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感想:『しゃばけ』

2009年09月25日 18時19分39秒 | 本と雑誌
しゃばけしゃばけ
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2001-12


日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。江戸時代を舞台としたミステリ色の強いファンタジー。シリーズの第1作。

主人公は病弱な大店の若旦那。とても身体が弱く、周囲からはとかく心配される。心配されすぎて出来ることもままならないが、実際すぐに寝込んでしまうので度が過ぎた心配も決して杞憂と呼べなかったりする。そんな主人公は妖たちにも囲まれて暮らしている。中でも力を持つ犬神・白沢は手代として店で働きながら主人公の世話もしている。
この二名、決して主人公の忠実な下僕ではない。本編中に何度も書かれているように、妖たちは人間の感覚とは少しズレている。この二名もそれが窺える。彼らにとって主人公さえ助かれば他の人間のことはどうでもよかったりする。他の妖たちのことも同様だ。
主人公の一太郎にしてみれば、信頼できるが一方で融通の利かない彼らの存在は時として鬱陶しかったりする。両親や店の者たちの過剰な愛情も重い負担に感じることもある。前半では彼の世間知らずな面や状況判断の悪さが気になったが、後半には真っ当な人間としての判断を見ることができた。

手代二名の活躍の場があまりなかったり、敵役に道理が感じられなかったりと、小説の完成度はあまり高くは感じなかった。キャラクターの個性も類稀とまでは言えないだろう。ストーリーの運びは悪くない。デビュー作だしもう少し読んでから判断すべきだろう。時代物としての世界観の構築は悪くないだけに、もう少しこなれてくれば楽しめる作品となるかもしれない。