ICO -霧の城- 価格:¥ 1,890(税込) 発売日:2004-06-16 |
またゲームをやりたいと思った。
2001年12月に発売されたゲームのノヴェライズ。シンプルながら独特の雰囲気を持ったアクションアドベンチャーだった。思わずサントラ盤を買ってしまったほど。ゲーム本体を売ってしまったことを悔やんでいる。
それを宮部みゆきがノヴェライズした。ゲームは設定も削ぎ落とされていて想像力を掻き立てる作りとなっていた。
ハードカバーで500ページを越す大著に仕上げた。
確かに、あの「空気」は伝わってくる。
城の不気味なほどの静けさ。ヨルダを呼ぶイコの声。謎に満ち溢れた世界を一歩一歩踏みしめるように物語は綴られている。
しかし、読んでいて面白いとは思わなかった。ゲームで味わったドキドキとする気持ちは小説の中にはなかった。メディアの差は仕方がないけれど、心を惹き付けるような物語だったとは言えない。
確かに、あの「空気」は描かれている。
霧の城の静寂。迷いながらも少しずつ前へと進んでいく感覚。ヨルダの儚げな様子とイコの勇敢な姿。手を取り合って走る情景は思い浮かぶ。
それを文章で見事に描き上げた点は賞賛に値するが、小説として本来最も重視すべき物語性については物足りなさしか感じなかった。過去の残滓を織り交ぜながら描く手法は特に目新しいものではない。設定や世界観はゲームではほとんど触れられていなかったが、これもまた独創的とは言い難い。
丁寧に描かれた物語ではあるが、心を沸き立たせたり、或いは心に深く沈み込ませるような何かは感じられなかった。「空気」は伝わった。けれども、それ以上の何かがない。
以前、アニメ化された『ブレイブ・ストーリー』をTVで見たけれど、途中で投げ出した。原作のせいかどうかは分からないが、見るに堪えなかった。ファンタジー作家としての宮部みゆきに対する疑念さえ浮かぶ。多芸な作家ではあるが、ジャンルごとに相性もあるのだろう。(☆☆☆)
ICO PlayStation 2 the Best 価格:¥ 1,800(税込) 発売日:2004-08-05 |
これまでに読んだ宮部みゆきの本の感想。(☆は評価/最大☆10個)
『蒲生邸事件』(☆☆)
『火車』(☆☆☆☆☆☆)