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感想:『蒼穹のカルマ 1』

2009年12月05日 00時33分38秒 | 本と雑誌
蒼穹のカルマ1 (富士見ファンタジア文庫)蒼穹のカルマ1 (富士見ファンタジア文庫)
価格:¥ 609(税込)
発売日:2009-01-20


読んでいて「ハチャハチャ」という言葉を連想した。

『このライトノベルがすごい!2010』10位。新作としては1位を記録した作品。橘公司のデビュー作。

空獣と呼ばれる魔物達が襲い来る世界。大地に嫌われた怪物とも呼ばれるそれらは、死しても、その血の一滴さえも大地に落ちない。そんな空獣から人を守りし騎士たち。天駆機関を駆け、空獣に対峙する。
そんな騎士たちの中でも屈指の存在、鉄仮面の美女鷹崎駆真。彼女が主人公である。

本書を読み終えて解説に目を通したら、美少女天才魔道士『リナ』の系譜を受け継ぐ最強ヒロインの物語と書かれていて、なるほどと思った。確かに雰囲気は少し似通っているかもしれない。ただし、「スレイヤーズ」本編ではなく、「すぺしゃる」の方にだが。

本書は主人公駆真がたった一つのささやかな、しかし、彼女にとっては何よりも大切な願いを叶えるために、艱難辛苦を乗り越える物語である。
例え、その願いが、最愛の姪在紗の授業参観に出席するということでも。そして、彼女を待ち受けている試練が、上司による出撃命令のみならず、魔王退治や古代文明の遺産や神の試練などなどであっても。
彼女はそれら全てを飛び越えて目的のために邁進する。その健気な傍若無人振りが本書の全てである。

キレはまずまずといった感じだが、テンポは悪くない。展開の奇抜さはなかなかのもの。ややお約束通りと感じさせる点があって気に入らないが、それでも全体としてはよく出来ている。無茶な展開だけに、それをまとめるにはかなりの力技が必要となる。それをやってのけたのだから、たいしたものだ。この勢いを持続できるかどうかは心配だが、ランキング10位という数字は伊達でないことを期待しよう。(☆☆☆☆☆)

ちなみに、「ハチャハチャ」とは横田順彌らが使った言葉で、ナンセンスギャグやシュールなギャグがごった煮のようになったアップテンポのSF作品を指していた。そのノリが本書でも感じることができた。


感想:『イヴは夜明けに微笑んで―黄昏色の詠使い』

2009年12月05日 00時29分33秒 | 本と雑誌
イヴは夜明けに微笑んで―黄昏色の詠使い (富士見ファンタジア文庫)イヴは夜明けに微笑んで―黄昏色の詠使い (富士見ファンタジア文庫)
価格:¥ 609(税込)
発売日:2007-01


著者のデビュー作にして、「黄昏色の詠使い」シリーズ第1巻。『このライトノベルがすごい!2010』において6位に輝いたシリーズ。

召喚魔法である名詠。五色に分類され、それぞれが独自の論理によって構成されるという。その五色の外、夜色名詠を目指す少女と、五色全て、虹色名詠を目指す少年との出逢い。そんなプロローグから始まる物語は、荒削りながらも繊細な物語として紡がれていく。
キャラクターは個性的で単純化されておらず、ちゃんとエピソードで性格を表現している。名詠の設定はかなり面白い。ただ学園の設定など世界観に関する点においてはやや安直さも感じられる。
ストーリー自体はかなりシンプル。デビュー作だけに分かりやすくまとまっている。問題は演出や構成で、かなりバラバラな感じを受けた。特に終盤の戦闘シーンでは、視点があちらこちらに移動するが、散漫な印象になってしまった。盛り上がる場面はしっかりと描かなければ読み手には十分に伝わらない。
一応作品の主人公はクルーエルとなるが、彼女の悩みが共感できないうちに解決していく展開になってしまっている。主要キャラクターはどれも上手く描かれているが、それぞれの思いを見せようとしたがためにこれも散漫に感じられてしまった。

それら欠点は目立つが、それでも次も読みたいと思わせるだけの魅力は兼ね備えている。特に、名詠のシーンのケレンや、その論理の複雑そうな雰囲気は私の好みに合っている。魔法好きなら楽しめそうなシリーズかもしれない。(☆☆☆☆)