白夜の炎

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おすすめの映画 『亀も空を飛ぶ』

2012-12-10 18:34:09 | 映画
 『亀も空を飛ぶ』 2004年、イラク/イラン 97分

 監督・脚本:ハフマン・ゴバディ

 出演:ソラン・イブラヒム、ファシル・ラーマン、アワズ・ラティフ他

 舞台はイラク戦争直前のイラク北東部、クルディスタン地区。度重なる戦争と弾圧によって人々は辛酸をなめ、小さな村には難民も多く流れ込んでいる。

 その中で少年・サテライトは子供達のまとめ役として活躍している。中でも地雷を撤去し、それを仲買人を通じて国連に売る仕事は-危険だが-現金になる仕事だ。

 そんな生活を送る中、難民の兄弟-両腕のないヘンゴウと、その妹のアグリン、そして彼らとともにいる小さな赤ん坊と出会う。

 実はその赤ん坊は、彼らの故郷の村を襲ったイラク兵が、彼らの両親を殺し、アグリンをレイプした結果生まれた子供だった。アグリンはその記憶から逃れられず、「ママ」と慕う赤ん坊から何とか逃れたいと思っている。

 ヘンゴウは赤ん坊を大切にするが、彼とて未来への展望があるわけでもない。ただ彼には予知能力があり、それを知ったサテライトはその予知の結果を手に入れようとする。

 地雷撤去をして金を稼がなければならない生活。

 戦争のつらい記憶から逃れられない難民の兄弟。

ラストは痛切だが、ほかに道はなかったのか、考えてみるのは無駄ではないと思う。


 米軍や先進国の援助団体からの視線ではない、「そこにいたし、今もいる人たち」からの視点で描かれた作品。


 補遺:この映画をアメリカの『ワールド・オブ・ライズ』などと見比べてみるのもお勧め。

"Innocence of Muslims." の監督判明/Slateより

2012-09-14 13:41:25 | 映画
"Well done, Gillian Flaccus. The Associated Press has found "Sam Bacile," the director of "Innocence of Muslims." His real name is Nakoula Basseley Nakoula. In addition to being a lying, he may be a straight-up crook.

Assistant U.S. Attorney Jennifer Leigh Williams said Nakoula set up fraudulent bank accounts using stolen identities and Social Security numbers, then checks from those accounts would be deposited into other bogus accounts from which Nakoula would withdraw money at ATM machines.

It was "basically a check-kiting scheme," the prosecutor told the AP. "You try to get the money out of the bank before the bank realizes they are drawn from a fraudulent account. There basically is no money."

Whenever one of these Muhammad Outrage stories breaks out, there's a rush to defend the Outrage-r on free speech grounds. It's a good instinct! But Nakoula wasn't just some paladin of free speech.

He is/was a fraudster, who made inflammatory statements and then cowered behind a psuedonym. He claimed to have raised $5 million from "100 Israelis," and claimed to be Jewish himself. That could have only been calculated to amp up the anger of Muslims when they heard about the movie. He dubbed new, anti-Muslim dialogue into his movie,

which meant that actors -- not him -- became the faces of those ideas. They don't make martyrs like they used to."

http://www.slate.com/blogs/weigel/2012/09/13/nakoula_basseley_nakoula_anti_islam_film_director_identified_by_associated_press_.html

岩井俊二 'friends after 3.11'

2012-03-07 11:34:17 | 映画
岩井俊二監督の 'friends after 3.11' が素晴らしい。

 昨日BSでver.2を見ましたが、これも素晴らしかった。

 3月10日から「オーディトリウム渋谷」で公開予定だそうです。

 ぜひ見に行きまはょう。以下は予告編などです。


 *http://www.youtube.com/watch?v=Y5t7itRRVyA&feature=player_embedded#!

 *http://www.youtube.com/watch?feature=endscreen&NR=1&v=Pc0gijgPV6o/岩井監督へのインタビュー(inside out)

 *http://www.youtube.com/watch?v=QrlOpFP-Jk8&feature=related/テレビ番組に出演時のもの・岩井監督、山本太郎、松田美由紀

菅原文太・山田洋次の見識

2012-02-23 21:07:58 | 映画
 壱年前のことだが、菅原文太が主演予定だった「東京家族」は以下の事情-3.11-(②参照)で制作延期。菅原も主演を降りた。

 結局今年の三月から、橋詰功と吉行和子でリスタートとなったようだが、菅原も山田洋次も、行ってみれば"惰性で映画をとっている場合ではない"と考えたのだろう。

 菅原は23日の会見で、改めて震災について自分の考えを述べ、奨学金の設立を発表した。(①参照)

①「俳優の菅原文太(78)が23日都内で行なわれた「第64回日本消防協会定例表彰式」に消防応援団員として登場。当面、俳優としての活動を控えるとの考えを明かした。

 菅原は昨年、山田洋次監督の最新作「東京家族」の主演を降板した件について「どういうテーマであれ、映画を撮っている時ではない。監督も同じ考えだった」とクランクイン直前に起こった東日本大震災が大きな理由だったとあらためて説明。「こういう時代にどういう映画をどんなふうに出すのかというのは難しい」と震災以降、劇映画の存在理由が見出せないでいることを口にした。

 震災の直前まで都内の病院に入院していたことも公にし、「(俳優を)やめたとか、やめないとか人様に関係ないわけだから」と述べ、当面俳優としての出演を控える考えを明かした。その上で「納得できるものがあれば、考えないわけではない」と、引退ではなく復帰に含みを持たせた。

 「菅原さんを待っている人もいるのでは?」の質問には「こんなロートル待ってないよ」と笑い、「若い映画人には東北の状況を頭の片隅に仕事をしてもらいたい」とメッセージを投げかけた。

 菅原は消防応援団員として、東日本大震災で殉職した消防団員の子どもたちの学費を支援する奨学金を設立したことを発表。今後も支援を続けていくという。
」(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120223-00000120-spnannex-ent)



②「山田洋次監督、苦渋の決断 「東京家族」製作延期に    2011年4月14日 10:00共有


[映画.com ニュース]

 配給大手の松竹は4月14日、山田洋次監督の最新作「東京家族」の製作を延期することを発表した。当初は4月1日にクランクイン予定だったが、3月11日に東日本大震災が発生したことで撮影上の物理的事情、山田監督の意向を受けて決定した。

 同作は1年以上の歳月をかけて入念に準備を整え、クランクインを間近に控えてスタッフ、キャストの気力は充実しきっていたという。そんなタイミングで大震災が発生。

 山田監督は、「このままそ知らぬ顔で、すでに完成している脚本に従って撮影していいのだろうか。いや、もしかして3月11日以前と以後の東京の、あるいは日本の人々の心のありかたは違ってしまうのではないか。僕は何日も悩み、会社とも繰り返し相談した結果、それこそ苦渋の選択をしました」と説明する。

 悩み抜いて出した結論は、製作延期だった。「撮影を中断して、今年の終わりまでこの国の様子を見よう。その時点で脚本を全面的に見直したうえで、戦後最大の災害を経た東京、つまり2012年の春の東京を舞台にした物語をこそ描くべきだ、ということです」。松竹は、12年早期のクランクインを目指し、調整に入るという。そして山田監督は「来年、僕たちは新たな気力を奮い立てて『東京家族』の製作に挑みます。どうか観客の皆さん、ご期待ください」とコメントを寄せた。

 「東京家族」は、小津安二郎監督の名作「東京物語」を今日に置き換え、家族のきずなと喪失、夫婦と子ども、老いと死について問いかける。「やくざ戦争 日本の首領」(77)以来の共演となる菅原文太と市原悦子が主人公の夫婦を演じる。ほか、西村雅彦、夏川結衣、室井滋、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優という主演級が結集する。」
(http://eiga.com/news/20110414/1/)

第9地区

2011-10-19 11:01:33 | 映画
  大分前に発表された映画のことですが、映画「第9地区」を見ました。

 感想は、まず何よりあの映画はアメリカが世界で、なかんずくイラクとアフガニスタンでやっていることの正確な描写だ、ということです。

 設定はヨハネスブルク上空にやってきた宇宙船から、弱ったエイリアンが発見され、彼らを地上の居住地域に住まわせたところ、人口が増加。

 それが社会問題に発展して、政府から委託を受けた多国籍企業MNUが彼らを別の収容地域に立ち退かせる、という話である。

 その間、彼らが地上でどのように扱われているかは、まさに黒人たちが南アフリカでどのように扱われていたかのプレーバックである。(そのための南アフリカに場所を設定しているのだろう)

 そして狭い押し込められた居住地域での生活、暴力、腐敗は現在のガザやその他世界中の難民収容施設そのものである。

 政府から仕事を引き受けたMNUは実は軍需企業で、エイリアンたちの武器に関心があり、そしてエイリアンたちをつかまえては内部の秘密施設で人体実験を繰り返している。

 これなどかつて日本がやった731部隊や1644部隊そのもの。

 そして彼らを立ち退かせるプロパガンダ、屁理屈、暴力、強制は、今アメリカがイラク・アフガンでやっていることそのものである。

 主人公はMNUノ社員として、立ち退きの仕事をやっていたのであるが、その過程で特殊な液を浴びでエイリアンへの変身が始まる。

 するとMNUは彼の体、つまり人間とエイリアンの構造をともに持つ生体組織に関心を持ち、生体解剖を開始しようとするのである。その許可を出すのは、彼の義理の父親でもあるMNU幹部である。

 ここで思い出されるのは圧倒的興行収益を上げたアバターがハートロッカーにアカデミー賞で敗れた一件だ。

 アバターでは特殊な鉱石への経済的利権のために、大量虐殺をおこなうアメリカ海兵隊の姿が描かれた。

 ハートロッカーにアカデミーで敗れたのはおそらく、ハートロッカーが心やさしいアメリカ海兵隊員の両親を描いているのに対して、アバターが遠慮なく殺される現地人間の現実と、彼らを「木の上に住む不潔な野蛮人」と描いたそのリアリズムにあったのだろう。

 アメリカ人は、たとえリベラル派が多いといわれるハリウッド関係者でも、自分たちがやっていることを直視することはできない、ということが証明されたようなものだ。

 しかもアバターなど初戦仲間が作ったフィクションにすぎないにもかかわらずである。

 第九地区はもっとリアルだ。

 それはアメリカか今行い、南アフリカがつい先ごろまでやっていて、そしてわが日本もかつてどっぷり浸っていた世界をリアルに描いている。

 お勧めの一作です。