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懐ゲーレビュー『サ・ガ シリーズ』(スクウェア)

2007年03月15日 21時59分03秒 | 懐ゲー
スクウェアのサ・ガシリーズは、ゲームボーイ用RPGソフト『魔界塔士Sa・Ga』から始まる。ゲームボーイで『Sa・Ga2 秘宝伝説』『時空の覇者 Sa・Ga3』と続き、好評を博した。スーパーファミコンに舞台を移して、シリーズ代表作『ロマンシング サ・ガ』を3作発売した。プレイステーションでは『サガ フロンティア』を2作、PS2で『アンリミテッド:サガ』とリメイク作である『ロマンシング サガ -ミンストレルソング』を世に出した。また、ワンダースワンカラーで『魔界塔士Sa・Ga』と『ロマンシング サ・ガ』の2作品がリメイクされている。
これがサ・ガシリーズの全てである。新作をカウントすると全部で9作。『時空の覇者 Sa・Ga3』を除いて河津秋敏氏のチームが開発している。

GB時代のサ・ガシリーズは、独自の成長システムに特徴はあるもののシンプルな作りのRPGで人気タイトルとなった。私が携帯ゲームを受け付けない体質のため、ほとんどプレイしていないのでこの三部作については割愛する。
また、『アンリミテッド:サガ』も未プレイなので割愛。批判の多いゲームとして知られているが。

残る5作のうち『サガ フロンティア』はあまりプレイしていない。短いシナリオを集めた短編集的な作品で、物語を多面的に見るという点ではこのシリーズらしいものだが、その都度一から育て直す気力がなかった。
それ以外の4作品はそれぞれかなりの時間プレイした。ただクリアしたのは『ロマンシング サ・ガ』のみで、他は何度かクリア前まで行ったもののクリアはしていない。
ここからはその4作品を一つずつ見てみよう。

☆ロマンシング サ・ガ
SFC版の他にワンダースワン版(この作品のためだけに本体も購入した)、PS2版もプレイ。
期待の大作として発売されたが、当時の評価は惨憺たるものだった。致命的なバグの存在もだが、それ以上に何をしていいか分からないというプレイヤーが続出した。延々と戦闘を繰り返し、気付いたらほとんどのイベントが終了していたといった具合だ。
戦闘回数によって敵が成長し、時間が経過する。特に逃げることを繰り返すとキャラクターは成長せず敵だけが強くなってどうにもできない状況に陥ってしまう。また、戦闘ではお金が稼ぎにくく、ダンジョンの宝箱が大事な収入源なのに、持てるお金の上限が低くストレスが貯まりやすい仕様でもあった。

この欠点だらけのゲームが、しかし熱烈な支持も受けた。それは今までのRPGになかったものが詰め込まれていたからだ。
最も特徴的だったのが世界とプレイヤーキャラクター(PC)との関わりだ。通常のRPGはPC中心に世界が回る。事件はPCが来て初めて起こる。世界はPCのためだけに存在しているのだ。だが、この作品ではPCが関わることなく終わるイベントが発生する。容量の関係でイベントが省かれたりした影響もあるだろうが、世界の中でPCが関われないことがたくさんある。物語の中で最も重要なディステニィストーンはいくつか名前だけで決して手に入らないし、アルベルトと生き別れの姉ディアナとを引き合わせることもできない。これらは一見マイナスのように見えて、実は世界の広がりや深さへの優れた演出効果となった。
それまでのRPGなどに見られる説明的なセリフもごくわずかで、プレイヤーはイベントなどの端々でわずかに語られる内容から少しずつ世界の全貌を知る。主人公は8人の中から選択できるが、選んだ主人公によるイベント時のセリフの違いから彼らのキャラクター性が垣間見られ、こうした細かな演出の積み重ねでキャラクターを描き切った。
有名なイベントとして、ラスボス前の強化がある。ラスボス前に強力なアイテムを手に入れることができるが、それはそれまでのPCの行いに応じて3ヶ所のイベントが発生する。通常のプレイではそのうちの1ヶ所となるが、頑張ればこの3ヶ所全てを回ることができる。戦闘回数によるイベントの調整や「善行」ポイントの調整によってそれが可能になるが、そうした発見はプレイヤーの試行錯誤から生まれた。

サ・ガシリーズを楽しむためには受身のプレイではなく、どんなプレイをしたいのかを考える能動的なプレイが必要だ。誰を仲間にするのか、どのイベントを見たいのか、どんな戦い方をするのか、そうしたプレイそのものがこのゲームの楽しみなのだ。故に、クリアの価値は相対的に低くなる。クリアすることが目的ではない、そう、まるでMMORPGのように。

☆ロマンシング サ・ガ2
1作目とはガラリと変わった2作目。サ・ガシリーズの魅力のひとつ、技の「閃き」が登場した。
キャラクター性をかなり排除し、皇帝という役割が前面に押し出された。イベントなどによって、皇帝は別のキャラクターというよりもジョブに引き継がれ、物語は展開していく。イベントの多様性や敵の魅力では前作を上回っていたが、PCへの感情移入に難があったのが残念なところ(システム上、仕方ないが)。
RPGとしてかなり異色な作品だけに根強いファンも多い。アイテムコンプリートを狙うとき、ボス系の敵のドロップしか入手方法がなかったりする点は不満が残る。

☆ロマンシング サ・ガ3
1作目をベースにした作品。ただ、いろんな要素を詰め込みすぎたこととキャラクターの魅力に乏しいことが残念だ。
主人公は8人から選べ、主人公ごとの差別化がかなり計られている。それがキャラクターの個性に繋がらなかった。マスコンバットやトレードイベント、戦闘でもコマンダーモードなどいろんな要素が詰め込まれているが、作品と有機的に絡まずに終わった感が強い。ひとつひとつは面白いシステムなんだが。
サ・ガシリーズを世界を描く作品群と規定した場合、それに最も失敗した作品と言わざるを得ない。だが、個々の要素は非常に面白い。自分なりの遊び方を見出すという意味では十分に楽しめる作品だろう。

☆サガ フロンティア2
シナリオの自由度は低い。キャラクターの選別もほとんどできない。ギュスターヴ編とナイツ編を交互に進めていくのが常道だが、この2編の関連性が薄く、ギュスターヴ編がほぼシナリオ進行のみでナイツ編が戦闘中心となっているためかなり違和感の残る作りになってしまっている。
サ・ガシリーズの多様な視点から世界を描くという特徴を、政治の視点と庶民の視点の両方に特化させたのがこの作品だが、それ自体はうまく機能したとは言えない。ただそれぞれの物語は非常に上手く描けている。この二つの物語を上手く連関させて描ければ傑作となっていただろう。

ギュスターヴ編は、以前にも語ったが、アニマと呼ばれる魔法が誰でも使える時代に王太子として生まれながらアニマを持たないために様々な迫害を受ける彼の生涯を描いた。ギュスターヴや彼の周囲のキャラクター、世界の描き方は、ちょっとしたセリフの積み重ねで見事に築き上げたゲーム史上でも傑作の部類のものだ。ただギュスターヴ編はゲーム性に乏しく、ゲームとして表現された物語という評価はしにくい。
一方、ナイツ偏は、ウィル・ナイツとエッグと呼ばれる謎のクヴェルとの戦いを描いた。ナイツ家の物語として、また彼らと関わり合った様々なキャラクターたちの物語として非常に楽しめる作品となっている。

武器など消耗品が多いことや、持てるアイテムの数が少なめでその管理が大変だったり、主人公や仲間のキャラクターがどんどん入れ替わるため手間が掛かるという欠点はある。それでも戦闘はよくできている。難易度がやや高めで攻略本がないと辛いとは思うが、難易度とは無縁のギュスターヴ編のためだけにプレイする価値は十分あると思っている(終盤は難易度が高くなるが、そこまでプレイしなくていい)。

☆ロマンシング サガ -ミンストレルソング
番外。過去にインプレッション記事も書いたが、シリーズの一作品として語る。
『ロマンシング サ・ガ』のリメイクだが、キャラデザインや戦闘システムなどが大幅に変更された。またイベントもかなり追加されている。
キャラデザインは批判も多いが、慣れると結構愛着が湧く。戦闘システムはこれまでの集大成といった感でさすがに完成度は高い。様々な要素が追加され、遊びやすくなっているが、その分、失われてしまったものもある。
世界観はうまく引き継がれているが、ディスティニィストーンが全部集められたり、アルベルトとディアナが同じパーティに入れたりと出来なかったことが出来るようになってしまった(後者は裏技的なものだが)。その分、世界が小さくなってしまったように感じる。


スクウェアにはFFという看板タイトルがある。シナリオ的にはオーソドックスだが、常に冒険的な試みを忘れないシリーズだ。サ・ガシリーズは非FF的なもの、対照的な存在として成立していた。レベル制を取らず、より戦略的な戦闘システム、LPの存在、マルチイベント、主人公の選択などシステム面で特徴的だが、それ以上にシナリオの描き方に違いがあった。
FFが他の多くのRPG同様芯をしっかりと描いてそこから世界や物語を紡ぎ出すのに対して、サ・ガは細部を積み重ねて描いている。おそらく河津秋敏の個性の発露だろう。
似たような特徴のある松野泰己が作り、河津が引き継いだFFXIIにそうした特徴が全くと言っていいほど見えないのは皮肉だが。


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