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Brugge Style
ポピュリズムとEU離脱
関税で値段上がるでしょうなあ、を言い訳にクリスマスプレゼント。
昨日のブログ記事を書くために、川北稔先生の『洒落者たちのイギリス史』を読み直していたら、後半219ページにこのような記述があった。
「17世紀も後半になると、この国の貿易関係にも革命的な変化が起こる。新世界やアジア、アフリカとの貿易が爆発的に拡大し、これまでヨーロッパに閉じ込めれれていたこの国を、世界商業の桧舞台の主役に押あげたのである。『イギリス商業革命』とでもよぶべきこの現象は...」
17世紀後半についてだが、ここを21世紀初頭に入れ替え、『イギリス産業革命』を、『ブレグジット』に入れ替えればあら、現在の離脱派の理想の話?
ご存知のように英国は今年1月にEUを離脱した。
今年いっぱいは離脱の「移行期間」にあたり、加盟時と同じルールで動きつつ、移行期間終了後の各分野の取り決めを11の分科会で協議し、交渉してきたのである。
今日(12月13日)は伸びに伸びた妥結の日であり、しかし数日前から合意に至りそうなニュースも妥結延期の様子も全くなく、ついには合意なき離脱に備えよ、そんなに悪くない、とボリス・ジョンソン英首相があのノリで空疎に繰り返すようになった。不吉だ。
英国のEU離脱派は、2016年6月23日の国民投票で、51.9 %を獲得した。
「わが国がコントロールを取り戻すのだ。国境を再び設け、完全な独立を取り戻すのだ。ブリュッセルによって束縛されたエネルギーを解放し、英国内外での主権の行使は英下院が握るのだ」と。
ポピュリズムとはつまるところ「自分さえよかったら、今さえよかったら、他はどうでもいい」という態度のことだ。
しかし主権は17世紀と同じように行使できる性質のものではなくなっている。
おそらく、彼らがイメージしているのは、上に引用した17世紀後半の、これから7つの海に乗り出し、覇権国家となる英国の姿である。
いつの話やねん...という話である。あの時代とは世界情勢も、「主権」も性質が全く異なっている。
主権を取り戻しさえすれば、再び覇権国家になれると思っているのなら、あまりにも世界情勢や、他の国に無関心でありすぎる。
「一人勝ち」などできないような、いや、してはならないような世界にわれわれは住んでいるのだ。例えば新型コロナ対応も、昨日12日に行われた「パリ協定」の採択から5年を記念した国連のオンライン会合での温室ガス削減宣言も、世界中が協力し合わねばどうしようもない。
去年の数字を見ると、英国は43パーセントをEUに輸出し、52パーセントをEUから輸入している。
英国は実に80%の食料を輸入に頼っており、EUからはそのうち50パーセント近くを輸入しているそうである。
浅はかなわたしでさえも、今後の混乱が身近に予想できすぎてゾクっとするほどである。
ただでさえ、英ポンドは15パーセントも落下してるんですぜ...
ただ、「合意なし」の離脱を全く「何の取り決めもなし」と思ってる人がいるが、何もないわけではない。上にも書いた11の分科会で合意がとれているものも多くあり、合意なしになった場合、その妥結が合意が取れているものにどういった影響を与えるのか...までは分からない、というのが現状のようだ。
わたしはジョンソン英首相を、馬鹿と呼ぶのを短絡だと思っていた。人物を評価するのに「馬鹿」などという簡単な言葉を使うのは思考停止だと思っていた。今は自分の不迷を恥じている。あの方には頭がいい悪いは別にたぶん「やる気」しかない。
今日はいったいどうなるのか、TVから目が離せない。
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