北朝鮮BDA資金の移動では、中共の大銀行、香港の大銀行、シンガポールやベトナムの銀行、ロシアとイタリアの銀行等など、仲介銀行の名前は幾つも挙がり近日中に解決すると言われながら話がさっぱり進まない。ヒル国務次官補に至っては、口を開けば「2,3日中に・・・」と述べること既に5回以上、随分無責任な人物だ。
兎に角、北朝鮮は2005年9月以前のように偽札や麻薬で入手した手持ち資金を、ドルの形で自由に運用したい、はっきり言えば金融制裁解除を求めているのだ。BDA資金2500万ドルの回収は口実に過ぎない。ライス国務長官は、この理不尽な要求を容認し、見返りに核施設停止の実績を作ろうとしている。それは、明らかに愛国法=反テロ法に違反する行為であり、同時に財務省やFBIが進めて来た国際犯罪摘発を蔑(ないがし)ろにする。毎日新聞の解説するところでは、
<北朝鮮資金>米経由の送金難航 法規制、抜け道なく
5月16日15時4分配信 毎日新聞
【ワシントン笠原敏彦】マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」で凍結を解除された北朝鮮関連資金2500万ドル(約30億円)の送金問題で、米国が検討している米金融機関を通した送金が法的規制から実現の見通しが立っていないことが15日、分かった。米政府高官が毎日新聞に語った。北朝鮮が米金融機関の関与に固執した場合、核問題をめぐる6カ国協議はさらに停滞する可能性がある。
複数の関係者によると、「一定の条件」で送金を仲介する米国の銀行は既に見つかっている。しかし、米政府高官は「米国の法規制の枠内で送金を仲介させる方法は見つかっていない。北朝鮮が受け入れる解決策をひねり出すのは、極めて困難だ」と述べた。
米財務省は今年3月、BDAを愛国者法(反テロ法)311条の「資金洗浄の主要な懸念先」に確定し、米銀と同行の取引を禁止した。米政府は現在、米銀の仲介を可能にする法規制の「抜け道」を探している模様だが、同法311条は大統領の執行免除権限すら適用されないという。
また、米刑法には「犯罪に絡む1万ドル以上の金融取引への関与を試みる」だけでも処罰の対象とする規定がある。米財務省は北朝鮮資金の一部をドル札偽造などに絡む「違法資金」と判断しているだけに、米銀の仲介を可能にするのは容易でないと見られる。
同問題では、BDAからロシアやイタリアの銀行への送金が試された。しかし、一般的には、北朝鮮が求める米ドルでの国際送金には米国の銀行を通す必要があることなどから、送金は成功していない。
北朝鮮はBDA資金の返還・送金を確認するまで、2月の6カ国協議合意による核放棄に向けた初期段階措置を履行しない方針。履行期限の4月14日からすでに1カ月が過ぎ、事態は手詰まりの様相を強めている。
最終更新:5月16日15時7分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070516-00000060-mai-int
(私のコメント)そのような状況の中、米国務省は形振り構わず米国内の受け入れ銀行を決めて打診をしている。大統領権限による特例認可でも出して、受け入れ銀行が愛国法違反とならぬようにするつもりなのだろうか。
米ワコビア銀、受け入れ検討=北朝鮮資金で国務省が要請
5月18日0時0分配信 時事通信
【ワシントン17日時事】米大手ワコビア銀行(本店、ノースカロライナ州シャーロット)は17日、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)で凍結されていた北朝鮮資金2500万ドル(約30億円)の受け入れを検討していることを明らかにした。ワコビア銀に対する北朝鮮資金受け入れは、米国務省が要請してきた。同行が最終的に受け入れを決めれば、北朝鮮が核放棄に向けた合意措置履行の前提条件としてきた資金問題は、打開に大きく動くことになる。
最終更新:5月18日0時0分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070517-00000243-jij-int
(私のコメント)ワコビア銀行の名前が挙がったのは今回が始めてであるが、6時間後に時事通信は次のように配信した。
金融機関からの照会ない=北朝鮮資金送金で米財務省
5月18日6時1分配信 時事通信
【ワシントン17日時事】米財務省スポークスマンは17日、米大手銀ワコビアが国務省の依頼を受けて、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)で凍結されていた北朝鮮資金2500万ドル(約30億円)の送金請け負いを検討していることについて、「いかなる米金融機関からも、(北朝鮮資金の送金に絡む法的な問題で)照会を受けていない」と述べた。
財務省は今年3月、BDAが北朝鮮のマネーロンダリング(資金洗浄)に協力していたと最終認定し、在米金融機関によるBDAとの取引を禁じている。このため、ワコビア銀が送金を請け負う場合、この愛国者法(テロ対策法)に基づく措置がネックになる。
最終更新:5月18日6時1分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070518-00000014-jij-int
これでは、米国と北朝鮮の交渉ではなく、米国政府内の国務省対財務省の争いである。小ブッシュ大統領の調整と決断が必要だ。
それにしても、何故これ程に無理をして、米国務省は「乞食国家」北朝鮮に迎合しようとするのであろうか。小ブッシュ政権は、六カ国協議合意を北朝鮮が無視していると世界にアナウンスし、そのまま放置するのは常識的に考えて有力な方法だ。そうすれば、闇ドル運用の出来ない金正日体制は自壊の速度を速めるはず。つまり金融制裁の継続で十分効果を期待し得る。
米国の急な北朝鮮接近(金融制裁緩和を含む)について、ネットでは色々な憶測が流れている。例えば、
(1) 米朝接近―国交回復により、北朝鮮とイランとの間に楔を打ち込む
先日、金外務次官がイランに赴き、緊密連携強化の交渉をやったところを見れば、それは甘い考えであろう。
(2) 北朝鮮と中共の対立を煽る一方、スイス銀行に預金してある北朝鮮の戦争準備資金43億ドルを利用可能とさせる
この資金があることは、既に「エシュロン」によって把握されている。現在は、米国の要請でスイス資金は事実上凍結されている。米国銀行が北朝鮮資金を扱うようになれば、その凍結も解除されるだろう。中共は、北朝鮮の意に反して、国境に軍事空港を建設中である。それは中朝戦争の準備との見方がある。となると、北朝鮮は軍資金が必要になるからスイス資金を解放するとの推測。
(3) 米国政府絡みの国際的スキャンダルを北朝鮮が握っている
「米国政府機関が偽ドルを作った」との話だ。北朝鮮の偽ドル(スーパーノート)は、札番号が分かっているから、それを除く偽ドルは北朝鮮以外の国が作ったと判断出来る。何故米機関が自国の偽札を作ったか理由は不明。これを突き止めたのは、ロシアの情報機関。印刷機はドイツ製と具体性がある。それをロシアが北朝鮮へ伝えて、北朝鮮は暴露するぞと米国へ揺さぶりをかけている。プーチン政権ならやりそうな話だ。
いずれにせよ、ライス国務長官の姿勢は不可解に映る。外交は謀略だらけであるから、どのような裏交渉があるのかは分からない。だが、このまま進めば、米国は確実に国際的信用を失うであろう。
何度も書いたが、我が国は米国の金融制裁とは別に、外為法運用強化、朝鮮総連への圧迫を強めるなど、独自に経済制裁を強化することを期待する。
(参考)
4月以降、当ブログで取り上げた関連エントリーは次の通り。
ライス国務長官の本音
「トムとジェリー」の終り無きBDA物語
「ロイヤルチャーム作戦」と「スモーキングドラゴン作戦」
六ヶ国協議の裏話
その後のBDA資金凍結問題
兎に角、北朝鮮は2005年9月以前のように偽札や麻薬で入手した手持ち資金を、ドルの形で自由に運用したい、はっきり言えば金融制裁解除を求めているのだ。BDA資金2500万ドルの回収は口実に過ぎない。ライス国務長官は、この理不尽な要求を容認し、見返りに核施設停止の実績を作ろうとしている。それは、明らかに愛国法=反テロ法に違反する行為であり、同時に財務省やFBIが進めて来た国際犯罪摘発を蔑(ないがし)ろにする。毎日新聞の解説するところでは、
<北朝鮮資金>米経由の送金難航 法規制、抜け道なく
5月16日15時4分配信 毎日新聞
【ワシントン笠原敏彦】マカオの銀行「バンコ・デルタ・アジア(BDA)」で凍結を解除された北朝鮮関連資金2500万ドル(約30億円)の送金問題で、米国が検討している米金融機関を通した送金が法的規制から実現の見通しが立っていないことが15日、分かった。米政府高官が毎日新聞に語った。北朝鮮が米金融機関の関与に固執した場合、核問題をめぐる6カ国協議はさらに停滞する可能性がある。
複数の関係者によると、「一定の条件」で送金を仲介する米国の銀行は既に見つかっている。しかし、米政府高官は「米国の法規制の枠内で送金を仲介させる方法は見つかっていない。北朝鮮が受け入れる解決策をひねり出すのは、極めて困難だ」と述べた。
米財務省は今年3月、BDAを愛国者法(反テロ法)311条の「資金洗浄の主要な懸念先」に確定し、米銀と同行の取引を禁止した。米政府は現在、米銀の仲介を可能にする法規制の「抜け道」を探している模様だが、同法311条は大統領の執行免除権限すら適用されないという。
また、米刑法には「犯罪に絡む1万ドル以上の金融取引への関与を試みる」だけでも処罰の対象とする規定がある。米財務省は北朝鮮資金の一部をドル札偽造などに絡む「違法資金」と判断しているだけに、米銀の仲介を可能にするのは容易でないと見られる。
同問題では、BDAからロシアやイタリアの銀行への送金が試された。しかし、一般的には、北朝鮮が求める米ドルでの国際送金には米国の銀行を通す必要があることなどから、送金は成功していない。
北朝鮮はBDA資金の返還・送金を確認するまで、2月の6カ国協議合意による核放棄に向けた初期段階措置を履行しない方針。履行期限の4月14日からすでに1カ月が過ぎ、事態は手詰まりの様相を強めている。
最終更新:5月16日15時7分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070516-00000060-mai-int
(私のコメント)そのような状況の中、米国務省は形振り構わず米国内の受け入れ銀行を決めて打診をしている。大統領権限による特例認可でも出して、受け入れ銀行が愛国法違反とならぬようにするつもりなのだろうか。
米ワコビア銀、受け入れ検討=北朝鮮資金で国務省が要請
5月18日0時0分配信 時事通信
【ワシントン17日時事】米大手ワコビア銀行(本店、ノースカロライナ州シャーロット)は17日、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)で凍結されていた北朝鮮資金2500万ドル(約30億円)の受け入れを検討していることを明らかにした。ワコビア銀に対する北朝鮮資金受け入れは、米国務省が要請してきた。同行が最終的に受け入れを決めれば、北朝鮮が核放棄に向けた合意措置履行の前提条件としてきた資金問題は、打開に大きく動くことになる。
最終更新:5月18日0時0分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070517-00000243-jij-int
(私のコメント)ワコビア銀行の名前が挙がったのは今回が始めてであるが、6時間後に時事通信は次のように配信した。
金融機関からの照会ない=北朝鮮資金送金で米財務省
5月18日6時1分配信 時事通信
【ワシントン17日時事】米財務省スポークスマンは17日、米大手銀ワコビアが国務省の依頼を受けて、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)で凍結されていた北朝鮮資金2500万ドル(約30億円)の送金請け負いを検討していることについて、「いかなる米金融機関からも、(北朝鮮資金の送金に絡む法的な問題で)照会を受けていない」と述べた。
財務省は今年3月、BDAが北朝鮮のマネーロンダリング(資金洗浄)に協力していたと最終認定し、在米金融機関によるBDAとの取引を禁じている。このため、ワコビア銀が送金を請け負う場合、この愛国者法(テロ対策法)に基づく措置がネックになる。
最終更新:5月18日6時1分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070518-00000014-jij-int
これでは、米国と北朝鮮の交渉ではなく、米国政府内の国務省対財務省の争いである。小ブッシュ大統領の調整と決断が必要だ。
それにしても、何故これ程に無理をして、米国務省は「乞食国家」北朝鮮に迎合しようとするのであろうか。小ブッシュ政権は、六カ国協議合意を北朝鮮が無視していると世界にアナウンスし、そのまま放置するのは常識的に考えて有力な方法だ。そうすれば、闇ドル運用の出来ない金正日体制は自壊の速度を速めるはず。つまり金融制裁の継続で十分効果を期待し得る。
米国の急な北朝鮮接近(金融制裁緩和を含む)について、ネットでは色々な憶測が流れている。例えば、
(1) 米朝接近―国交回復により、北朝鮮とイランとの間に楔を打ち込む
先日、金外務次官がイランに赴き、緊密連携強化の交渉をやったところを見れば、それは甘い考えであろう。
(2) 北朝鮮と中共の対立を煽る一方、スイス銀行に預金してある北朝鮮の戦争準備資金43億ドルを利用可能とさせる
この資金があることは、既に「エシュロン」によって把握されている。現在は、米国の要請でスイス資金は事実上凍結されている。米国銀行が北朝鮮資金を扱うようになれば、その凍結も解除されるだろう。中共は、北朝鮮の意に反して、国境に軍事空港を建設中である。それは中朝戦争の準備との見方がある。となると、北朝鮮は軍資金が必要になるからスイス資金を解放するとの推測。
(3) 米国政府絡みの国際的スキャンダルを北朝鮮が握っている
「米国政府機関が偽ドルを作った」との話だ。北朝鮮の偽ドル(スーパーノート)は、札番号が分かっているから、それを除く偽ドルは北朝鮮以外の国が作ったと判断出来る。何故米機関が自国の偽札を作ったか理由は不明。これを突き止めたのは、ロシアの情報機関。印刷機はドイツ製と具体性がある。それをロシアが北朝鮮へ伝えて、北朝鮮は暴露するぞと米国へ揺さぶりをかけている。プーチン政権ならやりそうな話だ。
いずれにせよ、ライス国務長官の姿勢は不可解に映る。外交は謀略だらけであるから、どのような裏交渉があるのかは分からない。だが、このまま進めば、米国は確実に国際的信用を失うであろう。
何度も書いたが、我が国は米国の金融制裁とは別に、外為法運用強化、朝鮮総連への圧迫を強めるなど、独自に経済制裁を強化することを期待する。
(参考)
4月以降、当ブログで取り上げた関連エントリーは次の通り。
ライス国務長官の本音
「トムとジェリー」の終り無きBDA物語
「ロイヤルチャーム作戦」と「スモーキングドラゴン作戦」
六ヶ国協議の裏話
その後のBDA資金凍結問題