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「柏崎刈羽原発:新潟知事、新基準を否定 再稼働は困難に」

2013-06-29 16:04:12 | 原発
「柏崎刈羽原発:新潟知事、新基準を否定 再稼働は困難に

毎日新聞 2013年06月29日 15時05分


 新潟県の泉田裕彦知事は、29日までに毎日新聞の単独インタビューに応じ、原子力規制委員会の新規制基準は不十分で「(同県内に立地する)東京電力柏崎刈羽原発が新基準を満たしたとしても安全を確保したことにはならない」との認識を示した。立地県の知事が原発の安全性に疑問を投げかけたことで、東電が目指す早期の原発再稼働は困難な見通しとなった。

 泉田知事は新規制基準について「福島第1原発事故の検証・総括なしに、(設備面などに特化した)ハードの基準を作っても安全は確保できない。新規制基準は、残念ながら国民の信頼を得られない」と批判。規制委についても「地方自治行政のことを分かっている人間が一人も入っていない」と指摘、緊急時の住民の避難計画などに関し規制委が県の意見を聞かなかったことを問題視し、「こんなデタラメなやり方は初めて」と厳しく批判した。7月8日に施行される新規制基準についても「(原発立地自治体の)県の意見に耳を傾けずに作られた。外部に説明するつもりのない基準など評価に値しない」と切り捨てた。

 また、万が一過酷事故が起きた際、現行法では、事態の悪化を防ごうにも放射線量の高い事故現場へ作業員を出せないことを課題として指摘。「現行制度では法律違反で誰も行かせられないが、放置すればメルトダウン(炉心溶融)が起きる。そういう問題への対応も用意しないと、事故を総括したことにならない」と述べ、政府にも法的な整備を求めた。

 政府は、規制委の新基準を満たした原発は安全性が確保されたとみなし、順次再稼働させる方針を示している。しかし、実際に再稼働させるには地元自治体の了解も必要。泉田知事は、柏崎刈羽原発の再稼働の是非については「福島の事故の検証・総括が先」などと直接的な言及を避けたが、「規制委の新基準では県民の安全を確保できない」との認識を鮮明にしており、仮に規制委の基準を満たしても再稼働を認めない公算が大きい。

 東電が経営再建計画で目指す今年度の黒字化には、柏崎刈羽原発の再稼働が不可欠。再稼働が遅れれば計画は大きく揺らぎ、電気料金の再値上げも一段と現実味を帯びることになりそうだ。【大久保渉、塚本恒】」

http://mainichi.jp/select/news/20130629k0000e010227000c.html

安倍政権の変貌/橋下を利用してさらに右へ

2013-06-29 15:24:26 | 政治


「◇橋下発言以降一変した、安倍内閣閣僚の歴史認識◇

橋下市長の慰安婦をめぐる発言に対し、大阪を中心に、各地で市民団体による抗議行動が行われています。5月27日に行われた外国人特派員協会での会見をもって幕引きをはかろうとした橋下氏ですが、同氏への批判は下火になる気配がありません。IWJはその模様を報じ続けてきました。

※2013/05/17 【大阪】橋下さん もう辞めて!市長の資格はありません~橋下大阪市長の「慰安婦」問題に抗議する
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/79366

※2013/05/20 【大阪】「橋下市長の暴言を許さず、辞任を目標に」月曜日集会
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/80145

※2013/05/24 【大阪】橋下徹大阪市長の日本軍慰安婦発言の撤回と謝罪、辞任を求める抗議行動
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/81100

※2013/06/08【大阪】「橋下市長は『誤報だ』と言っているが、どう聞いても、確信を持って話している」~橋下市長の「慰安婦」・性暴力発言を許さず辞任を求める集会
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/83819

※2013/06/18 「かつての侵略戦争を反省し、慰安婦問題を解決していくことが、日本人の新たな自信と誇りにつながる」 ~「歴史認識 請求権 徹底論議!院内集会」
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/85586

橋下氏が、米軍司令官に対して、「合法な風俗」の「活用」をすすめたこと、「合法性」を強調していた橋下氏自身が、大阪府長になる前に、「違法な売春」の横行が常態化している大阪市西成区の飛田新地の飲食業組合の顧問弁護士であったことなどについて、橋下氏は有権者に対して十分な説明をしていません。

謝罪を表明したのは、米国と米軍に対してであって、日本の有権者に対してではありません。これは批判されてしかるべきであり、橋下市長への抗議の声がやまないのは、当然のことだと思います。

また、「違法な売春」が横行している飛田新地の飲食業組合の顧問を引き受け、弁護士として何を助言していたのか、弁護士としても、市民としても、政治家としても明らかにする説明責任があります。

しかし、責められるべきは、橋下氏ひとりだけではないはず、という点も急ぎ指摘しておかなくてはなりません。

橋下市長の慰安婦に関する発言の骨格は、安倍政権の歴史修正主義的な姿勢とうりふたつです。両者の「歴史認識」に、ほとんど相違はありません。橋下市長の「歴史認識」が問われるのであれば、安倍総理やその閣僚たちの「歴史認識」も問われるべきです。

安倍氏は総理に就任直後の昨年12月31日、産経新聞のインタビューで、過去の植民地支配と侵略を認めた村山富市元首相の「村山談話」について、これをそのまま継承するのではなく、新たな「未来志向」の「安倍談話」を出し、歴史問題について安倍政権の立場を「明確」にする方針を表明。総理に就任後も、こうした発言を繰り返したことで、「植民地支配と侵略の責任を認め、謝罪する」というこれまでの日本政府の立場を訂正するのではないか、という疑心暗鬼が国内外に一気に広がりました。

安倍氏は、同じインタビューのなかで、従軍慰安婦に対する日本軍の関与を認め、「謝罪とお詫び」を表明した「河野談話」に対しても、2007年3月16日に第一次安倍内閣が閣議決定した「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」という答弁書にもとづき、「この内容も加味して内閣の方針は官房長官が外に対して示していくことになると語りました。

※2012年12月31日 安倍首相インタビュー「詳報 TPP、集団的自衛権、村山談話、憲法改正...」
(msn産経2012年12月31日【URL】http://on-msn.com/12QMjVn

今年に入り、安倍政権の閣僚からは、麻生太郎副総理、新藤義孝総務相、古屋圭司国家公安委員会・拉致問題担当相、稲田朋美行革担当相が相次いで靖国神社に参拝。4月23日には、安倍総理自身が参議院予算委員会で「『侵略』の定義は学会的にも国際的にも定まっていない」などと発言しました。

橋下氏の発言が飛び出す以前は、こうした安倍政権の一連の発言や行動に対し、海外メディアから批判が集まっていたことは、前々号の「ニュースのトリセツ」などで論じた通りです。

ところが、5月13日に橋下市長の慰安婦をめぐる発言が飛び出して以降、政府・自民党の態度は一変しました。参院選を控え、支持率の低下が顕著な日本維新の会とは一線を画すべく、橋下氏の発言を批判し始めたのです。

稲田朋美行革担当大臣は、5月14日の定例会見で「慰安婦制度は大変な女性の人権に対する侵害だ」と語り、橋下氏を批判しました(内閣府HP会見議事録【URL】http://bit.ly/132auyW)。

しかし、稲田朋美行革担当相は、昨年8月31日に産経新聞に寄稿した論説文の中で、「慰安婦問題については、強制連行した事実はない」「当時は慰安婦業は合法だった」と記していました(msn産経新聞2012年8月31日【URL】http://on-msn.com/17sAngy)。

稲田行革担当相の発言は、明らかに一貫性を欠いています。

IWJは、5月24日の稲田大臣の定例会見で、慰安婦に関する認識を質問しました。稲田大臣は「戦時中は、慰安婦制度が、悲しいことではあるけれども合法であったということも、また事実であると思います」と語り、慰安婦制度が戦時中は合法であったと発言しました。

【稲田大臣発言音声ファイル(慰安婦発言部分)】
http://j.mp/13CiwPd

・2013/05/24 稲田大臣、従軍慰安婦について「戦時中、合法であったことは事実」~稲田朋美行政改革担当大臣定例会見
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/81090

稲田大臣のこの発言に対し、韓国外務省はすぐさま非難声明を発表。「女性の尊厳と人権に対する冒涜で、反人道的犯罪を擁護する常識以下の発言だ」とし、発言の即時撤回を求めています(msn産経新聞5月24日【URL】http://on-msn.com/10Xc8CV)。

その後、稲田大臣は、閣議後の定例会見を国会内で開催するようになりました。IWJは、国会に入る記者章を発行されていないため、国会内での会見に参加することができません。内閣府の議事録を確認する限り、大手記者クラブメディアが、韓国外務省から非難声明が出ている件に関し、稲田大臣に質問した様子は皆無です。

記者クラブメディアの足並みをそろえた「沈黙」の理由は、「慰安婦は合法」という発言が根本的に間違っていると理解できない無知によるものか、または、政権与党の閣僚に対する政治的なおもねりか、どちらかでしょう。あるいは、その両方かもしれません。

ここで、稲田大臣が発言した「戦時中、慰安婦は合法だった」という発言のどこが問題で、何が間違っているか、あらためて整理しておきたいと思います。

◇「慰安婦は合法」の詭弁! 安倍内閣閣僚の歴史認識を問う◇

従軍慰安婦が「合法」であるという主張は、国外の戦地において、従軍慰安婦に対し、日本国内の公娼制度の法的枠組みが適用されていたという「理屈」にもとづいています。しかし、「従軍慰安婦制度」と「公娼制度」はイコールではありません。

従軍慰安婦の「合法性」を論じる文脈とはまったく無関係に、「公娼制度はかつて合法だった」というならばともかく、「慰安婦」と「公娼」を意図的にか混同させ、「公娼制度のもと、慰安婦も合法だったのだ」と主張するのは、たいへんな詭弁です。稲田氏は、橋下氏と同様、政治家であるとともに弁護士でもあります。法律家がこんな虚偽を公然と口にして許されるものではありません。

日本国内では、1900年(明治33年)10月2日、内務省により、娼妓取締規則が発令されました。娼妓稼業に従事する者は、警察署が管理する娼妓名簿に登録しなければならず、官庁が許可した、「貸座敷」「芸者置屋」「引手茶屋」という「三業地」でしか娼妓業を営むことができませんでした。

戦前、日本国内において、娼妓は、厳格に管理されていたのです。これが、戦前の日本国内で「合法」とされた、「公娼制度」の法的な枠組みであり、場所が限定され、鑑札を持った登録業者だけに営業が限定され、娼妓も登録された者だけに限られました。

娼妓取締規則では、第1条において、「18歳未満の者は娼妓になれない」と定められています。

第一条 十八歳未満ノ者ハ娼妓タルコトヲ得ス
(意解)本条ハ娼妓タルヲ得サル年齢ノ規定ナリ
(中略)自己ノ権利ヲ狂屈シ恥辱ヲ忍ヒ之ヲ為スモノナレハ年齢ニ制限ヲ設ケサレハ思量ナキノ女子ニシテ他人ノ誘惑若クハ誘拐セラレテ娼妓トナリ一生ヲ誤ル者アルヲ以テナリ
「年齢制限を設ける理由は、18歳未満の少女の場合、幼くて考えが足りず、他人に騙されたり、誘拐されて一生を棒にふる者があるから、年齢に制限を設けなくてはならない」としているのです。即ち、女性を騙して連れ去ったり、誘拐したりして売春を強要する犯罪は、常に起こり得たのであり、それを警戒して、娼妓取締規則は定められているわけです。当然「公娼制度」のもとで、「かどわかし」が「合法」だったわけではありません。

第二条 娼妓名簿ニ登録セラレサル者ハ娼妓稼ヲ為スコトヲ得ス
(中略)娼妓名簿ニ登録セラレタル者ハ取締上警察官署ノ監督ヲ受クルモノトス
(意解)本条ハ娼妓稼ヲナサントスルトキハ娼妓名簿ニ登録スヘキコト、娼妓名簿ハ娼妓所在地(即チ貸座敷)所轄スル警察署ニ備置セリ、娼妓名簿ニ登録セラレタル者ハ警察官署ノ監督ヲ受クヘキコトヲ規定セリ
第2条では、警察に監督義務があることが明記されています。国外の戦地を転戦する軍隊にくっついて、慰安婦を伴いながら移動し、臨時の慰安所をその場その場で開設する業者を、どこの警察署が監督しうるのでしょうか。そんな事は不可能です。

第三条 娼妓名簿ノ登録ハ娼妓タラントスル者自ラ警察官署ニ出頭シ左ノ事項ヲ具シタル書面ヲ以テ申請スヘシ

第3条には、娼妓は管轄の警察署へ自ら出向いて、登録を行わなくてはならないとされています。戦地における慰安婦に、そんなことが可能であったはずがありません。これにも抵触します。戦地で事実上、監禁状態にあったという数多の証言が事実なら、これは当時であっても違法です。

第六条 娼妓名簿削除申請ニ関シテハ何人ト雖妨害ヲ為スコトヲ得ス
(意解)(前略)娼妓稼ノ廃止自由ナリ何人ト雖妨害スヘカラス(中略)娼妓稼業ノ廃止ヲ自由ナラシメ正業復帰セシメントノ趣旨ニ外ナラス
これは重要です。娼妓は本人が廃業したいと思ったら、誰も妨害はできない、ということです。その意志は尊重されなくてはならないと当時の法令に定められていたのです。

第八条 娼妓稼ハ官庁ノ許可シタル貸座敷内ニ非サレハ之ヲ為スコトヲ得ス
(意解)(前略)稼業ヲ為ス場所ハ官許ヲ得タル貸座敷内ニ限レリ之レ本条ノ規定アル所以ニシテ若シ以外ノ場所ニ於テ娼妓稼業ヲ為シタル者及ヒ為サシメタル者ハ本則第十三条第三項ニ依リ罰セラルルモノナリ
第十ニ条 何人ト雖娼妓ノ通信、面接、文書ノ閲読、物件ノ所持、購買其ノ他ノ自由ヲ妨害スルコトヲ得ス
(意解)本条ハ娼妓ノ権利ヲ拘束スヘカラサルコトヲ規定セリ
娼妓ハ醜猥ナル稼業ナリト雖本則及ヒ娼妓稼業ニ関スル庁府県令ノ制限取締ヲ受クルノ外等シク人権ヲ有スルコトハ言ヲ待タス
第12条も、娼妓に「人権を有することは言を待たず」とあります。通信や面接、すなわち外部との連絡ができなければなりません。外界との連絡が遮断された状態にあったという証言が事実なら、これも違法です。

第十三条 左ノ事項ニ該当スル者ハ二十五円以下ノ罰金又ハ二十五日以下ノ重禁錮ニ処ス
さらに、娼妓取締規則第13条には「左の事項に該当する者は二十五万円以下の罰金又は二十五日以下の重禁錮に処す」とし、「虚偽の事項を具し娼妓名簿登録を申請したる者」「官庁の許可したる貸座敷外に於いて娼妓業を為さしめたる者」「稼業に就くことを得ざる者をして強て稼業に就かしめたる者」「本人の意に反して強て娼妓名簿の登録申請又は登録削除申請を為さしめたる者」をあげています。

すなわち、所定の場所以外で娼妓稼業を行うことも違法であり、行政が許可しない貸座敷以外での営業も違法であり、女性の意に反して稼業につかせる、すなわち売春を強要するなどはもってのほかだったのです。

「公娼制度」の存在した当時にあっても、女性に売春を行わせるために、仕事があるからなどと、騙して連れ去れば、略取・誘拐の罪に問われます。旧刑法第225条には、「営利、猥褻又ハ結婚ノ目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ一年以上十年以下の懲役ニ処ス」とあります。

女性に合意なく性交を強要すれば強姦です。力づくで、暴力と脅迫によって従わせた場合には、暴行、脅迫の罪にも問われるでしょう。騙されたことを知って、帰りたいと言う女性の行動の自由を奪い、外部と連絡をとらせず、閉じ込めておけば、監禁の罪に問われます。これらの行為は当時でも違法であり、犯罪です。

言うまでもなく、大日本帝国にも刑法はあり、法治国家であって、「無法国家」ではありませんでした。「戦時中だったからやむをえなかった」というのは、大日本帝国がまるごと無法の許された国家だったというようなものです。事実ではありませんし、敗戦までの日本という国家への侮辱です。

ひるがえって、戦地に目を転じて見れば、すべての女性が合意のうえで従軍慰安婦になったわけではありませんでした。保守派の歴史家の秦郁彦氏は、『慰安婦と戦場の性』(新潮選書、1999.06)の中で、「私が信頼性が高いと判断して選んだもの」として、次のような事例をあげています。

<榎本正代伍長(済南駐屯の第五十九師団)の証言―― 一九四一年年のある日、国防婦人会による「大陸慰問団」という日本女性二百人がやってきた...(慰問品を届け)カッポウ着姿も軽やかに、部隊の炊事手伝いなどをして帰るのだといわれたが...皇軍相手の売春婦にさせられた。"目的はちがったけど、こんなに遠くに来てしまったからには仕方ないわ"が彼女らのよくこぼすグチであった。将校クラブにも、九州の女学校を出たばかりで、事務員の募集に応じたら慰安婦にさせられたと泣く女性がいた。 >[382ページ]

また、長尾和郎『関東軍軍隊日記』(経済往来社、1968.11)には、次のような記述があります。

<朝鮮女性は「従軍看護婦募集」の体裁のいい広告につられてかき集められたため、施設で営業するとは思ってもいなかったという。それが満州各地に送りこまれて、いわば兵士達の排泄処理の道具に身を落とす運命になった。私は甘い感傷家であったかもしれないが、戦争に挑む人間という動物の排泄処理には、心底から幻滅感を覚えた。>[71ページ]
このように、従軍慰安婦は、日本人女性や朝鮮人女性が、そうと知らされず、騙され、略取・誘拐されたケースが数多くありました。こうした証言は枚挙にいとまがありません。これは、娼妓取締規則により厳格に規定された、当時の「公娼制度」に照らしても、明らかに違法です。軍が進軍していく先々の戦地は「三業地」ではなく、慰安婦とさせられた女性すべてが「娼妓」として登録されていたわけではありません。当人の合意も、合法の手続きも欠けています。

さらに、後者のケースでは、朝鮮人女性が、「満州各地」つまり中国東北部へ輸送されています。これは、大日本帝国における旧刑法226条「国外移送、国外誘拐罪」に違反してると考えられます(226条「日本国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ略取又ハ誘拐シタル者ハ二年以上に処ス (2)日本国外ニ移送スル目的ヲ以テ人ヲ売買シ又ハ被拐取者若クハ被売者ヲ日本国外ニ移送シタル者同ジ」)。

「慰安婦こそは戦場の花」と書いた伊藤桂一氏は、1938年から終戦の45年にかけて断続的に招集され、戦地に赴いた経験を持つ人物で、直木賞と吉川英治文学賞を受賞した作家でもあります。

伊藤氏が著した「兵隊たちの陸軍史」(文春文庫)は、「後の世代に戦争の実態をきちんと伝えたい」と執筆した貴重な記録です。

この中に「戦場と性」という項目に一章が割かれ、慰安婦制度と軍の関与について詳述されており、麻生敏男軍医の記録として、「上海軍工路近くの楊家宅に、軍直轄の慰安所が整然としたアパートの形式で完成した」と記されています。

基本的には、この本は「あの戦争が終わって二十年間ほどは、米国的民主主義に悪影響され、兵士が行ったことを露悪的に伝える戦史などの氾濫が続き...」などと前書きに書かれている通り、戦後民主主義には否定的で、旧軍には肯定的な筆づかいで書かれています。そうでありながら、慰安婦制度に軍の関与はなかった、などという白々しい嘘は、一行も書かれていません。

今日の目からみれば、日本軍に都合のいい視点からの筆致なのですが、それでも伊藤氏は、「慰安婦がいちばん兵隊の役に立っていることは事実だが、慰安婦も多くは、欺されて連れてこられたのである」と、当たり前のごとく書いています。あっけらかんとしたものです。当時でも「略取・誘拐」は間違いなく犯罪だったはずです。

「兵隊たちの陸軍史」には、従軍慰安婦どころか、軍が強姦を認めた、という話も登場します。

「これはビルマでの話だが、某兵団で、どうしても強姦が絶えないとみて、内々に強姦を認めた」というのです。なんという部隊だろうか、と呆れるばかりですが、話はそこで終わりません。

「ビルマは親日国で、かつ民衆は熱心な仏教徒であり、強姦など行えない。残された方法は証拠の隠滅――つまり、犯した相手をその場で殺してしまうことであった。これによって事故は起こらなかった。

何というおぞましさ。ところが話はまだ続きます。

「一婦人が暴行された、と軍へ訴え出てきた。やむなく調査をしたら、兵長以下三人の犯人が出てきた。かれらは顔を覚えられているし、三人で輪姦したと白状した。准尉が『なぜ殺さなかった』ときくと、三人は『情においてどうしても殺せなかった』と言った。よって軍法会議にかけられ、内地に送還された。一方では強姦したら殺せ、といい、一方では発覚すると厳罰がくる。奇妙な軍隊の規律である」
強姦した女性を殺せと命じていたその軍で、殺せずに強姦した将兵を軍法会議で裁くのも軍であるという異常さが、ここにははっきりと記されています。

これほどひどい犯罪的なケースは、まれであったかもしれませんが、女性たちが騙されて連れてこられ、慰安婦にさせられ、売春を強要されていたことは、常態化していたとみて間違いなさそうです。

これらは明白な犯罪行為なのですから、官憲には、当然、悪質な業者を取り締まり、犯罪被害にあった女性たちを救出する義務が生じます。旧日本軍にも警察権を持つ憲兵が存在しました。しかし、旧日本軍も警察も、こうした違法行為の横行を、見て見ぬふりを決め込むか、手をこまぬいていました。

つまり、従軍慰安婦の問題は、何よりもまず、「公娼制度」が認められていた当時であっても決して許されない略取・誘拐、暴行、監禁、国外移送などの違法な行為が横行し、それらの違法を、旧日本軍や警察が拱手傍観していたという、不作為の罪にあります。

「従軍慰安婦制度は、合法だった」という稲田朋美行政改革担当相の発言が、過ったものであることは明らかです。しかし、大急ぎでつけ加えなければならないのは、公娼制度が存在したことをもって、「慰安婦制度は合法だった」と開き直る論法を用いるのは、稲田行革相一人だけではないことです。

日本維新の会代表代行の平沼赳夫議員は、5月22日の講演会で、「昔は公娼制度があった」と発言し、「従軍慰安婦と言われている人たちは、戦時売春婦だと思っている」と語りました。これは、従軍慰安婦は公娼であり、戦場で合法な商行為を行なっていた、という趣旨の発言です。

また、同党の共同代表である石原慎太郎議員も、5月14日、橋下氏の発言について「軍と売春はつきものだ。それが歴史の原理だ。橋下氏の発言は好ましくないが、間違ったことは言っていない」と語り、橋下氏を擁護しました。 また、6月6日のJR渋谷駅前での街頭演説では「連行したのは商売人。国家の権力でするわけがない」語り、 軍の関与を認めた河野談話についても「国が(連行を)やったことにした。日本全体がひんしゅくを買った」と批判しました。

2012年11月、ニュージャージー州の地元紙「スターレッジャー」に、「女性がその意思に反して日本軍に売春を強要されていたとする歴史的文書は発見されていない」「慰安婦は性的奴隷ではない。彼女らは公娼制度の下で働いていた」という意見広告が掲載されました。
(しんぶん赤旗1月6日【URL】 http://bit.ly/XxgEbw

この意見広告の賛同者として名前を連ねていたのが、安倍晋三総理、稲田朋美行革担当大臣、平沼赳夫日本維新の会代表代行。他にも、第2次安倍内閣の閣僚から、下村博文文部科学大臣、新藤義孝総務大臣、古屋圭司国家公安委員長の各氏が名前を連ねています。

彼らは、一様に、従軍慰安婦が「合法」な「公娼」であったという認識を有しているということです。

しかし、先述したように、従軍慰安婦を集め、戦地に送り、慰安所を管理・運営して女性に売春を行わせるにあたっては、「公娼制度」を成り立たせていた娼妓取締規則や、さらには大日本帝国下の旧刑法でも禁じていた、略取、暴行、監禁などの明白に違法な行為が横行していました。

その違法の横行を、旧日本軍や警察や行政が見て見ぬふりをし、取り締まりや被害女性の保護や救済を怠っていた、不作為の罪こそが、まずは第一の問題なのです。国家として従軍慰安婦の制度に積極的に加担した証拠はない、と日本政府は弁明し続けていますが、どう言い逃れしても、「黙認というかたちでの国家の消極的な関与はまぬがれません。

それでもなお、稲田大臣のように軍や警察の不作為の罪を認めず、「従軍慰安婦は合法だった」とあくまで強弁するならば、戦地において「合法」的に、国家の管理のもと、すなわち国家が積極的に関与して、女性を騙して現地へ連れてきて、売春を行わせ、それを大日本帝国は「合法」としていたという話になります。すなわち、従軍慰安婦制度を、国家が積極的に関与して成り立たせていたということにならざるをえなくなります。

論理的に考えれば、「従軍慰安婦は合法」とする政治家の主張の帰結は、このような結論に達することになります。

そこで、安倍総理らが強調するのが、「狭義の強制性」です。

旧日本軍が民家に押し入り、朝鮮人女性を人さらいのように強制連行し、慰安所に収容したとする説を「狭義の強制性」と呼び、この問題が最大の問題であるとフレームアップした上で、その事実はなかったと強調してみせるのです。その間に、他の問題が問題でなかったかのように忘れさられるという仕組みです。

安倍総理はこれまで、一貫して、この「狭義の強制性」がなかったことを強調してきました。

2007年3月16日、第一次安倍内閣は「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」という答弁書を閣議決定しました。

安倍総理は2月7日の衆院予算委員会で「(慰安婦の)強制連行を示す証拠はなかった」と答弁しています。他方、5月22日、衆議院内閣委員会で、共産党の赤嶺政賢議員に、慰安婦に対する旧日本軍と政府の関与、および強制連行の有無について聞かれた菅義偉官房長官は、「心が痛むという点で歴代内閣と変わらない」とだけ述べ、軍の関与と強制連行に関する言及を避けました。(しんぶん赤旗5月23日【URL】 http://bit.ly/18jzuVp

安倍総理が否定している「強制連行」とは、「旧日本軍が朝鮮人の民家などに押し入り、人狩りのように強制連行したあげく、慰安所に収用した」という「狭義の強制性」です。こうした「狭義の強制性」を証明する文書が見つからないことをもって、従軍慰安婦問題全体が、一部の人間やメディアによって創作された神話であるかのように抗弁するのです。

安倍総理は、昨年の衆院選の直前、日本記者クラブで開かれた党首討論会で、「慰安婦問題は吉田清治という詐欺師が作った」と発言しています(動画URL:http://bit.ly/10vY00uhttp://bit.ly/10vY00u)。

吉田清治氏は、1983年に『私の戦争犯罪―朝鮮人強制連行』(三一書房、1983.07)を上梓。その中で、旧日本軍が朝鮮の女性を強制連行し、慰安婦にしたと論じました。

その後、先述した歴史家の秦郁彦氏の現地調査により、吉田氏の主張は創作であったことが判明します(前掲書『慰安婦と戦場の性』229ページ)。吉田氏自身も「創作を交えた」と認めました。

しかし、従軍慰安婦をめぐる問題の最も重要なポイントは、吉田氏が「創作を交えて」論じたような、「旧日本軍が朝鮮人の民家に押し入り、人狩りのように力づくで女性を連れ去って慰安所に収容した」という、「狭義の強制性」ではありません。広範に行われていたのは、「いい仕事があるから」などと騙して女性を戦地へ連れて行った「略取・誘拐」です。こうした行為が行われていたことを示す証言は膨大にあります。

吉田清治氏という人物がフィクションをまじえたという一事をもってして、従軍慰安婦に関する一連の犯罪がねつ造であるかのように主張するのは、明らかに問題のすりかえであり、それ自体、詐術的なロジックです。

稲田大臣や平沼議員、ひいては安倍総理は、この点を隠蔽するために、慰安婦問題を「狭義の強制性」へと、議論を矮少化していると言わざるをえません。

(中略)

橋下市長の発言を、大手既存メディアは連日大きく報じています。しかし、現役の閣僚である稲田大臣の発言を問題にするメディアはほとんど見当たりません。

安倍内閣は、橋下騒動の影に隠れるようにして、5月24日に、ひっそりと、辻元清美議員の質問主意書に答えるかたちで、「河野談話を継承する」と閣議決定しました。
(政府答弁書【URL】 http://bit.ly/10oLQK6、辻元清美事務所発表報道資料【URL】 http://bit.ly/154wNVN

安倍総理が、就任直後のインタビューから態度を変化させたという、この重要な閣議決定について、驚くべきことに、時事通信が小さく報じた以外、どこのメディアも報じていません。(「河野談話を継承=第1次内閣と『立場同じ』―政府答弁書」時事通信5月24日【URL】 http://bit.ly/13iB1Ip

IWJは、この慰安婦問題、そして歴史認識の問題について、引き続き取材を継続します。「記者クラブに所属していない」などという、理不尽な理由のため、出席できる記者会見には制限がかけられていますが、粘り強く、この問題を取材したいと思います。

その結果は、メルマガ「IWJ特報!」「IWJウィークリー」などでもお伝えします。IWJの応援、ご支援をよろしくお願いします(本稿は6月6日発行の「IWJウィークリー第5号」に掲載した「ニュースのトリセツ」の一部に加筆したものです)。

※メルマガ「IWJ特報!」「IWJウィークリー」のご購読はこちらから
http://bit.ly/1aiMHNr

(※この記事は、2013年6月24日のIWJブログ【慰安婦は合法」の詭弁!安倍内閣閣僚の歴史認識を問う」】より転載しました)



'岩上安身さんをTwitterでフォローする: www.twitter.com/iwakamiyasumi

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スノーデン5 岩上氏の見解

2013-06-20 10:23:49 | 諜報活動


「「米国家安全保障局(NSA)が、数百万人の市民の通話記録やインターネット上の情報をひそかに収集していた」。2013年6月5日、英ガーディアン紙が、衝撃のスクープを発表した。

政府機関による盗聴の是非を判断する「米外国情報監視裁判所」が4月、米通信大手ベライゾン社の利用者数百万人を対象に、通話履歴の収集を認める機密令状を出したと報じたのだ。

※「米当局が市民の通話履歴を極秘収集、テロ対策で数百万人を対象」
(2013年6月7日ロイター http://bit.ly/18Snbjk

ガーディアン紙は、この情報は業務に関係の深い内部関係者からリークされたと伝えていた。この報道に対し、ホワイトハウスのアーネスト報道官は、「NSAは法にもとづき裁判所が認めた情報活動を行っている」と弁明。また、米下院情報特別委員会のロジャース委員長は、「米国内のテロ攻撃を食い止めるための目的で行われるものであり、市民の自由を侵害するものではない」と述べた。

そして、6月9日には、その内部告発者が自ら名乗りを上げたことで、事件はさらに大きな展開を見せている。

暴露したのは、29歳の元CIA技術者で、現在は情報コンサルタント企業ブーズ・アレン・ハミルトン社の従業員であるエドワード・スノーデン氏。ハワイのNSA施設に出向していたが、情報収集を裏付ける関連資料を持って香港に出国した。

※「米政府の情報収集、暴露は元CIA職員 亡命求める」
(2013年6月10日日本経済新聞 http://s.nikkei.com/19eFi5M

スノーデン氏はガーディアン紙とのインタビューで、「政府がプライバシーやインターネットの自由を破壊するのを許せなかった」と語り、「私は自分の身元を隠すつもりはない。自分は何も悪いことをしていないと確信しているからだ」と、メディアへの告発の理由を明らかにした。

一方、NSAは「重大な機密漏洩」だとして、司法省に捜査を依頼。オバマ大統領も、「リークは歓迎しない」と不満を表明し、テロリストなど米国を攻撃しようとする相手に情報を与えてはならない、と語った。

現在、米政府は中国側に身柄引き渡しを要求している。逮捕され起訴されれば、厳罰を科される可能性がある。これに対しスノーデン氏は、「国家の犯罪行為を嫌というほど見てきた。その政府が犯罪として捜査すると言うことは、偽善そのものだ。」と反論し、「アイスランドのような、表現の自由を信じる国(*)に政治亡命を求めたい」と語っている。

(*)アイスランドのような、表現の自由を信じる国:
アイスランド議会は2010年6月、「アイスランド現代メディア法案」を承認。メディアなどに情報を提供・公開した人物を保護し、報道の自由や情報公開を促進する政策に向けた指針の策定を行なっている。これは、ウィキリークス運営者がアイスランドを「世界で最も報道の自由が保障された国」にするための法案づくりを提案したことが出発点。(朝日新聞2010年8月17日【URL】http://bit.ly/11hpash

◇リーク資料に書かれていた、驚愕の内容 ◇

スノーデン氏が暴露した情報は、驚くべきものだ。

スノーデン氏によると、NSAは、2007年に「PRISM(プリズム)」というプログラムを開発し、米国のインターネット企業から随時個人データを集めているという。ガーディアン紙とワシントンポスト紙は、同プログラムの下で、マイクロソフト、グーグル、フェイスブック、アップル、ヤフー、スカイプ、YouTube、PalTalk、AOLといった米インターネット大手企業9社のサーバーから動画や写真、電子メールをNSAが収集していたと報じた。

グーグル、フェイスブック、アップル各社はそれぞれ声明を発表し、「政府に対して、直接あるいは裏口から自社のサーバーにアクセスする権限は渡していない」として、PRISMへの関与を否定している。しかし、今回リークされた機密資料には、PRISMはインターネット企業のサーバーに直接アクセスして、情報を得ることができると書かれているという。

※TechCrunch 「米国家安全保障局、Google、Apple、Microsoft、Facebook等のサーバーから直接データを収集(ワシントンポスト報道)」 2013年6月7日 http://bit.ly/19Nfkov

さらに驚くべきことに、NSAには「Boundless Informant(無限の情報提供者)」と呼ばれる情報収集ツールが存在し、米国だけではなく世界中の通信記録を集めていたことも判明した。

その数は2013年3月だけで970億件にも上り、イランで140億件、続いてパキスタンが135億件、ヨルダンは127億件、エジプトは76億件、インドは63億件もの機密情報が収集されていたと、ガーディアン紙は報じている。

※ハフィントンポスト 「エドワード・スノーデン氏、機密暴露の理由語る NSAの収集データは970億超」 
2013年6月10日 http://huff.to/1bmP56h

◇米司法省によるメディアへの盗聴事件◇

オバマ政府による秘密裏な情報収集が暴かれたのは、今回が初めてではない。2013年5月には、米司法省が2012年の4月から5月にかけて、米AP通信の記者やデスクの通話記録をひそかに収集していたことが報道された。

司法省はその動機について明らかにしていないが、APによると、同社が2012年5月7日に報じた、「アルカーイダがイエメンで計画したテロを、CIAが未然に防いだ作戦」についての情報源に当局が関心をもっているのではないかと考えられている。

※産経新聞 「【視点】産経新聞論説副委員長・樫山文夫 APの通話録収集」 2013年6月4日 http://bit.ly/ZLg8X1

AP通信は司法省に対し、「秘匿されるべき情報源が暴露される恐れがある。取材活動について、政府に知る権利はない」という内容の抗議書簡を送った。

それに対し、オバマ大統領は5月16日、透明な手続きによる調査を捜査当局に義務付ける「メディア保護法」(*)の整備を約束した。しかし、通話記録の収集に関しては、「安全保障に関わる情報漏れは米国民を危険にさらす」と指摘し、「謝罪しない」との声明を発表している。

※ロイター 2013年5月17日 「AP問題で米大統領『謝罪せず』、メディア保護法整備は支持」
http://bit.ly/Z0cWZm

(*)メディア保護法
司法当局による報道機関への介入を制限する法案。当局の調査要請に対し、記者らに情報源の開示を拒否する権限を認める。2009年に上院で提出されたが、成立しないままとなっている。

※日本経済新聞 2013年5月16日「米政権、不祥事収拾急ぐ 通話収集でメディア保護法検討」
http://s.nikkei.com/1458Mhv

◇テロ対策の名目で行われる、個人情報収集と隠蔽◇

米国家安全保障局(NSA)は、国防省の諜報機関で、海外情報通信の収集と分析を主な任務とする。米国中央情報局 (CIA) がスパイなどの人間を使った諜報活動を担当するのに対し、NSAは電子機器を使った情報収集活動とその分析、集積、報告を担当する。

実は、NSAは2005年にもブッシュ大統領の秘密命令の下、令状なしに米国民らをターゲットに、Eメールや電話などの盗視・盗聴活動を3年もの間続けて来たと、2005年12月16日付けのニューヨーク・タイムズ紙で暴露された。

諸外国に関する非常に高度な機密を扱うという性質上、NSAは組織や活動内容、予算については明らかにされていない部分も多く、極めて秘匿性の高い組織なのである。

※ニューヨーク・タイムズ 2005年12月16日「Bush Lets U.S. Spy on Callers Without Courts」
http://nyti.ms/1uaJXY

米国政府による自国民に対するスパイ活動は、米国の憲法はもちろん、国内で情報収集活動を行うにあたって裁判所からの令状交付を義務づけた「外国情報監視法(FISA)」にも違反する。一方、2005年には米連邦捜査局(FBI)の公安警察として「連邦捜査局国家保安部(NSB)」が発足され、CIAが禁じられている国内での反体制活動の監視や工作活動が可能となっている。

今回暴露されたPRISMプログラムも、「米国に住む米国民は対象外であり、プログラムは議会および外国情報監視裁判所によって承認されている」と、オバマ大統領は説明している。

しかし、スノーデン氏は、「私が渡さなかった文書の中にも、公開すれば大きな影響を及ぼしたと思われるものがいろいろある」と語っている。もし、このプログラムを通じて、企業から政府に米国民に対する情報提供が行われているとしたら、個人のプライバシー侵害だけではすまされない、プログラムの違法性が問われる事態となる。一方、日本を始め、米国民以外の個人情報が勝手に米国政府に握られているとしたら、プライバシーを巡っての国際問題にもなりかねない。

◇スノーデン氏を擁護する団体も◇

スノーデン氏による今回の行動は、決して衝動的なものではなく、周到に計画された行動であることがわかっている。

スノーデン氏はガーディアン紙だけでなく、ワシントンポスト紙にも情報を提供していたが、その取材には「コードネーム」が使われていた。彼は、ワシントンポストのバートン・ゲルマン記者をBRASSBANNER(真鍮のバナー)と呼び、そして自分自身のことをVerax(ラテン語で「真実を語る者」の意)と名乗っていた。スノーデン氏は自分が冒したリスクを十分認識し、当局がすさまじい人員を配備して彼を捜索するであろうことを認識していたと、ゲルマン記者は記事に書いている。

※Washington Post "Code name 'Verax': Snowden, in exchanges with Post reporter, made clear he knew risks"
http://wapo.st/16Vx1nn

出国先に香港を選んだことについても、香港が「言論の自由」を守る場所であることを理由にしている。その香港では、6月10日に「香港外国記者会」が以下の声明を発表した。

※FCC Statement on Edward Snowden
http://bit.ly/1bphqsE

2013年6月10日
NSAの内部告発者エドワード・スノーデン氏は、ガーディアン紙に対し、香港に来る決断について説明する中で、「中国自治領(である香港)は、言論の自由に関する強固な伝統がある」と語った。今回の事件はおそらく、表現の自由や報道の自由に対する香港特別自治区(SAR)政府の責任を強く試されるものになると、香港外国記者会は信じている。

スノーデン氏の正確な居場所はわからない。しかし、もし彼が今も香港に残っていることがわかれば、香港外国記者会は、香港政府が彼の状況をいかに扱うかを注視するつもりである。特に、彼の活動を制限して、メディアによる接触を遮ろうという、ワシントンや北京の当局からの圧力に対して、香港政府がどのように反応するかに注目している。

(英語原文)
10 June 2013

Explaining his decision to come to Hong Kong, NSA whistle-blower Edward Snowden noted to the Guardian that the autonomous Chinese territory "has a strong tradition of free speech". The Foreign Correspondents' Club, Hong Kong, believes that this case is potentially a strong test of the SAR government's commitment to freedom of expression and freedom of the press.

Snowden's exact whereabouts are unknown. But should it prove that he has remained in Hong Kong, the FCC will watch closely how the SAR government handles his case, and in particular how it responds to any pressure from authorities both in Washington and Beijing to restrict his activities or to impede access by the media.

スノーデン氏の母国である米国でも、今回の暴露に対して、彼の行動を擁護する世論が広がっている。政府による個人情報の収集はプライバシーの侵害であり、「スノーデン氏は全面的に赦免されるべきだ」という主張が強まっている。彼を罪に問わないよう米政府に求めるネット署名運動では、1日で34,000以上の署名が集まっている。

※NHK 2013年6月11日 「米 元CIA職員の暴露の功罪巡り議論」 
http://bit.ly/1bqRXiC

現在消息不明のスノーデン氏は、前述したようにアイスランドへの亡命を望んでいるが、アイスランドの入国管理当局は現時点で正式な要請は受け取っていないようだ。さらに、ロシア政府が「亡命申請あれば検討する」と受け入れに前向きな姿勢を見せている。

※AFP 2013年6月12日 「米監視プログラム告発者から亡命申請あれば検討」、ロシア政府
http://bit.ly/11bjvYd

過去に軍事機密を引き渡した亡命事件として、1976年9月、ソ連軍将校ヴィクトル・ベレンコが、軍事機密を持ってミグ25戦闘機で日本の函館市に着陸し、米国への亡命を求めた「ミグ25事件」などが思い出される。最近では、2010年6月には、イランの核科学者シャハラム・アミリ氏が、イラン核計画の情報を持って米国に亡命するという事件が起きている。

※読売新聞2010年3月31日「イラン核科学者が米国亡命、CIAの働きかけで」
http://bit.ly/14ZiIau

しかし、今回の事件のように、インターネットによる情報を握って、亡命した件は、過去に例がない。ネット情報が、最新鋭兵器のような重要性を帯びる時代になったこと、そして、「米国へ亡命」するのではなく、「米国から亡命」する時代になってしまったのだということを、今回の件は色濃く象徴している。

◇日本にもNSAを作るよう提言する「ジャパンハンドラー」◇

今回のNSAに関する事件は、日本にどんな影響を及ぼすだろうか。

日本でも、インターネットや通信などのセキュリティー対策の強化や、安全なサイバー空間の実現は、国家戦略として位置づけられている。

第3次アーミテージレポートには、「米国は国家安全保障局(NSA)と共にサイバー対策を運用する一方、日本は同等のレベルを満たしていない。この不均衡を軽減するために、米国と日本は共通の情報保証標準の研究と導入に向けた共同サイバーセキュリティーセンターを設立すべきである。」と書かれている。

※2013/02/03 【IWJブログ】「第3次アーミテージレポート」全文翻訳掲載http://iwj.co.jp/wj/open/archives/56226

そして、日本政府の情報セキュリティー政策会議は、この提言に基づいてセキュリティー対策をまとめ、6月10日に「サイバーセキュリティー戦略」を正式決定した。
【資料URL】 http://bit.ly/14Zkfx2

同戦略は、サイバー空間の環境整備に始まり、サイバー犯罪への対策や、サイバー上の防衛、国際協力といった外交面も含まれる。2015年度を目途として、現在の内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)を、「サイバーセキュリティセンター」(仮称)に改組することを謳っている。つまり、米国のNSAと同様の組織が日本にも作られるわけである。

また、サイバー犯罪対策では、日本版NCFTA(National Cyber-Forensics and Training Alliance)という、サイバーパトロール強化組織の創設も織り込まれている。米国のNCFTAは、FBIが中心となり、民間企業や学術機関を交えて、官民間で捜査情報や捜査手法を共有化することを目指している。

さらに、日本政府は6月7日、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)を創設するための関連法案を閣議決定した。これもまた、米国の国家安全保障会議(National Security Council)をモデルにしており、法案が成立すれば、外交や安全保障に関する最高意志決定機関となる。

日本版NSCは、関係省庁からの情報集約機能を強化するのが特徴で、機密情報の漏洩を防ぐため、首相(議長)や関係閣僚から事務スタッフに至るまで守秘義務を課す。政府は、守秘義務違反に罰則規定を設ける「秘密保全法案」を制定し、次期国会で成立させる構えである。

※毎日新聞2013年6月7日「日本版NSC:設置関連法案を国会に 秘密保全法制化焦点」 
http://bit.ly/18ThK3B

このことから、自民党安倍政権が導入しようとしている一連のサイバーセキュリティー政策は、米国主導で進められていることは明らかである。当然それは、米国同様、日本国民のプライバシーも、政府によってさまざまな形で侵害される恐れがあることを意味する。

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(※この記事は2013年6月17日の「IWJ Independent Web Journal」より転載しました)」

http://www.huffingtonpost.jp/yasumi-iwakami/post_4992_b_3463250.html

スノーデン 4

2013-06-19 10:29:31 | 諜報活動
「問:グレン クリンワルド(<ガーディアン>読者) "あなたに何が起きても、あなたが流出した資料は安全なのか?"

答:エドワード・スノードン "私が今言えることは、米国政府が私を監獄に入れたり殺すと言っても、これ(追加暴露)を隠すことはできないという事実だ。"

 英国日刊<ガーディアン>のオンライン‘質問と答’チャットルームにエドワード・スノードン(29)が現れた。 この新聞を通じて米国政府の‘ビッグブラザー’形態を暴露し、香港で失踪した彼は17日午前11時から2時間近く読者らと対話をした。 スノードンは現在、香港の安全な家に潜伏していると明らかにした。 彼は身辺保護のためにこの日チャットルームへの出入りを繰り返し鬼ごっこをした。

 スノードンは自身をめぐる各種の疑惑と論議を直接説明した。 特に米国に背を向けて去った理由を詳しく説明した。 「米国政府は他の内部告発者らにしたように、公正な裁判の可能性を遮断した。 私が反逆罪を犯したと宣言した。 秘密と犯罪、さらに違憲行為に対する暴露さえ許しえない犯罪だと規定した。 これは正義ではない。 監獄の外でより良いことができるのに、自発的に監獄に行くことは愚かなことだ。」‘亡命希望地’アイスランドでなく香港を脱出地として選択した理由も明らかにした。 彼は 「国家安保局(NSA)契約職員として外国旅行に行くには30日前に申告しなければならない」と話した。 <ガーディアン>はこれについてアイスランドはオンラインの自由や内部告発に対する支持の雰囲気が強く疑いをかけられる可能性が高いという点を説明した。 続けて「香港は文化的・法律的に私が拘禁されずに仕事をする時間を許容した」と付け加えた。 中国政府との交渉説に対しては鼻で笑った。 彼は「私が中国のスパイだったら、なぜ直ちに北京に飛んで行かなかっただろうか? そうしたとすれば今頃は鳳凰でも育てて宮廷に住むことができた筈なのに」と答えた。

 自身を‘反逆者’に追い立てる一部世論には超然とした態度を見せた。 「心の底から‘私はディック・チェイニー前副大統領のような人に反逆者と呼ばれている’と再確認することが重要だ。 チェイニーは(イラクで)令状なき盗聴と虚偽情報で米国人4400人を殺し、3万2000人を身体障害者にし、10万人のイラク人を死なせた人だ。 ディック・チェイニーに反逆者と呼ばれることは米国人にとって最高の栄誉だ。」 今回の暴露が 「バラク・オバマ行政府の犯罪性を明らかにした告発」という信頼も確かに見えた。 スノードンは「米軍の合法的な目標物に関する情報は流出していない。 代わりに大学、病院、民間企業など市民社会の目標物に対すること(不法監視)に焦点を合わせた」と強調した。 スノードンの暴露により米国で‘私生活侵害’と‘国家安保’の均衡に対する論議が起きたし、オバマ政府の道徳性が大きな打撃を受けた。 CNN放送が調査したオバマ政府の支持率は5月中旬の53%から最近45%に墜落した。 スノードンは「不幸にも、主流言論は人類歴史上最大規模の監視プログラムに関する私の話より、私のガールフレンドがどのようにしてできたのかなどにより多くの興味を示している」として、米国言論の報道形態を批判しもした。

 スノードンが‘追加暴露’計画を暗示して「再び家に帰るつもりはない」と明らかにしたこの日、父親のローン スノードンは米国<フォックス ニュース>とのインタビューで息子を説得した。 彼は 「君が反逆罪になりうる機密を暴露しないよう願う、祈り、そして頼む」として「愛する私の息子エドワードが家に戻って米国の司法措置に応ずるよう願う」と話した。

チョン・ジョンユン記者 ggum@hani.co.kr

韓国語原文入力:2013/06/18 21:30
http://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/592329.html 訳J.S(1777字)」

http://japan.hani.co.kr/arti/politics/15000.html

スノーデン 3

2013-06-18 17:20:35 | 諜報活動
「「米は真実を隠し通せない」 内部告発のスノーデン氏

17日、AP

 【ロンドン=前川浩之、スライゴ〈アイルランド北部〉=望月洋嗣】米国家安全保障局(NSA)などの情報収集活動を内部告発した米国人エドワード・スノーデン氏が17日、「私を刑務所に入れたり殺したりしても、米政府は(真実を)隠し通せない。真実(の暴露)は止められない」と訴えた。英紙ガーディアンのブログに投稿された質問に、滞在先の香港から答えた。

 スノーデン氏は香港入りした理由を米国では公正な裁判が受けられないためだと説明。「米政府は、私を裏切り者だと断じ、公正な裁判をする可能性をつぶした。秘密裏の犯罪行為を暴露することが、許されない犯罪だとした。これは正義ではない」と主張した。

 「そんな政府に自ら名乗り出るのはばかげている。(米国の)刑務所の外からの方がより多くの善行ができる」とし、「国家の最高機関が監視から逃れることになれば、政府への信用はなくなる」と述べた。

 政治亡命と引き換えに中国政府に情報提供したとの見方は全面的に否定した。「中国政府とは接触していない。もし私が中国のスパイなら、どうして北京に直接飛ばなかったのか。今頃は宮廷で不死鳥をなでていただろうに」と語った。

 オバマ大統領については、キューバ・グアンタナモの対テロ収容所の閉鎖などの公約に期待したものの、「違法行為への調査の扉を閉めた」と批判。今回の告発で「正気を取り戻し、憲法に基づいた政策や法の支配を回復する機会を与えた」とした。情報機関の活動を監督する特別調査委員会を設置すべきだとも提言した。

 一方、米政府当局者によると、主要国首脳会議(G8サミット)に出席中のオバマ氏は、極秘の情報収集活動について、公表できる情報の範囲拡大を検討するよう、クラッパー国家情報長官に指示した。この活動に対する国民の理解を深めることが狙いという。

 オバマ氏は今後、デジタル時代のプライバシー保護について、安全保障の関係者や人権活動家、情報技術の専門家らと対話していく意向という。極秘情報収集に関する一連の報道を受けて、オバマ大統領の支持率は急落した。」

http://digital.asahi.com/articles/TKY201306180064.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201306180064

イギリスがG20を盗聴

2013-06-17 11:55:44 | 諜報活動
 後を引きそうだ。

「英政府、G20で盗聴か 各国高官の電話など 英紙報道

朝日新聞デジタル 6月17日(月)11時19分配信
 【エニスキレン(英・北アイルランド)=伊東和貴】英紙ガーディアン(電子版)は16日、英国の通信傍受機関である英政府通信本部(GCHQ)が、2009年4月にロンドンであった主要20カ国・地域(G20)首脳会議などで、各国高官の電話やメールを傍受していた、と報じた。米国家安全保障局(NSA)による極秘のネット情報収集を公表した米国人エドワード・スノーデン氏が、同紙に文書を暴露した。

 英国は、17日に北アイルランドで開幕する主要国首脳会議(G8サミット)の議長国。外国人を狙ったスパイ活動にはドイツなどが強く反発しており、サミットで追及される可能性もある。米英首脳は、G8開幕直前に思わぬ難題を抱え込んだ。

朝日新聞社」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130617-00000015-asahi-int

ほんと?

2013-06-17 11:21:19 | 原発
 ロシアの声より。

 ロシアは以前から日本が朝鮮北部で核開発に成功していたと主張している。

 しかし根拠が不明。

「1945年8月、ソ連軍の参戦によって、日本軍が米国に核兵器を使用する可能性が排除された。

1945年8月9日、米国・英国との協定に基づき、ソ連が対日戦争に参加した。11日、太平洋艦隊およびソ連陸軍が清津港・元山港占領作戦を開始した。両港の間には咸興(ハムフン)という港町があった。日本軍はそこで密かに核開発を進めていた。

 ソ連軍に研究施設を占拠されることを危惧した将校らは12日、巨大な金属のコンテナーで核弾頭のサンプルを運び出し、小型の船艇に載せて漕ぎ出し、沖に出ると間もなく点火、もろとも爆破した。巨大な爆発であった。

 直径1kmの火球が天空に燃えたあと、巨大なきのこ雲が騰がった。米機B-29が投下した広島原爆と同程度の威力の爆弾であった。「祖国」作戦の一環で米軍に対して使用される予定であった。しかし、投下され、炸裂することはなかった。いわばソ連が米国を日本の核攻撃から救ったのである。

Konkurent.Ru、Vladivostok」

http://japanese.ruvr.ru/2013_06_13/115687091/

アメリカの敵-スノーデン 2

2013-06-13 15:54:13 | 軍事
 日本国内の通信も筒抜け。

 スノーデンは長年にわたるNSAに対する観察からリークを決断したという。



「コンピューター・セキュリティ会社は毎年の年次報告で、組織にとっては外部のハッカーよりも、組織の情報にアクセスできる内部の人間のほうがはるかに大きな脅威になる、と繰り返し述べてきた。

米軍のサーヴァーにあった秘密文書を大量にリークした米陸軍の情報分析員ブラッドリー・マニング(日本語版記事)は、その明白な例だ。しかし、マニング容疑者は下級の分析員だったので、そのアクセス権は、ほかの人がつくったデータと書類までに制限されており、監視システムとインフラ自体には及んでいなかった。

その意味で、エドワード・スノーデン(29歳)が米国家安全保障局(NSA)の機密情報をリークした件は、NSAからするとはるかに決定的で憂慮すべきものだ。システム管理者の同氏は、NSAという王国自体へのカギ、組織の秘密と脆弱性のすべてに関する知識、そしてインフラの運用そのものをコントロールする力をもっており、同組織の誰よりもはるかに大きな脅威だった。

スノーデン氏はNSAの「インフラストラクチャー・アナリスト」として、「席に座っているだけで誰の情報をも盗み見ることができた。個人の電子メールがひとつあれば、その人物やその会計士、あるいは連邦判事、さらには(米国の)大統領に対しても可能だった」と話している。

スノーデン氏はさらに「NSAやインテリジェンス・コミュニティー(情報機関によって組織されている機関)で働く全員の連絡先、世界中にいる秘密の情報提供者のすべて、各拠点の位置、ミッションの内容など」へアクセスすることもできた。

「もし米国に損失を与えたいと思えば、ある日の午後にでも監視システムを落とすことが可能だった。わたしにはその気がなかったが」とスノーデン氏は言う。

彼が今回のリークで意図したのは、あるいは少なくとも希望したのは、彼が問題だと感じる情報システムを別の形で引きずりおろすことだった。一般に公開することによって、その方針を変更させるという形で。その意図が成功するかどうかは時が経たないとわからないが、彼のリークは少なくとも、政府による監視がどれだけの範囲に渡っているかについて、一般の人々の理解を広げた。

情報をリークした記者との連絡では「Verax」(ラテン語で「真実を述べる者」)というコード名を使っていたというスノーデン氏は、機密を扱うコンピューター・インフラでの職を、長年にわたって複数兼ねていた。スノーデン氏はリーク時、防衛企業のBooz Allen Hamilton社を通じて、NSAの仕事をしていた(同社の声明によると、スノーデン氏の同社勤務期間は3カ月以下だったという)。

『Guardian』紙のインタヴューによると、スノーデン氏は情報をリークした際、仕事も生活もハワイが拠点で、インフラ・アナリストとして年間200,000ドルの稼ぎがあった。さまざまな契約会社の所属として、NSAで4年間働いていたという。

スノーデン氏は2003年に陸軍の訓練から外れたあと、メリーランド大学にあるNSAの秘密施設のひとつで警備員を始め、その後CIAでITセキュリティ担当として働いた。2007年、CIAは同氏をコンピューター・セキュリティの職でジュネーヴに配属した。スノーデン氏はこれにより、広範囲の機密書類に関する取り扱い許可とアクセス権を得た。

彼はその時、「自分が良いことより悪いことのほうをはるかに多く行っている何かの一部になっていることに気がついた」という。

スノーデン氏は自分が知ったいくつかの情報についてリークすることを考えたが、秘密をリークすると人々を危険に晒す恐れがあることから実行しなかった。彼はまた、2008年のバラク・オバマの大統領就任で事態が変わるかもしれないと考え、リークを控えた。

2009年、スノーデン氏はCIAを離れて民間業者と契約し、その会社によって日本の軍事基地にあるNSAの施設に配属された。

それから3年間、スノーデン氏はNSAの監視組織をさらに幅広く見るようになった。そのプロセスで幻滅と不満が募り、ついには情報のリークを決断した。NSAが毎月大量の米国人の通話記録を電話会社から入手していること(日本語版記事)を示す裁判所の命令や、インターネット企業から外国のターゲットに関するデータを入手する監視システム(日本語版記事)を説明した書類などだ。

スノーデン氏がリークを決意したのは、単一の出来事が原因ではなく、NSAのあり方を何年にもわたって見聞きした結果だった。同氏はGuardian紙に対し、「彼ら(NSA)は世界のすべての会話とあらゆる形式の行動が自分たちにわかるようにする、という意図をもっている」と語っている。同氏によるとNSAは「民主主義への本質的な脅威」だという。

リークを行った現在、NSAはスノーデン氏自身にとっての脅威となった。

スノーデン氏は5月初め、『Washington Post』紙の記者バートン・ゲルマンにあてて、「自分が行動の結果としてどういう犠牲を払わなければならないかは理解しているし、この情報が世間に公開されると自分自身が終わりになることもわかっている」と書いた。ゲルマン記者はスノーデン氏のリークをスクープした記者のひとりだ。

米国のインテリジェンス・コミュニティーは、「ひとりの人間が単一障害点(Single Point of Failure)であり、このリークを止めて情報を自分たちだけのものにすることが可能だとなれば、まず確実にその人物を殺す」ところだとスノーデン氏は言う。

そのような危険があっても「勝てる」ということを示すことで、「行動に出る勇気をほかの人たちに与えたかった」とスノーデン氏は述べている。

※米国は、世界規模の通信傍受システム「エシュロン(Echelon)」(日本語版記事)を構築しており、その運営主体はNSAと言われている。日本でもエシュロン傍受施設が青森県の三沢基地に置かれており、日本政府や日本企業等の情報も含め、無線や携帯電話、インターネット回線など、日本国内の通信が常に傍受可能とされている。」

http://wired.jp/2013/06/11/nsa-leaker-ultimate-insider/

「米、安倍政権の歴史認識に警告 日米同盟影響も示唆」

2013-06-13 13:39:37 | 政治
「米、安倍政権の歴史認識に警告 日米同盟影響も示唆

 【ワシントン共同】オバマ米政権1期目に国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたジェフリー・ベーダー氏は12日、日本の過去の侵略と植民地支配を謝罪した「村山談話」の見直しなどを安倍晋三政権が行えば米国として黙認することはないと警告、日米同盟にも影響が出る可能性を示唆した。

 ワシントンで開かれたシンクタンク主催のシンポジウムで述べた。近隣諸国との摩擦を生んでいる日本の指導者の歴史認識に対する米側のいらだちをあらためて浮き彫りにした。

2013/06/13 11:27 【共同通信】」

http://www.47news.jp/CN/201306/CN2013061301000905.html