陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

メルケル独首相がダライ・ラマと会談

2007-09-25 00:10:50 | チベット・ウィグル関係
 秋分の日と重なるこの連休前は、当地でも残暑が酷く、日中は35℃を越した。だが今日はいかにも秋らしい清涼な日で、他出せずにのんびりと一日を過ごした。もうすぐ衣替えの頃を迎える。

 さて、ダライ・ラマ14世法王は、1959年にインドへ政治亡命して以来、平和裏にチベットの自治権を中共から取り戻そうと努力しているのはご承知の通り。これまでも世界各国首脳と会談を重ね、日本へは既に15回も来訪済みである。昨年10月30日に広島の宗教団体が招待したのが最近の訪問だ。この時は、「広島平和国際会議2006」で格調の高い講演をした。だが、ダライ・ラマが訪日しても、日本の大手マスコミは殆ど報道しない。

 1989年、ノーベル平和賞がダライ・ラマに授与されている。30年にわたる平和活動が国際的に評価されたのだ。

 ところが、ダライ・ラマの行く国々には、中共政府から必ず圧力が掛かる。政治活動をさせないようにとの恫喝だ。だから日本の政治家連は、来日しても彼と会うことは殆ど無い。恐らく彼らもマスコミも同様に、中共が怖いのだろう。だが、ドイツのメルケル首相は、堂々とベルリンの首相府にダライ・ラマを招いて会談した。この件について、時事通信と産経新聞が報道しているが、最も詳しく取り上げた「大紀元」によると

中国当局の反対押しのけ、ドイツ首相とダライ・ラマが会談

 【大紀元日本9月24日】ドイツのメルケル首相は9月23日午後10時、チベット亡命政府の指導者ダライ・ラマと会談した。中国当局は、反対の意を示すため、同日に開かれる予定の両国政府筋の会談を取り消した。

 ドイツ政府はメルケル首相とダライ・ラマの会談を個人的な交流としているが、中国当局は「技術的な原因」を理由に、同日にミュンヘンでドイツ司法省長官との特許権保護の会談を取り消した。

 ドイツ政府の報道官は、チベット問題は中国当局とダライ・ラマによる対話方式で解決するしかないと述べ、ドイツは、チベット人の文化と宗教の自治を求める運動を支持すると表明した。メルケル首相はダライ・ラマと会談する初のドイツ首相である。

 ダライ・ラマは中国当局の行動について、ドイツ・メディアの取材で、次のように語った。「これは完全に中共の態度による問題である。彼らの傲慢さを表している。メルケル首相に私と会わないよう要求するのは、ドイツの内政への干渉にあたる」「私がどこに行こうと、中共は必ず抗議し、自分たちの国際社会への影響力を試している。私とメルケル首相の会談は、両国の関係に長久的なマイナス影響を与えると考えていない」。

 メルケル首相は、野党の党首だった2年前、ドイツの議会でダライ・ラマと会談したことがある。首相に就任してから、人権を重視する外交政策を明確に打ち出し、ロシアと中国の人権問題を非難している。昨年5月訪中の際に、農村部の現状を記した「中国農民調査」(中国では出版禁止)の著者や、キリスト教の主教などと会談、中国での人権問題や、信教の自由などについて、議論を交わした。今年8月訪中の際には、中国の人権問題への強い関心を示し、中国当局に異議を呈したメディア関係者などと会談を行った。

 また、オーストリアのグーゼンバウアー首相は9月20日、中国当局の反対を押し切って、ダライ・ラマと会談した。同首相は、ウィーンとベルリンの立場は同じであると述べた。

 チベット亡命政府の関係者によると、10月には、ダライ・ラマはワシントンで米国政府から勲章を授与される予定。その後、カナダのハーパー首相と会談するという。

 1949年に中国の人民解放軍がチベットへ侵攻。1956年に勃発した「チベット動乱」を経て、1959年3月17日にダライ・ラマは隣国のインドへ政治亡命した。その後、インドにチベット亡命政府を樹立し、チベットの高度な自治権を主張している。1989年には、世界平和やチベット国家の平和的な樹立に対する運動が高く評価され、ノーベル平和賞を受賞した。
(翻訳・叶子)
(07/09/24 11:39)
http://jp.epochtimes.com/jp/2007/09/html/d27305.html


 9月始めに、寛斗さんがブログ<欧州より>でこの話題を取り上げていたから、実際メルケルーダライ・ラマ会談が行われたら、中共はどう出るのだろうと私は興味深く思っていた。結果は、駐北京独大使を呼びつけてクレームを付けたのと、特許権に関するミュンヘン会談をキャンセルしただけだった。これも外交策の一つであり、流石に中共は交渉が巧みだ。この辺を我が国の外務省は是非学んで欲しい。外交は、微笑しながら相手の厭なところを突っ込んで行くことで成り立つのだ。

 他国の外交を羨ましく思うことは稀であるが、メルケル首相の展開する対中共外交は正鵠を得て感心させられる。それと共に、日中国交正常化以降、内政干渉を許してまともな対中外交をしていない日本人を寂しく思う。

 チベットが中共に武力侵略されてから、早くも58年間が経過した。ダライ・ラマと会談する元首・首相も以前よりは余程増えた。現法王は72歳、お元気な内に故国へ戻り、自治体制を取り戻して、チベット国民の悦ぶ日が早く来ることを心より祈る。
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4 コメント

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Unknown (小楠)
2007-09-25 07:47:35
TB有難うございます。
このドイツメルケル首相に比べ、日本の政治家は
全く肚が座っていないというか、何かの利害関係か
人類の平和などとは口にできない所業ですね。
人権を絶対のように利用するマスコミや左翼に至っては、全くこの言葉が偽善にしか聞えない原因でしょう。
日本にも、堂々と法王に会って会談する政治家が
現れれば、大多数の国民に支持されると思います。
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政治信念が無いのでしょう (茶絽主)
2007-09-30 02:18:23
小楠様
コメントをどうも。レスが遅れまして済みません。
日本の政治屋さんは、国家意識が希薄でその場限り。利権には聡いが、信念が無い。町人国家だからそうなるのでしょうね。
米国議会は、ダライ・ラマに勲章を贈るとの事、日本の国会には考えもつかない話です。ご指摘のように、人権を声高に言う人達に限ってチベットやウィグル、ミャンマーで起きていることには目を瞑っているのが笑止です。
日本の政治家も何時かは変わると期待したい。
返信する
同感です (東郷 幹夫)
2007-10-24 15:32:12
「メルケル首相の展開する対中共外交は正鵠を得て感心させられる」とのご意見には賛成です。最近、ドイツ政府の
各部門の計算機システムがハッカー攻撃を受けたそうです。ハッキング元を追跡すると、中国の広州と蘭州からで、この二都市には中国人民解放軍の軍事行動センターがあるので、人民解放軍が疑われているそうである。 8月末にドイツのメルケル首相は、中国を訪問した折、温家宝首相に、この件で抗議したそうである。

メルケル首相の勇気ある行動には、見習うべき多くの点があります。日本の歴代首相がおびえ切って、台湾問題について1972年の日中共同声明の復誦をさせられている構図には何とも言えない屈辱を感じております。その点では小泉首相は偉かったと思いますね。


また貴殿の『日中国交正常化以降、内政干渉を許してまともな対中外交をしていない日本人を寂しく思う』とのご意見には、全く賛成です。
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コメントお礼 (茶絽主)
2007-10-25 07:02:57
東郷 幹夫様
TB並びにコメントを有難うございます。
拙エントリーにご賛同いただけて、嬉しく思います。
中共軍のハッカー攻撃は、世界の主要国家に及び、ドイツはかなり早くから相手を押えていたと聞きました。貴台のおかげで、広州と蘭州の軍事センターと知ることが出来ました。

日支事変当時は、支那大陸人を舐めてかかり、日中国交回復後は極端に卑屈になる、挙句は我が国への内政干渉を許し、チベット問題に対しても一切口をつぐむ。そうした我が国の姿勢が情けないです。

私は、小泉元首相の構造改革を納得しませんが、靖国問題で筋を通したのは共感を覚えます。安倍前首相の蹉跌は、靖国問題を曖昧にしたために生じたと考えます。台湾と日本は、実質的な協力関係をどんどん進めたら良いと思っています。1972年の声明を骨抜きにして行くのが賢明でしょう。

また、ご教示下さい。
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