私の町 吉備津

藤井高尚って知っている??今、彼の著書[歌のしるべ]を紹介しております。

命より大事な物

2011-08-09 07:08:38 | Weblog
 此の日記を読んでいきますと、江戸の人々が、当時、使っていて、現在では使われないような驚くような言葉が時々出て来ます。其の中で、特に、現代では、不適切な差別語だとして、厳に、戒められているような言葉も見ることが出来ます。<あしなへ>という言葉です。漢字で書きますと「蹇」「跛」だそうです。

 「・・つまはあしのほねをひしぎ、あしなへとなりぬと云。・・・」
 
 と、あります。<ひしぐ>と云うのは押し潰されると云う意味です。<あしなへ>と云うのは足がなえる、足が普通に使えなくなって正常に働かなくなった状態を言う時に使う言葉です。その続きには
 
 「されど、後には全快すべくや。三人の子どもはさわりなし。さるあやふき時にも、としごろ心してつくし写しおきたる、おもしろくめづらしき粉本ようのものは、男(こ)をして仆家の内より出させ・・・」
 
 と出ています。
 この屋の主人(絵描き)は、余程、自分がそれまで、スケッチなど描き置きしていた下絵が大切だったのでしょう。「隣家の物のたふれかかれるに圧仆され」、右手のうで骨を折って、自由が利かなくなっていても、その息子か弟子にでしょうが命じて、家の中に置いてきた、それらのものは、持ち出させて無事だったと書いています。その他、本などは大方焼けてしまったのだそうですが。

 人と云う者は、地震という非常時にでも、己の命もどうなるか分からないような時にです、咄嗟に、今、自分は何を一番初めにすべきか冷静な意識が働いて、人に命令するなりして、自分の思いがかなうような働きが出来る物なのですね。それこそ、文字どうり「命より大事な物」を守ることが出来るのです。
 「カジバノクソジカラ」と云う事を聞いたことがあるのですが、人間って、本当に不思議な生き物ですね。

 このような地震が、次第に、終結を迎えようとしている時、それに関する色々な逸話しか書く事がないような落ち着きを取り戻した江戸の様子を、この後、霜月十六日まで、なにやかやと書き綴っています。もう、「このへんで」と、思いましたが、まあ、後少しばかりです。ついでですから、最後まで仙果先生の「なゐの日並」を追ってみたいと思います。

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