たそがれ時のつれづれに

人生のたそがれ時を迎えて折々の記を・・思うままに

名古屋3人殺害事件

2013年01月16日 | その他

正月気分も覚めやらぬ、12日名古屋市西区、不動産業一家の3人殺害、1人自殺の事件に驚いた。傍目には何一つ不自由のない、近所でも評判の一家に何があったのか。
報道で輪郭が見えてくるにしたがい、数年前起きた中津川一家6人殺傷事件に似ているように思える。
テレビで見て先ず感じたのは住まいの立派さであった。しかも商売は手を広げずアパートの斡旋を主とし堅実で、人から恨まれるような家庭ではなかった。
被疑者は長男と共に近所にある不動産事務所を手伝い、震災被災地の犬の引き取りボランティアをやっていたらしい。
見えてきたのは父親には厳格な側面があり、被疑者の娘の交際相手を何度も認めなかった、他の家族との板ばさみになっていたらしい。
被疑者とされる娘39歳、女性として結婚して落ち着くか、出産年齢も限界に近く、本人には人にも言えない焦りと悩みを抱えて苦しんでいたのだろう。
真相は不明ながら、家族という血縁の濃さ、家族という檻から逃げ出せず、親離れ、子離れができていなかった、日本の模範的家族の典型ではなかろうか。

よく読む朝日新聞日曜版の人生相談、元東大教授お一人様の社会学で有名な上野千鶴子さんが見たら、なぜ早く自立して家から離れなかったかと嘆かれるであろう。
親は老後を娘に看てもらいたいと密かに願い、娘は何かと親の庇護の元で暮らしたい。その両者の潜在欲求が、未婚であることで行き詰まった事件であるように思う。

寝込みを襲い置物の置台で父の頭部を何回も攻撃したところを見ると、父に対し言い知れぬ憎悪の感情があったのであろう、致命傷はタオルで首を絞めた窒息死と、15日の岐阜新聞に出ていた。
母や祖母まで殺めたのは、本人は自殺覚悟でも、残った家族が恥を忍んで生きていく不憫を自己中心的に拡大し、道ずれにしたのではなかろうか。そこが中津川事件とよく似ているように思う。

中津川事件は加害者が自殺を図りながら生き延び、最高裁で少数意見付無期懲役になった。名古屋の事件は新品の七輪と練炭が豪華な外車ベンツに買い込んで残されていた。近くの清須市のホームセンターのレシートも残されているなど、事件後自殺覚悟だったのだろう。
木に衣類をかけて首吊り自殺したことが、哀れであるが事件後刑務所で悩み苦しみながら生きていかねばならない、中津川事件より本人には幸いだったかもしれない。

憎悪の感情をたぎらせ沸点に達したとき、人間という生き物は一旦狂うと何をやらかすかわからないという事実を、またも再現した不幸な事件だった。
見届け役にさせられた長男35歳、被疑者の弟は一度に家族4人の葬儀を出すことになった。彼の心中を思うとき哀切極まりない。事件は事件としてご冥福を祈る。合掌