ホトケの顔も三度まで

ノンフィクション作家、探検家角幡唯介のブログ

最近読んだ本

2011年12月23日 10時21分30秒 | 書籍
ハチはなぜ大量死したのか (文春文庫)
ローワン・ジェイコブセン
文藝春秋


連載の執筆で忙しくて、ブログを書く余裕がない。最近読んだ本の中から、印象に残ったものをいくつか紹介する。

ローワン・ジェイコブセン『ハチはなぜ大量死したのか』
世界レベルで起きたミツバチの大量死の原因を、スリリングな筆致で迫ったノンフィクション。優れた探偵小説は云々……、といううんちくが何カ所かで書かれている通り、ダニ・携帯電話、農薬など、大量死を引き起こした容疑者が次々と登場し、優れたミステリーなみに全体の構成と文体が練られている。要するに読み始めたら止まらない。

ミツバチがこんなに農業に深く関与していることも知らなかった。たまたまミツバチは私たちの食料生産に深く関与した、いなくてはならない「家畜」なので大量死は社会問題としてクローズアップされたが、他にも同様に大量死している昆虫や虫はたくさんいるだろうという。最終的には私たちを取り巻くシステム全体がおかしなことになっていることに目を向けさせる。

代替医療のトリック
サイモン・シン、エツァート・エルンスト
新潮社


サイモン・シン、エツァート・エルンスト『代替医療のトリック』
『kotoba』編集長の田中さんに、面白いと紹介されて読んだ。鍼、カイロプラクティック、ホメオパシー、ハーブ療法という四つの代表的な代替医療について、臨床試験的な観点から本当に効果があるのかどうかを検証したもの。いずれも効果のほとんどはプラセボ効果で、医学的に見て症状は改善しないとしている。

なんということだ。私は鍼は医学的な見地から見て、効果があるものと思っていた。その昔、西荻窪の土木会社でアルバイトをしている時にぎっくり腰になって、社長が、よく効く鍼師がいるからとある鍼師のところに連れて行ってくれたことがあった。効果はてきめん、二、三日で歩けるようになり、一週間ほどで職場復帰できたのだが、あれはプラセボ効果だったのか! 基本的には自然治癒で寝ているだけでも治るらしい。そりゃそうだ。若かったんだから。

ぬるい毒
本谷有希子
新潮社



本谷有希子『ぬるい毒』
本谷さんは美しいので昔からファンである。でも本は読んだことなかった。
どこかの雑誌の編集部から、誰か対談したいひといませんか? と聞かれた時に、本谷さんと答えるため、自分の作品とテーマ的に何か共通点がないか探そうと思って読んでみた。

残念ながら、なかった。他の作品も読んでみよう。

透明人間の告白 上 (河出文庫)
H・F・セイント
河出書房新社


H・F・セイント『透明人間の告白』
本の雑誌が選ぶこの三十年で一番の本という帯に惹かれて買った。男なら誰でも小さい頃、透明人間になったら、あんなこと、こんなことと妄想したことがあるだろうが、この本はそういう本ではない。

現代(といっても80年代みたいだが)のアメリカ社会で透明人間として生きていくことがどれだけ大変か、ということが上下二巻にわたってたっぷりと語られる。あんなことや、こんなことは、ちょこっとだけする。

ちなみにこのブログを書くために、アマゾンのアファリエイトの検索ボックスに「透明人間」と打ち込んだら、エッチなDVDだとかアニメがずらりと並んだ。やっぱりそういうことなのね。なお、この著者は明らかに巨乳好きで、女性が登場するたび、しつこく胸について描写する。そこは非常に良い。


本の雑誌と言えば、今年の三冊に『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』『マザーズ』『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったか』の三冊を選んだ。いずれも新潮社だが、他意はない。

本の雑誌343号
クリエーター情報なし
本の雑誌社









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