陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

イタリア破綻なら、ユーロは終焉すると独仏首脳が認識

2011-11-26 20:43:53 | 欧州関係
 昨日、当地では初雪が降った。1日中寒かったが、散歩を兼ねて市立病院へ診療を受けに徒歩で出掛けた。霙(みぞれ)混じりに降る淡雪に、何となく懐かしさを感じる。凡そ4ヶ月続く冬の季節が始まった。

 さて、「会議は踊る、されど進まず」は、ナポレオン戦争後の外交処理で、列国首脳がウィーンに集まり、国益を主張して侃侃諤諤(かんかんがくがく)した内容を皮肉る言葉であった。ウィーン会議を主催したのは、オーストリア宰相で外交に長けたメッテルニヒ候爵。仏国からは、切れ者の伯爵・タレーラン外相が出席して、虚々実々の駆け引きに明け暮れたと伝えられる。

 今年9月の山場を越えて、ギリシャは辛うじて破綻を免れたが、EU首脳のソブリン債処理会議は断続的に延々と続く。だが、彼らは抜本的なユーロ圏危機回避策を見出せない。将に「会議は踊る」の状態である。この間に、ギリシャ、イタリア、スペインでは、政権交代が相継いで起き、混沌は更に深まった。

 イタリアの財政崩壊がこの所急に話題となっている。同国の債務負債残高は、約2兆ユーロ(=200兆円)。これが返済不能となれば、フランス、ドイツの民間銀行が破綻するし、米国の巨大銀行にもその影響は波及する。日本の民間セクターも、ユーロ圏に約70兆円の債権を持つと言うから、影響は甚大であろう。

 このユーロ圏危経済機は、EUの政治的統合を先延ばしにした上、まず通貨統合を行った構造的問題に大きな原因がある。メルケル首相とサルコジ大統領は、マーストリヒト/リスボン条約(EU基本条約)を改訂し、EU諸国の財政規律を強化する案に合意したが、仮にEU諸国にそれが受け入れられても即効性に疑問が残る。

EU条約改正、独仏提案へhttp://www.sankeibiz.jp/macro/news/111126/mcb1111260503013-n1.htm

 その上で、両国首脳はイタリアのモンティ新首相と会談し、彼に強く財政改善策の実行を迫った。ブルームバーグ通信によると、


独首相と仏大統領、イタリア崩壊ならユーロは終わりと同意-伊首相

  11月25日(ブルームバーグ):ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領は、イタリアが欧州債務危機の犠牲になれば域内単一通貨ユーロの終えんにつながるとの見解で、イタリアのモンティ首相と一致した。

  イタリア首相府が電子メールで配布した文書によると、サルコジ大統領とメルケル首相は「イタリアが崩壊すればユーロの終わりにつながるのは必至であることを認識していると言明し、イタリアを支える方針を確認した」と、モンティ首相が25日の閣議で述べたという。

  この日の入札で、イタリアが発行した6カ月物証券の利回りは7%近くとなった。同国の債務削減を投資家は疑問視している。メルケル首相は24日、モンティ首相およびサルコジ大統領との会談後の共同記者会見で、モンティ首相は「成長を促進」するための優れた戦略を説明したと語った。

  この日の伊首相府の発表文書によると、モンティ首相は24日の首脳会談で、「イタリアは最近、財政再建に関し相当の改善を成し遂げたことを示した」と語った。さらに「そのような財政再建策を持続可能にするための取り組みは、短期的に成長重視の政策を通して実践される」と付け加えている。

  モンティ首相はこの日、2013年に財政収支を均衡化させる決意をあらためて示した。

  メルケル首相は危機解決の手段としてのユーロ共同債や欧州中央銀行(ECB)の役割拡大は依然として断固拒否している。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=acAH4WcqIV0o


 ユーロ共同債券を発行し、それを欧州中央銀行(ECB)が全額買い取る案をサルコジ大統領や他の国が提案しているが、それは財政モラルを低下させ、ユーロ札の大量発券を伴うのでインフレになる懸念がある。ドイツは、その案に大反対し、EUとしての意見がまとまらない。

 このまま、ずるずると行くと、来年夏当たりにユーロ崩壊が現実化するかも知れぬ。それは、間違いなく「世界大恐慌」を引き起こす。
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