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「マノン」は仔猫のように








ロイヤル・バレエの「マノン」、ナタリア・オシポワ(Natalia Osipova)のマノン役で鑑賞した。

今シーズンはナタリア・オシポワの相手役としてボリショイ・バレエのデイヴィット・ハルバーグ(David Hallberg)が召喚されたのだったが、早々に負傷、ウラジーミル・シクリャローフ(Vladimir Shklyarov) がマリインスキーからマノンの恋人デ・グリュー役として登場した。

彼も大変美しく麗しい男性ダンサーだが、この公演の2日前にミラノ・スカラ座のロベルト・ボッレ(Robert Bolle)のデ・グリューを見てしまったので...

とにかくボッレは「恋する男」だった。彼の演ずるデ・グリューが恋人マノンを見つめる幸福に溺れた表情よ。
そして彼は長身にもかかわらず、ほとんど全く足音をさせなかったのが印象的だった。高く跳躍しても着陸時ほとんど無音。こちらは大猫か。

さらにさらに、マノン役のマリアネラ・ヌネツ(Marianela Nunez)とのデュエットが生むケミストリーという点で、ペア点で言うとあちらのペアの寸差の勝利...


それでもナタリアのマノンも文句なくすばらしかった。
音楽が表現する妖しさにぴったりで、ぞっとするほどだった。
彼女はまるで液体のように柔軟でかつ俊敏な仔猫のよう、ジンメルの定義するコケットリー「誘惑と拒絶の間を絶え間なく動き、どちらかの極に停止することがない」というのそのもの。

コケットリーは持つ女は持ち、持ってない女は持っていない...そういう類のものなのだろう。

例えばデビューしてから数年の松田聖子のコケットリーは「ぶりっこ」という言葉で簡単に片付けれらてしまったが、好き嫌いは別にしてもあれはものすごいコケットであった。
最近はどうなさっているのだろうか。



(写真はROHより拝借)
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