バスーンふぁんたじあ

アマチュアバスーン吹きのメモ書き。

TWS

2023年12月21日 | 楽器
12月某日、東京中野のタケダバスーン様を訪問した。目的は、TWS の試奏。




ピュヒナー初号機はテナー音域のDに難があり、2014年に入手して以来リード、ボーカル、奏法、楽器への細工等で何とかしのいできた。現在は、零号機のテナージョイントを初号機に付け、ピュヒナーボーカルCC1XL、Fox1シェイパーリードで比較的安定しているのだが、テナー音域のCis~Eはかなり低めに来るので、運指はかなり変則的にして音程を近づけている。

 しかしながら、この状況を続けるのは体力的にもきつくなってきたし、精神的に辛い場面もあり、根本的な解決をしたいと思う今日この頃。楽器を買い換えることが手っとり早いのだが、このご時世いかにせよ値段が高い。何か良い方法はないか、と考えていたところ、ネットでタケダバスーンのTakeda Wing System(TWS)のことを知った。

 バスーンのウィングジョイント(テナージョイント)は、下二つの音孔は内側から見ると上方向にあいている(正確にはCis音孔も)。これは、こうしないと左手の指で音孔を押さえることができないためで、この部分の木材の厚さがこれを可能にしている。TWSはこの二つの音孔を上から下にあけ、指よりも下にあいている音孔はキーで閉じさせる。これによって、息の流れを自然にしている、とのこと。詳しくはタケダバスーンのHPで。




 タケダバスーン創始者の竹田雄彦氏は、元東京フィルハーモニー交響楽団のファゴット奏者。東京フィルハーモニー交響楽団退団後は、ノナカダブルリードギャラリー(アクタス)の店長を数年務めた後、楽器製作への情熱著しく、その道へと進まれた。

 竹田氏の願いはHPにあるように、「「ファゴットは高い、だから普及しない」という常識を覆して、素晴らしい楽器であるファゴットを、より多くの人に届けたい。そのために、高い品質と入手しやすい価格の両方を実現したファゴットを作ろう。」ということであり、今日それは実現しているように思える。

 TWSも同じように、「テナー音域のCis~Fくらいの音は音程が低くなりやすく、楽器を始めたばかりの人にとっては鬼門であるから、何とかその音域を楽に吹くことができるようにできないだろうか」という、「バスーンという楽器へのとっつきやすさ」を目指して開発された。結果、TWSはそれを実現し、初心者よりもかえってプロの方やベテランのアマチュアの方からも注目されるようになったようだ。

 このTWSはタケダバスーンはもちろんのこと、他のメーカーにも装着可能ということで、ほぼ全メーカーの楽器で試しているそう。ジョイント部分の外径はメーカーによって若干異なるので調整が必要だが、内径についてはほぼ同じという。あと、低いEキーとppキーの連動も調整が必要。また、ボーカルの差込み口はメーカーによって異なるので、ゆるい場合はデンタルフロスや糸で調整できるが、きつい場合はコルクを削る等しなければならないかもしれない。この点については、今後差込み口の大きさを検討しているとのこと。

 で、試奏してみた感想は、一長一短はあるが試してみてもいいかも、といったところ。私の楽器との相性でいうと、良い点は、Dが 比較的安定(ヤマハPボーカルだと多少不安定)、Cis~Eの音程も取りやすい、テナー音域が楽(音量をしぼっていっても楽に音が出る)、音色が柔らかい、といったところ。気になるところは、左手中指薬指のキー操作(慣れるしかないが)、左手親指のキーの大きさや高さが異なる(これも慣れるしかない)、オリジナルと比べて音色と鳴りの変化が大きく、発音の感触が変わる、など。これらは、使う人それぞれ違う感想を持つだろうから、あくまで私個人の感想ということで。

 あと、管体の色が木そのものの色(無色塗装)で、装着するとかなり目立つ。これも気になるところだったが、普通のタケダバスーンの色での塗装も可能ということ。なお、、現在注文が殺到していて、今オーダーすると納期は4~5カ月先になるそうだ。

また、タケダバスーンではコントラも含め楽器のレンタルも開始したとのこと。タケダバスーンのコントラは、値段の割りには性能が良いらしい。私はあまりコントラを吹かない(苦手)が、こちらも海外からの問い合わせが多いという。まぁ、他のメーカーのコントラが高価過ぎる、というのも理由なのだそうな。

 ところで、そもそも私が来訪した理由はDの音の問題解決のためだったので、その事情も詳細に話したところ、こんなご提案をいただいた。

テナージョイントの音孔の計測をしたところ、私の楽器のDの音孔は長さ35㎜内径5.3㎜で、竹田氏がこれまでに計測した他のピュヒナーの数値は内径が4.8㎜で、実に0.5㎜も大きい。ヘッケルのようにチューブが長い(この箇所の木部が肉厚)ければ、これくらい内径が大きくてもバランスが取れるが、短い場合は内径が大きいとバランスが取れずに上擦る傾向になるという。個体差なのか意図的なのか、この楽器だけ内径が大きい理由は分からないが、前ユーザーの方は問題無く吹いていらっしゃったということなので、ますます分からない。

しかしながら、音孔を何かしらで内径を小さく(4.8㎜)にできれば、問題は解決するのでは? ということで、音孔に直径5㎜程度のチューブを差し込んでみてはどうか、とのこと。実は、以前にもこの方法は他の技術者の方から教えていただいたことがあり試したこともあったのだが、そのときは、チューブ全体というより部分的に(奥半分くらい)で試していて、ある程度成果はあったが他の音に影響(響かない音が出る)があったため、このところやめていた。

今回は、竹田氏のお持ちのチューブを分けていただき、チューブの全長全体にはまるよう差し込んでみた。結果。あれ、いいんじゃない? ヤマハのPではどうだろう。あれ、いけるんじゃない? 響かなくなる音もない。解決しちゃったんじゃないの? という感じになったのだが、これは一時的なものかもしれないので、ちゃんと基礎練習とアンサンブルやオケの練習で試して確認してみようと思う。(追記・家に戻ってから試したところ、気をつけて吹けばどのボーカルでもいけるが、少し気を抜くと上擦る。竹田氏よりチューブを余分に頂いていたので、少し作り直して試すと多少改善される。もう少し色々と試してみたいので、チューブをネットで注文中。結果は後日にでも)

今回アトリエを訪問して、竹田氏から色々なお話を聞くことができ、楽器製作の裏話や海外からの注文も増えていること、他メーカーの事情など、気がつくと来訪してから試奏時間も含め3時間も経っていた。自身が楽器で苦労した経験をもとに、竹田氏が語る楽器製作への熱い想いは途切れることなく、誰もが吹きやすい楽器を誰もが入手しやすい価格で、をモットーに、多くのバスーン吹きのもとへ、これからバスーンを始めようと希望に胸をふくらませた若人たちへ、楽器を届け続けるのだろう。  
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