白夜の炎

原発の問題・世界の出来事・本・映画

非正規雇用の最低賃金を1500円に

2015-12-05 17:08:56 | 労働
非正規雇用の割合が4割を超えた。

その圧力で正規雇用の賃金も引き下げられ、会社への従属度が高まっている。

また4割が非正規雇用となると、実際問題として、彼らの正規雇用化の推進といっても、限られた範囲にとどまらざるを得ないだろう。

ではどうしたら、不安定な低賃金労働者の現状を改善できるだろうか。

私は非正規雇用の賃金水準の大幅な引き上げしかないと思う。そしてこのことは以下の理由で正当である。

1 非正規雇用は今や周辺の単純労働の担い手ではなく、企業活動にとって不可欠の存在である。例えばスーパーのレジうちにしても、彼らなしではスーパー自体が成立しないことは明らかである。また企業規模を問わず、経理や重要業務等をになう他、正社員並みに会社の将来に責任ある業務をこなしている。現状の賃金水準は労働の現場にあまりにもマッチしていない。

2 非正規雇用は雇用期間が限定され、その後の再就職も補償されないのであるから、そのデメリットを補填するものとして、単位時間あたりの高賃金化が妥当である。基準として、最低賃金1500円程度を考えてよいと思う。現状の最賃の1割2割増では補償効果はほとんどないた゜ろう。
 
 これは学生アルバイトも同様。近年学生たちにとってアルバイトは生活費を稼ぐための不可欠の存在になっており、きちんとした処遇をする必要がある。彼らの仕事も塾産業にとっては不可欠なことは明白である。

以上であるが、これを実現できないような企業は淘汰されても仕方がない。際限なく低賃金を拡大するだけの経営は社会にとって百害あって一利無しである。

少子化対策で移民を考慮

2012-02-24 15:56:55 | 労働
「中川少子化相「移民政策を視野」…政府で議論も

読売新聞 2月24日(金)8時4分配信

 中川少子化相は23日、読売新聞などとのインタビューで、日本で少子高齢化が進んでいることに関連し、「北欧諸国や米国は移民政策をみんな考えている。そういうものを視野に入れ、国の形を考えていく」と述べ、移民を含めた外国人労働者の受け入れ拡大を目指し、政府内に議論の場を設けることを検討する考えを示した。

 少子化対策だけで日本の人口減少に歯止めをかけるのは難しいとの認識を示したものだ。中川氏は「現状でも多くの外国人が実質移民という形で日本に入っている。どういう形で外国人を受け入れていくか議論しなければいけない時期だ」と語った。

最終更新:2月24日(金)8時4分」

 もう四半世紀も前からOECDの報告書で、日本は一定の移民を受け入れなければ経済的活力を維持できないと指摘されてきた。 

 バブルの時期にも随分議論されてきた。

 結局「外国人は嫌い」で、引きこもり政策を取り、今や国家破たんの瀬戸際である。

 多民族・多国籍国家以外にあり得ないという現実を直視するほかはないと思う。

原発作業員、暴力団関与の会社が不正派遣か?

2012-01-12 18:02:24 | 労働
「原発作業員、暴力団関与の会社が不正派遣か

読売新聞 1月12日(木)17時28分配信

 福井県内の原子力発電所の関連工事の下請け業者に、不正に作業員を派遣していた疑いが強まったとして、福岡県警は12日、東証1部上場の建設関連会社(本社・東京都)と北九州市若松区の建設会社の関係者ら数人について、労働者派遣法違反などの疑いで事情聴取を始めた。

 容疑が固まり次第、逮捕する方針。県警は、指定暴力団・工藤会(本部・北九州市)幹部が北九州市の会社の経営に関与しているとみている。原発周辺の作業現場は危険が伴うため人手不足が常態化しているとされ、県警は、こうした実態に暴力団が目を付け、資金源にしていた疑いがあるとして全容解明を進める。

 原発関連工事の労働者派遣を巡り、暴力団の関与を視野に捜査当局が強制捜査に乗り出すのは異例。

 捜査関係者によると、東京都の建設関連会社が受注し、福井県内の会社に発注した原発関連工事で、北九州市の建設会社が作業員を派遣。その際、同市の会社は、派遣に必要な厚生労働相の許可を受けていなかった疑いが持たれている。

 建設関連会社は主に、原発の建設や保守、点検業務などを手掛けている。県警は、派遣の経緯について事情を聞いている。
最終更新:1月12日(木)17時28分

貧困化が女性にしわ寄せ

2011-12-09 15:06:32 | 労働
「単身女性、3人に1人が貧困 母子世帯は57%

「女は派遣を望んでいる? NO!」。国会近くでのぼりを立て、抗議する「オンナ・ハケンの乱」。派遣切りにあった女性らが、「派遣法を修理しろ~」と替え歌でアピールした=11月29日、東京・永田町、仙波理撮影

 勤労世代(20~64歳)の単身で暮らす女性の3人に1人が「貧困」であることが、国立社会保障・人口問題研究所の分析でわかった。2030年には生涯未婚で過ごす女性が5人に1人になると見込まれ、貧困女性の増加に対応した安全網の整備が急がれる。

 07年の国民生活基礎調査を基に、同研究所社会保障応用分析研究部の阿部彩部長が相対的貧困率を分析した。一人暮らしの女性世帯の貧困率は、勤労世代で32%、65歳以上では52%と過半数に及んだ。また、19歳以下の子どもがいる母子世帯では57%で、女性が家計を支える世帯に貧困が集中している。

 貧困者全体の57%が女性で、95年の集計より男女格差が広がっていた。非正規雇用などの不安定な働き方が増え、高齢化が進むなか、貧困が女性に偏る現象が確認された形だ。」

 朝日新聞⇒http://www.asahi.com/national/update/1208/TKY201112080764.html より


 すこし極論をぶちたい。セーフティネットの構築で人を「救う」のは限界がある。

 基本的には社会に役に立つ人間として働き、何らかの価値を生み出して世の中に貢献してもらわなければならない。

 その意味で、一番のセーフティネットは能力を高め、社会で必要とされる人材になることである。

 これは男性も同じである。

 ここからが極論になる。

 「とりあえずパートでも」、とか「派遣でも」、といった考えで仕事につき-現状はそれ以外にないケースがあることは多々承知しているが、このような人たちがいることも事実-、日々の業務をこなすだけで「私は頑張っている」と自己満足に浸っているようでは未来はない。

 日々の業務に課題を見つけ、指摘し、先々を考える力のある・姿勢のある従業員でなければいけないし、その中で自身の能力を向上させなければならない。

 資格を取るのもいいのだが、とるならきちんとした社会的評価があるものにしないといけない。

 ちょっとしたおけいこごと並みでは評価されるわけはない。

 日商簿記ならせめて2級以上。英検-今はトーフルの方がいいかもしれない-もせめて2級以上。私の友人で大卒時に1級を持っていた男がいるが、その点は役に立ったと言っていた。

 但し企業は必要な資格は従業員にとらせるので―取れなければいずれいられなくなる-資格持ちであることは企業にとってそれほど重要なポイントでないことは押さえておこう。

 評価されるとしたらしかるべき資格の上級と、仕事上のしっかりしたキャリアが整合的である場合だけである。


 さて今日本の労働者若者の能力資質は大きく落ち込んでいる。

 このままでは、20年後には明らかに途上国以前の状態になるだろう。

 政府もセーフティネットの構築だけでなく、小学校からきちんとした教育を徹底しないと、「面白い」ということは馬鹿芸人を見て笑うことだとしか理解できない人間ばかりになりかねない。

 

メンタルヘルス対策と受動喫煙防止を事業者に義務付け

2011-12-02 15:08:56 | 労働
「受動喫煙防止義務づけへ 閣議決定

  12月2日 13時39分

 すべての従業員を対象にしたメンタルヘルス対策や、職場での受動喫煙の防止対策を事業者に義務づける労働安全衛生法の改正案が2日の閣議で決定されました。

 改正案では、職場でのメンタルヘルス対策を強化するため、事業者に対して医師や保健師が行うストレスに関する検査をすべての従業員に受けさせることを義務づけます。

 さらに従業員が希望すれば専門の医師の診察を受けさせるほか、勤務時間の短縮や部署を変えるなどの改善策を取ることも事業者に求められます。

 このほか改正案には、職場で他人のたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」の防止対策が盛り込まれ、すべての事業所と工場に対して、職場全体を禁煙にするか、分煙室を設けることが義務づけられ、こうした対策が難しい場合は職場内のたばこの煙を一定の濃度以下に抑えたり、換気を徹底するなどの対策が求められます。

 小宮山厚生労働大臣は「労働者の安全や健康確保のために重要な法案であり、会期末が迫っているが今の臨時国会で成立するよう努力したい」と話しています。」

労働者の権利のために

2011-11-10 18:50:32 | 労働
「過労死の企業名公開命じる 大阪地裁が初の判決

 過労死などで社員が労災認定を受けた企業名を情報公開しないとした大阪労働局の決定の適否が争われた訴訟の判決で大阪地裁は10日、「公開しても社員のプライバシーや、企業の信用を傷つける恐れはなく、不開示は違法」と判断し、労働局の決定を取り消した。

 原告側弁護団によると、企業名の情報開示を認めた判決は初めてで、「企業側が社会的監視にさらされることで、過労死をなくす努力をより強く求められることになる。健康管理態勢の改善につながる画期的な判決だ」と評価している。」

http://www.47news.jp/CN/201111/CN2011111001000464.html

原発検査のずさん

2011-11-02 14:01:55 | 労働
「<原発検査>内容、業者が原案を作成 丸写しが常態化
毎日新聞 11月2日(水)2時30分配信

 原発関連施設の唯一の法定検査機関で独立行政法人の「原子力安全基盤機構」(東京都港区)が、対象の事業者に検査内容の原案を事前に作成させ、それを丸写しした資料を基に検査していることが毎日新聞が情報公開で入手した文書で分かった。

 丸写しは常態化しており、中には国に「合格」と報告した後にミスが判明した例もある。チェックの形骸化に専門家から厳しい批判の声が上がっている。所管官庁の経済産業省原子力安全・保安院は来春、規制強化を目指し「原子力安全庁」(仮称)に改組されるが、機構の検査についても改善を迫られそうだ。


 機構の法定検査は、検査項目や合格判定基準などを記載した「要領書」と呼ばれる資料を基に行われる。毎日新聞は機構の検査実態を調べる中で、東北電力東通原発1号機(青森県東通村)に納入予定の沸騰水型軽水炉用核燃料を検査するための要領書と、検査内容の原案を入手した。

 原案は、燃料を加工・製造した「グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン」(神奈川県横須賀市)が作成し、表紙を含めA4判61ページ。検査目的▽項目▽サンプル検査の対象となる燃料ロット(燃料棒の束)の抽出法▽燃料棒の寸法(規定値)--などが記載されている。一方、機構の要領書はA4判62ページ。表紙は差し替え、2ページ目を除く3ページ目以降は書式や活字のフォントも含め一言一句原案と同じだった。

 機構によると、原案は08年9月、電子データの形でグローバル社から無償で受け取った。機構の検査員は同12月18日、原案を丸写しした要領書を持参して検査に臨んだ。

 この際、同社が検査内容の原案で燃料棒の長さ(約4メートル)を、事前に国に届け出た規定値の範囲より3~5センチ短く誤って記載したため、機構も要領書の値を間違えた。検査員は結局、要領書さえ見ず、同社が作成した別の文書と照合し、燃料棒の長さを妥当として合格判定を出した。

 検査員は国に合格判定を報告(合格通知)する前の09年2月、誤りに気づいた。その後の内部調査で、08年10~12月に行われた同社に対する3回の検査でも同じミスが判明。これら3回については、いずれも国に合格通知していた。

 機構の工藤雅春・検査業務部次長は取材に、丸写しが常態化していることを認めた。しかし「事業者も内部で同様の検査をしているので、原案を作ってもらっても問題ない。原案の誤りに気づけば修正している」と説明している。

【川辺康広、酒造唯】」


 こんなことだと思っていましたが。

 平井憲夫さんの証言を、細かい揚げ足取りの果てに「トンデモ」扱いする人たちがいますが、このような現場の大問題を取り上げないのはなぜなのでしょうか。

 本当に原発で働いている専門家であれば、知らないはずはないと思いますが。

 やり取りについては⇒http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111102-00000004-mai-soci.view-000

原発労働の実態-再掲

2011-10-31 19:45:14 | 労働

 原発労働者の実体験です⇒http://san-ya.at.webry.info/201103/article_11.html

「松本さん(被曝労働体験者)の話

司会:では、次に移りたいと思います。新宿で野宿している労働者の松本さんをご紹介したいと思います。

 いま、藤田さんのお語にあったように、下続け孫受けの業者が、清掃等の形でくるわけですが、はじめから原発の仕事だって公募することはまずありません。

 松本さんの場合もそうですが、駅の手配で、仕事に行くときにも、簡単な拭き掃除だということしか教えてもらえなかったと。そいで連れて行かれたところが原発の中だったということです。

 寄せ場や野宿の労働者はおそらく圧倒的にそういう形で連れていかれて、多くの場合は出てくるときに口止めをされているために実態が明らかになっていない。儀たちもどういう業者なのかつかめていないので、どこを叩けばいいのかわかっていない。実際中でどんな仕事をしてきたのか聞きたいと思います。


連れて行かれるまで

松本:こんにちは。私は新宿でみなさんにお世話になっております。

 こちらの先輩の方から今日のお話を聞きまして、ぜひ自分の体験したことをみなさんにわかっていただきたいと思いまして、おじゃまさせていただきました。

 私ね、戦争で耳やられちゃってきこえにくいのでそのへん勘弁してください。新宿でお世話になってるのは5年目、いいコケのはえてる親父です。その前はね、食い物のほうが本職なんですよ。6年ぐらい、京都で仕事してまして,そいで契約がきれまして、東京へね、帰ってきたわけです。

 まだ新宿のことは何も知らなかったんですよ。そいで退職金やなんかね、20万以上もってたんで、正直上野で遊んでぶらぶらして、勝手なことやってたんですよ。

 そのうち上野の駅でね、肩たたかれて、「君、何やってんだ」って言うからね、「関西で仕事やってたけど、帰ってきてぶらぶら遊んでるんだよ」って言ったら、「楽な仕事があるからね、半年でも一年でも働いてくれないか、責任持つから」って言うんですよ。で、「どんな仕事か」って聞いたの。そしたら「お宅ね、年輩者だから、土方やなんか経験あるだろ」って言うから、「ないよ、関係ねえから。食いもん商売だから」って。

 「そいでも大丈夫だから、行ってやってみないか」って言うんですよ。掃除仕事だって。ただ雑巾やなんか持って掃除してくれればいいって。

 それならね、ぶらぶら遊んでてもしょうがないからって.そしたらね、私のそばにいた友達が一緒に話を聞いてましてね、私も行ってみようかなって.そしたら手配師が、「二人でも三人でもいいや.立ち話でもなんだから、喫茶店でお茶飲みながら話しようや」って。コーヒーごちそうになったりケーキごちそうになったりして語を聞いたところね、常磐線に土浦、荒川沖ってところがあるんですよ。

 そこに一緒に行きましたら、手配師が電話かけましてね、迎えの車よこしたわけですよ。そいで乗ってきましたところが、荒川沖って駅から、だいたい20分ぐらい離れたところにね、会社っていうんですかね、飯場でね、前に来てたのがね、15から16人いたんですよ。仲間が。

 そこでいろいろ話聞きましたら、責任者っていうんですか、職長っていうんですか、私たちの面倒をみてくれる、世話役っていうんですか、その人に聞きましたら、土方なんか絶対やらせねえから.ね。もう夕方も5時から6時には帰ってきて、遊んでりゃいいんだからって。そいじゃあせっかく荒川沖ってとこまで来たんだから、帰るのもなんだからって思って、やらせてもらいますって言いました。


作業

 ところがね、最初はね、東海大学でもってね、二日ぐらい、いろいろ聞いたんですよ。作業をね、どういうことをするか、つてね。研修っていうんですかね、早く言えば。

 そいで3日目からね、朝、車にのっけられてね、前日にいった東海大学に行くのかと思ったら、水戸を通り越して、東海村っていう、原子力の発電所があったんですよ。全然知らなかったの。門前でストップしまして、職長さんていうんですか、それから世話役さん、一緒に行った会社の責任者、そういう人がね、ちょっと用があるからって言って、私たちを置いてね、帰っちゃったわけですよ。なんだ、無責任な野郎だなと思って。

 そしたらね、原発のね、職員さんが「いらっしゃい、よく来てくれました」って。なんもわかんないだろうから、こっち来てあたしの説明を開いてくださいって。そいで連れて行かれた所で、以前、健康を害してないかとか聞くんで、やせてるけど体だけは丈夫だよって答えて、そしたら詰め所みたいなとこがあってね、着替えてくださいって言うんですよ.おかしいなって思って。

 そしたら上下真っ白いやつを着せられて、作業服って言うんですか、それとね、針とメーターがついたやつ、わかんないけどさあ、くっつけられて、さあどうぞ現場へ行ってくださいって言うわけですよ.帽子かぶってね、マスクしてね.
 何するんだろ-つて思って行ったところがね、さあ、仕事はじめてくださいっつったちね、なんつったらいいんですか、煙突みたいなね、太いやつがあるんですね、そこにね、梯子みたいなのがかかってるんですよ。

 それをかわいた布、はやく言えば雑巾みたい、ちょっと薬品がついてるんですね、渡されて。そいではしごの途中に体休めるとこ、高いとこですから、休憩所っていう動くように上がったり下がったりするとこがあるんですよ。それに乗っけられてね、ここで仕事してくださいって。どうすんですかって、とにかくここをきれいに掃除してくださいって。中を.そいで、台がぐるーつと回るんですよ.

藤田:それは煙突の中ですか。

松本:中。そこをふいてくださいってね.においかいでみたけど,なんの薬だかわかんないけど、においがするんですよね。そいで1時間ぐらいやると、30分くらいで休憩だって言うんですよ。こーりゃいいや、楽ちんだって(笑).ところが、やってるうちにね、「ガーガーガー」って鳴り出すんですよ.

藤田:何分ぐらいで鳴りました?

松本:15分から30分ぐらいの問。そいでね、赤いレッドゾーンて言うんですが、これがオーバーして、針がピーピッてものすごい音が鳴るんですよ、こっちはわからないから一生懸命やってると、「はい、きゆうけ-い」って。そいでまだ休んで,またやる。針がもとに戻っちゃう。そいで始めると、針がピーッて。おっかしな仕事だなーと思って.具合が悪くなる

 そいでね、二日三日はなんともなかったんですよ。私と一緒に行った友達も。そしたらねえ、5日か6日、だいたい一週間ですね、夜、会社へ帰ってきて食事しても、なんだかねえ、風邪ひいてんのかな、体がだるくてね、痛いとかそういうんじゃないんですよ、わかんないけど、なんだか知らないけど、体がだるくてしょうがねえなあって仲間と話してたんですよ。

 そいでねえ、ちょうど3カ月目です.私ね、戦争で耳が悪いんですがね、のどはなんともなかったんですよ。ところがねえ、会社帰って寝ると体があったまってくるでしょう、そうすると苦しくてしょうがない、ごほんごほんってね。そいで責任者にね、体温計貸してくれって言うとね、一応貸してくれてね、38度あるんですよ.

 そいで朝になって、寝不足だけど、やっぱり起きろ仕事行けっていうから、ほいで行ったけど。自分でも考えたんですよ、こんな喉痛くなるような覚えないんだけどなあ、つて。悪いけど、やめさせてくださいって、調子悪いから。ここやめて東京帰って医者にみてもらうからって。自分の体だからね.そうしたら、我慢してやってくれって言うんだよね。でもね、5~6年前の一日の日当がね、1万5千から1万8千くれたんですよ、だけど、そんなお金もらったって、体に代えらんないもん、命に。悪いけど勘弁してくれって言って。


友達の死

 一緒にいた友達にね、どうだ、具合悪くないかつて開いたけど、「今んとこ俺なんともないけどなあ」って.でも一緒に帰ろうやって。この方はね、秋用で農家の方、農家だけでやってかれないから東京出てきて、奥さんと子供と住んでて。で、私は一人で東京へ帰ってきて、その方はどのくらい仕事やったかわからないけど、ご無沙汰しちゃったんですよ。

 そしたら最近ね、私の子供がね、浅草にいるんですよ。子供が、「親父さんこういう人から連絡あったけど知ってるかい」って言うんですよ。ああ知ってるよ、なんだい、って。そしたら、死んじゃったよって。

 なんだい、あんな丈夫で、だるまさんみたいにころころしてたのに。お葬式に行ったんですよ。そしたら、奥さんが泣くばかりでね。子供も下が小学生でねえ。どうしたんだいって聞いたら、あれから一年ぐらい余分にやったんだって。いわゆる白血病になっちゃったんだそうですよ。治んないそうですね。そいで最後のお別れに、お棺の中を見たら、あんなふさふさしてたのがねって、私よりやせちゃっててね、食事も全然受け付けなかったそうですよ。

 どうだい、奥さん、最後は苦しんだかって聞いたら、苦しんで苦しんで苦しみぬいて逝っちゃったって。正直、私も泣いちゃったですよ。
またこういう原発の問題が起きてるんですよね。私は、自分らがそういうふうに友達をなくしてるし、原発を経験して、もう治らないって言われた喘息もってるから、これはそういう仕事やった影響だって医者に言われましたよ。一時直す薬はやるけど,もう直らないよって。そういう体ですからね。絶対仲間を行かしちゃだめです。体張っても絶対反対します。

 一カ月ばかり前に、また上野と新宿でね、私が知ってる熊川って手配師のボスが死んじゃって、その子分が上野とか新宿とか池袋とか、原発の仕事引っぱりに来てるんですよ。先日、仲間の人には黙ってますけど、手配師見つけたから、また引っぼりにきたのか、いい加減にしろって.いや、そうじゃねえよとか言ってたけどさあ。

 池袋の仲間、馬場の仲間 こういうの経験したことないから。今ね、日当ちょっと上乗せしておいしいこと言われれば、仕事がないときだから、話にのっちゃうかもしれないけど、私はもう絶対反対ってね、それだけはみなさんに言いたい。

ここでよけいなおしゃべりしましたけどね。これからも何かの集まりがあったら参加させてもらって、絶対反対の運動の仲間にいれさせてください。よろしくお願いします。


司会:もうちょっと具体的に聞きたいことがあれば。

藤田:最初、東海大学で二日間研修があったと。どこの東海大学ですか。

松本:大洗かどっかの。最近できたとこらしいです。

藤田:そこでどういう話を聞いたんですか。

松本:それはね、知らない人は、こういう仕事だっていうと反対運動だとかいろんな話をふきこまれるだろうけど、決してそんなことはありませんから。

 もし何かあったら、職員のほうで責任持ちますからって言われましたよ。じゃあ、厚生年金もつけてくれるのかって聞いたら、やりますって。国家的事業ですからって。ずいぶんでかいこと言うなあって思ったんだよ、おれは(笑)。
なすび:安全のためにこういうふうにしないさいって話はありました?

松本:ありました。ふつうの土方と違って、一日やってるわけじゃないから。疲れたなあって思ったら、ひとこと言ってくれたら、休憩して休んでくださいって。言うんですよ。ずいぶん調子いいなあって。でもここにつけた赤い針がオーバーしてくると、ガガガガッて鳴るんですよね。少し休むと戻る。

藤田:戻るっていうのがわからないなあ。あー、ポケット線量計か。計は針があがって下がる。もう一つアラームメーター、ピーッて鳴るやつは、設定されたところを越えると鳴りっぱなしになる。あともう一つフィルムバッヂっていうのを持ってて、それは現像して後でわかる。写臭があります。

なすび:まっちゃん、こういうの(岩波ブックレットの中の写真)?

松本:あ、そうそうそう。

藤田:白い作嚢着でしたか? 赤とか黄色ではなく。

松本:真っ白です。

藤田:目は?

松本:防塵マスクかぶって。オートバイのる人がするようなね.

藤田:作業区分としては、たぶんパイプの内部の除染作業ですね。大きさほどのくらい?手で握れるくらい?

松本:ふたまわりくらい(手を抱えるようにして)大きかったかなあ。

藤田:縦ですか? 長さは?

松本:縦。長さはそりゃちょっと見当つかないですねえ。

藤田:「ほうかん」、っていうのいたでしょ。放射線管理者。現場監督。

松本:職員さんですか?いましたよ。私らが乗っかってる下にいた。中にはいない。作業状況をチェックしてるわけだよ。

藤田:鳴ったら出てきなさいとは言わないわけですか。

松本:言わない言わない。

参加者A:行ったのは、東海村の原発?動燃でもなくて原研でもなくて?

松本:一番先にあるんだよ。

藤田:あそこは、最初は動燃、それを通り過ぎると、原研があって、第二原発があって、第一原発があるんですよね。

松本:そう、一番奥。

藤田:じゃあ第二か第一だな。3カ月間ずっとそれをやったんですか? 同じ場所で?

松本:そう。単調ですよ(笑).

参加者A:ずっとトンネルの中を上から下まで。かわいた布で。

松本:そうそう。薬品みたいなのついてんですよ。かすかに匂いはしたけど。

参加者A:マスクはどんなマスクでしたか。

なすび:ここに二つあるんですが。目が出るやつと、目が出なくて全部のやつと…

松本:これこれ(目が出る方を指して)。これにゴーグルをして。

参加者A:全面マスクですね.

藤田:僕も現場行ったことあればいいんだけど。行った人も迷路みたいだって。

松本:仕事終わって帰ってくるでしよ、また行くでしょ.作業服とかね、前の日自分が使ってたやつと達うんですよ。どうしたんだよー、きのう着てたんだよーつて言うと、こっち使ってくださいって。

参加者A:新しいのなんですね。

藤田:作業服を着るときは、パンツ一つになって、全部着替えた?靴下はいて?長靴はいて?手袋も何故か?

松本:二枚か三枚か.

藤田:かなりのとこ行ってるんだね.

藤田:仕事やめるときに、放射線管理手帳という青い手帳もらいました?

松本:くれないよ。

藤田:亡くなったお友達も持ってなかったですか。

松本:持ってないですよ.それで奥さんが怒るんだよ。

藤田:それがあると,被曝したという証拠になるんですよ。無いと、喧嘩にならないんだよね。法律で決まってるけどくれないんだ。

松本:だから奥さんが「殺されたんだ」って言うんだよ。

参加者A:生年月日を聞かれたり、身長と体重とか聞かれた?

松本:聞かれました。

参加者A:じゃあ作ってることは作ってるんだ。

藤田:なぜ渡さないかというと、あいつら労働者はなくすからだって言うんだよね.住民票を持ってこいとは言われませんでしたか?

松本:いやー。手配師が引っぱってくだけだから。

藤田:このあいだ東電に聞いたら、アジア人の労働者であっても、原発労働では差別しませんという言い方をしてた。(一同 笑)

参加者A:いつごろ働いてたんですか。

松本:新宿にお世話になって5年で、その半年前だから・・・

藤田:5年前の3月からですね。つまり1993年の3月から6月。お友達は、それから1年以上いたんですよね。翌年の春ぐらいまでいたんですか。亡くなったのはいつですか.

松本:先月です。

藤田:98年の10月に白血病でなくなったと。

参加者A:飯場はどこにあたんですか?

松本:荒川沖

なすび:東海村の中にはなかったの?

松本:ないない。荒川沖。

参加著A:じゃあ、会社の人が毎日荒川沖まで送っていくわけですね。朝は何時からですか?

松本:そうですね、朝の食事して一服して、8時前後だね。夕方は5時ぐらい。後かたづけとかすると6時ぐらい.よけいなことしゃべりますけど、2、3日前、イヤホンつけてラジオ聞いてたんですよ。

 国会議員かなんかえらい人が、国会討論だとかで、厚生大臣とかがおしゃべりしてるのを耳にしたんですよ。

 この不況とか日雇いとかの状況についてね、原発の仕事しなさいって。大空の下に寝っころがっている野宿労働者を国家的な事業につかせなさいって。ほいであたし頭来ちゃって。人を殺すのは刃物だけじゃないですよ.いくら言論の自由だって言ったってね、とんでもないことですい。だいたい、政治家とか国会議員が一言でも口にするべき言葉じゃない。」

原発労働の実態―続

2011-10-27 14:12:10 | 労働
 原発労働問題です⇒http://synodos.livedoor.biz/archives/1775657.html

「2011/6/109:40

現代労働問題の縮図としての原発 ――差別の批判から、社会的基準の構築へ 今野晴貴(NPO法人POSSE代表)

■はじめに

福島第一原子力発電所での事故を受けて、原発における被曝労働に、かつてないほどの注目が集まった。ひとたび事故が起こると、誰かが命をかけてしか止めることができないという非人間的な装置。「対処」を求めることが、誰かの「被曝」を要求することと同義となってしまうジレンマ。原発が惹起する残酷な現実に、多くの人がとまどわずにはいられなかったのではないだろうか。
ところが、事故のはるか前から、「原発労働」は悲惨な労働問題として、その存在を知られてきた。原発は事故による大規模な汚染が生じなくとも、日常的に労働者を「被曝」させ、多くのガン・白血病患者を生み出してきたからだ。事故によって改めて焦点が当てられた被曝労働は、実は平穏な日々に隠れた「裏側の日常」であった。

3月11日からの数日間、原子炉の冷却作業が一進一退するなかで、私自身は、事例の研究と運動の支援のために派遣・請負労働問題の裁判に出向いていた。派遣労働問題はこの数年来もっとも注目を集めた労働問題の一つであり、POSSEが課題として取り組む中心的なイシューでもある。

私は出身が仙台であることもあって、「いつものように」現代の労働問題に向き合いつつも、内心は震災の被害や放射能の汚染について気が気でなかった。しかし、考えれば考えるほど、原発がもたらす今日の被害は「労働問題」なのである。裁判を傍聴しながら、報告会に耳を傾けながら、そうした思いが込み上げてきた。

第一に、原発労働は親企業が下請企業に危険な労働を押し付けることによって、初めて成り立っている。このことは製造業の派遣労働者や、下請企業に従事する建設日雇い労働者が、危険な労働や生きていくことの難しい低賃金労働を強要されてきたことと同じ構図である。派遣労働者が「派遣切り」で自殺や貧困に追いやられたとしても、実際に不安定労働を利用した企業は「無関係」を装ってきた。実際に労働者を利用する企業の責任をあいまいにする「間接雇用」の蔓延は、雇用される者の生存を十分に脅かしてきたといってよい。

第二に、原発労働はまさに「死をも含みこんだ労働」を必要とするが、これは今日の過労死問題と通じている。どの程度まで危険な労働、過酷な労働を社会的に許容するのか。この点を問うてきたのが過労死・過労自殺訴訟であり、原発の被曝労働についても同じことがいえよう。

すなわち、間接雇用について、より強い規制が敷かれていれば、そして過労死訴訟をつうじて、人間の生命と経済活動の自由のあいだの線引きが、より人間の側に引かれる社会となれば、(直接的にではないにせよ)原発における被曝労働は許容されないのではないだろうか。少なくとも、より労働者に配慮した設計がなされただろう。世界に冠たる技術大国として、原発事故に対応するロボットを30億円をかけて開発していながら、実用化されないまま廃棄されていたことも明らかになっている。労働者の命の軽視にも程があろう。日本でこれまで原発を稼動できたのは、あるいは原発を稼動して大きな利益を生むことができたのは、こうした社会の設定する労働基準が低かったためである。

以上のような労働問題の視座にたって、本稿では第一に、原発における労働がどのように危険であり、それをどのような人々が引き受けてきたのかを考察する。第二に、そうした危険にもかかわらず原発労働が維持されてきた構図を、労働力供給と「差別(レイシズム)」の観点から考察する(危険の隠蔽)。そして最後に、これを是正していく社会的なプロセスについて考えたい(リスクの政治)。

■「死を前提する」原発労働

放射線の毒性については即座に影響の現れる急性障害(確定的影響)と、経年して発症する晩発性障害(確率的影響)とに二分して考えられる。前者については比較的因果関係の特定が明瞭である一方、後者については今日でもなお、影響の全容が把握されていない。

そのため、放射線の晩発性の危険については「ここまでが安全」であり、「ここからが危険」という「しきい値」は存在しない。統計が教えてくれることは、放射線被曝にはどんなに低くとも「確実なリスク」が存在するということである。これまでの研究によれば、微量の放射線であっても人体に影響を及ぼすことが明らかになっている。

このように「しきい値」がなく、総被曝量が増えれば増えるほど、障害発症者数は増加すると見込まれるにもかかわらず、原発における労働は一人当たりの被曝量を管理し、一定以上にならないように交代(人海戦術)で行われる。基準値に到達することが「ノルマ」とされることもあり、「被曝量」が売り物であるとさえいわれる。

この結果、危険性は除去されるわけではなく、拡散しながら増加し、絶対的な疾病数が増大していくのである。原発労働は一定の「死の可能性」を前提し、「死」それ自体が堆積していく労働なのである。

■「危険」としての原発被曝労働

ところが、こうした「死の可能性」(実際には「死の堆積」)は、これまで許容可能な「リスク」として扱われてきた。そこでリスクについて考えることが重要となる。

社会学では予見可能な危険を「リスク」とよび、予見不可能なものを「危険」としてこれと区別する。原発での被曝労働を「リスク」として把握した場合には、その「リスクの評価」(労働災害の認定)をめぐる政治が、「危険」として把握した場合には、これを隠蔽する抑圧の構図(下請、間接雇用)が見えてくる。そして、原発における低いリスク評価(労災認定の政治)と危険の隠蔽(下請、間接雇用)の双方は、まさに現代労働問題の縮図である。



■原発被曝労働の類型と下請労働・下請労働者

原発における労働は、そのほとんどが下請会社の労働者によって行われる。藤田祐幸『知られざる原発被曝労働―ある青年の死を追って』(岩波書店、1995年)によれば、原発被曝労働は以下の三つに分類できる。第一に、原発の制御系や保安系の維持と管理をするグループである。彼らの主な業務は設備の保守・点検であるが、これは経験や知識など専門的な能力を要する業務であるため、特定の労働者が継続的に従事することになる。そのため、もっとも被曝量が多くなりやすい。

第二に、原子炉やタービンを納入したメーカーが行う機械の検査や修理である。実際の検査等はメーカーの技術者や、これに動員される下請企業の労働者が、定期検査の期間だけ短期間の作業を行う。第三に、専門的な作業従事者が作業する現場の放射能を除染する清掃作業などを行う技能を要さない下請作業である。彼らは農村や都市スラムから動員される。

こうした下請企業の労働者を動員することで、大元の電力会社の負担は小さくなり、責任もあいまいになる。電力会社の社員が労災で死亡した場合には、3000万円前後の上積み補償金が支払われる労使協定が結ばれているというが、下請企業の労働者にはそれがないことが象徴的だ。また、第二のグループや第三のグループでは、作業に従事しているあいだは健康診断を受けることができるが、離職した後に「確率的影響」が現れたときには原発とは関係のない場所にいる。農漁村や都市スラムの病院で「原因不明」の病として処理されるのだ。こ原発で利益を享受している何者もこの責任をとることがなく、まさに危険の「隠蔽」がなされる。

■差別と共通原則

だが、こうした「間接化」だけでは原発被曝労働は成立しない。原発を稼動するためには、「差別された労働力」そのものの確保を必要とする。原子力産業における被曝労働は、世界的に先住民族や黒人に課せられてきた。

日本の原発において、もっとも抑圧された労働者のグループは前述の第三のグループ、清掃等の業務に従事する日雇い労働者たちである。原発におけるこのグループの労働力は、こうした不安定労働のカテゴリーそのものである。原発の立地自体が首都圏や大都市圏を避けられているが、現地の兼業農家がこの代表格となる。これに加え、釜ヶ崎などの日雇い飯場からの労働力調達が行われてきた。いわゆる「都市下層」、「スラム」と呼称されうる労働力供給源だ。

差別労働に対し、先住民族や黒人の場合は、人種や民族などにもとづく差別を禁止する方法を取ることができる。だが、こうした「差別批判」の政策論は、日本のパート労働の場合にみられたように、市場を経由した差別を批判できず、むしろ強化しかねない。「雇用形態差別や過酷な労働は、労働者自身の選択の結果である」、すなわち、「市場の取引は自己責任だ」と。

原発労働者への差別に抗するためには、どのような人であれ、どのような事情であれ、たとえ市場の取引の結果であれ、差別は許されないという「共通基準」の思想こそが有効である。これは、現代労働問題としての派遣労働や有期雇用に対し、同一(価値)労働同一賃金という共通基準を獲得することが課題となっている事態と同様である。

■「リスク」は社会が決定する

最後に、原発被曝労働を「リスク」として受容する「政治」について考えたい。これは、原発による放射線被曝による被害が、どの程度認定されるかにかかっている。すでに述べたように、放射線被曝の被害は確定が難しいため、この因果関係は常に判然としない。そのため、どこまでを原発労働の被害として社会的に認定するかが、リスクの範疇を決定付ける。

この認定の基準の程度が小さいほど、原発のリスクは低く評価され、原発のコストも低いものとみなされる。逆に多くの事例において原発労働との因果関係が認められれば、リスクは社会化され、原発のコストは高く見積もられることとなる。

労災における疾病の認定は、ケガの場合と異なり、一般的に事実的因果関係の証明は困難である。そこで疾病リストが作成され、このリストに記載のある場合には賠償がなされることとなっている。最近ではアスベストの被害の事例がわかりやすい。誰かが肺ガンを発症した場合、その原因がアスベストであるのか喫煙であるのか、科学的な特定をすることは不可能である。だが、アスベストを扱った労働者に関しては、肺ガンの場合に因果関係が認定される。労災認定においては、事実的因果関係そのものを社会的に判断する(相当性)しかないのだ。これはすぐれて政治的・社会的問題である。

こうしたことは、私たちがこれまで問うてきた過労死・過労自殺の問題とまったく同じである。過労死の場合には脳・心臓疾患が主な疾病となるが、この因果関係を特定することは、極めて困難である。

長時間労働やパワーハラスメントが過労死・過労自殺を引き起こすということが社会的な合意となり、労災認定の基準がより厳格につくられれば、こうした非人間的労働は抑制される。同様に、放射線の影響は科学的な探究だけによるのではなく、それと連動した社会化によってこそ、抑止されるのだ。

■おわりに

原発事故がなければ、助けられた命がたくさんある。震災後の寒気の中で、奪われていった命がある。そうした人命の特定すら、もはや容易ではない。物資や救援の遅れ、そして政府の意識が被災者に集中できなかった事態を招いた大きな原因は、原発にある。私は、自分自身の手では何もできなかった。せめて労働問題を問うことで、このようなことが二度と起きないようにと思わずにはいられない。

(本エントリーは『POSSE vol.11 〈3・11〉が揺るがした労働』掲載記事のダイジェスト版となります。)

今野晴貴(こんの・はるき)
1983年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程。専門は労働社会学・労働市場政策。著書に『マジで使える労働法』(イーストプレス)、共著に『労働、社会保障政策の転換を――反貧困への提言』(岩波書店)、『「若者の現在」政治』(日本図書センター)。

POSSE vol.11 〈3・11〉が揺るがした労働
著者:POSSE/高橋哲哉/木下武男/岡田知弘/樋口健二/仁平典宏/斎藤幸平/今野晴貴/本橋哲也/萬井隆令/熊沢誠/後藤和智/川村遼平
販売元:合同出版
(2011-05-25)
販売元:Amazon.co.jp」

原発労働の実態

2011-10-27 13:50:35 | 労働

 原発労働者の実体験です⇒http://san-ya.at.webry.info/201103/article_11.html

「松本さん(被曝労働体験者)の話

司会:では、次に移りたいと思います。新宿で野宿している労働者の松本さんをご紹介したいと思います。

 いま、藤田さんのお語にあったように、下続け孫受けの業者が、清掃等の形でくるわけですが、はじめから原発の仕事だって公募することはまずありません。

 松本さんの場合もそうですが、駅の手配で、仕事に行くときにも、簡単な拭き掃除だということしか教えてもらえなかったと。そいで連れて行かれたところが原発の中だったということです。

 寄せ場や野宿の労働者はおそらく圧倒的にそういう形で連れていかれて、多くの場合は出てくるときに口止めをされているために実態が明らかになっていない。儀たちもどういう業者なのかつかめていないので、どこを叩けばいいのかわかっていない。実際中でどんな仕事をしてきたのか聞きたいと思います。


連れて行かれるまで

松本:こんにちは。私は新宿でみなさんにお世話になっております。

 こちらの先輩の方から今日のお話を聞きまして、ぜひ自分の体験したことをみなさんにわかっていただきたいと思いまして、おじゃまさせていただきました。

 私ね、戦争で耳やられちゃってきこえにくいのでそのへん勘弁してください。新宿でお世話になってるのは5年目、いいコケのはえてる親父です。その前はね、食い物のほうが本職なんですよ。6年ぐらい、京都で仕事してまして,そいで契約がきれまして、東京へね、帰ってきたわけです。

 まだ新宿のことは何も知らなかったんですよ。そいで退職金やなんかね、20万以上もってたんで、正直上野で遊んでぶらぶらして、勝手なことやってたんですよ。

 そのうち上野の駅でね、肩たたかれて、「君、何やってんだ」って言うからね、「関西で仕事やってたけど、帰ってきてぶらぶら遊んでるんだよ」って言ったら、「楽な仕事があるからね、半年でも一年でも働いてくれないか、責任持つから」って言うんですよ。で、「どんな仕事か」って聞いたの。そしたら「お宅ね、年輩者だから、土方やなんか経験あるだろ」って言うから、「ないよ、関係ねえから。食いもん商売だから」って。

 「そいでも大丈夫だから、行ってやってみないか」って言うんですよ。掃除仕事だって。ただ雑巾やなんか持って掃除してくれればいいって。

 それならね、ぶらぶら遊んでてもしょうがないからって.そしたらね、私のそばにいた友達が一緒に話を聞いてましてね、私も行ってみようかなって.そしたら手配師が、「二人でも三人でもいいや.立ち話でもなんだから、喫茶店でお茶飲みながら話しようや」って。コーヒーごちそうになったりケーキごちそうになったりして語を聞いたところね、常磐線に土浦、荒川沖ってところがあるんですよ。

 そこに一緒に行きましたら、手配師が電話かけましてね、迎えの車よこしたわけですよ。そいで乗ってきましたところが、荒川沖って駅から、だいたい20分ぐらい離れたところにね、会社っていうんですかね、飯場でね、前に来てたのがね、15から16人いたんですよ。仲間が。

 そこでいろいろ話聞きましたら、責任者っていうんですか、職長っていうんですか、私たちの面倒をみてくれる、世話役っていうんですか、その人に聞きましたら、土方なんか絶対やらせねえから.ね。もう夕方も5時から6時には帰ってきて、遊んでりゃいいんだからって。そいじゃあせっかく荒川沖ってとこまで来たんだから、帰るのもなんだからって思って、やらせてもらいますって言いました。


作業

 ところがね、最初はね、東海大学でもってね、二日ぐらい、いろいろ聞いたんですよ。作業をね、どういうことをするか、つてね。研修っていうんですかね、早く言えば。

 そいで3日目からね、朝、車にのっけられてね、前日にいった東海大学に行くのかと思ったら、水戸を通り越して、東海村っていう、原子力の発電所があったんですよ。全然知らなかったの。門前でストップしまして、職長さんていうんですか、それから世話役さん、一緒に行った会社の責任者、そういう人がね、ちょっと用があるからって言って、私たちを置いてね、帰っちゃったわけですよ。なんだ、無責任な野郎だなと思って。

 そしたらね、原発のね、職員さんが「いらっしゃい、よく来てくれました」って。なんもわかんないだろうから、こっち来てあたしの説明を開いてくださいって。そいで連れて行かれた所で、以前、健康を害してないかとか聞くんで、やせてるけど体だけは丈夫だよって答えて、そしたら詰め所みたいなとこがあってね、着替えてくださいって言うんですよ.おかしいなって思って。

 そしたら上下真っ白いやつを着せられて、作業服って言うんですか、それとね、針とメーターがついたやつ、わかんないけどさあ、くっつけられて、さあどうぞ現場へ行ってくださいって言うわけですよ.帽子かぶってね、マスクしてね.
 何するんだろ-つて思って行ったところがね、さあ、仕事はじめてくださいっつったちね、なんつったらいいんですか、煙突みたいなね、太いやつがあるんですね、そこにね、梯子みたいなのがかかってるんですよ。

 それをかわいた布、はやく言えば雑巾みたい、ちょっと薬品がついてるんですね、渡されて。そいではしごの途中に体休めるとこ、高いとこですから、休憩所っていう動くように上がったり下がったりするとこがあるんですよ。それに乗っけられてね、ここで仕事してくださいって。どうすんですかって、とにかくここをきれいに掃除してくださいって。中を.そいで、台がぐるーつと回るんですよ.

藤田:それは煙突の中ですか。

松本:中。そこをふいてくださいってね.においかいでみたけど,なんの薬だかわかんないけど、においがするんですよね。そいで1時間ぐらいやると、30分くらいで休憩だって言うんですよ。こーりゃいいや、楽ちんだって(笑).ところが、やってるうちにね、「ガーガーガー」って鳴り出すんですよ.

藤田:何分ぐらいで鳴りました?

松本:15分から30分ぐらいの問。そいでね、赤いレッドゾーンて言うんですが、これがオーバーして、針がピーピッてものすごい音が鳴るんですよ、こっちはわからないから一生懸命やってると、「はい、きゆうけ-い」って。そいでまだ休んで,またやる。針がもとに戻っちゃう。そいで始めると、針がピーッて。おっかしな仕事だなーと思って.具合が悪くなる

 そいでね、二日三日はなんともなかったんですよ。私と一緒に行った友達も。そしたらねえ、5日か6日、だいたい一週間ですね、夜、会社へ帰ってきて食事しても、なんだかねえ、風邪ひいてんのかな、体がだるくてね、痛いとかそういうんじゃないんですよ、わかんないけど、なんだか知らないけど、体がだるくてしょうがねえなあって仲間と話してたんですよ。

 そいでねえ、ちょうど3カ月目です.私ね、戦争で耳が悪いんですがね、のどはなんともなかったんですよ。ところがねえ、会社帰って寝ると体があったまってくるでしょう、そうすると苦しくてしょうがない、ごほんごほんってね。そいで責任者にね、体温計貸してくれって言うとね、一応貸してくれてね、38度あるんですよ.

 そいで朝になって、寝不足だけど、やっぱり起きろ仕事行けっていうから、ほいで行ったけど。自分でも考えたんですよ、こんな喉痛くなるような覚えないんだけどなあ、つて。悪いけど、やめさせてくださいって、調子悪いから。ここやめて東京帰って医者にみてもらうからって。自分の体だからね.そうしたら、我慢してやってくれって言うんだよね。でもね、5~6年前の一日の日当がね、1万5千から1万8千くれたんですよ、だけど、そんなお金もらったって、体に代えらんないもん、命に。悪いけど勘弁してくれって言って。


友達の死

 一緒にいた友達にね、どうだ、具合悪くないかつて開いたけど、「今んとこ俺なんともないけどなあ」って.でも一緒に帰ろうやって。この方はね、秋用で農家の方、農家だけでやってかれないから東京出てきて、奥さんと子供と住んでて。で、私は一人で東京へ帰ってきて、その方はどのくらい仕事やったかわからないけど、ご無沙汰しちゃったんですよ。

 そしたら最近ね、私の子供がね、浅草にいるんですよ。子供が、「親父さんこういう人から連絡あったけど知ってるかい」って言うんですよ。ああ知ってるよ、なんだい、って。そしたら、死んじゃったよって。

 なんだい、あんな丈夫で、だるまさんみたいにころころしてたのに。お葬式に行ったんですよ。そしたら、奥さんが泣くばかりでね。子供も下が小学生でねえ。どうしたんだいって聞いたら、あれから一年ぐらい余分にやったんだって。いわゆる白血病になっちゃったんだそうですよ。治んないそうですね。そいで最後のお別れに、お棺の中を見たら、あんなふさふさしてたのがねって、私よりやせちゃっててね、食事も全然受け付けなかったそうですよ。

 どうだい、奥さん、最後は苦しんだかって聞いたら、苦しんで苦しんで苦しみぬいて逝っちゃったって。正直、私も泣いちゃったですよ。
またこういう原発の問題が起きてるんですよね。私は、自分らがそういうふうに友達をなくしてるし、原発を経験して、もう治らないって言われた喘息もってるから、これはそういう仕事やった影響だって医者に言われましたよ。一時直す薬はやるけど,もう直らないよって。そういう体ですからね。絶対仲間を行かしちゃだめです。体張っても絶対反対します。

 一カ月ばかり前に、また上野と新宿でね、私が知ってる熊川って手配師のボスが死んじゃって、その子分が上野とか新宿とか池袋とか、原発の仕事引っぱりに来てるんですよ。先日、仲間の人には黙ってますけど、手配師見つけたから、また引っぼりにきたのか、いい加減にしろって.いや、そうじゃねえよとか言ってたけどさあ。

 池袋の仲間、馬場の仲間 こういうの経験したことないから。今ね、日当ちょっと上乗せしておいしいこと言われれば、仕事がないときだから、話にのっちゃうかもしれないけど、私はもう絶対反対ってね、それだけはみなさんに言いたい。

ここでよけいなおしゃべりしましたけどね。これからも何かの集まりがあったら参加させてもらって、絶対反対の運動の仲間にいれさせてください。よろしくお願いします。


司会:もうちょっと具体的に聞きたいことがあれば。

藤田:最初、東海大学で二日間研修があったと。どこの東海大学ですか。

松本:大洗かどっかの。最近できたとこらしいです。

藤田:そこでどういう話を聞いたんですか。

松本:それはね、知らない人は、こういう仕事だっていうと反対運動だとかいろんな話をふきこまれるだろうけど、決してそんなことはありませんから。

 もし何かあったら、職員のほうで責任持ちますからって言われましたよ。じゃあ、厚生年金もつけてくれるのかって聞いたら、やりますって。国家的事業ですからって。ずいぶんでかいこと言うなあって思ったんだよ、おれは(笑)。
なすび:安全のためにこういうふうにしないさいって話はありました?

松本:ありました。ふつうの土方と違って、一日やってるわけじゃないから。疲れたなあって思ったら、ひとこと言ってくれたら、休憩して休んでくださいって。言うんですよ。ずいぶん調子いいなあって。でもここにつけた赤い針がオーバーしてくると、ガガガガッて鳴るんですよね。少し休むと戻る。

藤田:戻るっていうのがわからないなあ。あー、ポケット線量計か。計は針があがって下がる。もう一つアラームメーター、ピーッて鳴るやつは、設定されたところを越えると鳴りっぱなしになる。あともう一つフィルムバッヂっていうのを持ってて、それは現像して後でわかる。写臭があります。

なすび:まっちゃん、こういうの(岩波ブックレットの中の写真)?

松本:あ、そうそうそう。

藤田:白い作嚢着でしたか? 赤とか黄色ではなく。

松本:真っ白です。

藤田:目は?

松本:防塵マスクかぶって。オートバイのる人がするようなね.

藤田:作業区分としては、たぶんパイプの内部の除染作業ですね。大きさほどのくらい?手で握れるくらい?

松本:ふたまわりくらい(手を抱えるようにして)大きかったかなあ。

藤田:縦ですか? 長さは?

松本:縦。長さはそりゃちょっと見当つかないですねえ。

藤田:「ほうかん」、っていうのいたでしょ。放射線管理者。現場監督。

松本:職員さんですか?いましたよ。私らが乗っかってる下にいた。中にはいない。作業状況をチェックしてるわけだよ。

藤田:鳴ったら出てきなさいとは言わないわけですか。

松本:言わない言わない。

参加者A:行ったのは、東海村の原発?動燃でもなくて原研でもなくて?

松本:一番先にあるんだよ。

藤田:あそこは、最初は動燃、それを通り過ぎると、原研があって、第二原発があって、第一原発があるんですよね。

松本:そう、一番奥。

藤田:じゃあ第二か第一だな。3カ月間ずっとそれをやったんですか? 同じ場所で?

松本:そう。単調ですよ(笑).

参加者A:ずっとトンネルの中を上から下まで。かわいた布で。

松本:そうそう。薬品みたいなのついてんですよ。かすかに匂いはしたけど。

参加者A:マスクはどんなマスクでしたか。

なすび:ここに二つあるんですが。目が出るやつと、目が出なくて全部のやつと…

松本:これこれ(目が出る方を指して)。これにゴーグルをして。

参加者A:全面マスクですね.

藤田:僕も現場行ったことあればいいんだけど。行った人も迷路みたいだって。

松本:仕事終わって帰ってくるでしよ、また行くでしょ.作業服とかね、前の日自分が使ってたやつと達うんですよ。どうしたんだよー、きのう着てたんだよーつて言うと、こっち使ってくださいって。

参加者A:新しいのなんですね。

藤田:作業服を着るときは、パンツ一つになって、全部着替えた?靴下はいて?長靴はいて?手袋も何故か?

松本:二枚か三枚か.

藤田:かなりのとこ行ってるんだね.

藤田:仕事やめるときに、放射線管理手帳という青い手帳もらいました?

松本:くれないよ。

藤田:亡くなったお友達も持ってなかったですか。

松本:持ってないですよ.それで奥さんが怒るんだよ。

藤田:それがあると,被曝したという証拠になるんですよ。無いと、喧嘩にならないんだよね。法律で決まってるけどくれないんだ。

松本:だから奥さんが「殺されたんだ」って言うんだよ。

参加者A:生年月日を聞かれたり、身長と体重とか聞かれた?

松本:聞かれました。

参加者A:じゃあ作ってることは作ってるんだ。

藤田:なぜ渡さないかというと、あいつら労働者はなくすからだって言うんだよね.住民票を持ってこいとは言われませんでしたか?

松本:いやー。手配師が引っぱってくだけだから。

藤田:このあいだ東電に聞いたら、アジア人の労働者であっても、原発労働では差別しませんという言い方をしてた。(一同 笑)

参加者A:いつごろ働いてたんですか。

松本:新宿にお世話になって5年で、その半年前だから・・・

藤田:5年前の3月からですね。つまり1993年の3月から6月。お友達は、それから1年以上いたんですよね。翌年の春ぐらいまでいたんですか。亡くなったのはいつですか.

松本:先月です。

藤田:98年の10月に白血病でなくなったと。

参加者A:飯場はどこにあたんですか?

松本:荒川沖

なすび:東海村の中にはなかったの?

松本:ないない。荒川沖。

参加著A:じゃあ、会社の人が毎日荒川沖まで送っていくわけですね。朝は何時からですか?

松本:そうですね、朝の食事して一服して、8時前後だね。夕方は5時ぐらい。後かたづけとかすると6時ぐらい.よけいなことしゃべりますけど、2、3日前、イヤホンつけてラジオ聞いてたんですよ。

 国会議員かなんかえらい人が、国会討論だとかで、厚生大臣とかがおしゃべりしてるのを耳にしたんですよ。

 この不況とか日雇いとかの状況についてね、原発の仕事しなさいって。大空の下に寝っころがっている野宿労働者を国家的な事業につかせなさいって。ほいであたし頭来ちゃって。人を殺すのは刃物だけじゃないですよ.いくら言論の自由だって言ったってね、とんでもないことですい。だいたい、政治家とか国会議員が一言でも口にするべき言葉じゃない。」

福島原発の労働状況―5/14時点

2011-10-27 13:16:03 | 労働
 以下は毎日新聞WEB版5/14付の記事⇒http://mainichi.jp/select/jiken/graph/20110515_2/?inb=yt


「 東京電力福島第1原発事故の復旧作業で、作業員の安全確保のルールや手順がなし崩し的に緩和されていることが、作業員らの証言で分かった。

 放射性物質が体に付着する「身体汚染」をした場合、体を洗う「除染」で完全に落とさなければならなかったが、今は完全に除染できなくても体のどこに付着しているかを示す「確認証」があれば作業に戻ることができるという。他にも多くの規制が緩んでいるため、作業員らは不安を訴え、専門家は懸念を示している。

 同原発構内の放射線量は高く、水素爆発した3号機の原子炉建屋付近には毎時900ミリシーベルトと高い放射線を出すがれきが見つかっている。

 通常、1日の作業で1ミリシーベルトを超す被ばくが見込まれる場合、元請け会社は作業員の予想被ばく線量を記した作業計画書を労働基準監督署に届け出て受領印をもらい、東電に写しを提出する。この際、元請けによっては、下請けにも写しを「特別許可書」として渡すルールがあるが、この特別許可書も現在なくなっているという。

 ある下請け作業員は通常渡される特別許可書をもらわず作業し、約2時間半で1.3ミリシーベルト浴びた。他の作業員ら計約10人で構内拠点の免震重要棟に戻り、防護服を脱いでスクリーニング(検査)したところ、それぞれ首や後頭部に身体汚染が確認された。

 約20キロ離れた拠点施設のナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町)で専用の特殊シャンプーで洗ったが、作業員のうち3人は除染できず、いわき市の東電施設でもう一度洗ったものの、やはり落ちなかった。

 このため3人は、体の絵とともに汚染部位などが記載されている「確認証」を東電から発行され、作業に復帰したという。確認証があれば、復帰後のスクリーニングで汚染が検出されても問題視されないが、作業員は「除染しないまま作業に戻れば通常なら始末書もの」と疑問視する。

 また、身体汚染をした場合、作業員の所属する会社は、作業経緯や内容、汚染の状態などを報告書にまとめて元請けに提出し、元請けは東電に連絡することになっているが、いまだ報告書は提出されず、汚染を知る元請けや東電から提出も求められていないという。

 作業員は「東電も元請けも『この現場で汚染しない方がおかしい』との考えでしょう」と述べ、緊急時のためルールがなし崩しになっていると指摘。「原発を何とかしたいとの気持ちから(作業員の)みんなも『汚染しても仕方がない』という雰囲気だが、正直、不安はある」と語った。

 東電広報部は確認証について「(検査で)高い数値が出た人に異常がないことを示すものだが、いずれにせよ落ちるまで除染している」と説明。特別許可書(東電側では作業計画書)などについては「コピーを受領するだけ」とし、基本的に作業員と元請けとの問題との立場を示した。

【町田徳丈、市川明代、日下部聡】

 2011年5月14日」

原発労働の理解は原発の理解を深めること-再掲

2011-10-26 17:55:26 | 労働
 原発で働く人たちの実情を知ることは、すなわち原発運営の実態を知ること。

 以下にすでに何回か紹介している平井憲夫さんの「原発がどういうものか知ってほしい」と、

 遠藤さん(仮名)の「俺たちは使い捨て  原発労働者が実状を語る」の二つのURLを掲載します。

 ぜひともご覧ください。


 平井さん⇒http://www.iam-t.jp/HIRAI/


 遠藤さん⇒http://fukushima20110311.blog.fc2.com/blog-entry-32.html

 なお平井さんの文については「大半がウソ」といった批判があったようですが、その点を検討しようとしたサイトがあります。⇒http://raaq.jp/universaljapan/2011/03/2063

 また高木仁三郎さんが日本物理学会誌に阪神大震災後に書いた文章のサイトは以下の通り。阪神大震災の後、高速道路や新官制の問題はチェックされ、それが全国に生かされたのに原発だけはそうはならなかった。高木さんの意見が生かされていればこんなことには…、と思わざるを得ない文章です。
 ⇒http://ci.nii.ac.jp/els/110002066513.pdf?id=ART0002195281&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1319513363&cp=

抗議なければ成果なし/抵抗こそ未来を創る

2011-10-14 15:52:53 | 労働
*【10月14日 AFP】⇒http://www.afpbb.com/article/economy/2834876/7922934?utm_source=afpbb&utm_medium=topics&utm_campaign=txt_topics

 身を切られるような経済危機に憤り、責任は政治家や銀行家にあると非難する「怒れる人々」が15日に世界同時抗議行動を呼び掛けており、その動きは71か国・719都市に広まっている。

■「われわれはモノではない」、ネットで拡散

 そもそものきっかけは、スペイン・マドリード(Madrid)中心部のプエルタ・デル・ソル(Puerta del Sol)広場で5月15日に始まった抗議集会だ。スペイン全土に広がり、さらに他国へと飛び火した運動の力が今週末、世界規模で初めて示されようとしている。

 一連の抗議運動は、巨額の公的債務削減を目指す各国政府が福祉関連支出を大幅に切り込む中でうねりを増してきた。世界中で予定されている行動をまとめたネットワーク「15october.net」のウェブサイトでは、次のような主張を掲げている。「声を1つにして宣言し、政治家や彼らが仕えている金融エリートたちに知らせよう。未来を決定するのは、われわれ民衆であることを。わたしたちは、わたしたちを代表していない政治家や銀行家の良いようにされる『モノ』ではない」

 呼び掛けには、フェースブック(Facebook)やツイッター(Twitter)が大きく活用されている。現在、15日に街頭抗議が予定されているのは、欧州、北米、南米、アジア、アフリカの71か国、719都市に上る。

■スペインから世界へ飛び火

 火付け役となったスペインでは、失業率が全体で20.89%に上り、16~24歳に限ると46.1%と約半数が失業状態だ。広場にテントを張って寝泊りする「広場占拠」型抗議行動は5月、プエルタ・デル・ソルを始めとするスペイン全土の広場で始まり、続いて欧州に拡大して、ギリシャなど金融危機で大きな打撃を受けている国々で強力に支持された。

 9月17日には、グローバル資本主義の中心地である米ニューヨークの金融街、ウォール街(Wall Street)に到達。ウォール街の小さな広場に数百人がテントを張って始まった抗議デモ「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」は、米国のメディアや政治家らに大きな衝撃を与えている。15日には、午後5時(日本時間16日午前6時)にタイムズスクエア(Times Square)での集会が呼び掛けられている。

■特定の代表不在、「アノニマス」の運動

 失業に対する怒りと経済エリートへの反発が、ともすれば全く異なる世界各地の運動を結んでいる共通のテーマだ。しかし、スペインの抗議運動が非常に具体的に、労働時間の短縮と65歳定年制導入による失業対策を要求しているのに対し、その他各国での抗議の矛先はさまざまで、「怒れる者たち」の目指す未来は不明瞭だ。

 市場による支配に替わる政策を模索する社会運動体「ATTAC(アタック)」の共同代表を務めるフランスの経済学者、トーマス・クトロ(Thomas Coutrot)氏は「怒れる者たちの運動」について、特定の人物やグループが代表する運動に対して良い意味で「アレルギー」を持っていると評価する。その上で「もちろん、代表を置かずにひとつの運動を築き上げていくことは容易ではない」と語っている。(c)AFP/Elodie Cuzin

マルクール施設の事故―その後明らかになった点

2011-09-15 15:31:52 | 労働
*マルクールの核廃棄物処理施設での事故の様子が伝わってきた。

 以下の記事をみる限り、フランスの施設の労働環境もかなり劣悪なのではないかと疑われる。

 このような文字通りの「現場」ではどのような人たちが働いているのだろうか。


「仏核施設爆発:先週、溶融炉が故障 金属片除去中に爆発

 【パリ福原直樹】

 フランス南部マルクールにある低レベル核廃棄物処理施設の溶融炉爆発事故で、炉は先週、複数箇所で故障して停止され、事故当日に運転が再開されたばかりだったことがわかった。爆発は作業員らが炉周辺にこびりついた廃棄物の金属片を除去する作業中に起きていたことも判明。捜査当局は、事故の背景に修理・作業ミスなど人的要因があるとみている。

 仏原子力当局の関係者によると12日、作業員らが金属棒を使って除去作業中に爆発。1500度の炉に入っていた金属片が飛散し、炉の格納庫の壁を損傷させた。建屋の内壁は無事だった。溶融炉は核廃棄物の金属などを溶かし、廃棄物を処理しやすいように体積を縮小する。爆発当時、炉には最大容量(4トン)分の金属が入っていた。

毎日新聞 2011年9月15日 東京夕刊」