TEISCO MayQueen

2009-01-13 01:05:14 | Other Guitars
これは10年ほど前に出たリイシューです。オリジナルはテスコが河合楽器に買収された後の1968年に出ました。
このギターは私にとって4本目のギターで、ちょうど1年前に入手したものです。テレキャスターをリペアしている間、サブでもう1本あるといいと思ったので、購入したのですが、初めてネットから注文しました。届くまで不安でしたが、特に問題がなかったので、ネットでギターを買うことにも抵抗がなくなり、今ではほとんどネットでギターを買うようになりました。

MayQueenはその独特なシェイプに魅かれました。VOXのティアドロップ、あるいはマンドギターにリッケンバッカー的な要素を加えたようなかたちですね。その名前からじゃがいもを連想させますが、油絵を描くときに使うパレットをイメージしたという説もあります。それならばスペクトラム5のようにカラフルなスイッチがたくさんあったほうが、よりパレットらしくなりそうなものですが、MayQueenにはそうしたスイッチ類がなく、いたってシンプルでデザイン的にもすぐれています。ピックアップも独特で、低音弦側と高音弦側をわけたものになっています。でもステレオ出力はできません。ボディはセミホロウ構造です。非常に繊細できらびやかなトーンを持っています。テスコのピックアップはやはり素晴らしいですね。1946年にアヲイ音波研究所としてマイクやアンプの製造からスタートしただけありますね。1967年に河合楽器に買収されるわけですが、テスコの歴史はダンエレクトロの歴史と重なるようなところがあります。

テスコは1965年のエレキ・ブームに乗って急成長しますが、足利市のエレキ禁止条例に端を発した「エレキは不良だ」の排斥運動によって一気に経営難に陥ります。エレキギターを弾くのが不良だったのではなく、大量の在庫が不良化したわけですけどね。いわゆる「勘定合って銭足らず」状態で融資を打ち切られて買収されたわけですが、もう少し持ちこたえていれば次のGSブームに乗って、V字回復が可能だったと言われています。それにしても、エレキ・ブームというのは本当にすごかったらしいです。当時は板切れにマイクをつけて弦を張ればなんでも売れたそうで、当時の給与水準を考えれば決して安いものではなかったようですが、朝入荷したものが夕方には売れているという状態だったとのこと。

私が高校生の頃はテスコやグヤトーンというメーカーが昔ギターをつくっていたということは知っていましたが、粗悪で使い物にならないギターというイメージを持っていました。
70年代後半から日本のメーカーはギブソンやフェンダーのギターをどれだけ精巧にコピーできるかを競うようになり、60年代に日本のメーカーがオリジナリティあふれるギターを多数つくっていたということは忘れられていましたが、90年代に入り、リットー・ミュージックがこれらのギターを「ビザール・ギター」として新たにカテゴライズすることによって、再び注目されるようになりました。私が初めてテスコのスペクトラム5を見たのは車谷浩司のソロ・ユニットAIRのCDジャケットでしたが、そのときは、ジャケット用にデザインされたものだと思い、それが実在するギターだったと知ったときは驚きました。そのうち様々なミュージシャンがビザール系のギターを使うようになっていくわけです。
私もギターを再開するにあたって、結局はオーソドックスなテレキャスターを選んだわけですが、候補にはこうしたビザール系のギターも何本かあり、サブとして買うならビザール系にしようと思った次第。音も悪く、弾きにくいという先入観はありましたが、実際にMayQueenを弾いてみると弾きやすく音もよいということで、ビザールギターを購入することに躊躇がなくなり、一気にギターの数が増えてしまうことになるのでした。

昨年から、このMayQueenが主役になった作品、平川雄一の「中村メイ子をかき鳴らせ!」が月刊少年マガジンで連載中です。ギター好きな人が、ギターに名前をつけたり、「彼女」とか「この子」とか擬人化するのはよくありますが、ギターのほうから「私を弾け!」と迫ってきます。夏目漱石が猫視点で当時の人間社会を描いたように、ギターを擬人化することで、人と音楽の関わりに楽器視点を導入する試み。面白いです。
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6 コメント

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遅まきながら (テラシィイ)
2009-06-23 00:50:08
リイシュウのメイクイーンを
愛用しています
2度程トレモロが壊れてしまいました
元々の土型を忠実に再現(オリジナル
の土型でしょうか?)を使ってる為か
あるいは素材の為か弦のテンションに
負けてトレモロを支える穴が変形して
しまってテールピースごと外れるという
悲劇を演奏中に(笑)
とても作りが良いギターですよね
音も唯一無二なので大事に弾いて行こうと
思います

返信する
Unknown (たくろ)
2009-06-23 18:36:38
テラシィイさん、はじめまして。
今後もよろしくお願いします。

私もメイクイーンのトレモロは
一回吹っ飛ばしてます(笑)。
おっしゃるように、テールピースを
ひっかける穴が広がってしまうんですよね。
また、ひっかけるためのネジも短いですね。
なので、ちょっと太くて長めのネジに
交換しました。以後は問題ありません。

メイクイーンは本当に素晴らしいですね。
返信する
トレモロが・・・ (テラシィイ)
2010-08-06 16:22:06
久しぶりに念入りにフレットを磨いたりと
メンテをして今朝、ふと見ると
おや!ネジに隙間が!ブリッジがネック側に
引っ張られてる・・・これはまたもや
吹っ飛ぶ前兆かっ(汗)
太めの長いネジに交換されたとの事ですが
規格サイズのネジでしょうか?
それともご自身で加工されたものでしょうか
う~む・・・参りました・・・
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Unknown (たくろ)
2010-08-06 17:47:17
テラシィイさん、ご無沙汰です。

ネジは家にあったもので
使えそうなものを選びまして、
そのままだとちょっと長すぎ
たので、自分で切りました。

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とても気に入ってます (酒本龍一@偽YMO)
2013-08-26 17:23:38
通りすがりに失礼します。

メイクイーンとリッケンバッカー620、ヘフナーのクラブギターを使っていますが、一番弾きやすく音が上品なのがメイクイーンだと思っています。一時期売却してしまおうか迷いましたが、ほかのギターを弾くにつれこのギターの良さがあらわになり、手放せなくなりました。
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Unknown (たくろ)
2013-08-27 00:02:35
酒本さん、こんばんは。
コメントありがとうございます。
メイクイーンを手放さなくて何よりでした。
ブリッジの構造にいささか問題がありますが、
素晴らしいギターですよね。
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