陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ウクライナ騒乱で思うこと

2014-03-09 14:45:06 | 欧州関係
 昨年11月から続いていたウクライナ騒乱は、ソチ冬季五輪が終わると同時に急展開した。暴徒と化した反体制派が首都キエフを制圧、ヤヌコビッチ大統領は2/26にロシアへ逃亡し、彼の親露政権は崩壊した。

 プーチン露大統領は、直ちにウクライナ東側国境近くで15万人のロシア軍を展開、演習と称して自らこれを視察した。同時に、クリミア半島の2つの空港とセバストポリ軍港のウクライナ海軍司令部を特殊部隊で制圧、実質上クリミア半島を占拠した。

 欧米は、反政府勢力が選んだ暫定政権の大統領代行とヤツェニュク首相を支援してロシアと対立しているが、ウクライナ東部地域ではロシアに親近感を持つ民衆と暫定政権支持の人々が激しく反目している。

 米国とEUはロシアがウクライナに内政干渉しているとし、6月にソチで開催されるG8サミットへの欠席を決めた。また、米国はロシア高官のビザ発給停止、米国内のロシア資産凍結に踏み切った。更に、クリミア半島のロシア軍撤退を求めて、国際監視団を受け入れるよう求めている。

 EUの中でも、ドイツはロシアと正面から対立したくない。それは、ウクライナ経由の天然ガスパイプラインを止められては困るし、独露間の貿易量も大きいからだ。従って、メルケル首相は米国の提唱する経済制裁に踏み切らないだろう。

 我が国は、全ての当事者間の話し合いを求めている。ウクライナが財政破綻しそうな状況であるから、それを打開するための財政援助を提案した。ここは、冷静に状況を把握することが重要だ。

 軍事大国の米国は財政が苦しいし、国民は厭戦気分に溢れている。それ故、現状では自らの実力行使に逡巡し、口先だけで事を済まそうとする。先を見透かされたオバマ政権の外交力は著しく低下しているのだ。

 クリミアで起きたロシアの軍事行動は、グルジア紛争と似ている。覇権国家は、遠慮無く実力行使に踏み切る。米国の生ぬるい行動を見て、独裁国家シナ・中共は、尖閣諸島+先島諸島を実効支配するようにに動き出すかも知れぬ。台湾へも同じように中共が侵攻する可能性が考えられる。

 台湾人 Andy Chang 氏の論考は、中々興味深い。些か長文であるが、全文掲載させて頂く。


[AC通信:No.488]Andy Chang (2014/03/06)
ウクライナ侵攻とアジアピボット

プーチンのウクライナ侵攻はオバマの強硬な恫喝が逆効果を招いたといわれている。アメリカのメディアはオバマの警告でロシア議会が硬化してクリミア出兵に賛成したという。真相はともかく、アメリカは世界各国から「紙老虎」と見られるようになった。

このような世界政情で懸念されるのは、中国がアメリカの「アジアピボット」を軽視して覇拡張を進めることだ。中国の台湾侵攻、尖閣上陸にアメリカは対応できるか。

アジア問題はすべて中国覇権の結果である。アメリカは中国の覇権進出に無作為だけでなく、日本を危険視する発言を繰り返す。オバマは日本に無関心、メディアは日本批判をやめない。日本はアジアで最も重要な戦略的パートナーだから、アジアピボットは日本に頼る他はないのに、日本批判を繰り返すのは愚か、日本が沈黙しているのも間違いである。

●米国の現代戦争体制と国防費削減

チャック・ヘーゲル国防部長が陸軍兵員を第二次大戦前の45万人に減らすと発表していろいろな批判があったが、私はこれをアメリカの現代戦争への体制転換と見ている。要約すると、?陸軍を減らし長期戦争から短期攻撃(海兵隊)の作戦、?11隻の空母を主体とする海上戦闘群、?無人偵察機とピンポイントミサイルで経費と人員削減、?テロとサイバー攻撃に対応、の4つである。

この体制変換は長期作戦をやめて短期作戦に絞ることだが、弱点は敵の長期テロに対応できないことだ。毛沢東の「敵が進めば我は退き、敵が駐留すれば我は擾乱する、敵が疲弊すれば我は叩く、敵が退けば我は追う」と言うテロ作戦に対する対応は無人機の攻撃だけとなる。

イラク、アフガン戦争は陸軍の攻撃で勝ったが、テロの地雷爆弾や自殺テロで手足を失う兵隊、死傷者が続出した。新型戦争は陸軍の地上戦ではなく空の攻撃、これに対する敵側のテロ攻撃である。

アメリカの現代戦争体制は二方面作戦を放棄し、単なる短期作戦だけとなる。つまりアメリカは安保諸国に「現状維持」を要求する他はなく、「作戦に勝っても戦争に負ける(Win the battle, lose the war)」のである。
このような状況で起きたウクライナ危機を見て、中国がアメリカを軽視し、アジアで進出するいくつかのシナリオを考えてみよう。

●空の台湾侵攻と台湾の防衛力

ロシア軍がヘリコプターでクリミア半島に侵攻してもアメリカは兵力派遣が出来ない。オバマの警告はリップサービスと見られ、経済制裁は欧州諸国が賛成しない。アメリカと欧州諸国に出来ることはウクライナの経済援助だけだ。

台湾は東南アジアの中央にあり、中国が太平洋進出に欠かせない要塞である。中国がアメリカの衰退に乗じて中国が輸送機やヘリコプターで台湾の空港を急襲すれば大事だ。国民党軍は戦力も戦意もないし、馬英九は中国寄りである。アメリカは国交がないから軍隊派遣も出来ず海上封鎖で上陸した中国軍の自滅を願うのみだろう。国交が無ければケリー長官が台湾に飛んで馬英九に圧力を加えることも出来ない。

アメリカには台湾関係法があるが、中国軍が侵略した後でアメリカが反撃する可能性は薄い。残るところは台湾人民の抵抗だが、武器が無いから民間人の無差別殺戮は必至である。

このような事態を防ぐには、アメリカが早々と台湾は中国の領土ではない、中国の侵略は国際法違反であると宣言することである。こうすれば米軍が上陸して人民を保護する名目が立つ。アメリカは早くから宣言すべきだったのに曖昧政策で何もしなかった。

オバマはアジアを放置して中東にかかりきりだった。ヒラリーがアジアピボットを宣言したが、海軍兵力をアジアに移す計画は遅れている。アメリカは日本とインドがアジアの海上平和を受け持つことを望んでいる。シンガポールとフィリピンの港の駐留も遅れている。

●尖閣諸島上陸と日本の反撃

尖閣も台湾と同じく中国の太平進出の要点であるのに、アメリカは尖閣諸島は日本領であると言わず、尖閣は日米安保の範囲内であるというだけ。中国は尖閣諸の帰属を「未解決領土」から勝手に「中国の領土」に切り替え、軍事行動を正当化する発言を繰り返す。

アメリカが何もしないことが明らかになると中国が尖閣に軍艦を派遣して中国の旗を立てることも考えられる。日本は領土防衛で中国と交戦する用意はあるだろうか。アメリカが安保条約に則って中国軍を撃退する可能性は薄い。日本は早急に自己防衛を合法化し戦争準備をすべきである。

●南シナ海の進出とアジア諸国

中国はこれまで何度も海軍の軍艦がフィリピンやインドネシアの漁船を攻撃し、スプラトリーやパラセル諸島の島々に施設を作ってきた。アメリカが抗議をしたと聞いたことがない。南シナ海はアジアのみならず世界の重要な商業航路である。東南アジア諸国は中国海軍の暴虐に惑しているが、アメリカの態度が煮え切らない。この状態がエスカレートすれば各国の商船は中国海軍に妨害されるかもしれない。

パラセル、スプラトリー諸島はサンフランシスコ平和条約(SFPT)で日本が主権放棄をした領土で帰属は未定である。中国はSFPTに署名していないのに南シナ海を自国領と宣言し、島々の占領を繰り返してきた。中国に対抗するには諸国とアメリカが合同して中国の進出を塞き止め、台湾を含む帰属未定の領土を中国の侵略から守るべきである。これが私の東南アジア平和連盟(PASEA)の主張である。

●アジア諸国の合作(PASEA)

アジアの平和達成は中国の覇権拡張を押さえること、これしかない。中国の武力行使、言いがかり、メディア宣伝にアメリカはいつも弱腰な反応だけである。アジアの不穏はアメリカが中国の横暴を抑制できないため、つまりアメリカの責任だ。諸国はアメリカの無作為
に対し自力防衛を進めるべき。それには東南アジアの平和連盟が必要だ。東南ア諸国連合が出来ればアメリカは喜ぶ。PASEAを主催するのはやはり最強国の日本しかない。

アメリカの衰退に諸国は自衛力を増強して中国の覇権に対抗すべき、これでこそアジアの平和を保てる。アメリカの衰退で中国が進出すれば諸国は防衛を強化し、アメリカが弱腰になればアメリカの尻を叩くべきである。日本はアジアの平和に最も重要な国である。アメリカの日本批判に強く反論し、日本の立場と正論をアメリカに「教える」べき、「美しい日本はシナに強い日本である」とアメリカに言うべきである。

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