白夜の炎

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J-PARKの放射性物質漏えい事故

2013-05-26 18:10:53 | 放射能
 下線を引いたところからわかるのは、普段も警報が鳴ることがたびたびあり、そのたびにおそらく警報を切り、作業を継続していたであろう事。

 きちんとした安全管理など、だれも本気で考えていない。



「日本原子力研究開発機構は25日、茨城県にある実験施設で23日に放射性物質が漏洩したと発表した。

26日伝えられたところによると、研究者6人が内部被曝、被曝量の最大は1.7ミリシーベルトだった。なお日本の自然放射線の年間被曝量はおよそ1.6ミリシーベルト。事故当時、施設には55人が出入りしていた。施設内の汚染は1平方センチメートル当たりおよそ30ベクレルで、立ち入り禁止になっているという。

 伝えられたところによると、研究者たちは異常を知らせる警報音がなった後も実験を続けていた。異常を検知して安全装置が働き警報音が鳴ったが、警報をリセットして実験を続けたという。日本のマスコミが伝えた。その後換気扇を回したため、放射線物質が施設外に漏れた。」

http://japanese.ruvr.ru/2013_05_26/114279582/

 ちなみに実験施設自身の説明は以下の通り。

「平成25年5月25日
J-PARC ハドロン実験施設におけるトラブルについて


発生日時: 平成25年5月23日(木)11時55分頃

発生場所: 日本原子力研究開発機構 大強度陽子加速器施設J-PARC

施設名 : J-PARC ハドロン実験施設

状況  :
原子力機構が高エネルギー加速器研究機構と共同で運営している大強度陽子加速器施設J-PARCのハドロン施設 で、標的である金に陽子ビームを照射し、素粒子を発生させる実験をしていた。

ビーム取出装置が誤作動したことにより、短時間に想定以上のビームが標的に照射された。

その結果、突発的に標的である金が高温となり、その一部が蒸発した可能性がある。

その直後、ビーム照射によって生成された放射性物質が、ビームライン装置から施設内に漏えいしたため管理区域内の汚染が生じ、作業していた研究者が被ばくした。なお、当日管理区域に入域し、かつ、装置付近に立ち入った人数は55名である。

【施設の状況】 現在施設は停止しており、事象の進展はない。

【汚染の状況】 建屋内の汚染程度は、約30Bq/㎝²。なお、現在は、建屋内を閉鎖し、立入禁止としている。

【被ばくの状況】 作業者4名の被ばく線量を評価したところ、最大で約2mSvであった。


影響 : 建家周辺に設置している管理区域境界のエリアモニタは若干の上昇が確認されたが、原子力科学研究所周辺に設置されているモニタリング ポストについては、通常の変動範囲内であった、また、核燃料サイクル工学研究所のモニタリングポスト(2箇所)及びモニタリングステーション(1箇所)に おいては、通常時の平均値(70~130nGy/h)に対して約10nGy/hの一時的な上昇が確認された。環境への放出量は調査中。

本事象の取扱い: 5月24日22時15分、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則第39条第1項第4号(管理区域外での漏えい)に基づき、法令報告に該当するものと判断した。


   (追加資料はこちら)

<問い合わせ先>
東海研究開発センター
管理部  青木 寧
TEL:029-282-5001
FAX:029-282-6111」

http://j-parc.jp/ja/topics/20130525press.html

施設そのもののHPはここ→http://j-parc.jp/index.html

東京株価暴落の背景・追加

2013-05-26 17:32:16 | 経済
 東京の株価棒枠の背景についてです。要は国際的な投機資金にとって都合よく利用できる環境に東京がなった、ということではないでしょうか。

 (以前の関連記事はここ→http://blog.goo.ne.jp/admin/editentry?eid=40080c39c29d69de9575d227c2518d84)

「[東京 23日 ロイター] - 日本株急落の背景には、デリバティブ市場でのテクニカルな売り需要があったと指摘されている。米金融緩和策の早期解除観測の強まりや中国経済への不安感などでリスクオフが強まった格好だが、その背景には膨らんでいたオプション引受業者による順張りヘッジの加速があったという。

これまでの上昇ピッチが速かっただけに調整幅も大きくなる可能性もあるが、日本経済の回復やデフレ脱却期待がはく落したわけではなく、市場心理が落ち着きを取り戻せば金融相場による株高が再開するとの見方も依然根強い。

「プチバブル崩壊」──松井証券シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏は、きょうの株価急落に対してこう表現した。日経平均.N225は大型連休明け後から23日の高値1万5942円まで約3週間で1948円(16%)上昇。昨年11月半ばからはほとんど調整がないまま84%上昇した。日経平均全体のPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)に割高感があったわけではないが、原発再稼働が依然不透明な電力株の急騰など「ファンダメンタルズをきちんと判断したわけではないギャンブル的な買いが目立っていた」(準大手証券ストラテジスト)という。

23日の市場では、そうした過熱感が一気に解消されるかのように株価は急落。下げ幅は前日比1143円28銭安と、下げ幅としては2000年4月17日の同1426円04銭安以来となる歴代11位を記録。終値は1万4483円98銭で安値引けし、朝方に更新した年初来高値1万5942円60銭から1500円近く水準を切り下げた。通常、7%が過熱といわれる25日移動平均線とのかい離率は22日時点で10.06%にまで拡大していたが、23日終値では1.66%まで縮小した。

相場急落の材料とされたのは、中国の5月製造業PMIのやバーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言で、米資産買い入れ規模の縮小観測が強まったことだったが、あくまできっかけに過ぎないという。「ここ2週間ほどの異常な上げ相場の反動が出て、パニック売りが加速した」(松井証券の窪田氏)との見方が大勢だ。一部特定銘柄に投機的な買いが集中するなど「歪み」が出ていたことも下げ幅を広げる背景となった。

下げ幅を助長したのは先物への売りだ。日経平均先物の板の価格毎に数十枚程度の注文しか入らず、大口の成り行き売買が入れば一気に200─300円程度の値幅が出てしまう状況が続いた。日経平均先物は午後2時28分から同43分までサーキットブレーカーが発動し、一時売買停止となったが、パニック売りは止まらず、その後も下げ幅を拡大。日経平均オプション市場では相場急落を警戒したプット(売る権利)買いが強まり、日経平均ボラティリティ指数は前日比58.42%高の43.74と、終値で東日本大震災後の2011年3月18日以来の水準まで急騰した。

ゴールドマン・サックス証券・エクイティデリバティブトレーディング部長の宇根尚秀氏は、相場急落の背景にオプション引受業者による順張りヘッジの加速があったことを挙げる。相場下落局面では順張りヘッジは売りとなる。「今までグローバルマクロファンドがコール買いを進めてきた一方で、引受業者たちはコールの売りポジションを多く抱えていたため、引受業者による日経平均先物への順張りヘッジが膨らみやすい状況だった」という。宇根氏の試算によれば、日経平均先物が1%下げるごとに200─300億円の売り需要が発生。午後2時過ぎには3%近い下げとなっていたため、引けにかけて1000億円近い売り需要が出て、売りが売りを呼ぶ展開が起こりやすかったと指摘している。

日経平均は大幅な水準訂正が起こった後だけに目先はボラタイルな値動きとなりやすいが、中期的な株高期待は依然根強い。緩和縮小観測が出ている米国に対し、日銀は2%の物価目標という「縛り」があるため、緩和環境はしばらく続く可能性がある。米緩和縮小による流動性縮小は日本株にとってもネガティブだが、ドル高・円安は日本株の下支え要因だ。「日銀の緩和継続姿勢が崩れたわけではなく、株高の構造に変化はない。悪材料が重なったため一気に調整が出たが、落ち着けば再び上値を試す可能性はある」といちよしアセットマネジメント・執行役員運用部長の秋野充成氏は話している。

(ロイターニュース 杉山容俊;編集 伊賀大記)」

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE94M06X20130523/

スポーツ界セクハラも暴力の戦争の後遺症

2013-05-24 16:13:59 | 歴史
 以前大阪の私立スポーツ系高校の教師による暴力事件の原因について、旧軍隊の暴力体質が戦後日本のスポーツ界に持ち込まれたことが原因だと書いた。根拠は慶応大学野球部OBの座談会である。

 別に慶応に限ったことではない。600万を超える男たちが戦場に向かい、軍にいたのだ。そこでは陸軍なら内務班で凄惨なリンチを受けるのが「普通」だった。

 今ではその実体験を耳にすることは難しいかもしれないが、私が子供のころは、30-40代の軍隊経験者がいくらでも周りにいたので、しょっちゅう耳にした。

 彼らは国に戻った後そのやり方をあらゆる場所に持ち込んだ。学校もその一つだったということだ。

 セクハラも同じだ。橋下の慰安婦に関する発言自体が、如何にこの国が戦時の性的暴行に深く染まっているかを具体的に証明している。

 軍が強制-そこには甘言やだましも当然含まれる-によって朝鮮、中国、インドネシア、オランダなどの女性を慰安婦という名前の性的奴隷にし、兵士の性欲のはけ口という、道具として「使った」のである。人を『道具』として「使う」。これは奴隷である。

 そのようなことさえ分からないのは、本人たちがその犠牲者を利用して利益をこうむった連中の後継者だからである。

 そしてそのような連中が戦後世界に、破綻した性道徳観念のまま復帰し、女性を下に見る意識のもと、先輩-後輩、あるいは指導者と指導されるものという上下関係のもと、好き放題してきたことは想像に難くない。

 戦争の時代の社会・政治のあり方を徹底して批判し、乗り越える努力をしてこなかったことが、このような事態を招いたのである。

 職場のパワハラ・セクハラも同じ。

 今や日本の職場の劣悪さはネットを通じて世界に知れ渡り、優秀な人材は集まらなくなっているという。

 (「いま日本で働くということ」→http://www.huffingtonpost.jp/2013/05/21/story_n_3311122.html)

 戦前の思想にとらわれている連中の再教育が必要だが、それをなすべき政治・経済・社会のリーダー層自身がその思想の後継者だ。

 もう一回東京裁判が必要かもしれない。

株価暴落は安部右翼政権への鉄槌

2013-05-24 15:17:51 | 国際
 東京の株大暴落は、あまりに突然かつ規模が大きく、関係者はただ理由も見つからず茫然とした、というところだろう。

 今回の暴落は、もちろん急に上昇した株式市場の是正局面、といったこともあろうが、それがここで生じたのは、安部右翼政権、橋本の非道発言、猪瀬の差別発言がきっかけになったことは明らかである。

 彼らの発言はNYT,BBC,Liberation 等を通じて世界に知られた。

 彼らが思想云々以前のまともな思考力を欠いた、乱暴な差別主義者であることが、見事に露呈された。

 このような連中の姿を世界は鮮明に記憶している。

 ドイツのあちこちで乱暴を働いたナチスの輩である。

 本家では-一部いかれた連中がいるものの-政治や文化の中核からその姿は消したが、日本では、アメリカが旧ソ連と中国封じ込めのため飼い続けたため、この手の輩が生き残ってきた。

 このような連中には、今の世界に居場所はない。

 存在すれば排除される。

 日本はアメリカにとって都合よく利用できるローカル組織の一つでしかない。

 だからこそあほな自分の頭で考えない政権も、官僚も生き残ってこれたのだが、今やそれがアメリカの足かせになりかかっている。

 アベノミクスとやらで少し日本人に稼がせて、後でごっそり巻き上げようという算段だったのだろうか-安部批判では必ず「経済に集中べき」というフレーズが入る-それさえ危うくなりつつある。

 かくして予定よりは早くなったものの安部を懲らしめ、日本は早めに処分しようということになったのではないか。

 おそらく安倍政権へのアメリカの支持も長くはない。

 安部は再度入院することとなろう。
 

 

安部・橋本・猪瀬/内田樹氏から

2013-05-24 14:51:19 | 国際
「2013.05.23  日本の文脈・アメリカの文脈

ブログ更新をしばらく怠っていた。
この間の政治的できごとを振り返って、現段階における個人的な総括と見通しを書き留めておきたい。

4月23日の参院予算委員会で、安倍首相は「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国との関係でどちらから見るかで違う」と発言し、これが内外に大きな波紋を呼んだ。

これは前日22日に行った「戦前の日本による植民地支配と侵略」について謝罪した村山富市首相「談話」(1995年)について「安倍内閣として、村山談話をそのまま継承しているわけではない」(参院予算委)とした答弁を承けたものである。

日本が中国大陸や朝鮮半島で行ったことは「侵略」であるかどうかは当事国によって解釈が違う。だから、中国韓国は侵略だと言うが、日本はそれに同意しないという、村山談話の歴史認識を180度転換する重大な発言であった。
中国韓国がこれに異を唱えるのはいつものことだが、今回例外的だったのは、NEW YORK TIMESが これにきびしい批判を加えたことである。

NYTは発言の当日、4月23日に論説委員会名で「日本の不要なナショナリズム」JAPAN’S UNNECESSARY NATIONALISMという長文の社説を掲載し、安倍発言に露呈した日本政府の冒険主義的な外交政策をはげしくなじった。

東アジア情勢が北朝鮮の瀬戸際外交によって不安定化し、日中韓三国間にこれまで以上の連携が求められているときに、なぜあえて波風を立てるような発言をするのか。

「的外れの論戦を掻き立てることは逆効果しかもたらさないが、安倍晋三とその議会におけるナショナリストの同盟者たちがしたことはまさにそれである。火曜日、168人の保守系国会議員が東京中心の靖国神社を訪れた。これは日本の戦死者を祀る神社であり、第二次大戦後に戦犯として処刑された人々も合祀されている。この議員団は近年においては最大のものである。日本のメディアによれば安倍氏自身は参拝をしていないが、供物を捧げており、彼の内閣の副総理と二人の閣僚が週末の参拝団に加わっている。(・・・)
安倍氏と彼の同盟者たちはこれが20世紀の日本の帝国建設と軍国主義の下で苦しんだ中国と韓国にとってどれほどセンシティブな問題であるかを熟知している。だから、中韓のリアクションは予測済みだったはずである。(・・・)

日本と中国はいずれも領土問題を平和的に解決するために努力する必要がある。しかし、北朝鮮とその核問題を解決するために関係諸国が協力して連携しなければならないそのときに中韓との敵対関係に火を注ぐことは日本にとってきわめて無思慮なふるまいのように思われる。

歴史的な傷口をえぐるようなことは止めて、安倍氏は日本の未来を描くことに専心すべきである。」

同盟国の総理大臣の政治的行動に向かって「無思慮(FOOLHARDY)」という形容詞を付すことは、きわめて異例のことである。私の知る限り、アメリカのメディアからここまではっきり罵倒された日本の総理大臣は過去20年間にはいない。

この「叱責」はアメリカ政府からの直接のものではないが、米政府の意向をかなり強く反映しているものと官邸は受け止めた。その結果、米国内での批判の流れを承けて、安倍首相は15日の参院予算委員会で、「日本が侵略しなかったと言ったことは一度もない」と答弁し、村山談話も継承する考えを示し、「村山談話を踏襲しない」とした従来の発言を修正した。
この3日後に、今度は猪瀬直樹東京都知事が同じNYTによって、五輪誘致をめぐって五輪憲章に違反するおそれのある「失言」を報じられた。
五輪候補都市間では、競争相手を貶める発言をしてはならないという憲章の紳士協定を踏みにじった猪瀬「失言」は「安倍氏とその政治的同盟者たち」の国際感覚と紳士としての品性に疑問符を点じたNYMの見立てをいわば側面から立証するかたちとなった。
「猪瀬はしばしば無遠慮で歯に衣着せない言葉づかいで、東京とその競合都市、とくにイスタンブールとを比較したが、それは修辞的な駆け引きとして許される境界線ぎりぎりのものであった。彼はイスタンブールが低開発で、五輪を誘致するには設備がお粗末であることを示唆した。」

そして、猪瀬のこんな発言を採録した。

「イスラーム諸国が共有しているのはアラーだけである。彼らは互いに戦争をしており、階級に分断されている。」
この発言を紹介したあと、記事は「IOCは招致候補都市によって公然と行われた品性を疑わせる非難を看過することはなく、憲章違反をしたものには非難声明を送付してきている」というニューヨーク五輪の招致委員会委員長の発言を引用している。

この長文のインタビューは最後に都知事の国際感覚を疑わせる発言を採録した。

「猪瀬はインタビューの中で、日本文化はユニークであり、こういってよければ他国に優越したものであるという日本では広く支持されている見解を幾度となく披瀝した。」

そしてトルコの国情と人口構成についてコメントした後に、猪瀬は何を血迷ったのか、「トルコ国民が長生きしたければ、日本のような文化を創造すべきである」という暴言を発したのである。

NYTの報道があった後、猪瀬都知事ははじめ「真意が伝わっていない」「インタビューの文脈と異なる記事」として、NYTの報道姿勢に問題があるとしたが、のちに「不適切な発言」があったことを認め、これらの発言を「撤回する」と述べた。

このときのNYTの猪瀬インタビューはかなりの部分まで「トラップ」であったと私は見ている。

これまでの文脈を見れば、「安倍氏のナショナリストの政治的同盟者」には当然石原慎太郎・橋下徹のふたりの日本維新の会共同代表が入っており、猪瀬都知事はその石原前都知事の直系の人物であるから当然アメリカ側の警戒の対象であったはずである。

だから、失言をとらえようというほどの悪意はなくても、「猪瀬がどれほどナショナリスティックな暴言を吐くのか」は政治家としての危険度をみきわめるためにチェックしておく必要があると思って、日本語のできる記者二人を派遣したのだと私は思う。

ところが都知事は誘導尋問にひっかかったわけでもなく、自分から進んで五輪憲章違反の不規則発言を繰り返し、その「自民族中心主義的」「排外主義的(特に「イスラーム差別」)本性を記者たちの前で剥き出しにしてしまった。

記事の行間からうかがえるのは、「無遠慮で歯に衣着せない言葉づかい」で米紙の取材に応じた、国際感覚も紳士としてのプライドも持たない政治家に対してNYT取材記者たちが抱いた深い嫌悪感である。

記事はいささか嫌悪感が前に出過ぎているように私には思われるけれど、五輪招致という本来ならまったく政治性のない穏やかなトピックの取材で、記者たちをここまで怒らせることができたのは、都知事の「お人柄」という他ないだろう。
そして、安倍、猪瀬と続いた「失言シリーズ」の第三弾が橋下徹日本維新の会共同代表の「慰安婦問題」発言であった。
NYTはつよい驚きを以てこのニュースを報道した。
日本のナショナリストに対して、「これ以上、中国韓国を刺激して、西太平洋の戦略的安定のためのアメリカの仕事を増やすような真似をするな」というシグナルをはっきり送ったつもりでいたのが、まるごと無視されたのである。

そればかりか、米軍海兵隊の性欲処理について「気づかい」を示され、それ以降の「言い訳」の中では繰り返しアメリカ軍の「性犯罪」について言及したのである。

この橋下徹という人物は国際感覚がまったく欠如しているのか、それとも「アメリカを不快にさせること」を「中国韓国を不快にさせること」と同じくらい優先順位の高い政治目標に掲げて、それによって国内的なポピュラリティを獲得しようとしているのか。

いずれにせよ、彼はアメリカにとって「きわめて好ましからざる人物」(ペルソナ・ノン・グラータ)にカテゴライズされたのである。

そのいらだちはNYTの記事にはっきりと表れた。

橋下のバックグラウンドと彼の登場の政治的文脈を簡単に紹介したあと、記者はこう書いた。

「彼のスタイルをどう評価しようとも、彼は月曜に日本の戦時下の行動についての許しがたいコメントによって超えてはならない一線を超えた。未来の総理大臣と目されているこの政治家は戦時中のレイプと性奴隷制とに事実上の同意署名をなしたのである。」

「彼は記者団に対して性奴隷は有用な目的のために利用されたと語った。『兵士たちは命がけで銃弾の嵐の下を駆け抜けているのである。感情的に大きな負荷をかけられた兵士たちにはどこかで休息を与えたい。慰安婦制度が必要であることは明らかである』。彼は売春宿は『軍隊に規律を維持するために必要である』と主張し、さらに日本政府が女性たちを奴隷的労働を強制した証拠は存在しないとも述べた。彼は女性たちの経験を、あいまいな言い方で、『戦争の悲劇』に帰した。そして生存している慰安婦は日本からの厚情に値するとも述べた。」

その次のパラグラフからは記者の怒りが伝わってくる。

「紛争の中で女性をレイプし続けている男たちは今もいくつかの国にいる。シリアやコンゴ共和国がそうだ。橋下氏はこのような蛮行をも過労の兵士を慰労するために必要だとして擁護するつもりだろうか。」

「橋下氏のコメントはもっとも過激なものに分類されるだろう。だが、戦時中の歴史を修正し、かつて日本が占領していた諸国との間に新たな危険な緊張をかき立てている日本の政治家は彼一人ではない。」

「日本のウルトラナショナリストたちは1993年の慰安婦に対する謝罪と、戦時中に日本の侵攻によって被害を受けた国々に対する1995年の謝罪をきびしく批判してきた。新たに首相の座についた安倍晋三は当初この謝罪を見直すつもりであったが、先週彼の政府は謝罪を維持することを約束した。

火曜に、日本政府は橋下氏のコメントに対する距離を表明した。しかし安倍氏と政権執行部の人々はそれにとどまらず、橋下氏のコメントを公的に非難する必要がある。橋下氏のような非道な見解を抱く人物が、日本でも他の国でも、何らかの政治的未来があると信じることは困難である。」
記事はそう終わっている。
これはあくまで一新聞の一記者の記事に過ぎないが、WASHINGTON POST やイギリスのBBCニュースやフランスのLIBERATIONなど海外のメディアの一連の報道も、NYTと基本的なトーンは同じである。

この記事から私はアメリカのリベラル派の怒りと不安を感じ取る。

このような人物が将来的に国政で重要な発言力を持つようになったとき、日本は西太平洋におけるアメリカの「パートナー」たりうるのか。

むしろ、アメリカにとっての「新しい問題」になるのではないか。

安倍首相が尖閣をめぐって「軍事的衝突も辞さず」という態度を当初国内に向けて繰り返しアピールし、右派メディアがそれに乗じて「日中もし戦わば」というような上滑りな提灯記事を書いていたことにアメリカはつよい不安を覚えていた。

実際に日中が戦闘状態に入った場合、在日米軍は日米安保条約第五条によって出動を要請される。

だが、アメリカは中国と戦争する気はない。

何のメリットもない戦争である。

だから、日本政府からの出動要請に対して、「尖閣を日本が実効支配していることは認めるが、領有権については日中どちらの立場にも与しない」と答えるだろう。当然である。

日本領土ではないところでの戦闘であれば、日米安保条約の発動要件を満たさない。だから、米軍は動かない。

だが、これで米軍が動かなければ、日本国内の世論は一気に「反米」に振れる。

日米安保条約は「空文」だったということだからである。

68年間われわれは米軍に「無駄飯」を食わせてきたのだ、ということになる。

安保条約即時破棄、日米同盟解消という大衆的世論はもはや押しとどめることができない。

このとき、アメリカは1853年のペリー浦賀来航以来150年にわたって、アメリカ青年たちの血で購ってきた東アジアの「要衝」を失うことになる。

「ウルトラナショナリスト」たちの軽挙妄動によって同盟関係を毀損されることはアメリカの望むところではない。
だが、日本の政治家たちをあまりに長きにわたって「対米従属」下に置き、彼らに自主外交を許さず、国防についても、安全保障についても、エネルギーについても、食料についても、「指示」を下してきたことで、アメリカは結果的に「自力で外交戦略を考えることのできない国」を作ってしまったのである。

その中から「アメリカの国益を配慮しているつもりで、アメリカの足を踏む」とんちんかんな政治家たちが輩出してきてしまった。

今アメリカは深い悩みのうちにいる。

もし、これでアメリカがつよい指導力を発揮して、安倍一派を抑え込み、「ウルトラナショナリスト」の跳梁を阻止したとしても、それはますます日本という国の「自浄能力」「自己修正能力」を損なうことになる。

「困ったことがあったら、最後はアメリカが尻を拭ってくれる」から、自分では何も考えない、何も判断しない、何も改善しないで、ぽかんと口を開けてアメリカの指示を待つという国民性格がさらに強化されることになる。

つまり、ここで強い指導力を発揮して日本政府の方向性を「修正してあげる」ことで、アメリカは「日本というリスク」をさらに高めることのなるのである。

アメリカは今苦しんでいる。

私が国務省の「対日政策局」の小役人なら、どうしていいかわからずに今頃は頭を抱えているだろう。
「とりあえず『安倍を残して、橋下を切る』というのが現在とりうる『わりとましな方法』です」というレポートを起草して上司に提出するだろうが、「知恵のないレポートだな」と上司は不機嫌そうな顔をするに違いない。」

http://blog.tatsuru.com/

危うさ覗かせたアベノミクス-東京株価暴落

2013-05-23 15:21:34 | 経済
 日本の株高と円安を演出しているのは海外の投資家だろう。

 上がったところで売りに出て彼らは稼いだ。

 又しばらくしたら株高を演出し、また売る。

 その挙句に国債の大暴落を演出して日本経済を丸ごと買いいれることにするつもりだろう。

 TPPが大体まとまるころがめどだろうか。

①株価暴落

 「  5月23日(ブルームバーグ):東京株式相場は暴落し、日経平均株価の下げ幅は1000円を超えた。国内金利の上昇警戒感に加え、中国経済統計の低調をきっかけに先物主導で売り圧力が強まり、金融や不動産など金利敏感株を中心に東証1部33業種は全面安。

大阪証券取引所では午後2時28分から15分間、日経平均先物で売買を一時停止するサーキット・ブレーカーが発動された。
日経平均終値は前日比1143円28銭(7.3%)安の1万4483円98銭、TOPIXは87.69ポイント(6.9%)安の1188.34。東証1部の売買高は概算で76億5514万株と史上初の70億株乗せ、売買代金は5兆8377億円と歴代1位。

この日の日経平均は朝方に一時315円高の1万5942円と1万6000円に迫ったが、その後調整色を強め、午後に急落。きょうの高安値幅は1458円に達し、ブルームバーグ・データによると、日経平均の大規模な銘柄入れ替えがあった2000年4月17日(1737円)以来となった。

記事についてのエディターへの問い合わせ先:院去信太郎 sinkyo@bloomberg.net

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MN821X0D9L3501.html


② 誰が買っているのか・だれが売っているのか

「 日経平均株価は2012年秋以降、順調すぎるぐらいの上昇を果たし、13年初めからの上昇率は45%を越えています。日本株が今後どこまで、あるいはいつまで上昇するかを決めるのは、外国人投資家の動向をおいてほかにありません。外国人については3月6日付「実はもうけ薄い外国人 日本株・国債を売り越す日」や5月1日付「日本株4週ぶり売り越し 外国人に2つの誤算」で分析してきましたが、改めてその実態に迫ってみます。

 外国人とひとくくりにして呼ばれていますが、日本株を積極的に売買しているのは大きく分けて米国を中心とする「北米」、英国やスイスなどの「欧州」、香港やシンガポールなどの「アジア」の3地域に分類することができます。

 欧州系と北米系、アジア系では投資主体や手法にどんな違いがあるのでしょうか。まず3地域に共通しているのは、投資家の中心は法人だということです。個人の割合は法人の5分の1~6分の1程度にすぎません。これを踏まえたうえで、それぞれの特徴をみていきましょう。

■欧州 機関投資家やプライベートバンクが堅実運用

 欧州の投資家の中心はヘッジファンドや年金基金、プライベートバンク、投資信託などとみられています。

 欧州系の機関投資家は「国際分散投資のパイオニア」といわれ、長期投資を基本に堅実な投資をする傾向があります。また欧州のプライベートバンクは世界の王族や資産家、富裕層など特定の顧客に限定し資産運用だけを手掛ける「個人銀行家の銀行」の色彩が強く、個人向けに総合金融サービスを提供する日米のプライベートバンクとはかなり異なります。

 また、中東産油国のオイルマネーの多くも欧州(主にロンドン)を経由して海外に分散投資している、とみられています。オイルマネーは長期投資が基本で、世界各国の代表的な銘柄(大型株)に分散して投資する傾向があります。

 英国系はヘッジファンドの数で米国系に次ぐ世界第2位にランクされています。

■北米 投機仕掛けるヘッジファンド、年金も受託

 北米の投資家は、米国のヘッジファンドや投資ファンド、年金基金、投資信託などが中心のようです。

 ヘッジファンドは高利回りを狙った投機色が強い投資が特徴です。株式や債券、為替、商品など少しでも有利な投資対象を見つけると短期間で投機を仕掛け、逃げ足も早い傾向があります。買いでも売りでももうかる投資手法をとっているため、価格変動が大きければ大きいほどもうけのチャンスは広がります。

 これに対し、カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)などに代表される年金基金は長期投資が基本です。ただし年金基金も最近ではヘッジファンドなどに運用委託する割合が高まっているようです。

■アジア 華僑マネーはより投機的

 アジアの投資資金は華僑マネーが中心とみられ、香港やシンガポールを経由してかなり投機的な動きをするといわれています。他の2地域と比較すれば、欧州の投資家が保守的(堅実)、北米は投機的なのに対しアジアはより投機的、と色分けできそうです。 では、日本株に投資する外国人の中で、最もウエートが大きい地域はどこでしょうか。おそらく米国と答える人が多いのではないかと思いますが、ここ数年間は売り買いともに欧州が最大勢力です。次いで北米、アジアの順になります。

 東京証券取引所の「海外投資家地域別株券売買状況」でみると、12年(1月4日~12月28日)の外国人による日本株の買いは計165兆円で、欧州が63.98%、北米が24.87%、アジアが10.95%を占めています。売りは計162兆円で、欧州が64.16%、北米が24.94%、アジアが10.68%です。全体の買越額は3兆364億円で、内訳は欧州が1兆6519億円、アジアが7617億円、北米が6386億円となっています。

 しかし、今年に入ってからはこうした外国人の勢力図に異変が起きています。欧州の買越額が大きく減少しているのです。表をみると、1月の買越額は北米がトップ。2月はアジアにも抜かれ、欧州は3位に後退しました。3~4月は欧州が再びトップに立っていますが、北米・アジア(特に北米)勢の急増ぶりが目立ちます。



 このように、日本株市場における外国人の中核を担ってきた欧州勢の買越額が今年に入ってから減り、北米・アジア勢が増える傾向にあるのは気になる兆候です。株価の動きとの関連でいえば、欧州勢のように長期投資を基本とする外国人の日本株投資は減少し、投機色の強いアジア・北米勢による買い越しが増える傾向にある、とみることもできます。

 外国人の投資動向をつぶさにウオッチしておけば、日本株の今後の動きを予測するうえで重要なヒントが得られるのです。

<筆者プロフィル> 1942年愛媛県生まれ。中央大学法学部を卒業後、株式専門誌などの編集・記者を経て、87年に経済ジャーナリスト・経済評論家として独立。証券、金融、不動産から経済一般まで幅広い分野で活躍中。的確な読みとわかりやすい解説に定評があり、著書は90冊を超えている。「もっともやさしい株式投資」「『相場に勝つ』株の格言」「世界で最も読まれている株の名著10選」(日本経済新聞出版社)などがある。」

http://www.nikkei.com/money/investment/stock.aspx?g=DGXNMSFK20012_20052013000000&df=1

[徐京植の日本通信] ある牧師/ハンギョレより

2013-05-23 12:52:33 | 政治



「 気持ちよく晴れた秋の午後、東京郊外の鉄道駅で待ち合わせて、久しぶりに東海林勤(しょうじ・つとむ)牧師に会った。まず、昨年体調を崩された奥さまの様子を尋ねると、近ごろはかなり回復されたとのことで、先生の表情も穏やかに見えた。奥様は慰安婦問題で支援と補償要求運動を中心的に担われた東海林路得子(るつこ)さんである。

 「私ももう80歳です」と先生牧師はおっしゃった。気づいてみると、東海林牧師と私が初めてお会いしてからおよそ40年が経ったことになる。1971年4月20日、陸軍保安司令部が私の兄である徐勝と徐俊植を「学園浸透間諜団」という容疑で逮捕したと発表した。私はその時、満20歳で、東京の早稲田大学の学生だった。

 彼らの同窓生や知人たちから救援運動が始まり日本各地に広がった。その当時、東海林牧師は早稲田大学YMCA学生寄宿舎の舎監を務めておられた。大学闘争の最盛期だった。キリスト教系の学生団体も例外ではない。学生たちは、彼に救援運動への協力を強く求めたのである。学生たちには、牧師なら反共独裁体制の韓国でも比較的自由に行動できるだろうという計算もあったのだ。告白すると、私自身もこうした計算をした一人である。いま思えば、恥ずかしいことだ。だが、徐勝、俊植となんの関係もなく、私とも一面識もなかった東海林牧師は、学生たちの求めに応じて、この困難な役割を引き受けて下さったのである。当時の学生たちの多くは若い日の志を貫くことができず、自己の小さな利害 を守るのに汲々として、いま還暦を過ぎる齢となった。すこしも揺らぐことなくこの40年を生きたのは、学生たちに担ぎ上げられた東海林牧師のほうである。

 東海林牧師はもともと、自分の苦労話などしない人だから、彼の青年時代のことはほとんど知らなかった。今回、初めて聞いたのだが、キルケゴールやドストエフスキーを耽読し、実存主義に傾倒していた彼は、政治的関心の乏しい内向的な性格だったようだ。だが、大学院で突然、神学に針路を変え、1960年代後半、留学したニューヨークのユニオン神学校でベトナム反戦運動に触れたことが転機となった。

 1971年12月8日、東海林牧師はソウル拘置所に収監されている徐勝と俊植に面会するため初めて韓国を訪れた。それが、彼と韓国とのその後の長い関係の出発点となった。維新体制下で発せられた「1973年韓国キリスト者宣言」に強く心を動かされ、日本から拉致された金大中氏の救援運動を始めとして、韓国民主化への支援連帯運動を担い続けた。

 1996年に、東海林牧師夫妻と私たち夫婦はいっしょにイスラエルを旅行したことがある。牧師である彼にとって、そこは一生に一度は訪れてみたい特別な場所だった。日本キリスト教協議会(NCC)の総幹事という職責にあった東海林牧師には、イスラエル政府から何度か招待もあったという。だが、在任中は招待を謝絶し、退任後に自費で訪れたのだ。そのようにして、イスラエル政府の対パレスチナ政策に対する不同意の意思を貫いたのである。

 その時、エルサレムのレストランでの食事中、東海林牧師がさりげなく思い出を語った。「もう時間が経ったから話してもいいでしょう。実はあの時、舎監宿舎の2階に米軍の脱走兵をひとり匿っていたんですよ…」あの時というのは、まさしく「徐兄弟を救う会」の代表を引き受けた頃のことだ。25年後になって、何でもないことのように、そんなことを言ったのである。

 80歳を過ぎた今も、東海林牧師は変わらない。原発問題にせよ、沖縄の基地問題にせよ、キリスト教会の態度が無関心や不透明であることを彼は静かに批判する。そして、こんなことを付け加えた。「私は妥協がなさ過ぎるので、他の人を居心地悪くさせてしまう。これは自分のよくない点だと、この頃になって反省しているのです」

 40年間の交流を思い返しながら、私はあえて言葉を返した。「それは違います。これが基準であると身をもって示してくれる存在が、私たちには必要なのです。先生はそういう存在です。」

 日本はいま、戦後最悪といっていい歴史的岐路に立っている。昨年の東日本大震災と福島原発事故のあと、私は自分の予感が外れることを心から願いながら、「これを契機に日本社会がファシズムへと転落する危機が迫っている」と書いた。残念ながら、現実は私が予感したとおりに進んでいるようだ。こんな時代であればこそ、日本社会の一角に、東海林牧師のような人が、誠実そのものの姿で静かに存在していたことを記録しておかなければ、と思うのである。

韓国語原文入力:2012/10/22 19:33
http://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/556922.html 訳J.S(2001字)」

http://japan.hani.co.kr/arti/SERIES/11/13823.html

破滅をもたらしかねないアベノミクス/ヘッジファンドの警告・FTより

2013-05-23 12:41:45 | 経済
 アベノミクスが日本の経済的破局を招きかねなという指摘。

 してきているのはヘッジ・ファンドの経営者。2007年の金融危機を予告し、今も25%のリターンをあげているという。

「自分の見方が間違っていればいいのだが、とカイル・バス氏は思っている。ほかの誰もがそう願っているかもしれない。米ダラスに本拠地を構えるヘッジファンド、ヘイマン・キャピタルの創業者である同氏が予想しているのは、世界第3位の経済大国である日本が本格的な金融危機に見舞われるという危険な事態にほかならないからだ。

 今年のヘッジファンドの戦略は、日本円を空売りする一方で輸出ブームに沸きそうな日本株を買うというものだが、いわゆる「アベノミクス」――安倍晋三新首相による景気刺激策――には、バス氏が3年前から予言しているストレスの兆候が垣間見えるという。

「日本売り」はずっと失敗してきたが・・・

 バス氏は長期にわたって予言し続けているため、陳腐な理屈を振り回す弱気筋にすぎないと見られているかもしれない。実際、日本国債の空売りは過去10年間、「ウィドウ・メーカー(未亡人製造器)」であり続けている。金利は低下する一方で、金利の上昇(債券価格の下落)に賭けた投資家は次々にやられてしまっている。

 しかしバス氏は、利回りの上昇では済まない事態を予想している。「2~3年のうちに日本は債券危機に見舞われるだろう。債券危機というのは、スプレッド(利回り格差)が拡大するだけの話ではない。金利や通貨がコントロールできなくなるという話だ」

 しかし、バス氏は変人でもなければ、永遠の弱気筋(投資の世界における止まった時計のようなもの)でもない。

 同氏は2007年の住宅価格急落を予測し、それに関連する取引で利益を得た数少ない市場関係者の1人だ。複数の投資家の話によれば、同氏が運用するヘッジファンド(運用資産15億ドル)は2006年以降、平均で年率25%のリターン(運用手数料控除後ベース)を計上しているという。

 また、バス氏は買い持ちのポジションを取るのが普通だ。投資対象は各種債権の証券化商品や、銀行の貸付債権(職業別電話帳のような小規模事業向け広告事業を展開する米スーパーメディアの銀行ローンなど)だ。

 自身が日本に関連してどんな取引を行っているか、バス氏は詳細を語らないが、オプション取引のポジションがあることを示唆している。世界金融危機前の不動産担保証券(MBS)絡みのオプションのように、適正でない価格がついているオプションだ。

 バス氏は言う。「おかしいのは、無リスク金利のオプションのオプショナリティ(時間的価値)を、無リスク金利を入力して計算していることだ。だから基本的に、相場の大きな転換点では、この公式で得られる結果は間違いでしかない」

巨大ねずみ講との共通点

 日本ではこの転換点が近づきつつあるという。バス氏はその理由を、米国の巨大金融詐欺事件の首謀者バーナード・マドフを引き合いに出してこう説明する。「新たに入ってくる人の方が出ていく人よりも多い限り、どんな種類の詐欺やウソ、支払い義務の不履行も続けられる」

 バス氏によれば、以前の日本弱気筋は日本の資金繰りを支えるメカニズムを見落としていた。かつては、経常黒字の対国内総生産(GDP)比は3~6%で、財政赤字のそれは3%でしかなかった。一方で、日本の貯蓄超過主体は安心して日本国債を買っていた。

 ところが、人口は減少基調に転じており、貯蓄不足主体が貯蓄超過主体を凌ぐようになっている。経常黒字はほとんどなくなり、財政赤字はGDP比11%に膨らんでしまっている。

 「国内で資金繰りをつけるメカニズムが、文字通り一夜にして変わってしまった」とバス氏は言う。

 この見方に対する標準的な反論は2つある。1つは、純債務は政府の保有資産により4兆円相殺されるというもの。もう1つは、日本国債を買っている国内勢はどんな危機においても政府を支援するというものだ。

 「総債務か純債務かという話は、まったく馬鹿げている」とバス氏はこれを切り捨てる。「どの資産であれ政府が売却しようとすれば、それをきっかけにパニックが起こるだろう」

投資家の「愛国心」は当てにならない

 バス氏は日本の貯蓄家の愛国心についても同様に懐疑的で、「彼らの愛国心と政府に対する愛情を混同してはならない」と言う。

 同氏は、1009人の日本人投資家を対象とした調査を委託し、「仮にあなたの国で債券危機が生じ、政府が日本国債をもっと買うよう訴えかけてきたら、あなたは国債の購入を増やしますか、増やしませんか」と尋ねた。すると、8%が買うと答える一方、83%は「ただ手を引くだけでなく、走って逃げる」と回答したという。

 バス氏は、その選択は2年以内にやって来る可能性が高いと言いながら、「70年間に及ぶ債券のスーパーサイクルの終わりを多少なりとも正確に予想できると言うのは、考えが甘い」と付け加える。

読みが間違っていることを祈るばかり

 バス氏はさらに、自分が間違っていることを心から願っていると話している。また、同氏は国債に関しては政府が失敗する方に賭けているが、円に関しては成功する方に賭けている。円安が進み、日本の競争力が高まり、金利が安定した状態が続けば、「世界は今よりずっと良い場所になる」とバス氏は言う。

 だが、バス氏の読みが正しかった場合、「1000兆円規模の資金が債券を買い持ちにしているのだとすれば、全員が間違った側にいる」ことになり、さらに数兆ドル規模の金利スワップが存在している可能性もあると指摘する。

 「だから、誰がどこにいて、誰が間違った側にいるのか考えたら、すべての人が間違った側にいる、というのがその答えになる」

By Dan McCrum
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http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37842

5月23日の放射線量

2013-05-23 12:38:27 | 放射能
新潟県内、窓締め切り、室内、天気は晴れ。

0.07μ㏜/h。

『日経サイエンス』に福島の生物相が変化しているという記事が載っていた。

 日本の海岸ならどこにでもある巻貝の消滅などの報告が出ているという。

 人体への影響をもっと本気でしなければならない。

 さまざまな兆候と警告無視の上に福島の大惨事が起きた。

 こんど日本人の生物としての破滅へのシグナルかもしれない。

TPP/「規制の内外調和」規定・・・ISDより問題か

2013-05-21 17:38:28 | 国際
「「Regulatory Coherence(規制の内外調和)」についてのリーク情報です。

 これは、日本でも問題視されている「ISDS」や「Transparency」と共にTPPの本質を代表する項目です。

 じっくり読むととんでもないことが書いてあります(訳語が一定していませんが、ここでは“規制の内外調和”としておきます)。また、TPPにおける非公開性・秘密主義がどのように取り扱われているかが、冒頭の文章で分かります。

★ ★ ★

環太平洋パートナーシップ

規制の内外調和

発出元:2010年3月4日付 機密指針

論拠:1.4(b)


機密扱いからの除外:TPP発効4年後、発効しなかった場合には交渉終了後4年後
*この文書は了解なく公表することはできない。しかし、郵送、もしくは機密扱外のeメール、ファクシミリ、盗聴防止機能のない電話での会話でやりとりされ、機密保護されていないPCへの保存は可能。資料はセキュリティの効いた建物、部屋、もしくは保管庫に施錠管理されること。

規制の内外調和

第Ⅹ.1章:

一般条項
1.規制の内外調和には以下のものが含まれる:
  (TPP加盟国は規制の内外調和の定義に対する適切な範囲に関する検討を深めること)
2.加盟国(団体)は以下の重要性を認める:

a.規制の内外調和に関する条項、特に、加盟国間における、物品の貿易、サービス、投資の促進に関するものについて、本協定による恩恵を保つこと、

b.各国が妥当と認識する水準において、加盟国が規制上の優越事項を特定し、この優越事項に対応する規制措置を確立および行使する国家としての自主権、(注1)

注1.この文言は、加盟国の権利を規定する協定の前書きに記載されるべきか、または正当な目的を追求するうえでの各国の規制の権利に関する指針として別の章のなかで追記するか、再度見直しが必要とされる可能性がある。

c.この規制が公共政策の目的、つまり環境保護、労働権、市民や労働者の健康と安全を達成するために果たす役割、

 d.規制措置を策定、遂行する上での幅広い利害関係者の参加、

 e.加盟国の国際的な義務を考慮に入れた地域の規制協力。


第Ⅹ.2章

国家レベルの調整機関を含む、調整および検証の手順や仕組みを持つ中心的機関の設立

1.規制の内外調和とは、一般的に適用される規制措置を構築するための手順について、関係閣僚間の協議と調整を促す国内の仕組みを通して促進されるということを、加盟国は認めている。さらに加盟国は、規制措置に関する情報が確実に一元管理され、広く頒布されることによって、規制事項に関する加盟国間の関与が高まることを認識している。それゆえ、各国は、中央政府のレベルで新たな規制措置(”対象となる規制措置”)の一元的な調整と検証を促進するための手順または仕組みを確実に備えるよう努力すること。そして、この目的を達成するための国の調整機関の設立および管理を検討すること。各加盟国は、法律、条令、その他の手段のいずれかに関わらず、公表されている基準を基に、対象となる規制措置の範囲を決定すること。各加盟国が独自に対象となる規制措置の適切な範囲を決定してしまう可能性はあるが、その際は必ず、本章の適用を回避する目的で任意に範囲を制限することなく、十分に広い範囲を定めること。

 国の調整機関またはその他の適切な手順または仕組みの設計、権限の範囲、制度上の位置づけなどが、各国の国内事情(発展段階および政治的、制度的構造の違いを含む)によって様々であることは予測されるものの、X2.1にて言及した調整機関、手順または仕組みは、概して、制度上の一貫性を促進させるために最大の効果を発揮できる一定の共通する特徴を有するべきであることを、加盟国は認める。その特徴は以下のとおり:
 a.制度上の構成要素を定め、政府と外部関係者の信頼に足る十分な資源と地位が付与されていることを証明する法的、行政的公文書があること、
 b.策定した措置により、以下のX.3章に規定された内容を含むがそれに限定されない
良い規制慣行がどの程度行われるかを判断するために、対象の規制措置を見直し、その見直しに基づいて提案する権限があること、
 c.本協定のX章に盛り込まれた透明性の規律を促進する重要な役割を果たすこと、
d.省庁間の重複、反復を可能な限り減らし、省庁間で相反する要求が出ないようにするために、各省庁間の調整と協議を強化し、また、特定の規制分野に関心のある省庁に対し規制策定への参加を促して、一貫性のある規制の促進を保証する能力があること、
 e.決定権を持つ者に対して、構造的な規制改革を行うための提案能力があること、
f.検証した規制措置、構造的規制改革に対するあらゆる提案事項について、本調整機関自身の制度的改善に関する最新情報を含め、定期的に活動を報告すること。

3.国の調整機関、手順、仕組みを通じて、各加盟国は、(i)規制措置の策定に関して検証責任を持たない中央政府レベルのすべての規制当局、および(ii)各加盟国の領土内における、関連の準政府機関との連絡経路を維持する方法を、可能且つ適切な範囲で模索すること。

第Ⅹ.3:核心的な良い規制慣行の履行

1.国の調整機関、手続き、仕組みを通じ、各国は、対象となる規制措置の検証責任の遂行において、加盟国の目的を達成するためにもっとも良い措置を考案するため、各国によって設定された経済影響評価の限界を超える対象の規制措置を講じる場合は、国内法に準じて、規制影響評価の実施を行うよう関連当局を後押しすること。

a. RIA規制影響分析Regulatory Impact Analysisは、特に以下を確認すること:

 (1)課題の重要性の評価と規制行動の必要性の説明を含め、規制当局が対応しようとする課題と政策目標、

 (2)政策目標を実現するための、潜在的に効果があり、且つ妥当な実現可能性を持つ
代案、

 (3)該当する場合、選択された代案が、波及効果を考慮する一方、質的な利益を含む純利益を最大化する方法で、政策目標を実現すると結論づける理由。

b.規制影響評価には以下が含まれること

(1)計画された規制措置のあらゆる面において、政策目標達成のために規制する必要があるか、または国内法に準じて、規制によらず/自発的な方法で政策目標を達成できるか否かの検討。

 (2)負担や利益は数量化することが難しいことを理解しつつ、実現可能性があり国内法に反しない範囲内での、可能な各代替案の費用と利益の評価。代替案のなかには、規制しないという選択肢を含む。

 (3)その選択肢が他の代替案より優れている理由の説明。該当する場合は、可能な他の選択肢に対する純利益の規模の比較を提出すること。

 (4)特定の規制当局が持つ権限、責務、資源の範囲内で、もっとも合理的に取得可能な、科学的、技術的、経済的その他の情報を基にした決定事項。


2.「純利益」とは、計画された規制活動による予想上の利益と費用との差である

2.加盟国は、RIA分析に関連する可能性のあるこれらとその他の「良い規制慣行」の概念が、APEC-OECD規制改革統合チェックリストおよび技術的規制のための良い規制慣行に関するAPEC情報記録に反映されることを認める。

3.加盟国は、技術的な事項に対応する規制措置のなかに、その措置を理解し、適用するには関連分野の専門性が必要になる場合があることを認識し、対象となる規制措置が簡潔明瞭、且つ整理され、理解しやすいものになることを保証すること。

4.各加盟国は、本協定第Ⅹ章に規定された透明性の規律に従い、関連する規制当局が、
対象となる規制措置、規制の分析、データおよびその捕捉資料を誰でも入手できるようにし、場合によっては、こうした情報を閲覧、再発行できるようオンライン上に掲示することを保証すること。

5.各加盟国は、政策目的を達成するためのより効果的な規制制度を作るため、具体的な
規制措置について、修正、簡素化、拡大、廃止が必要かどうかを決めるため、適切な頻度で、既存の重要な規制措置の一部またはすべてを検証する手続きを確立または維持すること。
加盟国が規制上の手段を見直す際に考慮すべき項目には、基本的な技術変化など環境の変化により措置が不要になったり、時代遅れとなっていないか、また規制での協力活動や規制の拡大を通してその効果が高められるものはないか、などが含まれる。

6.各加盟国は、規制当局によって今後最低12か月以内の発行が妥当と思われる規制措
置の記載を含む、規制予定報告書を毎年発行すること。

7.各加盟国は、対象となる規制措置に関して他の加盟国間および各関係者間をうまく協力させるためのあらゆる方法を検討すること。その一部は以下のとおり。

a.他の加盟国との情報交換、対話、会議
b.他の加盟国および中小企業を含む利害関係者との情報交換、対話、会議
c.他の加盟国との規制活動の協調
d.最良の方法を共有し、また、関連する規制手法、基準、手続きを調和させる取り組みへの参加、および、規制措置の策定過程におけるそうした取り組みの検討
e.他の加盟国の規制手法、および国内法に反しない適切な範囲内での、国際的、地域的、その他の協議の場における進捗を検討するのに十分な時間を確保した規制スケジュールへの配慮

第Ⅹ.4章:

セクター方式による取組み
加盟国は、本協定の他の章で定められた義務の範囲内で、該当する場合は、特定の商品およびサービスセクターに関連する規制の調和を高めることを目的に、具体的な手法を開発する取組みに価値があることを認める。
それゆえ、加盟国は、本協定の他の章の規定に基づいて設立された委員会や組織に定められた責任を害することなく、本協定の他の章のセクター間規制の一貫性に関する条項の実施と運用について、定期的に協議し、以下の第X.X章に関連する将来のセクター別手法の潜在性を念頭に、これらの条項に関するあらゆる知見との関連性を調査すること。


第Ⅹ.5章:

制度上の枠組み
1.加盟国はここに、規制の内外調和に関する委員会を設立する。同委員会は、総意に基づいて意思決定され、協定の発効後1年以内に召集され、その後少なくとも1年もしくは2年に1度召集され、本章の実施と運用に関する課題を検討し、将来の優先事項を確認する。その中には、本協定の他の章の下で定められている義務に関して、加盟国間の規制一貫性に関係する協力活動に対する潜在的なセクター別イニシアティブが含まれる。

2.将来の優先順位を特定するため、同委員会は協定の他の章に基づき設立された他の組織の活動を考慮し、活動が重複しないことを確認する。

3.同委員会は、規制協力への取り組みが徐々に重視されるようになること、他の関連する協議の場で進められている政策が軽視されたり、重複したりすることがないことを確実にするため、行動計画を策定、管理する。それゆえ委員会は、加盟国が参加している他の協議の場における協力活動を定期的に確認する。

4.加盟国は委員会に対し、Ⅹ章2.1遂行のために創設された手順または仕組みに関する情報を速やかに提供すること。この情報には、今後設立される予定の機関の責任と活動、対象となる規制措置の範囲が含まれる。さらに各加盟国は、協定発効後1年以内にⅩ章2と3の遂行に関して、他の加盟国の求めに応じ情報を提供するための連絡先を特定すること。

5.同委員会は、本協定発効後少なくとも5年に1度、国家の調整機関、手順、仕組みを維持する上での良い規制慣行や最良の実践事例、その規律強化と改善に向けたX章2および3を実行した加盟国の経験を検討すること。

第Ⅹ.6章:

利害関係者の関与
第1回の会合において、規制の内外調和に関する委員会は、全加盟国の様々な立場、分野の人の参加を保証するため、本協定を通じて、規制の内外調和を向上させる取組みに関心を持つ人々が見解を述べる、有意義な機会の提供を保証する仕組みを構築すること。

第Ⅹ.7章:

定義
 「規制措置」とは、法令順守の義務が生じる中央政府レベルの規制当局により、提案または最終の形式で一般的に適用される措置を指す。

第Ⅹ.8章:

紛争解決
第Ⅹ章 このX章(紛争解決)への適用は「調整機能の一元化を促進し、新しい規制措置を検証するための手順または仕組み」を確保するという義務に限定される。ある加盟国が第Ⅹ章の目的に照らして約束不履行の訴訟を起こす場合、その加盟国は、相手の加盟国が(1)義務を侵したこと、(2)そのような侵害が両国間の貿易と投資活動を阻害したこと、を証明する必要がある。

第Ⅹ.9章 秘密保持:

この章のいずれも、加盟国の国内法により開示が禁止または除外されている情報、または公開によって情報提供者の競争上の立場が不利になる情報などの機密情報の公開を要求するものではない。
(翻訳:田所 剛      監修:廣内かおり)」


安部改憲が目指すもの/WSJ

2013-05-21 17:32:33 | 政治
「 第2次安倍内閣の最優先課題は当初の景気回復から、安倍首相を他の何よりも駆り立てる問題、日本の戦後憲法の改正へ戻ってしまったようだ。国論を大きく二分してきた多分に象徴的なプロジェクトを追求することで、安倍首相は国民からの高い支持を失うリスクを冒している。

 日本における憲法改正の議論は「日本国民は国権の発動たる戦争を永久に放棄する」とした第9条に焦点が当てられることが多い。ところが、2012年に与党自民党が発表した憲法改正草案は国民が負う長い義務のリストや緊急時の首相の権限など、幅広い改正を求めている。つまり、安倍首相や自民党の議員たちは、日本政府が1946年に占領軍によって起草された憲法を実質的に置き替えるまで、日本は主権を完全に取り戻せないと考えているのだ。


 日本の憲法は世界で最も改正が難しい憲法の1つだと認識している自民党は、まず憲法改正手続きの簡略化に焦点を絞ってきた。憲法第96条は、改正には衆参各院の3分の2以上の賛成を得た上で、国民投票でも過半数の承認を得る必要があると定めている。自民党はより思い切った改正の準備として、衆参各院で求められている3分の2以上の賛成を過半数に緩和したい考えだ。

 自民党が一見害のなさそうな改正手続きの問題を中心に据えることで反発をかわそうとしたのだとしたら、その策略は失敗に終わった。新聞各紙には憲法改正の不適切さを指摘する社説が掲載され、自民党の憲法改正草案は国内外の報道機関に注視されている。96条を改正するには政治的にかなり大きな障害もある。

 第1に、衆参各院で3分の2の議席を持っていない自民党が憲法を改正するためには政治的な同志が必要だ。政権の連立パートナーである公明党は自民党の憲法改正案に対して態度を明らかにしていないが、96条改正をこの夏の参議院選挙の争点とすることには反対している。公明党が反対に回ったとしても、96条改正に共感する野党の協力が得られれば衆議院で十分な賛成票が集まるかもしれないが、夏の参院選後でさえ、参議院で3分の2の賛成票を獲得するのは難しいだろう。

 たとえ改正案が国会の両院を通過したとしても、日本国民がそれを支持するかどうかはまだわからない。安倍首相は5月14日、参院予算委員会で、最近の世論調査の結果に基づくと、96条改正の国民投票が今行われたら、否決されるだろうと認めた。たとえば中道左派の朝日新聞が行った最近の調査では、回答者の54%が96条改正に反対、賛成はわずか38%だった。

 96条改正が実現するまでの政治的障害を踏まえると、これを国家的議題の中心に据えるというのは奇異な決断である。安倍首相はなぜ、人気の経済実験への関心を犠牲にしてまで国民の反感を買ったり、野党を勢いづけたりするリスクがある厄介で象徴的な問題に取り組むのだろうか。

 その理由の1つとしては、選挙の日程の絡みで安倍首相が憲法改正を遅らせるわけにはいかないと感じているということがある。仮にこの夏の参院選で96条改正を可能にする3分の2の過半数を獲得し損なうと、次のチャンスがめぐってくるまであと3年も待たなければならなくなるのだ。

 それでもなお、なぜ安倍首相が憲法改正に重点的に取り組みたいという強い衝動に駆られるのかという疑問が残る。その動機の中心にあるのは、策略的というよりも心理的なものである可能性が高い。安倍首相は昔から自らを21世紀のために日本を作り変えるという使命を帯びた「信念の政治家」と称してきた。その使命は、第二次大戦中の東條内閣で閣僚を務めた後(戦犯容疑者として逮捕されるが、その後不起訴となった)、自民党初代幹事長を経て首相に就任した祖父、岸信介氏から受け継いだものである。なかなか消えない敗戦の傷跡(その最も突出した例が日本国憲法)を消し去ることも安倍首相の使命の一部なのだ。それをすることで、安倍首相は、傷つけられたと思い込んでいる日本人のプライドが回復することを願っている。

 19世紀の終わりに日本の政府と社会を作り変えた明治時代の政治家のように、安倍首相は急成長するアジアでの国際競争へ向けて日本を強化したいと考えている。アベノミクスも憲法改正もこの目標の実現を意図してのことなのだ。問題は日本国民が安倍首相の使命を自分たちのものとして受け入れるかどうか――もしくは、憲法改正の夢を追うことが、より実際的な政治的・経済的発展を阻むことにならないかどうか、である。

(トバイアス・ハリス氏は日本の政治に関するブログ、オブザービング・ジャパンの執筆者である)」

http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324582304578488313061482222.html?mod=WSJJP_opinion_LeadStory