陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

六ヶ国協議の裏話

2007-04-14 03:12:13 | 米国関係
 4月12日以来、マカオには世界のマスコミ各社が特派員を派遣し、BDAから北朝鮮の担当者が資金を引き出すのを確認しようと押しかけているそうだが、日本のマスコミにはそうした具体的な話をさっぱり伝えない。韓国の新聞は、信用出来ない面があるけれども、様々な角度からBDA問題を取り上げている。次の記事は、3月28日に韓国「統一日報」に掲載されたワシントン周辺から流れている話である。

膠着する6カ国協議の裏で

北のバッド・ビヘイビア  金正日の憂鬱
  
 米国人は3月22日の北朝鮮の行動を「バッド・ビヘイビア」(Bad behaviour)と表現した。直訳すれば「度し難い行為」だが、米国流に言えば、「愚かな振る舞い」ということになる。子供じみてわがまま放題だという意味が込められてもいる。今回、金桂寛は協議をボイコットした。核放棄を具体的に詰めようとしていた6カ国協議は休会に追い込まれた。北朝鮮がまたしても駄々をこねはじめたのだ。まさに子供じみていた。BDAで凍結されていた北朝鮮資金を米国が解除したと発表したにもかかわらず、そのカネが未だ自分たちの許に届いていないという理由だ。思い通りにならないと泣きわめき、ふて寝をきめこむ子供も同じだが、こんな子供を相手に大人は厄介だ。
(ワシントン・金暎勲)

 北朝鮮が手にしたがっているカネ(2500万ドル)は、今もそのままの状態にある。送金手続きはまだ完了されていない。
 手続きには次のような注文が付けられている。

 1.2500万ドルのカネの性格を明確に区分すること。つまり、偽ドルに対する疑いを取り払うことと、国際社会で不法資金とみなされる疑わしいカネ麻薬密輸資金、テロ支援資金、核開発資金などを正常化していくこと。

 2.北朝鮮は手にする2500万ドルを、北朝鮮住民への教育および人道に用いること(ここにはさらに、このカネが金正日の飲食費―高級酒を含む―となる可能性をふまえ、こうした贅沢品に使用された場合の再制裁措置も但書に書かれている)。

 3.マカオは特別自治区であるとしても中国領土である以上、BDAは中国の銀行法に従わなければならない。ようするに北京政府が介入して解除、送金の問題を整理すべきだということだ。

 金正日はこれらの条件を満たさねばならなくなっている。金正日のプライドはズタズタにされたはずだ。
 凍結解除資金送金の問題はさしたる問題ではない。もっと大きな問題が浮上している。米朝国交正常化の話が現実化していることだ。これには、韓国や日本はひどく驚いているようだ。親北論者らの間ではすでに、「北朝鮮を国際社会の一員として認めるべきだ」という声が起こっている。だが、判断の誤りは禁物だ。

 2月の合意は、6カ国協議そのものの成果ではない。北朝鮮が米国の説得に応じただけだ。北朝鮮は懸案の米朝協議を実現させ、金融制裁までも解除させた。かれらはしかし、対米関係で最も深刻な問題が未解決のままでいる。軍事問題だ。これは、「体制保障」という彼らの国家存続の問題に直結している。

 面白い事実を指摘しておこう。2月の合意に従って対北外交をさらに進めているクリストファー・ヒルは、国務省よりも財務省関係者らと協議を続けてきた。だが、国防省関係者らとは疎遠なままなのである。

 2月合意以降、米国の上・下両院では軍事委員の聴聞会を開き、対北軍事問題への対処と確認を行っている。特に朝鮮半島を中心とし、日本、中国、韓国、フィリピン、ひいてはタイにいたるまで、各国が北朝鮮からの挑発に万全を期すため、軍事力の強化を決定している。特に、下院軍事委員長であるイケ・スケルトン(民主党)は、「少なくとも北朝鮮は八基の核兵器を所有している」と述べた後、これに対して新たな軍事対策が必要だと強調した。

 駐韓米軍は25日から31日まで「連合戦時増員演習」と「トクスリ野戦機動訓練」を韓・米合同で進めている。この作戦演習には米軍(本土・ハワイ・駐韓米軍など)3万5000人と韓国軍の参加以外に、核搭載空母艦「ドナルド・レーガン」号と「F―117ステルス」戦闘爆撃機など、最新兵器を動員している。これは北朝鮮による昨年の核実験以降に行われているという点に意味がある。

 北朝鮮はこれに対し2月、合意に至ったにもかかわらず、米国が対話や関係改善を顧みず、「軍事的脅威」をつくりあげていると不平をもらしている。だが、これは北朝鮮が自ら蒔いた種だ。朝鮮戦争時から今日に至るまで、北朝鮮が米国やその同盟国を軍事挑発してきた例は枚挙にいとまがない。
 BDA資金送金問題以上に北朝鮮が深刻に受け止めなければならない問題はもう一つある。人権問題だ。

 国務長官ライスは2008年度予算策定のために、「外交委員会」の聴聞会で、世界の国で改善されるべき国家を五段階に分け、最も問題となる国家を「Restricted States」、つまり「制度国家」と説明しながら、北朝鮮がまさにこれに該当することを示唆した。

 今年はじめ、「エコノミスト」誌が調査し、発表した内容を見ると、北朝鮮は全世界の国家のうち、最も民主化がなされていない国家で、同誌が調査した157カ国のうち、157位だった。最下位は免れなかったのである。もちろん人権状況も最下位だった。彼らは自国の言語で話し、字を書くこと以外は、人権条項に足るだけのものは、ひとつもなかったと、人権専門機関は発表している。以前、私の所属する機関の調査で、「海外に追放されることもない北朝鮮の特典を人々は受けている」と指摘し、統一日報に発表したことがある。北朝鮮住民たちは自ら脱出している。数十万の脱北者が発生していると見なければならない。

 6カ国協議の枠内で定められた第3ワーキング・グループの議題になっている「日本との関係改善」は、すでに破綻しており、今後日本の参加・不参加も問題になる。北朝鮮はこのことも、小さな問題とみなすことができなくなるはずだ。

 4月13日は、寧辺核施設を封鎖するとした、2月合意の履行期限にあたる。核施設解体と封印、すべての核プログラムのリスト作成が順調に進んでこそ、「経済支援」も5つのワーキング・グループの議題の進展もある。今回の6カ国協議が失敗に終わったことで、新たな問題がおきるだろう。

 同時に北朝鮮は、4月11日に最高人民会議の第11期第5次会議を開く予定だ。4月15日には金日成生誕96周年行事があり、予定は詰まっている。今後相当な生みの苦しみを彼らは味わうことになるだろう。
(キム・ヨンフン=米アジア平和安保会議議長)

http://www.onekoreanews.net/past/2007/200703/news-tokusyu01_070328.cfm

 マカオ政府が、凍結資金を解除し、北朝鮮は資金移動出来るようになった。ヒル国務次官補は、勇んで4月9日に来日、日本側担当者と打ち合わせし、ソウルへ行った。しかし、北朝鮮は貝のように押し黙ったまま。ソウルの滞在を1日伸ばしてから、ヒル氏は北京へ飛んだが、相変わらず北朝鮮は何も言わぬ。さすがのヒル氏もいらいらしていることだろう。

 事実上、六ヶ国協議合意は破綻した。それは、米中北鮮3国の責任問題である。あとは、核施設停止+査察の期限をどれ位延ばすかの話になろう。これに伴って、北朝鮮は再び難題を押し付けてくるはずだ。乗りかかった船で、米国は譲歩し続ける。「テロ支援国家」指定外しさえも同意するかもしれない。日本は、その時強く出なければならない。

 北朝鮮に供与する重油5万トンを韓国は賃貸しタンカーを用いて備蓄している。その費用は、1日1000万円と言う。閉鎖期限が10日遅れると1億円、1ヶ月遅延すれば、3億円が必要になる。韓国は独自の人道支援で米を40万トン、肥料を30万トン送っている。それで無しの礫では、韓国としても切ない思いがするであろう。兎に角、厄介な国を相手にしていることをヒル次官補はしっかりと感じて貰いたい。




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