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“西北青年団”再建の波紋/ハンギョレより

2014-09-30 15:51:54 | 国際
「「西北青年団再建準備委員会」を自任する極右団体が、ソウル広場に設置された“黄色いリボン”を撤去しようとしていた事実が知らされ、彼らが再建しようとしている“西北青年会”(略称 西青)に対する関心が高まっている。 西北青年会とはどんな組織で、このような極右団体に対処するためにはどうすればいいのだろうか?


28日午後、ソウル市庁前広場で西北青年団再建準備委員会会員たちがセウォル号犠牲者追慕黄色いリボン整理パフォーマンスに先立ち、記者会見をしている。 西北青年団再建準備委員会会員たちは、セウォル号遺族たちがこれ以上国論分裂の中心にいてはならないと主張し、ソウル市庁前広場にある黄色いリボンを整理し保管箱に入れソウル市に譲渡し永久保存することを要求した。 2014.09.28. ニューシス
■ 西北青年会はいつ、なぜ結成されたか?

 西北青年会は解放後に38度線を越えた西北地方の青年たちを中心に、1946年11月30日にソウルで結成された極右反共団体だ。 彼らは主に地主、キリスト教系要人、民族主義者や一部親日派など、北朝鮮の弾圧を避けて逃亡してきた若者たちだった。 彼らは綱領で、祖国の完全自主独立の戦取、均等社会の建設、世界平和への貢献などを前面に掲げた。 だが、彼らが主にしたことは、左翼勢力に対する“白色テロ”だった。

 彼らは1947年の「三・一節」記念式を別々に行った左右両翼が、市街行進中に南大門で衝突した事件をはじめ、釜山劇場事件、朝鮮民主愛国青年同盟事務室占領事件、チョン・スボク検事暗殺事件などに関与した。

 藤井たけし 成均館大学東アジア研究院研究室長は『韓国日報』とのインタビューで「西北青年会が正式名称だが、西北青年団という名称を使ったことを見れば、組織に対する正確な理解をせずに対共闘争という漠然としたイメージだけがあるようだ」として「セウォル号遺族をひっ捕えなければならないアカと規定して、反共フレームを露骨化するだろう」と話した。

■ 安斗煕も西北青年団の幹部だった

 キム・サムン元独立記念館長は今年6月26日、白凡・金九(キム・グ)暗殺65周年に合わせて『安斗煕(アン・ドゥヒ)、その罪をどう見るか』(チェクポセ刊)を出した。 キム元館長は、安斗煕の人生と行跡を追い、金九暗殺の真実を追跡したが、その本によれば安斗煕は西北青年会幹部であった。

<キム元館長が整理した安斗煕の履歴はこうだ。 『1917年3月、新義州(シンウィジュ)から40里余り離れた平安北道龍川(ヨンチョン)郡の山奥の村で生まれた。 三菱など日帝企業らの製品を取り扱い金を儲け、新義州の豪商になった彼の父親は土地測量技師の資格を取った後、精米業に手を出してコメの軍納まで行い平安道で指折りの富豪になった。 父親のおかげで商業学校を出て、満州そして北京を放浪し放蕩な歳月を送った。その後、金融組合の書記も務めた。日本に留学したが、解放と共に進駐したソ連軍が財産を没収するや47年に単身で38度線を越え、北側出身の反共右派組織である西北青年会に入り、鍾路(チョンノ)支部総務にまで上がる。 陸軍士官学校8期生として入隊し、李承晩の私的組織と言われる親日・親米派の巣窟‘8・8クラブ’の精鋭要員に抜擢され、少尉任官の3か月余後に白凡金九を暗殺する。』>

(『ハンギョレ』 2014年7月22日付「白凡を殺した安斗煕は李承晩の下手人に過ぎない」 )


写真出処:済州の声
■ 済州4・3抗争時に住民虐殺

 済州のインターネット新聞である『済州の声』に連載されている「キム・グァンフの4・3コラム」を見ると、西北青年会が“4・3抗争”で市民虐殺の先頭に立った場面が出てくる。「済州4・3事件真相究明および犠牲者の名誉回復に関する特別法(4・3特別法)」によれば、済州4・3事件は1947年3月1日を起点にし、1948年4月3日に発生した騒擾事態および1954年9月21日まで済州島で発生した武力衝突と鎮圧過程で住民たちが犠牲になった事件をいう。

<済州4・3抗争の勃発と展開過程で、西北青年会または西北青年団(西青)は“人間が果たしてどこまで残酷になりえるのか”を見せる。 1949年初当時、国防部長官シン・ソンモは「西北青年会員ら内地の人々が警察・商人・官吏などになり済州道民を困らせたので4・3暴動が起きたのだと思う」と話した。

 西青は「我々は北側で共産党に追われてきた。アカは完全に種を絶やさなければならない」とし、済州島に入ってきた。 米軍政・李承晩などの執権勢力は“済州島虐殺”の最先鋒に西青を立てた。 彼らはソ連軍政によって迫害を受け、38度線を越えた地主勢力であり、そのトラウマゆえに反共主義者に変わった。 要するに政府の代わりに手を血に染める右派民兵隊であった。 軍と政府の高位職を掌握し、大邱(テグ)労働者ストライキ、保導連盟事件、居昌(コチャン)良民虐殺事件、済州4・3事件に介入して、20万~40万人以上の左派と疑われる民間人と非キリスト教徒を虐殺した。>

(『済州の声』2014年05月14日付「キム・グァンフの4・3コラム‐23‐西北青年団、済州島虐殺の最先鋒に立つ」 )

■ 他国での“白色テロ”は?

 西北青年会の一連のテロは“白色テロ”(white terror)と呼ばれる。 白色テロは、政治的目的達成のために暗殺・破壊などを手段とするもので、左派による赤色テロ(Red Terror)と対極にある。

 白色を使うのは、フランス革命中の1795年に王党派が革命派に報復した事件に由来する。 白色はフランス王国の象徴だったユリの色を意味する。 フランスで白色と言えば、王権や王党派を意味する色だった。

 現代でも白色テロは終わっていない。 アメリカの悪名高い人種差別テロ団体であるKKK団が現代の代表的な白色テロ団体だ。 有色人を相手に暴力を行使するドイツのネオナチなども同じだ。

 日本の「在日特権を許さない市民の会」(在特会)も白色テロ団体に挙げられる。 最近、在特会の嫌悪集会で日本東京にある“韓流通り”と呼ばれる新大久保の代表的韓食堂である「大使館」が先月15日を最後に営業を中断する事態も起きている。

<大使館が店を閉めた原因は、2010年頃から本格化した在日特権を許さない市民の会(在特会)等の反韓集会(ヘイト スピーチ)のためだ。 在特会らは東京の韓流通りと呼ばれる新大久保や秋葉原などを中心に2012年夏頃から反韓集会を始めた。 しかし、業者に最大の被害を与えたのは、集会が終わった後に行われたいわゆる“散歩”であった。 在特会会員らが集会後に散歩という名目で、韓流業者の店を回って悪口をいい看板などを足でけるなどして暴れまわったためだ。>

(『ハンギョレ』 2014年9月18日付「在特会嫌悪集会で消えゆく東京の韓流通り」)


昨年3月31日、韓流通りと呼ばれる日本東京の新大久保路上で、日本の右翼団体会員らがプラカードなどを持ってデモを行っている。 チョン・ナムグ記者//ハンギョレ新聞社
■ 彼らの狂気にどう対処すべきなのか

 韓国の「日刊ベスト貯蔵所」(イルベ)は、日本の在特会と双子のように似ている。 これまでオンライン空間だけで活動していた彼らが、最近はオフライン空間にまで出てきている。

 イルベをはじめとする極右団体が白色テロを行う理由は何だろうか?  ハン・グィヨン ハンギョレ社会政策研究所研究委員は「強者と権威主義に対する盲目的服従と、弱者に対する暴力性という側面でイルベ現象はファシズムと非常によく似ている」として「 “認められたい欲求”や “帰属感および親密感に対する強い渇望”がイルベの主要動機」と診断した。

<それでは、なぜ彼らはイルベをするのか?  結局、自分が受けた傷のためだろう。 強者と権威主義に対する盲目的服従と、弱者に対する暴力性という側面で、イルベ現象はファシズムと非常によく似ている。 エーリヒ・フロムはファシズムについて、孤独と無力感に耐えられない個人が強者に逃避するとし、ヴィルヘルム・ライヒは弱者には君臨しようとし強者には屈従しようとする大衆の権威主義的性格構造と説明したことがある。 20世紀初期、資本主義の独占化過程でドイツの中間階級大衆は没落して行き、彼らは傷ついた自尊心を強者に対する無限の服従と弱者に対する荒々しい暴力で補償を受けようとした。 弱者に対する暴力は傷ついた自尊心を治癒し、自身の存在を認められようとするための行動だったということだ。 犯罪心理学者ピョ・チャンウォン博士も“認められたい欲求’“や“帰属感および親密感に対する強い渇望“がイルベの主な動機だと説明したことがある。

 韓国よりネット右翼事情が深刻な日本の状況は、イルベ現象を理解する上で示唆的だ。 日本のルポ作家安田浩一が書いた『ネットと愛国』によれば、在日特権を許さない市民の会(在特会)等の日本ネット右翼の存在理由もやはり認定欲望にある。「ぶっちゃけ、僕らって親からも世間からもたいして評価されていないじゃないですか。ところが活動する時、同志たちは必ず私を認めてくれました」という在特会会員の言葉がこれをよく示している。 やはり認定欲望が重要なのだ。 人間はただ生物学的・経済的存在ではない。 本当にお金さえあれば生きていけるのではない。 誰かから認められているという自尊感は生存の必須要素だ。>

(『ハンギョレ21』 2013年6月10日「イルベ、傷ついた彼らの認定欲望」)

 それでは、彼らの狂気にどのように対処しなければならないのだろうか?  憎しみを溶かすのに魔法のような治療剤はない。 代わりに専門家たちは憎しみの原因と結果を先ず直視しろと言う。

<憎しみを溶かすのに魔法のような治療剤はない。憎しみの原因と結果を直視することが先だということが共通した意見だ。「一番最初にすべき事は、憎しみ、憎しみの対象である加害者、そして憎しみの結果に対して責任感を持つことだ。 私たちが憎しみの結果を認め、受け入れることができるならば、私たちは憎しみに対抗してそれをなくすことができる」。『私たちはなぜ敵になったのだろうか』の著者ロバート・スタンバーグはこのように書いた。 パク・ヘグァン教授は次のように提案した。「イルベのような若い世代は、特に5・18を他の人種、他の領土での事件のように受けとめています。 私たちの歴史の中で、私たちの領土の中で起きたことだということを喚起できる社会的反省が絶対に必要だ。歴史教育だけでなく、総体的に社会が若い世代に正義を教育する必要があります」。結局、憎しみという原始的感情を調節するのは、正義と合理という高等神経系の思考を通じてのみ可能だろう。 人間はその為に進化したのではないだろうか。>

(『ハンギョレ21」 2013年3月10日「嫌悪に満ちた君の言葉、それが人種主義だ」)

チョン・ヒョクチュン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2014/09/29 16:30
http://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/657339.html 訳J.S(5047字)」

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/18387.html

9月29日(月)のつぶやき

2014-09-30 04:14:08 | EU

米議会調査局、安倍政権の河野談話検証が米国の利益を侵害 ln.is/japan.hani.co.…


NHKが今週報道した「子どもの貧困」と「老後破産」は、身につまされる問題。安倍晋三がどんなに外ヅラよくふるまっても、もはや日本は先進国などではない。軍事や原発、リニアに使う金があるのなら、こっちを先に何とかしろよ。カッコウつけてんじゃないよ全く!

tokiさんがリツイート | RT

「日本の内閣が在日韓国人を標的にするネオナチ疑惑に揺れている」とする英インディペンデント紙の記事。安倍晋三、山谷えり子、高市早苗、稲田朋美ら各氏を始めとする自民党政権と、在特会、日本会議、靖国神社など右翼団体とのつながりを書いている。ind.pn/1vomGsR

tokiさんがリツイート | RT

スライドショー:香港の民主派デモ、返還以来最悪の混乱状態に bit.ly/ZjEZEG pic.twitter.com/gLUg804Hfi

tokiさんがリツイート | RT

電力買い上げ制度によって、売電側が増えたため、買い取る側の電力会社が送電能力を口実に買い取りを制限しているという。これは本末転倒だろう。送電網を強化すれば済むこと。できないならとっとと発送を分離して電力会社から切り離せばいい。


山谷えり子大臣ポロリ 「在特会のHPを引用したまで」 ln.is/tanakaryusaku.… @tanakaryusakuさんから


【社説】不幸な中国のエリート、不明瞭な政治体制の産物 ln.is/on.wsj.com/Xa3… @WSJJapanさんから


中国の汚職摘発に敏腕振るう王岐山氏、調査は容赦なし/WSJより goo.gl/hyZ2dN


書泉グランデが「嫌韓」本PRで炎上、ツイート削除・謝罪へ(ねとらぼ) - Y!ニュース headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140929-…

PRできないような本をなぜ売るのか。金になるなら何でも売ります、というのは人権感覚の欠如の表れ。


★記事UP 9/28 岩上安身による孫崎享氏インタビューiwj.co.jp/wj/open/archiv… 9/28 【PPV】有料配信された「クロストークカフェ vol.11 」と配信時間が重なったため9/30いっぱいまでアーカイブをフルオープンいたします@iwakamiyasumi

tokiさんがリツイート | RT

孫崎享氏「(不正が行われた米国大統領選挙でゴアが勝っていれば)私は9・11という問題も多分起こらなかったんではないか イラク戦争アフガニスタン戦争も起こらなかった そのように思っているわけです」youtube.com/watch?v=EU0oZ8…@tokushimapress

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都市大学長北澤宏一さんの訃報が届いた。福島原発事故に関して、民間事故調査委員会を取り纏められ、とりわけ逃げ遅れた災害弱者の皆さんの不幸な死を丹念に聞き取り報告しておられた。福島原発事故で死者はいないと嘘ぶく政治家は、北澤さんの被害者によりそうような調査結果を知るべきである。

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【Ch6】ただ今、Ch6で「国民安保法制懇 記者会見」を中継中です。Ch6→( #iwakamiyasumi6 live at bit.ly/1hgIzA9 )

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九電は受け入れ制限の理由を、これまで申請された太陽光と風力発電(出力計1260万kW)を全て受け入れると、春や秋の最大需要約800万kWを上回り、需給バランスが崩れると停電しかねないと主張。北海道電力や沖縄電力も同じ主張。電力が足りないから原発再稼働じゃなかったの?話が支離滅裂。

tokiさんがリツイート | RT

米国議会調査局「河野談話検証」を批判 | Joongang Ilbo | 中央日報 ln.is/japanese.joins…



中国の汚職摘発に敏腕振るう王岐山氏、調査は容赦なし/WSJより

2014-09-29 15:59:13 | 国際
「【南昌(中国)】中国の汚職摘発機関、中央規律検査委員会の王岐山書記(66)は昨年夏、川が流れる南部の都市、南昌に調査団を送り込んだ。王氏のメッセージは明確で、政府のウェブサイトに掲載された文書によると、調査団は地方政府の役人に「衝撃と畏敬」を吹き込むとされた。

 王氏が派遣した調査官らは地元メディアに対し、一団が政府の保有するホテルに宿泊していると話した。数日後、地方の役人が行った悪行について陳情しようと、ホテルの前には数百人の住民が列をなした。事情に詳しい関係者によると、インターネットからも住民の不満が殺到したという。

 飲食店を経営するYang Pengさんは、地方政府の要人と敵対する人物と交流を持っただけで収監され、拷問を受けたと調査官に告げた。この役人は製鋼所を売却する代わりにリベートを受け取ったと疑われている。

 Pengさんはウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、「あれは人生の中で地獄のような7カ月間だった」と話した。1年後、その役人は解雇され、収賄の疑いで王氏の調査団から取り調べを受けている。

 中国共産党は1978年の改革開放以降で最大規模となる腐敗撲滅運動に取り組んでいる。改革開放で数百万人の中国人が貧困から脱出した半面、共産党員に政治コネクションを通じた富の蓄積を許す結果となった。2012年後半から始まった腐敗撲滅運動を取り仕切るのは、7人からなる共産党の最高意思決定機関、中央政治局常務委員会の委員でもある王氏だ。王氏は習近平国家主席と親交が深く、文化大革命では陝西省延安市に追放されたという共通体験を持つ。

 王氏は中国の高級官僚の中でも飛び抜けて有能な実務家として知られる。腐敗撲滅運動のトップに同氏が起用されたことは、習国家主席が汚職対策にいかに真剣に取り組んでいるかを物語っている。党内では撲滅運動が行き過ぎており、中国経済にダメージを与えるとの懸念が広がっている。ただ、王氏の仕事ぶりを詳細に見ると、捜査網の範囲が目を見張るほど拡大されたことが分かる。

 捜査の網にはすでに大物が引っかかった。王氏が調査を指示した高級官僚の中には、かつて公安トップを務め、政治局常務委員でもあった周永康氏、軍の上級将校だった徐才厚氏、国有石油大手の最高幹部だった蒋潔敏氏が含まれる。この3人は拘束されたが、まだ告発はされていない。3人からコメントを取ることはできなかった。

 腐敗撲滅運動が始まってから、日本の役職で次官以上に相当する高級官僚40人近くが不正の疑いで拘束された。北京大学法学院の姜明安教授によると、2013年だけで約18万2000人の共産党員が調査を受けたという。習国家主席が12年に就任する前年には、不正調査を受けた党員は1万人から2万人ほどだった。今のところ、こうした運動は支持を得ているようだ。米ワシントンの調査機関ピュー・リサーチ・センターが13年に実施した世論調査では、腐敗が「非常に大きな問題だ」と答えた割合が全体の53%に達し、08年の39%から大幅に上昇した。

 シンガポール国立大学の中国専門家、黄靖教授は「指導部はまん延する汚職を止めなければ体制が崩壊すると懸念している」と話す。

 腐敗撲滅運動に対する批判がないわけではない。評論家らは、撲滅運動を展開することで、習国家主席が国民からの支持を高めながら、自分のライバルとなるか、自身の権力を制限する有力者の台頭を押さえ込むことができると指摘する。人権保護団体は、調査を受ける党員が完全な密室に閉じ込められ、弁護士や家族とも接見できない点を問題視している。さらに、自白を強要する手法にも批判の声が高まっている。最も過酷な例として、王氏の部下5人を含む6人の調査官が昨年、意図的に地方公務員に危害を加えたとして有罪判決を受けた。この公務員は取調中に溺死した。

 ヒューマン・ライツ・ウオッチの中国担当リサーチャー、マヤ・ワン氏は「こうしたやり方は人権を否定しているとの疑念を抱かせる」と指摘。これに対し、中国の政府関係者は王氏が部下に自白でなくデータ分析に頼る調査を進めるよう促していると話した。


腐敗撲滅運動が中国経済に与えるインパクト
 確かに、調査を受けた全員が重罪に問われるわけではなく、調査自体が日常化しているとも言える。北京大学の姜教授によると、約2万5000人が公金で高級車や高級家具を購入するなど「浪費」をしていたとして処罰された。ただ、浪費は刑事犯罪に該当せず、警告や懲戒、降職、解雇などで済むと教授は説明している。刑事犯に問われた役人は懲役刑を言い渡され、最悪の場合は終身刑に処せられることもある。

 王氏にコメントを求めようとしたが、接触はできなかった。中央規律検査委員会と国務院はコメントを控えた。

 王氏のやり方は党員の反発を呼ぶリスjクがある。共産党員の一部は腐敗撲滅運動が中国経済に打撃を与え、党の名誉を傷つけると不安を抱いている。党指導部に近い関係筋によると、江沢民元国家主席を含む現役を退いた政界の重鎮らは、王氏がやり過ぎていると習国家主席に警告したことがある。これに対し、習氏は部下全員をかばい、王氏については「たくさんの困難な仕事」をやってきたし、まだやる必要があると答えたという。

 バンク・オブ・アメリカの中国エコノミスト、ルー・ティン氏は、腐敗撲滅運動で今年の中国国内総生産(GDP)成長率が0.6-1.5ポイントほど押し下げられると試算している。王氏の調査官が目を光らせている高級品や高級マンションなどの販売が落ち込むためだ。政府投資も減速が予想されているが、これは地方政府の役人が収賄の疑いをかけられるのを恐れて公共事業の入札などを控えているためだ。

 エコノミストらは、政府支出がより生産的に用いられるため、長期的に見れば汚職撲滅が経済に好影響をもたらすと指摘する。国営企業の有力者を刑務所に送り込むことで、習国家主席は競争原理の導入を阻止しようとする企業幹部をけん制できる。ただ、これらが実を結ぶには数年に及ぶ時間がかかりそうだ。

 王氏の目的は共産党の精神を根本的に変え、恐らく理想型に回帰することだと、同氏に近い関係者らは感じている。つまり、少ない報酬で国民に奉仕するという理想だ。

 政府関係者によると、王氏は2012年後半に中央規律検査委員会の書記に就任してすぐ、部下にアレクシ・ド・トクヴィルが執筆したフランス革命史の書物を読み、なぜ君主体制が崩壊したかについての意見をまとめるよう要求したという。これも党の再活性化を目指す王氏の姿勢を映し出すエピソードだ。

 王氏は周囲に対し、「腐敗を欲しない、腐敗できない、腐敗に踏み込まない」ことを共産党員に確信させることが自分の目標だと話していたようだ。

 他の汚職撲滅運動は関係者一人か二人を逮捕した後、徐々に先細りしている。しかし、中国当局によると、王氏は今回の取り組みをきちんと制度化しようと、現地調査官に北京の自身のオフィスや現地当局に調査結果の報告を義務づけ、現地でうやむやにさせないよう図っている。また、国民の怒りを利用して自らの任務にはずみをつけようと、ネットに苦情ホットラインを設けた。

 さらに、数多くの調査団を結成し、国内全域に配置した。その多くは調査対象外の省出身の退任した高官が率いている。

 上海では、王氏の調査官が5月下旬、名門の復旦大学にやってきた。この取り組みについて知る関係者によると、彼らは構内に告発箱を設置。1カ月で2000件近い投書が集まった。3カ月後、規律委は同大学の研究資金の監視がずさんだと非難し、汚職の証拠を政府調査官に引き渡して詳しい調査を命じた。

 この件について、復旦大学はコメントを控えたが、ウェブサイトに掲載された文書で、王氏の調査団が発見した問題に対処しているところだと説明した。政府はそれ以上の措置は講じていない。

 中国南西部の農村地帯、貴州省では、こうした国を挙げての取り組みに感化されたと話す現地の党当局者が、別のやり方でこの問題に臨んでいる。いわば中国版の「スケアードストレート」だ。スケアードストレートとは、10代の子供たちを刑務所に連れて行き、受刑者の生活を学ばせる米国の取り組み。貴州省では、凱里市の地元刑務所の門戸を現地の党当局者に解放し、汚職で投獄された人たちに会えるようにしている。

 この制度に参加した同市の病院関係者2人によると、クライマックスは受刑者が舞台に立ち、欲のために人生を台無しにしたことについて、もの悲しげに歌うショーだという。病院関係者の1人は「感動した」とし、「多くが泣いた」と話した。凱里市の刑務所当局者はこの制度についてコメントを控えた。規律委によると、北京のある政府機関も現在、同じような制度を設けているところだという。

 王氏の調査団はさらに取り組みを拡大し、国内外の財務記録を徹底的に調べて隠し資産や不正の証拠がないかを洗い出している。また最近、外国政府と協力して海外にいる中国の汚職役人を追跡するための新しい機関を設置した。

 四角い顎や、横になでつけた髪がトレードマークの王氏は、緊急時対応担当としてのキャリアの長さから中国メディアで「消防隊長」と呼ばれている。また、ソーシャルメディア(SNS)に投稿された王氏の支持者のメッセージには、同氏を宋の役人になぞらえたものもある。宋時代の役人は罪を犯した権力者をちゅうちょなく罰したことで、正義の象徴とされている。また、支持者が決まって指摘するのが、同氏が結婚はしているが子供がいないため、家族にぜいたくをさせるために私服を肥やそうという動機が働きにくいのではないかという点だ。

 王氏は1990年代後半には中国最大の企業破産の処理を任され、憤慨した外国の債権者たちともやり合った。2003年には重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染拡大を食い止めるため北京に呼び寄せられた。自らが市場や病院を歩き回る姿を国営テレビで放映させ、パニック封じ込めに一役買った。08年には北京市長としてオリンピック開催を支援した。

 さらに08年に国務院副総理に起用され、経済を担当。金融危機の際には欧米に対して中国が国債を買い続けることを保証し、市場の信認向上に重要な役割を果たした。米当局者は、10年6月に長年米国が目標としてきた人民元相場の弾力化を中国指導部上層に認めさせたのも、王氏の功績によるものだと指摘する。

 王氏は米国をはじめとする海外の経済関係高官との交流も続けている。そうした同氏が「旧友」と呼ぶ人たちと会う際には一定のルールがある。関係者によると、ネクタイはせず、側近もほとんど伴わず、広範な世界経済情勢について話し合うのだという。また、汚職撲滅運動についても、うまく対処しなければ中国経済を狂わせる可能性があると一部米当局者が懸念を示していることから、時々その機会を利用して説明しているという。

 西側当局者は、そのしんらつな物言いや尊大な態度から、王氏を相手にするのは時に腹が立つと話す。金融危機時に行われた王氏と欧州財界首脳との会合では、文句を言っても無駄だ、あなたたちがいずれにしろ中国に投資するのは分かっていると言い放ったという。

 また、王氏は党当局者に対する公の発言で、汚職取り締まりは捜査や法制度の改善方法を見いだすまでの一時的な手段にすぎないとの考えも示している。しかし、差しあたりは同氏も調査官も個々の汚職事件に的を絞っていくようだ。

 その1つが、09年の大手国有企業、南昌鋼鉄の部分売却と、それを監督した蘇栄氏(66)にかかわる事件だ。蘇氏は最近まで中国の最高諮問機関、人民政治協商会議(政協)で副主席を務めており、南昌が本拠地とする江西省の元党書紀でもある。南昌の約60%を地元資産家が経営する製造会社に売却したこの取引は、鉄鋼セクターを民間資本に解放するものだとして現地メディアで称賛された。しかし、南昌の一部従業員がそのプロセスに不正の疑いを持った。

 事情に詳しい従業員や省当局者によると、彼らは列をなして調査官に会いに行き、蘇氏とその仲間が賄賂と引き換えにこの製造会社に有利になるよう入札で談合していた証拠を提示した。

 規律委に近い関係者によると、規律委は6月、蘇氏を党紀と国家法違反の疑いで取り調べるのに十分な証拠を用意した。「党紀と国家法違反」は汚職の疑いがある場合に使われる言い回しだ。政協も蘇氏を解任した。また、地元資産家も訴追はされなかったものの、中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人大)の代表を解任された。

 蘇氏は起訴はされていないが、6月10日以降公の場に姿を現しておらず、コメントも得られていない。蘇氏について王氏の調査団に情報提供した飲食店経営者は「王岐山は本当に真剣だ」とし、「蘇栄の取り調べが発表された日、花火で祝った」と話した。」

http://jp.wsj.com/articles/SB10001424052970203403704580105271023815584

9月27日(土)のつぶやき

2014-09-28 03:41:05 | EU

元三菱商事の幹部だった方。戦争中40代。朝鮮戦争で復活できた。つくづく言っていたのが「よそでやる戦争はもうかる」。今のアメリカはまさにその典型。中東とウクライナ。それに乗っかるのが安倍政権。結局アベノミクスというのは軍事産業のことだったのだろうか。



9月22日(月)のつぶやき その2

2014-09-23 03:06:14 | EU

2014/09/03 「奴隷の群衆」「牛馬豚犬」…”元祖ヘイトスピーカー”としての福沢諭吉を徹底検証~岩上安身による名古屋大学名誉教授・安川寿之輔氏インタビュー ln.is/iwj.co.jp/wj/o… @iwakamiyasumiさんから


2014/09/03 「奴隷の群衆」「牛馬豚犬」…”元祖ヘイトスピーカー”としての福沢諭吉を徹底検証~岩上安身による名古屋大学名誉教授・安川寿之輔氏インタビュー ln.is/iwj.co.jp/wj/o… @iwakamiyasumiさんから


東京新聞:モスクワで最大のデモ ウクライナ介入反対:国際(TOKYO Web) ln.is/www.tokyo-np.c…
戦争屋のアメリカと、市民的自由を少しずつはぎ取るプーチンと。ろくな政治家がいない。とはいえそれぞれの国民が選んだ結果だ。


安定に向かいそうなウクライナ 2014年9月19日   田中 宇 goo.gl/qoCYnu



9月22日(月)のつぶやき その1

2014-09-23 03:06:13 | EU

民主党も世襲議員多いですからね。城南信金の吉原さんは世襲にしようとした前理事長に反旗を翻して理事長になった方。2期だけの公約を守って来年職を辞します。気概のある政治家はいないの?

@oyousan1: @tomaruseiya @yuiyuiyui11
議員の世襲化の制限

tokiさんがリツイート | RT

国立市議会が「ヘイトスピーチを含む人種差別及び社会的マイノリティー差別を禁止する法規制を求める意見書」を可決、国に送付したことがNHKニュースに!全国で初、自民党・公明党含む19名の議員が賛成、反対は一人会派の藤江議員のみ。夕方のニュースでも放映される予定。

tokiさんがリツイート | RT

2014/09/17 裁判長提案により、安倍首相、森まさこ議員、松島みどり大臣らの本人尋問申請へ ~フリーランス表現者による秘密保護法違憲訴訟第2回口頭弁論 iwj.co.jp/wj/open/archiv… ※第3回口頭弁論は、11月19日午後3時30分から。

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妄想:中国のメディアが「日本のメディアの偏向報道の仕方に注目したが、あまりにヒドイのでビックリ。特に読売新聞のテレビと一体化した娯楽と政治思想の国民洗脳方法は、我が国の人民日報も足下にも及ばない」と。さすが読売新聞は「日本版人民日報」だ。

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9/21東京新聞・中日新聞の読書面に,豊下楢彦・古関彰一『集団的自衛権と安全保障』( iwnm.jp/431491 )の書評(山本武彦さん)が掲載されました.? tokyo-np.co.jp/article/book/s… 「解釈改憲の試みに含まれた論理矛盾の多くが抉り出される」

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安倍内閣「教育再生実行会議」委員が在特会系のデモ集会に何度も参加していたことが判明 - NAVER まとめ ln.is/matome.naver.j…


311以降の贈り物は「化けの皮が剥がれ続ける日本政府の本性とその姿」

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@asaikuniomi こちらは読まれました?bylines.news.yahoo.co.jp/inoueshin/2014… 「産経新聞社長と中曽根元首相が慰安所づくり自慢「女の耐久度、どこの女がいい悪い、3千人のための慰安所」

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読売新聞の記事!
この記事の様に読売も従軍慰安婦については「強制連行があった」と報じていた。
この頃は、先の戦争の加害等ネガティブな実態は「共通認識」だった。#従軍慰安婦 pic.twitter.com/1PqIoemWlF

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産経新聞社長と中曽根元首相が慰安所づくり自慢「女の耐久度、どこの女がいい悪い、3千人のための慰安所」(井上伸) - Y!ニュース ln.is/news.yahoo.co.…


産経新聞社長と中曽根元首相が慰安所づくり自慢「女の耐久度、どこの女がいい悪い、3千人のための慰安所」 goo.gl/5GEiIS


安倍晋三が退陣した2007年から、再び総裁選に出た2012年まで、この5年間の安倍晋三の動静を詳しく洗えばいい。それこそ、朝日の特報部が本来やらなくてはいけなかった仕事で、スクープの宝の山だった対象だ。いっぱい出てくると思うよ。安倍晋三、もう復活は無理だと誰もが思っていたし。

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初期のころ(1986-1991 年)、その他の器官と組織の機能的障害が、もっとも典型的であった。

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秘密保護法チャンネルが出来ました。⇒【動画記録】 2014/09/17 第二回口頭弁論報告会 no-secrets.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/2…

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韓国映像資料院、日帝時代の映画『授業料』発掘 ln.is/japan.hani.co.…


吉田証言など一切関係なく安倍首相や櫻井よしこ氏の慰安婦ヘイトスピーチと二枚舌が国際的に批判されている(井上伸) - Y!ニュース ln.is/news.yahoo.co.…


吉田証言など一切関係なく安倍首相や櫻井よしこ氏の慰安婦ヘイトスピーチと二枚舌が国際的に批判されている goo.gl/lf6SoU


2014年8月17日付政府広報「放射線についての正しい知識を。」に抗議する | 原子力資料情報室(CNIC) ln.is/www.cnic.jp/Af…


私たちは、大言壮語と美辞麗句で無責任なメッセージを若者に伝えてはならない。
丹羽 宇一郎 伊藤忠商事前会長


@PilotDeGuerre報道ステーションありがとう。これからも10時10分台を中心に見るからね。良いニュースと良いスポンサーを揃えておいてね。pic.twitter.com/EddOMns5tK

報ステ有難う!古館さん有難う!当り前の事がこんなに嬉しいなんてね、おかしいね、日本

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@oldblue2012 @mjjkoi2399 TGVや中国の新幹線は従来型で400キロ台を出している。リニアが怖いというよりも、リニアでなくてもよくなるのでは。それと昔はリニアは真空チューブのなかを超音速で走らせる、といった話があったが、あれはどうなったのだろうか。


ここから東北旅行で見てきた、変なものというか、アレな物… まずは建設中の大間原発。すぐ近くまで家が立ち並んでます…これは酷い。こんなんで福一で事故を起こしたMOX燃料でやるつもりなんだというから、気が狂ってるとしか。 pic.twitter.com/0Qj4wUt2Js

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@iwakamiyasumi いつもながら、目から鱗のインタビュー、ありがとうございました。高橋哲哉氏の著作から、福沢諭吉が靖国神社を戦争装置として構想したという話は知っていましたが、ここまで! 福沢諭吉が、現代に至るまでの日本民族の特性(政治的痴呆)を構築したのですね~

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「奴隷の群衆」「牛馬豚犬」…”元祖ヘイトスピーカー”としての福澤諭吉を徹底検証~岩上安身による名古屋大学名誉教授・安川寿之輔氏インタビュー iwj.co.jp/wj/open/archiv… 実際の福澤は、大日本帝国による朝鮮・中国に対する侵略戦争を肯定するイデオローグだったと指摘

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安定に向かいそうなウクライナ 2014年9月19日   田中 宇

2014-09-22 19:00:50 | 国際
「 9月16日、ウクライナ議会が、EUとの経済関係を強化する連合協定を批准した。批准とともに協定が発効し、EUがウクライナから輸入する製品の関税が引き下げられた。この協定は、最終的にウクライナがEUに加盟することを視野に、ウクライナとEUが関税引き下げなどの貿易や投資の自由化を盛り込んだもので、当初は昨年秋に締結される予定になっていた。

 当時のウクライナのヤヌコビッチ政権が、EUとこの経済協定を結ぼうとした矢先に、ロシアが横やりを入れ、EUとの協定を結ばずロシアと協定を結ぶなら巨額の支援をしてやると持ちかけ、ヤヌコビッチは昨年11月末、EUでなくロシアの提案に乗った。この転換に怒ったウクライナの極右主導の反露勢力が、米国の支援を受けてヤヌコビッチ政権を転覆する運動を開始し、今年2月にヤヌコビッチ政権を倒して極右主導の新政権を樹立したところから、今のウクライナ危機が起きている。 (プーチンを強め、米国を弱めるウクライナ騒動)

 EUとの経済協定の問題はウクライナ危機の発火点であり、ウクライナ議会がEUとの協定を批准して発効させたことは、ウクライナをめぐるEU(欧米)とロシアとの引っ張り合いが、EUの勝利とロシアの敗北に終わったことを示している。ウクライナはロシアから遠ざかり、EUに近づいたと、英国などの新聞が報じている。 (Ukraine approves historic EU deal, breaking ties with Moscow)

 しかしよく見ると、事態の本質は微妙に違う。ウクライナ議会がEUとの協定を批准する4日前、EUとウクライナ、ロシアの代表がブリュッセルで交渉し、EU連合協定の最も重要な部分の一つであるウクライナとEUが自由貿易協定(FTA)を締結する条項を協定から外し、FTAの締結を再来年まで延期し、FTA以外の事項だけウクライナ議会が批准することが決まった。ウクライナを経済面で自国の傘下に置き続けたいロシアは、EUとウクライナがFTAを締結することに特に反対していた。FTA以外の経済協定はロシアにとってさほど脅威でなく、FTAが除外されたことは、ウクライナをめぐるEUとロシアの経済陣取り合戦で、ロシアが勝ったことを意味していると報じられた。 (EU-Ukraine integration pact postponed till 2016 after talks between Moscow, Kiev & Brussels)

 ウクライナ議会がEUとの協定を批准したことは「EU(欧米)の勝利」と報じられ、その直前に協定からFTAが外されたことは「ロシアの勝利」と報じられている。この経済戦争は、どちらが勝ったのか。この疑問についてドイツの放送局ドイチェベレの記事は、ウクライナで議会がEU協定を批准した直後、FTAが外された状態で批准されたことに抗議して外務次官が辞任したことを紹介している。交渉を担当した外務次官が、ロシアの圧力に屈して大事なFTA条項を外してEU協定を批准せねばならなくなったことを敗北と感じて辞任した以上、今回の件はロシアの勝利だというわけだ。 (Russia, West delay key element of EU-Ukraine trade deal)

 FTA条項の要点は、ウクライナがEUからの輸出品の関税を大幅に下げることだ。ウクライナは冷戦後にソ連から独立したものの、ロシアとの経済的な一体化が残っており、ウクライナにEUの製品がほとんど無税で入ってくると、それはそのままロシアに流入し、ロシア経済に打撃を与える。だからロシアはFTAに反対し、FTA条項を外さない場合、ウクライナを経済制裁すると脅した。ウクライナはロシアの脅しに屈し、EUとの協定から輸入関税撤廃のFTA条項を外した。

 これだけ見ると「悪の帝国」ロシアが、帝国から自立したい善良なウクライナに圧力をかけて屈服させた話になる。しかし、この交渉にはEUも入っている。EUは、ロシアをことさら敵視してウクライナの政権を転覆して危機を起こした黒幕の米国と「同盟関係」にある。EUとロシアが対立し、EUとウクライナの協定が結べないままだと、米国がEUを引っぱり込んでますますロシアを敵視・制裁し、その悪影響はEU自身が最も受けてしまう。 (◆危うい米国のウクライナ地政学火遊び)

 EU(独仏)は、ロシアとの敵対が激化することを好まない。今のように米欧とロシアが敵対していると、米国が欧州を傘下に入れたままロシアと恒久的に対立し続ける冷戦構造が復活し、EUは対米従属から離脱できず、EUが進めたい政治統合やその先にある対米自立も、米国が作る新たな冷戦構造によって妨害されたままになる。米国がウクライナ危機を誘発してロシア敵視の構造を再強化したのは、EUが統合して対米自立していくことを阻むのが隠れた目的だ。 (◆NATO延命策としてのウクライナ危機)

 このような、米国がEUに対して隠然と行っている迷惑行為を乗り越えるためには、EUがウクライナにおけるロシアとの敵対を解消せねばならない。しかし同時に、EUがロシアに対して屈服したかたちになると、米政界を牛耳る好戦派が怒ってEUを非難し、EU内に残存する対米従属的な勢力も、ドイツのメルケルらEU指導部を非難する。だからEUは、形式的に、ウクライナとの経済協定を締結し、ロシアに屈服していないことを象徴的に示さねばならない。

 このあたりのことはプーチンのロシアも良く知っている。だからロシアは、EUがウクライナと経済協定を結ぶことを認めた。しかし同時にロシアは、自国の面子や利権が尊重されることも求めた。両者の折衷策として、ロシアに不利になるFTAの締結を先送りして「ロシアの勝利」とした上で、FTA以外のEU経済協定をウクライナが発効させて「EUの勝利」にするという、玉虫色の解決がはかられた。昨秋来のウクライナ危機の発火点であるEUとの協定が、欧露の和解のもとで発効したことで、危機は解決への第一歩を踏み出したといえる。ロシアがウクライナ経由でEUにガスを再輸出する件についても、交渉が再開することになった。 (Russia, EU, Ukraine may hold gas talks on Sept. 26 in Berlin)

 欧露関係の改善を感じさせる今回の解決について、米国からは何も目立った批判が出ていない。米国は欧露の関係改善の始まりを黙認している。たぶん、関係改善がもっと進展して不可逆的になってから、米国は急に騒ぎ出すだろう。手遅れになってから騒ぐ稚拙な(隠れ多極主義的な)やり方が、近年の米国の常だ。 (ウクライナでいずれ崩壊する米欧の正義)

 米政府は、欧露和解を黙認する一方で、米国の石油会社(メジャー)がロシアで石油ガス田の開発に参画することを禁じる対露経済制裁を発動した。メジャーは2週間以内にロシアから撤退せねばならない。この制裁はロシアの石油ガス産業を困らせる名目で、短期的にロシア側は困窮する。だが長期的に見ると、米国勢が撤退した穴埋めに、中国やBRICS、欧州大陸諸国などの石油会社が入ってくる。ロシアから撤退させられ、利権を失って損をするのは米国企業の方だ。ロシアの石油ガス開発から米国勢が撤退するのは自滅的だと、石油業界の内部から警告が発せられている。 (Fresh sanctions will freeze big foreign oil projects in Russia) (Former BP CEO Warns "Sanctions Will Bite West" As US Gives Majors 14 Days To Wind Down Russian Activities)

 今回の動きには、もう一人重要な人物が関与している。EUとロシアが相互の面子を立てつつうまく和解しようとしても、ウクライナ自身が反露的(米国傀儡的)な極右政権だと、和解に反対し、欧露間の謀略を壊してしまう。ヤツェニュク首相は極右の反露派だ。抗議の辞任をしたウクライナの外務次官も、たぶん反露派だ。次官が抗議した相手は、ヤツェニュク首相よりさらに上にいるポロシェンコ大統領だろう。以前の記事に書いたように、ポロシェンコはおそらく「隠れ親露派」であり、プーチンと諮って今回の欧露和解への道に協力している。 (ウクライナを率いる隠れ親露派?)

 ポロシェンコは5月の大統領選で勝利し、大統領に就任した直後の6月はじめ、今回議会が批准したEUとの協定に署名した。彼は今回の議会批准も礼賛し、反露・親欧米の姿勢をとっている。しかし、この姿勢は人気取りのための表面的なものだ。彼は、欧露和解策としてのFTA抜きのEU協定の発効を押し進めただけでなく、ロシアの仲裁を受けてウクライナ東部の親露派勢力との停戦・和解にも乗り出している。 (ウクライナ軍の敗北)

 ポロシェンコは3年間の期限つきで、東部の親露派に自治拡大を認めた。東部の地元勢力に警察権を与え、事実上、東部の親露派武装勢力がそのまま地元の警察として治安維持にあたることを認めた。 (Ukraine Grants `Special Status' for East to End War)

 もともと士気が低いウクライナ政府軍の兵士の多くは、停戦や和解に安堵しただろうが、親露派を皆殺しにしようと東部におもむいて内戦を戦ってきた極右の民兵とその上司たち(政界の極右政治家)は、このポロシェンコの和解策に激怒している。ロシアに譲歩した上でのEUとの協定締結に対する不満と合わせて、ポロシェンコを非難する抗議集会が首都キエフで発生している。 (Ukraine President's Days Numbered After Broad Accusations Of "Betraying National Interests")

 しかし、極右がポロシェンコから権力を奪うことは日に日に難しくなっている。厭戦気運が強まっていたウクライナの世論は、極右を支持しなくなっており、極右の支持率はひと桁台に落ちている。ポロシェンコはこのような極右の凋落を見た上で、10月に議会選挙を行うことを決定している。極右のヤツェニュク首相は、極右の再起を狙って新政党を立ち上げて選挙に臨む構えだが、支持拡大は難しい。選挙で勝ちそうなのはポロシェンコ自身の政党だ。ウクライナはポロシェンコのもとで、政権から極右を排除して内戦を終わらせる安定化に向かっている。 (`War' and `peace' factions split Ukraine politics)」

http://www.tanakanews.com/140919ukraine.htm

吉田証言など一切関係なく安倍首相や櫻井よしこ氏の慰安婦ヘイトスピーチと二枚舌が国際的に批判されている

2014-09-22 16:15:04 | 政治
「安倍首相がまたトンチンカンなことを言っています。
安倍晋三首相は14日のNHKの番組で、朝日新聞が慰安婦を巡る吉田清治氏(故人)の証言を伝えた記事を取り消したことについて、「朝日新聞自体がもっと努力をしていく必要もある」と述べた。首相は番組で「日本兵が、人さらいのように人の家に入っていって子どもをさらって慰安婦にしたという、そういう記事だった。世界中でそれを事実だと思って、非難するいろんな碑が出来ているのも事実だ」と指摘。その上で「世界に向かってしっかりと取り消していくことが求められている」「一度できてしまった固定観念を変えていくのは、外交が絡む上では非常に難しい」などと述べた。

出典:朝日新聞2014年9月15日付 安倍首相「朝日新聞が努力を」 慰安婦記事取り消し
これに輪をかける「産経新聞」の報道です。
かつて1人の男の作り話が、これほど日本の国際イメージを損ない、隣国との関係を悪化させたことがあっただろうか。朝鮮半島で女性を強制連行したと偽証した自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治のことだ。吉田の虚言を朝日新聞などメディアが無批判に内外で拡散し、国際社会で「性奴隷の国、日本」という誤った認識が定着していった。

出典:産経新聞9月8日付「朝日新聞はどう報じたか 初登場昭和55年3月7日付横浜版、女性強制連行の言及なし」
「1人の男の作り話ガー」というすごい妄想ですが、いま問題になっている「吉田清治氏の証言」を朝日新聞が取り上げたのはいつだったでしょうか?
朝日新聞は1982年以降、吉田氏の証言を記事やコラムで取り上げた。証言内容を疑う指摘が92年にあり、朝日新聞は97年に「真偽は確認できない」との記事を掲載し、以降は吉田氏の証言を取り上げていない。

出典:朝日新聞8月28日付「慰安婦問題 核心は変わらず」
朝日新聞が「吉田清治氏の証言」を取り上げていたのは、1982年から1997年の間だったわけですが、「世界中でそれを事実だと思って、非難するいろんな碑が出来ている」のは、いつからでしょうか?

アメリカに「慰安婦」の碑が初めて出来たのは、ニュージャージー州のパリセイズ・パークですが、2010年10月に設置されたものです。朝日新聞が1982年に「吉田証言」を取り上げてから28年も経過しているわけです。「日本兵が、人さらいのように人の家に入っていって子どもをさらって慰安婦にしたという、そういう記事だった。世界中でそれを事実だと思って、非難するいろんな碑が出来ているのも事実だ」と安倍首相は言っていますが、「吉田証言」が本当に「碑」が出来る原因ならば1980年代に出来ていたはずです。28年も経過したあとに出来た「碑」を「吉田証言」のせいにするのはあまりに乱暴な話です。

それから、安倍首相は、「日本兵が、人さらいのように人の家に入っていって子どもをさらって慰安婦にしたという、そういう記事だった」のが「吉田証言」で、それがウソだったのだから「慰安婦は世界中から非難されるような問題ではないのだといわんばかりです。過去にも安倍首相は、前回の首相時代に、「官憲が家に押し入っていって人さらいのごとく連れていくという強制性はなかった」(2007年3月5日の参議院予算委員会)、「この狭義の強制性については事実を裏づけるものは出てきていなかったのではないか」(2006年10月6日の衆議院予算委員会)などと言っています。

安倍首相は自分勝手に「狭義の強制性」「強制連行」なるものを作り上げてそれを否定することで「慰安婦問題」をなかったことにしようとしていますが、「狭義の強制性」についてもオランダ人女性を強制的に慰安婦にした事実認定として、「スマラン事件」の公文書がありますし、日本の司法によってさえすでに事実認定されています。さらにいえば、「狭義の強制性」「強制連行」なるものが存在しなかったと仮定したとしても、「慰安婦」は、当時の国内法・国際法に照らしても違法でした。

安倍首相の理屈では北朝鮮の拉致問題もなかったことになる
仮に安倍首相が主張するように「狭義の強制性」「強制連行」を証明する証拠の文書がなければ、世界から非難されるような問題はないとした場合、北朝鮮の拉致問題も世界から非難される問題ではなくなってしまいます。

安倍首相の「狭義の強制性」「強制連行」の理屈を北朝鮮の拉致問題にあてはめると、「官憲が家に押し入っていって人さらいのごとく連れていく」というケースが確認されていませんから、北朝鮮に拉致された人も「狭義の強制性」「強制連行」はなかったから世界から非難さるような問題ではなくなってしまいます。

そして、日本軍による「狭義の強制性」「強制連行」を示す公文書などの証拠がないから「慰安婦問題はなかった」という理屈をあてはめると、北朝鮮の公文書が明らかになるまでは「北朝鮮の拉致はなかった」ことにもなってしまいます。

北朝鮮によって拉致されたと日本政府によって認定された人のなかには、神戸市の飲食店店員だった田中実さんのように、「複数の証人等から、同人が甘言に乗せられて北朝鮮へ送り込まれたことを強く示唆する供述証拠等」から「甘言により海外へ連れ出された」(警察庁発表)と、北朝鮮に公文書がなくても「証人の供述」を証拠として拉致を認定しています。この田中実さんのケースは、「狭義の強制性」「強制連行」を示す公文書などの証拠はないのに、北朝鮮に拉致されたと認定されているのです。

「慰安婦」については、「狭義の強制性」「強制連行」を示す公文書などの証拠がないから問題ではないと言っておいて、「北朝鮮の拉致」については、「狭義の強制性」「強制連行」を示す公文書などの証拠がなくても問題だという安倍首相の理屈は明らかにダブルスタンダードです。このことは、2007年に安倍首相が「慰安婦」について「狭義の強制性」「強制連行」はなかったと発言したときに、次のようにアメリカでも批判されていました。

「安倍首相の二枚舌」とアメリカ各紙も批判
安倍首相は日本人拉致問題には積極的に取り組んでいるが、
慰安婦問題では「犯罪に目をつぶっている」
24日付の米紙ワシントン・ポスト社説は「安倍首相の二枚舌」と題し、首相は日本人拉致問題には積極的に取り組んでいるが、慰安婦問題では「犯罪に目をつぶっている」と批判。拉致問題で国際社会の支持を得るには慰安婦問題で謝罪すべきだと求めた。

出典:読売新聞 2007年3月28日付 夕刊
米紙ロサンゼルス・タイムズ(電子版)は18日、従軍慰安婦問題で安倍晋三首相が「狭義の意味での強制性を裏付ける資料はなかった」との立場を堅持していることについて、「強制性」を否定していることで北朝鮮による日本人拉致問題で日本政府の立場を支持する人たちを「困惑させている」とする記事を掲載した。従軍慰安婦問題と拉致問題への安倍内閣の対応を比較。拉致問題では「北朝鮮を非難」するが、慰安婦問題では「強制を否定している」と指摘。「ワシントンの日本の最大の支援者たち」にも困惑が広がっているとの見方を示した。

出典:毎日新聞 2007年3月19日付 夕刊 「従軍慰安婦問題:安倍首相発言、米に困惑広がる 拉致絡め米紙報道」
それでは、慰安婦問題を「非難するいろんな碑が出来て」きたのは、どうしてなのでしょうか? それは、2010年に、初めてアメリカに慰安婦の碑が出来る前段のところで国際的に立て続けに上がった非難決議を見れば一目瞭然です。

▼アメリカの「慰安婦」問題対日非難決議
米下院121号決議 2007年7月31日可決(※一部抜粋)

日本政府は1930年代から第2次世界大戦までの期間、「慰安婦」と言われる若い女性たちを帝国軍への性的サービス目的のため動員することを正式に委任した。日本政府による強制軍隊売春制度である「慰安婦」は、集団強姦・強制流産・恥辱・身体切断・死亡・自殺を招いた性的暴行等の残虐性や規模面においても、前例のない20世紀最大の人身売買の1つだ。

日本の学校で採用されている新しい教科書は、こうした慰安婦の悲劇や第2次世界大戦中の日本による他の戦争犯罪を過小化しようとしている。

日本の公共・民間の関係者は、最近、慰安婦の苦痛に対する政府の真摯な謝罪を含む河野洋平官房長官による1993年の「慰安婦関連談話」を希釈または撤回しようとしている。(中略)

以下は米下院の共通した意見だ。

1.日本政府は1930年代から第2次世界大戦前に至るまで、アジア諸国や太平洋の島々を植民地化したり、戦時に占領した過程において、日本帝国主義軍が強制的に若い女性たちを「慰安婦」と言われる性の奴隷にしたことを、事実として明確な態度で公式に認め、謝罪し、歴史的な責任を取らなければならない。

2.日本の首相が公式声明を通じ謝罪するなら、先に発表した声明の信ぴょう性と水準に対し繰り返し唱えられる疑惑を解消する一助となるだろう。

3.日本政府は日本軍が慰安婦を性の奴隷にし、「人身売買した事実は絶対にない」といういかなる主張に対しても、明確かつ公式に反論しなければならない。

4.日本政府は国際社会が提示した慰安婦勧告に基づき、今の世代と将来の世代を対象に、残酷な犯罪について教育しなければならない。

▼オランダの「慰安婦」問題対日非難決議
オランダ下院決議 2007年11月20日可決(※一部抜粋)

日本が、公けに、いかなる遠慮もなく、第二次世界大戦以前から戦時中にかけて運営した強制性奴隷制度に対し、何人も疑うことのできない、いわゆる慰安婦に加えられた苦難に対して全責任を取るべきだという意見を持ち、

日本政府が、1993年のいわゆる河野談話によって慰安婦の運命を認め、被害者に謝罪をし、責任を受け入れたことを記録し、しかし、日本政府と日本の国会議員が数回にわたって、後に撤回された昨年3月当時の安倍首相の発言並びに同じ問題について今年初めに衆議院議員らが出したワシントンポスト紙の広告によって示されたとおり、この河野談話から離れた立場を表明したことを記録し、

わが国の下院議長が6月26日付の手紙によって日本の衆議院議長に送ったワシントンポスト紙の広告に関する質問に答えて、衆議院議長が11月7日付の手紙で彼が広告とは別な立場であると言明したことを注記し、

日本の一部の学校教材が慰安婦の虐待を含めて日本の戦争犯罪を十分に認識していないことを考慮し、

日本は「女性のためのアジア平和国民基金」を通じて元慰安婦に部分的に公的に助成された補償の形態を提供したが、補償は民間非政府組織によって与えられたことを考慮し、

[オランダ]政府が日本政府に対し、1993年に遺憾の念を表明し、強制売春制度の運営についての日本軍の関与に全責任を取るという談話の価値を引き下げるいかなる声明も控えるように強く要求することを求め、

[オランダ]政府が日本政府に、現在生存する元慰安婦に加えられた苦難に対して直接的、道徳的な金銭補償の形態を提供するという追加の姿勢を取ることを強く要求するように求め、

[オランダ]政府が日本政府に、日本の学校教材が第二次世界大戦中の慰安婦の運命を含む日本の役割について正確な情報を与えるよう促すことを強く要求することを求める。

▼EU(欧州連合)の「慰安婦」問題対日非難決議
EU議会決議 2007年12月13日可決(※一部抜粋)

A. 1930年代から第2次世界大戦終了までのアジアと太平洋諸島の植民地及び戦時占領地において、日本政府は ianfu ないしは“慰安婦”として世界に知られることとなる若い女性たちを帝国軍の性奴隷にするためだけの目的で公務として徴用し、

B. “慰安婦”制度は輪姦、強制堕胎、屈辱及び性暴力を含み、障害、死や自殺を結果した、20世紀の人身売買の最も大きなケースのひとつであり、

C. 日本の裁判所に持ち込まれた多数の“慰安婦”訴訟では、帝国軍の直接・間接の関与を裁判所が認めながらも、原告による補償請求はその全てにおいて棄却に終わり、

D. “慰安婦”制度の被害者のほとんどはすでに故人であり、生存者は80歳以上であり、

E.この数年の間に、多数の日本政府の高官や公人が“慰安婦”制度に関する謝罪の声明を発表する一方、日本の公人の幾人かはそれらの声明を希簿化したり無効化させようという遺憾な願望を最近になって表明し、

F.日本政府はその性奴隷制度の全容をすべて明らかにしたことはなく、学校で使用される最近の必修教材の中には、“慰安婦”の悲劇やその他の第2次世界大戦中の日本の戦争犯罪を矮小化しようと試みるものがあり、(以下略)

▼カナダの「慰安婦」問題対日非難決議
カナダ下院決議 2007年11月28日可決

1.1930年代から第2次世界大戦中に、アジアと太平洋諸島を占領した間、日本帝国軍は性的奉仕のみを目的として若い女性を獲得することを公的に委任し、その女性たちは慰安婦として知られており、

2.日本の公人が最近、彼女たちの苦難に対する日本政府の真摯な謝罪と反省を表明した1993年の河野洋平内閣官房長官の「慰安婦」に開する声明を弱め、あるいは無効にしようとする遺憾な願望を示し、

3.1945年以来、日本は過去の行為を認め、償いをすることで進歩してきた。また数十年にわたって国連を通じた貢献を含む国際平和と治安、開発に貢献し、

4.カナダ・日本の同盟はアジア太平洋地域において共通の重要な利益と価値に基づいて継続しており、これらには政治的・経済的自由、人権と民主制度を支援し、両国と両国民の繁栄をゆるぎないものにし、

5.それゆえ、カナダ政府は、1993年の河野談話の反省の表明をおとしめるいかなる声明も放棄すること、日本帝国軍のための「慰安婦」の性奴隷化や人身売買などは存在しなかったといういかなる主張に対しても明確に公式に反駁すべきであること、日本帝国軍が強制売春制度に関与したことに対する全責任をとるように日本政府に対して促すべきであり、それには被害者全員に対する正式で真摯な謝罪を国会で表明することや和解の精神で被害者の問題と取り組むことも含まれる。

以上が、各国の慰安婦問題についての対日非難決議の一部ですが、それぞれ太字の部分を見れば明らかなように、2007年3月に行った安倍首相の「狭義の強制性」「強制連行」否定発言、「慰安婦」制度に問題などないかのような発言こそが世界各国から批判されて非難決議が上げられたり、「非難するいろんな碑」が出来てきたりする原因になったのです。「世界に向かってしっかりと取り消していくことが求められている」のは、「吉田証言」ではなく、安倍首相の「狭義の強制性」「強制連行」否定発言の方です。

ちなみに、オランダ下院決議の中に出て来る「ワシントンポスト紙の広告」というのは、櫻井よしこ氏らが「ワシントンポスト」2007年6月14日付に掲載した「慰安婦強制連行の証拠はない」とする意見広告のことです。きょう(9/18)の毎日新聞などにも櫻井よしこ氏らは「『慰安婦』国際中傷を跳ね返せ」という意見広告を出して、慰安婦の問題は、吉田清治氏の虚偽証言による「作り話」で、「この間、日本はどれだけ辱めを受けてきたでしょうか」などとしています。しかし、事実はまったく逆で、国際的な非難をあびているのは、安倍首相や櫻井よしこ氏らの主張である「狭義の強制性」「強制連行」否定の方です。日本が「辱めを受けてきた」のは、安倍首相や櫻井よしこ氏らの主張の方なのです。

もっと言えば、安倍首相や櫻井よしこ氏らの「狭義の強制性」「強制連行」否定にもとづいて「世界に向かってしっかりと(慰安婦=日本軍性奴隷制を)取り消してい」けばいくほど、日本に対する国際的な批判は一層強まるほかありませんし、各国の対日非難決議や「非難するいろんな碑」も増えこそすれ、減ることはないでしょう。事実、2007年の安倍首相の発言や櫻井よしこ氏の意見広告ではそうなっているわけですから。そして、今回の朝日新聞の「吉田証言」のことは、そうした国際的な動向や「慰安婦=日本軍性奴隷制」とする国際的な評価には1ミリも影響しないと思います。

それから、以前のエントリーで紹介したスマラン事件で、オランダ人女性を強制連行で慰安婦にした日本軍の大尉・少佐・将校ら21人が裁判で有罪になっていますが、日本政府は、有罪判決を受けた日本軍性奴隷という戦争犯罪を反省するどころか、国家の英雄=英霊として厚生省と靖国神社の共同作業として靖国神社に合祀しています。そうすると靖国神社に参拝する政治家は、ナチスドイツのホロコースに匹敵する重大な戦争犯罪である「慰安婦=日本軍性奴隷制」を遂行した日本軍兵士をも国家の英雄=英霊として称えていることに必然的になります。逆に言うと、靖国神社に参拝する政治家にとって、「慰安婦=日本軍性奴隷制」などと国際的に批判されることはもっとも許し難い「辱め」にあたるので、安倍首相も櫻井よしこ氏らも「狭義の強制性」「強制連行」否定という姑息な手を使ってでもなんでも、とにかく「慰安婦=日本軍性奴隷制」を無きものにしたいのだろうと推測しています。」

http://bylines.news.yahoo.co.jp/inoueshin/20140918-00039211/

産経新聞社長と中曽根元首相が慰安所づくり自慢「女の耐久度、どこの女がいい悪い、3千人のための慰安所」

2014-09-22 15:55:09 | 歴史
「そこで、直接には「産経新聞」の報道ではありませんが、産経新聞社社長・フジテレビ社長・フジサンケイグループ会議議長・フジサンケイグループ最高顧問を歴任し、フジサンケイグループを築いた人物による「サンケイ出版」による発表ですから、十分に「歴史から目をそらすまい」とした「産経新聞」社社長が「史実に基づき」発表したものと考えていいと思いますので、以下紹介します。
鹿内信隆・櫻田武著『いま明かす戦後秘史 上巻』(サンケイ出版)40~41ページ
鹿内信隆・櫻田武著『いま明かす戦後秘史 上巻』(サンケイ出版)40~41ページ
上の画像は、鹿内信隆氏と櫻田武氏の著書となる対談本『いま明かす戦後秘史 上巻』(サンケイ出版、1983年11月30日発行)の40~41ページです。この本にある「対談者略歴」によると、出版当時の肩書きは、鹿内信隆(しかないのぶたか)氏が、サンケイ新聞社社長・フジサンケイグループ会議議長・ニッポン放送取締役相談役・フジテレビ取締役相談役・「彫刻の森美術館」館長で、櫻田武氏は日経連名誉会長・政府の財政制度審議会会長・国鉄諮問委員会委員長とあります。

上の画像にあるように、「慰安所の開設」について、陸軍経理学校で学んでいたと鹿内氏は語っています。テキストに書き起こすと以下です。

鹿内 (前略)軍隊でなけりゃありえないことだろうけど、戦地に行きますとピー屋が……。
桜田 そう、慰安所の開設。
鹿内 そうなんです。そのときに調弁する女の耐久度とか消耗度、それにどこの女がいいとか悪いとか、それからムシロをくぐってから出て来るまでの“持ち時間”が将校は何分、下士官は何分、兵は何分……といったことまで決めなければならない(笑)。料金にも等級をつける。こんなことを規定しているのが「ピー屋設置要綱」というんで、これも経理学校で教わった。この間も、経理学校の仲間が集まって、こんな思い出話をやったことがあるんです。

【鹿内信隆・櫻田武著『いま明かす戦後秘史 上巻』(サンケイ出版、1983年11月30日発行)40~41ページより】

陸軍経理学校において、「慰安所の開設」のノウハウを事細かく教え込まれていたことを、「産経新聞社社長」が証言しているのです。この産経新聞社社長の証言とは真逆のことをつい先日も「産経新聞」は、「正論 実体のない「従軍」冠した罪重い」という記事の中で次のように報道しています。
「従軍」は「従軍看護婦」などのように軍と公的な関係を持つ人々に関わる冠辞である。そのような実体を有しない人々を指す「従軍慰安婦」なる呼称は、戦後のある時期から使われ始めた通俗的な用語であるから、公文書で用いたり学術用語として使用したりすることなど極力避けるべきである。「従軍」と冠せられたがゆえに「強制連行」という動詞に容易につながる結果を招来したとも考えられるから、河野談話そのものの撤回を強く求めるゆえんである。

出典:産経新聞8/20付正論  実体のない「従軍」冠した罪重い 国学院大学名誉教授・大原康男
ようするに上の報道は、「慰安婦は日本軍とは公的な関係はないのに従軍慰安婦などという用語を使うから問題がいろいろ起こるのだ」と言いたいわけですね。これは、産経新聞社社長だった鹿内氏の証言とはまったく真逆です。鹿内氏は、「慰安所の開設」について、現地で調達し「慰安婦」にする女性の「耐久度」や「消耗度」からはじまって、「どこの女がいいとか悪い」とか、そして、等級による“持ち時間”や料金の規定にいたるまで事細かく陸軍経理学校の授業で勉強していたと証言しているのですから、「慰安婦は日本軍とは公的な関係はない」などと言えるわけがないのです。この真逆の証言に対して、「産経新聞」は、現在の編集長が言っているように、どちらが「捏造」「ウソ」「虚偽報道」なのか、「正確な史実を内外の人々に知ってもら」うために、「事実が判明すれば、その都度、記事化して正し、必要があれば訂正を行うのが当然の報道姿勢」ですから、自らの言葉に責任を持って現在の「産経新聞」の乾正人編集長は、「記事化して正」すべきでしょう。そうでなければ、朝日新聞を批判する資格が「産経新聞」にはそもそもないということになると思います。
松浦敬紀著『終りなき海軍』(文化放送開発センター出版部)の90ページと98ページ
松浦敬紀著『終りなき海軍』(文化放送開発センター出版部)の90ページと98ページ
それから、上の画像は、松浦敬紀著『終りなき海軍』(文化放送開発センター出版部、1978年6月15日発行)の90ページと98ページの画像です。ここでは、中曽根康弘元首相が戦時中に23歳で3千人の総指揮官だったことを自慢した上で、その3千人の大部隊のために、「私は苦心して、慰安所をつくってやった」と証言しているのです。3千人の総指揮官だった中曽根元首相が「慰安所をつくってやった」と証言しているのに、「慰安婦は日本軍とは公的な関係はない」などと2014年の8月20日に報道している「産経新聞」こそ、「歴史から目をそらし」「史実に基づかない報道」をしている新聞なのではないでしょうか。こうした「産経新聞」の報道で「事実を歪(ゆが)めては国際的な信用は得られない」でしょう。」

http://bylines.news.yahoo.co.jp/inoueshin/20140909-00038966/

9月21日(日)のつぶやき

2014-09-22 03:04:44 | EU

兵役拒否の亡命・韓国青年 「徴兵制が敷かれる前に反対すべきだ」 #BLOGOS ln.is/blogos.com/out…


安倍政権とメディア 戦前そっくりになってきた #BLOGOS ln.is/blogos.com/out…


戦争への実感のなさが、危機の本質を見る目を遠ざけている | 渡辺 豪 | 沖縄タイムス+プラス ln.is/okinawatimes.c… @theokinawatimesさんから



9月12日(金)のつぶやき

2014-09-13 03:08:01 | EU

イスラム国を理解するには、サウジアラビアの過激主義「ワッハービズム」を知らなければならない/ハフポト goo.gl/s6C7KL