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ウィーンの夜会





今日はこれからフランスへ。
搭乗までに書けるところまで...ウィーン学友協会でのデニス・マツーエフ(Denis Matsuev)のピアノリサイタルの話など!


ウィーン楽友協会では何度も演奏を聞いたことがあるが、今回の席の関係だったのだろうか、改めてこの音楽堂の音響のよさには度肝を抜かれた。

アムステルダムのコンツエルトヘボウの舞台を、修繕のために開けたらば、中から大量のガラスの破片が出てきたという。
それを前時代的な偽科学装置だと取り除くと、音響がすっかり変わってしまい、あわてて元に戻した...

という有名な話がある。

ウィーン楽友協会にもなんらかの仕掛けがあるに違いない。この五臓六腑がズンズンいうような音は、周りの空気を振動させて伝わってくるのだと実感。

マツーエフのピアノ! リスト『ピアノ協奏曲第2番 』。
わたしは今までこのリストの曲を繰り返しCDで聞いたが、それらが時々「リストうるさい!」となるのとは全く違っていた...

まるでフォースを得るために暗黒面に落ちたかのようなリストのこの曲を、暗黒面自身が自らノンシャラン(死語)と自演するような(相当褒めてます)、ものすごく太く豊かでしかも悲しくなるほど美しい演奏だった。

パワーだけがピアノを美しくするのでは決してない。しかし、こういう太い音をいとも簡単に出すピアニストが弾いてこその曲(ラフマニノフとか)というのは確実にあるのだと認めざるを得ない。

第二楽章のバイオリンとの掛け合いの美しさといったら! 暗黒面と思っていたらば、いや、ここは天国じゃないか。


Wiener Symphoniker
Alain Altinoglu, Dirigent
Denis Matsuev, Klavier
Nora Gubisch, Mezzosopran

Franz Liszt
Von der Wiege bis zum Grabe. Symphonische Dichtung nach einer Zeichnung von Michael Zichy
Konzert für Klavier und Orchester Nr. 2 A-Dur

Sergej Prokofjew
Alexander Newskij. Kantate für Mezzosopran, Chor und Orchester, op. 78





ウィーン国立バレエ「白鳥の湖」、ジーグフリード王子役がなんとなんと英国ロイヤルバレエのVadim Muntagirov!
こちらのゲスト・プリンシパルだそうで、全然知らなかった。

先月はロンドンで彼が貧乏な床屋バジリオ(『ドン・キホーテ』)を踊るのを見て、今が彼のダンサーとしてのひとつのピークに違いないと確信させられたばかりだ。

どこをとっても繊細優美で、しかもおおらかで大胆。バレエの「王子様」そのもの。文句なしに美しい。

彼のことはずっと、特に彼でなければというほどでもと思っていたが、大きな間違いだった。いつの間にか余人をもって代えがたいほどの個性と品格を備えたアーティストになっていた。

これではわたしはまるでモンタギロフ追っかけのようだが違います(笑)。

でも、「ウィーンの道でばったり会ったらなんと言って声をかけよう...ミスター・モンタギロフ、あなたの公演はいつもはロンドンで毎回見ています...あなたは神々しいです...とか?」などと思っていました(笑)。
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