 牛膝 茯苓 枸杞子 当帰 菟絲子 補骨脂 の7味からなる。

君薬は何首烏、滋養肝腎に作用し、主治は肝腎精血不足である。

中国明代に考案された処方で、肝腎精血不足からくる早期老化現象、具体的には、白髪、脱毛、歯の動揺、足腰の軟弱化やだるさに対する方剤である。この処方には中国の方剤学(生薬と生薬を組み合わせる学問)の興味ある考え方が含まれている。「陽中求陰」といい、中国漢方古典に「善補陰者 必干陽中求陰 即陰得陽昇 而源泉不竭」と記載されている。「陽中求陰」とは、料理の世界の「隠し味」のようなもので、少々の塩を加えると甘みが倍増するという具合に、補陰薬に補陽薬(この方剤では補骨脂)を少量加えると、一層補陰の力が増すという考え方である。方剤を分析すれば、何首烏が君薬で量がもっとも多く、肝、腎を強化する。特に養髪に優れる。さらに、枸杞子、菟絲子(としし)は何首烏を補助し、填精に作用する。牛膝(ごしつ)は肝、腎を強化するとともに、筋骨を丈夫にする。補骨脂(ほこつし)は温腎補陽として働く他に、牛膝 枸杞子などの滋陰の効果を強める。茯苓は胃腸の働きを健全にすると共に、牛膝、当帰などによる胃腸のもたれ(滋?)を防止する。以上が方剤の解説である。

古来より、中国伝統医学では、「腎は精を蔵し其の華は髪に在り、肝は血を蔵し、髪は血之余りなり」といい、髪と肝腎との関係は切っても切れない関係にあるとされてきた。生まれつき、「肝腎虚損(がんじんきょそん)」の体質であると、若白髪になりやすいと言える。同時に肝血不足による目の乾燥感や眼精疲労も出現しやすくなる。中国漢方の教えでは「肝は目に開く(開竅すると表現される)」「肝経は目を巡りよく視る」とされている。また、女性の生理は漢方医学では肝と腎に支配されると考える。従って肝腎虚損があると生理不順や生理痛の原因にもなります。また、耳鳴りや夜間頻尿の原因にもなる。「腎は作強の官」「腎は骨を主り髄を生ずる」といい、骨や筋肉の痛みも腎精不足が原因となる。腎には固摂作用という重要な機能があり腎気が衰えると、本来は血管内に保たれるはずのアルブミンなどの蛋白分子が尿中に漏れ出るようになる。典型的な病状は糖尿病性腎症に出現するマイクロアルブミン尿(微小蛋白尿)と呼ばれるものである。

肉蓯蓉にくじゅよう)甘 咸 温 腎大腸 補腎助陽 益精血 潤腸通便

温腎陽、益精血は補肝陰血に繋がる。髪は血余である。「腎は精を蔵し其の華は髪に在り、肝は血を蔵し、髪は血之余りなり」。最大の副作用的効能は潤腸通便作用であり、中成薬に蓯蓉潤腸丸がある。

枸杞子くこし)甘 平 肝腎肺 滋補肝腎 明目 潤肺

枸杞(くこ)は中国では枸杞子(中国名 ゴウチーズ)と呼ばれ、古来より長寿食品として尊ばれてきた。枸杞の実を枸杞子と「子」をつけて呼ぶ理由は、枸杞の「根」からは「地骨皮」という生薬が採取され、虚熱を除くのに利用されているからである。

寧夏の枸杞子が有名で薬酒の「寧夏紅」は人気商品である。肝腎虧損、遺精不孕、肝気不足による視力減退などに使用される補陰食品である。

上海では魔法瓶に菊花と枸杞子を入れて飲んでいるタクシー運転手が多い。明目作用があるからだ。但し、甘い。糖含有量は高く、100gにつき19.3gであることから、糖尿病の際には注意すべきだ。補陰薬である「女貞子」の共通点は、滋補肝腎作用 明目作用である。

枸杞子の最近の研究:降圧効果があり高血圧症に使用されている。成分中のベタインは脂肪の肝臓沈着を抑制し、肝硬化を予防するとされ、肝細胞を保護するとも言われている。動物実験では四塩化炭素によるマウスの肝臓脂肪変性作用を防止し肝機能を保護する作用が認められるほか、血中脂質や血糖を一定の効果で低下させる効能が確認されている。枸杞子抽出物がインターロイキン2を介してリンパ球の腫瘍細胞壊死因子の生成を増加させることが報告されている。枸杞子から抽出された多糖類には、放射線被爆によるマウスの骨髄抑制を防止し、白血球を増加させる働きがあることが報告されている。

何首烏かしゅう)苦 甘 渋 微温 肝腎 補肝腎 益精血 生発烏髪 抗マラリア作用 解毒 潤腸通便

何首烏は生薬分類では補血、養血薬に入る。生の何首烏は腸を潤し便通を整える潤腸通便の作用があるが、酒で炮制した何首烏は補肝腎の効果が強くなる。精神安定作用のある夜交藤やこうとう)は何首烏の蔓(つる)の部分である。青蒿(せいこう)が発見されるまでは、マラリア(中国語で?)の治療薬でもあった。何首烏は薬性が穏やかで、補薬にありがちな胃腸のもたれや食欲低下などの副作用が無いために、不滋?の代表的な補薬とされ、同じ養血薬に分類される当帰が胃腸障害を起こさない不滋?であるが故に何首烏や当帰は滋補の良薬とされている。

最近の研究では、何首烏は高脂血症にも効果があると報告がある。老化を防止すると言われ、薬膳料理では人気のある生薬のひとつである。特に「生発烏髪」は、烏(カラス)色の髪を保つ、生髪させるという人気作用である。

康仁堂28味生髪方中の熟地黄 当帰 白芍 の四生薬は養血活血の基本方剤である四物湯のそれであるので、説明は省略する。

桑椹子中国名 サンシェンズ 和名 ソウジンシ)甘 寒 心肝腎 滋陰補血 

生髪発烏 生津 潤腸

桑の実である。桑の木自体が日本では少なくなってきた。私の少年時代には、甘いものに飢えていたので、桑の実を食べて、口の周囲を紫に染めた風貌の私も含めた欠食児童が多かった。上海では日本の5月の連休前ぐらいから、昔ながらの天秤を肩にした桑椹子売りを見かけるようになる。夏の暑湿の候が近づいてくる時期に、桑椹子を食すると、喉の渇きが癒え、体も涼しくなる。古来より、桑椹子は特に女性に良いといわれてきた。肌を潤す作用がある。上海の桑椹子の色は日本のそれ(紫色)とは異なり、もう少し淡い。収穫時期が早いためなのかも知れない。漢方調薬の現場では乾燥品を用いる。何首烏と同様に生発烏髪の作用がある。但し、何首烏が微温であるのに対し、桑椹子は寒の薬性なので、食べ過ぎる、或いは大量の煎じ液を服用すると腹を冷やす。桑枝は、薬性は平 祛風通絡に作用することを付記する。

なでしこジャパンの決勝進出が決定した。フランスの猛追を防ぎきって21での決勝進出だ。60数年前は、鬼畜米英といわれたその英国のロンドン五輪で、仏領インドシナのかつての宗主国フランスの猛追をかわし、世界最強の軍事力を現在でも有するアメリカの女子チームとの決勝戦である。日本女子の健闘を祈る。2012年8月7日