蒼穹のカルマ1 (富士見ファンタジア文庫) 価格:¥ 609(税込) 発売日:2009-01-20 |
読んでいて「ハチャハチャ」という言葉を連想した。
『このライトノベルがすごい!2010』10位。新作としては1位を記録した作品。橘公司のデビュー作。
空獣と呼ばれる魔物達が襲い来る世界。大地に嫌われた怪物とも呼ばれるそれらは、死しても、その血の一滴さえも大地に落ちない。そんな空獣から人を守りし騎士たち。天駆機関を駆け、空獣に対峙する。
そんな騎士たちの中でも屈指の存在、鉄仮面の美女鷹崎駆真。彼女が主人公である。
本書を読み終えて解説に目を通したら、美少女天才魔道士『リナ』の系譜を受け継ぐ最強ヒロインの物語と書かれていて、なるほどと思った。確かに雰囲気は少し似通っているかもしれない。ただし、「スレイヤーズ」本編ではなく、「すぺしゃる」の方にだが。
本書は主人公駆真がたった一つのささやかな、しかし、彼女にとっては何よりも大切な願いを叶えるために、艱難辛苦を乗り越える物語である。
例え、その願いが、最愛の姪在紗の授業参観に出席するということでも。そして、彼女を待ち受けている試練が、上司による出撃命令のみならず、魔王退治や古代文明の遺産や神の試練などなどであっても。
彼女はそれら全てを飛び越えて目的のために邁進する。その健気な傍若無人振りが本書の全てである。
キレはまずまずといった感じだが、テンポは悪くない。展開の奇抜さはなかなかのもの。ややお約束通りと感じさせる点があって気に入らないが、それでも全体としてはよく出来ている。無茶な展開だけに、それをまとめるにはかなりの力技が必要となる。それをやってのけたのだから、たいしたものだ。この勢いを持続できるかどうかは心配だが、ランキング10位という数字は伊達でないことを期待しよう。(☆☆☆☆☆)
ちなみに、「ハチャハチャ」とは横田順彌らが使った言葉で、ナンセンスギャグやシュールなギャグがごった煮のようになったアップテンポのSF作品を指していた。そのノリが本書でも感じることができた。