胡蝶の失くし物―僕僕先生 価格:¥ 1,575(税込) 発売日:2009-03-19 |
僕僕と王弁の命を狙う暗殺者劉欣の登場。苗族の内部対立や面縛の道士とストーリー性がアップ。それが面白さに繋がらないところに難がある。
確かに僕僕の活躍の場面は増えた。王弁は微妙だが。物語も糸が絡み合い、それ自体は確かに面白くはなっている。ただその分、本来の僕僕と王弁とのやり取りの楽しさは減り、この作品らしさという意味では魅力が減じたと言えるだろう。
特に本書では劉欣の視点が非常に多い。新たな視点の導入によってこのパーティのユニークさを引き出そうという意図かもしれないが、成功しているとは言い難い。冒頭で彼は幼い皇子を殺害している。単純な因果応報を求めるものではないが、それがカタルシスに繋がることも確かだ。僕僕の優しすぎる性格と相容れがたい劉欣の罪をどう昇華するのか。
大きな物語よりも小さな日常に輝きを見せる作品だけにその良さが失われないように望む。