陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

オバマ大統領のノーベル平和賞決定で思うこと

2009-10-25 11:24:35 | 米国関係
 去る10月9日の午後6時頃、民放TVの地方ニュースを見ていたら、Breaking News のテロップが走って、「オバマ大統領へのノーベル平和賞受賞決定」が流れた。私は奇妙な感じを持ったのだが、それは今なお続いている疑問でもある。

 ノーベル平和賞がテロの専門家、故アラファト議長に与えられた時、あるいは故金大中氏が受賞した時も、正直変な話だなと思った。だが受賞した彼等は何か行動をしていた、つまり何年間かは国家の代表として活躍していたわけで、国際平和への業績は確かにあったのだろう。一方、バラク・フセイン・オバマ大統領は就任後9ヶ月、演説を行ったことを除けば、まだ何もしていないではないか。

 学術やスポーツなどの分野を問わず、どんな賞でも受賞者に業績が無ければその意味を失う。オバマ大統領は核兵器廃絶の提案演説をしたけれども、それが業績とは言えないはずだ。

 若い専門家に与えられる奨励賞と言うものがあるが、それだって学術や芸術、あるいはスポーツで抜きん出た業績を評価され与えられるのだ。100mを9秒00で走りますと言っても、現実にそれを実現しなければ誰も相手にしない。

 ノーベル平和賞は、推薦締め切りが2月1日であると言う。とすれば、オバマ氏が大統領に就任して10日後に推薦を受けていたことになり、これも奇妙な話である。彼は春になってから、プラハ演説を行ったのだから。

 故マハトマ・ガンジーは、インドの平和的独立に大きな貢献をし、世界中から賞賛された。彼は、何度もノーベル平和賞の受賞候補者となったが、固辞し続けて受賞していない。業績の全く無いオバマ大統領は、受賞対象者に選ばれたことを感謝しつつ、これを丁重に断るべきであった。そうすることは、本人のためでもあり、ノーベルが意図した平和賞の狙いに合致すると思う。

 以下のような強烈な批判も出ているようだ。

ノーベル平和賞:オバマ大統領受賞に相次ぐ疑問の声
米メディアも仰天

 米国のバラク・オバマ大統領がノーベル平和賞の受賞者に選ばれたことに対し、海外はもちろん、米国国内からも批判が相次いでいる。その先頭に立っているのは主として共和党と保守系の論客だが、米国の進歩陣営内からも「理解できない」という反応が出ている。

 米共和党全国委員会(RNC)のマイケル・スティール委員長は、支持者に送った書簡で、「オバマ大統領は一体どのような業績を成し遂げたのか」と問い掛け、「オバマ大統領のスターパワーが平和と人権に実質的に寄与した人々の光を薄めたのは不幸なこと」と主張した。

 保守系日刊紙ウォールストリート・ジャーナルのコラムニスト、ペギー・ヌーナンは10日付のコラムで、今回のノーベル平和賞について「不道徳で不見識な賞」と批判した。「ノーベル賞委員会は、単にオバマがジョージ・ブッシュではないという理由で賞を与えた」「ノーベル平和賞は、尊敬の対象から物笑いの種へと転落した」と主張した。保守陣営の中でも極右に属するラジオ評論家ラッシュ・リンボーは、「(わたしが)アフガニスタンのタリバン、イランの独裁者と同じ意見を持つという事態が発生した。オバマ大統領がノーベル平和賞を受ける資格はない、ということだ」と皮肉った。

 進歩派のメディアですら、首をかしげている。ロサンゼルス・タイムズは10日付の社説で、「われわれはオバマ大統領を支持し、彼を前任者よりはるかに好ましく思っているが、なぜ彼が就任直後にノーベル平和賞を受賞したのか分からない。ノーベル委員会は、オバマ大統領を当惑させ、ノーベル平和賞自体の信頼を失わせた」と主張した。同紙のオンライン世論調査(11日午前現在)によると、回答者の46%が「オバマ大統領はノーベル平和賞受賞を辞退すべきだ」と答えた。

 昨年の米国大統領選挙でオバマ大統領支持の立場を明確にしたワシントン・ポストも、同日の社説で「皆を当惑させるおかしなノーベル平和賞」と記し、「イラン大統領選挙の不正に抗議して亡くなった女子大生ネダ・アガ=ソルタンのようにはっきりとした代案があるにもかかわらず、ノーベル委員会がなぜこうした決定を下したのか分からない」と評した。

 ドイツの時事週刊誌シュピーゲルは、「オバマ大統領のノーベル平和賞受賞の話に最も驚いた国は、ほかでもない米国」と報じた。同誌は、「就任から9カ月のオバマ大統領に賞を与えるのは、2-3キロ走っただけのマラソンランナーにメダルを授与するようなもの。オバマ大統領にとっては、栄光よりむしろ負担となるだろう」と指摘した。

 中国のインターネット・ユーザーも、オバマ大統領のノーベル平和賞受賞を目の敵にしている。中国の環球時報が運営するウェブサイト「環球網」のオンライン世論調査(11日午後現在)では、回答者の86.2%が「納得できない」と答えた。その理由として、回答者の89.5%は「オバマ大統領は世界平和のためにまだ何も貢献していない」と主張した。

キム・ミング記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
http://www.chosunonline.com/news/20091012000031


 ノルウェーのノーベル平和賞委員会の中では、オバマ大統領への授与に強い異論があったと伝えられるが、委員長が強引に押し切った。これでオバマ大統領はイランへ先制攻撃するのを控えるだろうとの読みもある。いや、アフガンへの米軍増派計画も一層制約を受けるのかも知れない。

 米国は数千発を保有する核弾頭の維持管理に悩んでいる。ロシアも同じ悩みを持っているが、お互いに引くに引けない状況だ。キッシンジャーらは、昨年末核廃絶を世界にアピールしたけれども、小ブッシュ前大統領は黙殺した。オバマ大統領が核兵器廃棄を謳っているのは、人道問題以前に米国が経済的苦境に陥ったため、それを維持管理出来なくなったのが理由とも思える。

 私は、ノーベル平和賞委員会がウィグルのラビア・カーディル氏を選ぶことを望んでいた。だが、彼等は別な政治的意図でオバマ大統領を選んだのだ。

 いずれにせよ、問題視されることの多かったノーベル平和賞だが、オバマ大統領の受賞で更に権威は低落した。平和賞の設置を考えたアルフレッド・ノーベルは草葉の陰で嘆いていることであろう。

 参考の意味で、ノルウェー・ノーベル賞委員会による受賞理由前文を産経Webから引用して示す。

【ノーベル賞】オバマ氏の受賞理由発表全文

非核化や環境「世界を先導」
2009.10.9 21:06

 ノルウェー・ノーベル賞委員会は、2009年のノーベル平和賞を、国際外交と諸民族の協力関係の強化のため比類なき努力をしたバラク・オバマ大統領に授与することを決定した。委員会は、核兵器のない世界に向けたオバマ氏のビジョンと働きに特別な重要性があることを認める。

 オバマ氏は大統領として、国際政治に新たな環境を生み出した。国連や他の国際機関の役割を重視した多国間外交が主流の位置を取り戻した。たとえもっとも困難な国際紛争であっても、対話と交渉が解決の手段として選択された。

 核兵器のない世界というビジョンは、軍縮と軍備管理の交渉を強力に後押しした。オバマ氏の先導のおかげで、米国はいま、世界が直面する大きな気候問題に対処する上でより建設的な役割を果たしている。民主主義と人権はより強固となる。
オバマ氏の様に世界の注目を捕らえ、人々によりよき未来への希望を与えた人は、ごくまれにしかいない。彼の外交姿勢の基本には、世界を先導する者は、世界の大半の人々が共有できる価値観と心構えを持って臨まねばならないとの観念がある。

 108年間にわたって、ノルウェー・ノーベル賞委員会は、まさにこうした国際政策を奨励するよう努めてきており、そうした態度において、オバマ氏はいま、世界の主要なスポークスマンである。委員会は「いまこそ、地球規模の課題に地球規模で対応するため、われわれ全員が責任を分かち合うときがきた」とのオバマ氏の訴えを支持する。

http://sankei.jp.msn.com/world/america/091009/amr0910092107011-n1.htm
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