現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

ジャングル・ブック

2016-08-19 14:27:05 | 映画
 1894年に出版された、キップリングによる児童文学の古典の何度目かの映画化です。
 幼いころに愛読した作品が、最新のCGによってどのように描かれるか興味があったのですが、原作とは全く別物でした。
 CGは期待通りに素晴らしいし、ディズニー作品なので子どもの観客へのサービスも楽しいのですが、原作の持つラストの戦いの高揚感は失われていました。
 また、原作はインドの野生動物の世界を忠実に描写しているのですが、この映画では実際には同じ地域には共存していない動物が混在しています。
 まあ、ディズニー映画は教育を目的にしていないので、その方が楽しいのかもしれませんが。
 一番残念なのは、原作の重要なテーマである文明と野生との葛藤が、娯楽色を強めすぎたために完全に薄まってしまったことです。
 特に、文明の象徴である「赤い花(火)」については、モーグリが不注意によって山火事を起こしたことに対して、まったく無批判なのが気になりました。
 なお、この映画の原作は、日本の近代童話の出発作と言われる1891年に出版された巌谷小波の「こがね丸」と(ということは、1963年の東映動画の「わんわん忠臣蔵」にも)、偶然ですが非常に物語の構造が似ています。

ジャングル・ブック (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社
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三田完「青い鳥」黄金街所収

2016-08-19 09:42:35 | 参考文献
 これも歌謡界の内幕物です。
 驚いたことに、東日本大震災を取り扱っています。
 自分も被災した売れなかった元演歌歌手が、デビュー作の「青い鳥」を避難所で歌って評判になっているという設定です。
 売れなくなった90年代までは売れっ子作詞家だった主人公が、それに便乗して再起しようというのです。
 お決まりのデビュー当時の二人の肉体関係やら(なんとその当日に作詞家の妻が癌によって死にます)、その歌手も癌に侵されているやらと、お涙ちょうだいの材料が満載です。
 こういう作品を書く作者のあまりのあさましさに驚愕しました。
 作者にとっては、東日本大震災は単なるネタにすぎないのです。
 お笑いタレントでさえ、さすがにここまではやりません(おそらく放送コードに引っかかるのでしょう)。
 こういう作品を雑誌に平気で載せるとは、出版社にはモラルというものがないのでしょうか。
 でも、児童文学の出版社でも、有名タレントに臆面もなく文学賞を与えて大儲けしたことがありましたから、他人ごとではありませんが。

黄金街
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講談社
 
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