パパンドレウが内閣の信任を勝ち得たようだ。
彼にはとかく内外から批判が多く、特に国内で評判が悪い。
しかし私は彼はかなり有能で勇気も決断力もあると思う。
NewsWeek(日本語、Web版⇒
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2011/10/post-2314.php)によれば、彼は軍がクーデターを起こして父親の政権が転覆された際、銃口を頭につきつけられた経験があるという。
軍人は父・パパンドレウに「出てこい。さもないと息子が死ぬぞ」と脅したのである。
その後アメリカ・イギリスなどで生活し教育を受けた彼が、今再び祖国ギリシャのかじ取りを行っている。
彼が首相就任後やったことをあげてみよう。
①ギリシャの財政赤字に関する正確な情報開示。これが今回のユーロ圏金融危機に火を付けた。同時に財政赤字の拡大と数字のごまかしにアメリカの金融大手が介在していたことも明らかになった。
②ギリシャの財政再建のための国際的な交渉。
③財政再建のための緊縮財政案の成立。
④EUがまとめた金融危機突破のための枠組みを受け入れるため、国民に国民投票を提案。
内外で批判と反対のあらしとなったが、結果的にはEU案に反対していた野党の賛成を獲得し、国民投票も不要となり、EUによる解決の枠組みをギリシャ国民に受け入れさせることとなった。
つまり彼はギリシャをまともな国にするために真に必要なことを、複雑な国際的駆け引きを見事に展開して実現してきた、ということなのではないだろうか。
私はパパンドレウが退陣する必要はないと思う。
国民投票でギリシャの野党、国民、EUの指導者、否世界中が脅かされたのは事実だ。。
しかし国民に信を問う必要があるのではないかといったのは正論だった。
私は彼は大いに評価されるべき政治家だと思う。
しかしあまりにも祖国ギリシャの既得権益層―それは税金を払ってこなったかエリート層のことだが―には厳しい政治家なのだろう。
彼の姿は私には鳩山・菅に重なる。
彼らも日本のエリート・既得権益層の本当の領域に手を突っ込みかけたために排除されたのである。
それは外交と原発権益であった。
鳩山政権なら、そもそもTPPなど話題にも上がらなかっただろう。
戦前の日本を亡国に導いたのがエリート・既得権益層としての軍と財界であったように、歴史に学ばない日本国民は、再び右翼・保守思想と対米従属に凝り固まった、官僚と財界という既得権益層によって亡国に向かうことを自ら選ぼうとしつつある。
これほど大きな間違いはないのではないだろうか。