現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

黒川博行「国境」

2016-08-26 09:05:01 | 参考文献
 五作目の「破門」で2014年上半期の直木賞を取った、「疫病神」シリーズの第二弾です。
 舞台を日本(関西)だけでなく、北朝鮮や中国にまで広げたところが新しい展開です。
 かつて冷戦時代には、フレデリック・フォーサイスなどが仮想敵国としてソ連を設定したエンターテインメント作品を書いていましたが、現代の日本でのそれは北朝鮮になるのかもしれません。
 黒川は北朝鮮や中国に実際に取材に行っているので、その場面にはかなりリアリティがあります。
 しかし、逆にその体験に縛られて、その部分はエンターテインメントとしては物足りない感じです。
 カタギの主人公と極道の相棒による掛け合い漫才のような活躍は、日本に戻ってきてからの場面の方が精彩があります。
 児童文学作品でもそうですが、取材や文献渉猟をしすぎると、それが足かせになって、フィクションとしての自由度が失われることが多いようです。

国境 (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社
コメント
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