「薄一家スキャンダルの裏で、中英米情報機関が暗闘
2012/04/27 23:18
失脚した元重慶市トップの中国共産党幹部、薄熙来氏の新たな「悪事」が中国、米国、英国などのメディアで、毎日のように暴露されている。事態は、これら諸国の情報機関も絡んだ暗闘に発展しそうな勢いだ。
問題は、米英の情報機関が一連の事件を通じて、どれほど中国共産党内の権力闘争にかかわる機微な情報を入手できたか、反対に中国側はどれほどダメージをコントロールできたか、だ。米英が今後の対中戦略に生かせる機密情報をつかんだ可能性も否定できないのではないか。
薄氏夫人、谷開来容疑者に昨年11月殺されたとされる英国人実業家ニール・ヘイウッド氏は英紙デーリー・メールによると、英対外情報機関MI6工作員が設立した情報企業ハクルート社のコンサルタントを務めたことがあり、MI6に情報を提供していたとみられている。MI6の上部組織にあたる英外務省はヘイウッド氏が「MI6に雇用されていた事実はない」(ヘイグ英外相)と否定したが、情報提供の有無には言及していない。薄氏一家と親密だったヘイウッド氏に対して、MI6が協力を求めない方がおかしいとみるべきだ。MI6はヘイウッド氏を通じて、中国共産党政権の内部情報を得ていたに違いない。
ヘイウッド氏殺害事件の捜査に絡んで身の危険を感じ、四川省成都の米総領事館に駆け込んで約30時間滞在した薄氏の元部下、王立軍・元重慶市副市長兼公安局長はその捜査資料を持ち出したと伝えられている。ニューヨーク・タイムズ紙によると、この資料は米総領事館に持ち込んだが、「米側には渡さなかった」という。また王氏が米側に伝えたのはヘイウッド氏殺人事件に関する情報のみ、と同紙は伝えている。
王氏の総領事館滞在はホワイトハウスにも連絡されたが、米政府は王氏の亡命を認めなかった。もし、現在中国公安当局の拘束下にある王氏が米側への情報提供を根拠に国家反逆罪で有罪を宣告され、処刑されるようなことになれば、オバマ政権は米大統領選で厳しい批判に晒される。
このため、米政府はそれほどの情報を得てはいない、というポーズをとっているのではないか。米中央情報局(CIA)要員は首都北京だけでなく、主要都市にも配置されるいるとみられる。CIAが「ウォーク・イン」した王氏をデブリーフィングした可能性は十分ある。
26日付ニューヨーク・タイムズ紙は、薄氏は胡錦濤国家主席の電話まで盗聴していた、との新事実を明らかにした。胡主席は昨年8月、重慶市を訪問した幹部と電話で話した際、盗聴されていることが探知された。このため中国当局は公的な捜査に乗り出した。その結果「中央権力に対する挑戦」とみなされ、それが薄氏失脚の一因にもなったともみられている。
薄氏は盗聴を通じて、共産党中央の機微に関わる情報に通じていた可能性があり、それがMI6にも流れたかどうか、が重要なポイントとなる。
次の焦点は、 薄氏と親しく、捜査を指揮する立場にある中国共産党内序列9位の周永康政治局常務委員(治安担当)に事件が波及するかどうかだ。周氏は一部の専門家の間でグーグルに対するサイバー攻撃の「裏の指揮者」とも言われており、事態は極めて神経質な局面に入った。
(春名幹男)」
(http://www.fsight.jp/print/11431)
2012/04/27 23:18
失脚した元重慶市トップの中国共産党幹部、薄熙来氏の新たな「悪事」が中国、米国、英国などのメディアで、毎日のように暴露されている。事態は、これら諸国の情報機関も絡んだ暗闘に発展しそうな勢いだ。
問題は、米英の情報機関が一連の事件を通じて、どれほど中国共産党内の権力闘争にかかわる機微な情報を入手できたか、反対に中国側はどれほどダメージをコントロールできたか、だ。米英が今後の対中戦略に生かせる機密情報をつかんだ可能性も否定できないのではないか。
薄氏夫人、谷開来容疑者に昨年11月殺されたとされる英国人実業家ニール・ヘイウッド氏は英紙デーリー・メールによると、英対外情報機関MI6工作員が設立した情報企業ハクルート社のコンサルタントを務めたことがあり、MI6に情報を提供していたとみられている。MI6の上部組織にあたる英外務省はヘイウッド氏が「MI6に雇用されていた事実はない」(ヘイグ英外相)と否定したが、情報提供の有無には言及していない。薄氏一家と親密だったヘイウッド氏に対して、MI6が協力を求めない方がおかしいとみるべきだ。MI6はヘイウッド氏を通じて、中国共産党政権の内部情報を得ていたに違いない。
ヘイウッド氏殺害事件の捜査に絡んで身の危険を感じ、四川省成都の米総領事館に駆け込んで約30時間滞在した薄氏の元部下、王立軍・元重慶市副市長兼公安局長はその捜査資料を持ち出したと伝えられている。ニューヨーク・タイムズ紙によると、この資料は米総領事館に持ち込んだが、「米側には渡さなかった」という。また王氏が米側に伝えたのはヘイウッド氏殺人事件に関する情報のみ、と同紙は伝えている。
王氏の総領事館滞在はホワイトハウスにも連絡されたが、米政府は王氏の亡命を認めなかった。もし、現在中国公安当局の拘束下にある王氏が米側への情報提供を根拠に国家反逆罪で有罪を宣告され、処刑されるようなことになれば、オバマ政権は米大統領選で厳しい批判に晒される。
このため、米政府はそれほどの情報を得てはいない、というポーズをとっているのではないか。米中央情報局(CIA)要員は首都北京だけでなく、主要都市にも配置されるいるとみられる。CIAが「ウォーク・イン」した王氏をデブリーフィングした可能性は十分ある。
26日付ニューヨーク・タイムズ紙は、薄氏は胡錦濤国家主席の電話まで盗聴していた、との新事実を明らかにした。胡主席は昨年8月、重慶市を訪問した幹部と電話で話した際、盗聴されていることが探知された。このため中国当局は公的な捜査に乗り出した。その結果「中央権力に対する挑戦」とみなされ、それが薄氏失脚の一因にもなったともみられている。
薄氏は盗聴を通じて、共産党中央の機微に関わる情報に通じていた可能性があり、それがMI6にも流れたかどうか、が重要なポイントとなる。
次の焦点は、 薄氏と親しく、捜査を指揮する立場にある中国共産党内序列9位の周永康政治局常務委員(治安担当)に事件が波及するかどうかだ。周氏は一部の専門家の間でグーグルに対するサイバー攻撃の「裏の指揮者」とも言われており、事態は極めて神経質な局面に入った。
(春名幹男)」
(http://www.fsight.jp/print/11431)