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『数学ガール』になぜ惹きつけられるのか

2011年05月20日 23時23分29秒 | 学問
主人公は、放課後の図書室や自宅でコツコツ数学を解くのが好きな男子高校生。同級生ながら彼よりも数学の高みを知るミルカさんや、数学を教えることとなった後輩のテトラちゃん。彼女たちとのやり取りを通して数学の問題に迫っていく。

第1作はオイラーを主体に母関数など、2作目はフェルマーの最終定理、3作目はゲーデルの不完全性定理、4作目は乱択アルゴリズムをメインに扱っている。
かなり易しい問題から徐々に核心へと導く展開は、本格推理小説のようでもある。テーマと関係のないような数学的エピソードがちゃんと本題へと繋がっていったりするあたりはまさにそんな感じだ。ただ、名探偵の謎解きのシーンに当たる部分は数学的にかなりの難易度になっている。

一般向けの新書などでは数式を一つ載せるたびに手に取る人が大きく減ると言われるとも聞くが、このシリーズは数式のオンパレードである。扱っている数学のテーマも決して易しいものではない。中盤くらいまでならば高校レベルの数学的知識でついていけるが、終盤は相当の専門的知識が必要である。

数学が分からないなりに楽しめるのは、小説部分があるお陰だろう。男性主人公の周りに美少女というハーレム構造でありモテすぎな感はあるが、将来への不安など地に足のついた悩みを抱えていたりで受け入れやすくなっている。

何よりもこのシリーズに惹きつけられるのは、主人公たちと一緒に問題を解いていく感覚を味わえるからだろう。終盤は難しくてついていけなくとも、それまでは頑張れば一緒に考えることが出来る。
例えばサイモン・シンの『フェルマーの最終定理 ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで』も非常に面白い作品だったが、あくまでも読み物として過去の出来事をなぞっていくだけだった。内井惣七の『うそとパラドックス――ゲーデル論理学への道』なども上手く書かれてはいたが、『数学ガール』の魅力には及ばないだろう。

数学に限ったことではないが、論理的に考えることは快感をもたらしてくれる。ついついロジックパズルを解くことに夢中になって時間の経つのを忘れることもよくある。数学は論理的厳密性において他の学問の追随を許さない。『数学ガール』を読むたびに数学の勉強をもっとしておけばと思う。そして、今からでも少しくらいは勉強できるだろうかと思ってしまう。

数学がもっと理解できれば、『数学ガール』をもっと楽しめるのに。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おお、続編こんなに出てたんですね。 (名無し)
2011-05-21 05:35:07
最初の一巻だけ読んで、続きはどうなるんだろうなと思ってました。
実は小説部との連合はあまり意識するほどではなかったんですが、興味を持たせる作りが巧いですよね。メディアミックスで漫画にもなったみたいですが、これについては(これも、と言うべきかもしれませんが)シンプルな原作の方が面白かったです。
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小説部分は、数学のポイントを押さえる上で必要に... (奇天)
2011-05-21 14:47:50
コミック版は試みとしては挑戦的だと思いましたが、やっぱり難しい感じですね。
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数学ガール読んでみたいんですが・・・、積んでる... (coboze)
2011-05-22 21:15:34
ポアンカレ予想も文庫版出たんですよね・・・、素数の音楽も進展しませんかね?w
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数式なんて見るのもイヤ!って人じゃなければ、楽... (奇天)
2011-05-22 22:09:42
ポアンカレ予想はさっそく予約してみましたがw
難しそうなので読めるかどうかは分かりませんが^^;
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