「思想、哲学、科学、社会、教育、文化、創造活動の面で、世界は日々進歩している。後進的な男女差別の思考からも解放されようとしている…。
これは、アラブ地域から離れた諸国で起きている。そこでは彼等は科学、文化を発展させ、人文、科学、芸術等でトップをめざして競いあっている。一方我々は、この面のすべてにおいて底辺で停滞しているのである。いくつかの国では、このような活動が全然見られない。
平和、医学、生理化学、物理、経済及び文学のノーベル賞受賞者を生み出すのは、前述の諸国であり、アラブは殆んどいない。授賞式では聴衆席にいるか、テレビで見るだけである。
我々は、かつての栄光を思い出して、我々自身を慰めるだけである。かつてはムスリムに研究者や思想家がいた。例えば、アル・ラジ※2、アル・ファラビ※3、イブン・シーナー※4、アル・キンディ※5、イブン・ルシュド※6、イブン・ハルドゥーン※7などがいた。我々が誇りに思うそのような錚々たる人物の大半は、非アラブ人であったし、礫打ちの刑で殺され或いは投獄され、著書を焼かれ、或いは異端として非難された。それでも我々は人文及び文化上の理由から彼等を誇りに思う…。
我々の問題は、ノーベル賞をとれないことにとどまらない。思想の自由、人権、メディア、ジェンダー、環境、水、腐敗撲滅戦争等の面で尊敬すべき地位にない。問題はそこにある。すべての分野で我方諸国は最後尾に位置する。
オリンピックに出場すれば、我方諸国は、〝参加すること(だけに)意義あり〟の状態で、メダルを狙う段になると、自前の選手に期待できないので、他国の有望選手に国籍を与えて、出場させることになる。我々の代表になったコモロ島の選手が、 金メダルをとれば、あたかも彼がエルサレムを解放したかのように、大騒ぎする(注、コロモはイスラム連邦)。ケニヤ、ギニア、或いはシエラレオネは、アラブ諸国が束になっても敵わない。22ヶ国がメダルひとつで大騒ぎするのに、彼等はその10倍はとり、更にその上をめざす。経済力からいえば全然比較にならない。いくつかの国―多分すべてのアラブが―ケニヤ、シエラレオネ等より収入が多いだろう。しかし何十億何百億という金は、スポーツクラブなどに浪費され、人材育成に投資されることはない。
我々は、前進する代りにすべての分野で逆走している。スポーツで劣り、芸術では誰もいない。政治の分野では人質同様、列強の言いなりである。動きを期待されれば動き、沈黙を要求されれば黙る。経済面でみると、我々は福祉国家ではない。イデオロギー面では我々が影響されることがあっても、影響力を及ぼすことはない。人道面では我々は他者を受入れず、拒否する。我々は、我々と考えの違う者を不信心者として非難する。我々は常に正しく、世界が我々を打倒するため、陰謀を企てているとし、物事を論理的に考えようとしない。論理的帰結を受入れず、避ける。我々は、我々を互いに傷つけ殺し合っているのは我々自身であることを、認めることができない。互いに殺し合い血を流すのは、先祖の遺産を口実にしている。かれこれ1500年程になろうか。さまざまな流れと宗派間に民族的宗教的紛争の種をまく意図ありという口実である…。
諸君、我々の車はギアが逆走状態になっているので、前へ進めない。この間世界はどんどん進んだ。もう数世紀、恐らくは10世紀も我々は遅れている。我々は現世代のための船に乗り遅れている。現世代を矯正することはできない。手遅れである。我々は目をはっきり覚まして、資金と人材を次世代のために投資しなければならない。そうできるか。それが問題である。
※1 2016年1月6日付 Al-Ghad(ヨルダン)
※2 アル・ラジ(Abu Bakr Al-Razi 865-92)はペルシアの哲学者。アラビア語で執筆し、ムスリム世界の卓越した医者のひとり。
※3 アル・ファラビ(Abu Nasr Al-Farabi 872-950)ムスリムの数学者、科学者、医者、哲学者で、心理学、社会学、宇宙論、論理学、音楽、の諸分野で貢献があった。知識においてアリストテレスに次ぐ人物といわれ、第二の師として知られた。
※4 イブン・シーナー(Abu `Ali Hussein Ibn Al-Sina 980-1035)。ペルシアの医者、哲学者、科学者。科学史家G・サートンは、「史上最高の思想家で、医学者のひとり」と評している。
※5 アル・キンディ(Abu Yousuf Al-Kindi 801-873)。アラブ・ムスリムの哲学者、数学者、音楽家、医師。「アラブの哲学者」と呼ばれ、アラブ・イスラム哲学の父と考えられた。
※6 イブン・ルシュド(Abu Al-Walid Ibn Rushd 1126-1198)。ムスリムの医者、哲学者。スペインのコルドバに生まれ育ち、そこで仕事をした。中世ヨーロッパ哲学に大きい影響を与えた。
※7 イブン・ハルドゥーン(`Abu Al-Rahman Ibn Khaldun 1332-1406)。著名なアラブ人歴家、史料編纂者。史料編纂、社会学、及び経済学研究の父祖のひとりと考えられる。」
http://memri.jp/bin/articles.cgi?ID=SP633616
これは、アラブ地域から離れた諸国で起きている。そこでは彼等は科学、文化を発展させ、人文、科学、芸術等でトップをめざして競いあっている。一方我々は、この面のすべてにおいて底辺で停滞しているのである。いくつかの国では、このような活動が全然見られない。
平和、医学、生理化学、物理、経済及び文学のノーベル賞受賞者を生み出すのは、前述の諸国であり、アラブは殆んどいない。授賞式では聴衆席にいるか、テレビで見るだけである。
我々は、かつての栄光を思い出して、我々自身を慰めるだけである。かつてはムスリムに研究者や思想家がいた。例えば、アル・ラジ※2、アル・ファラビ※3、イブン・シーナー※4、アル・キンディ※5、イブン・ルシュド※6、イブン・ハルドゥーン※7などがいた。我々が誇りに思うそのような錚々たる人物の大半は、非アラブ人であったし、礫打ちの刑で殺され或いは投獄され、著書を焼かれ、或いは異端として非難された。それでも我々は人文及び文化上の理由から彼等を誇りに思う…。
我々の問題は、ノーベル賞をとれないことにとどまらない。思想の自由、人権、メディア、ジェンダー、環境、水、腐敗撲滅戦争等の面で尊敬すべき地位にない。問題はそこにある。すべての分野で我方諸国は最後尾に位置する。
オリンピックに出場すれば、我方諸国は、〝参加すること(だけに)意義あり〟の状態で、メダルを狙う段になると、自前の選手に期待できないので、他国の有望選手に国籍を与えて、出場させることになる。我々の代表になったコモロ島の選手が、 金メダルをとれば、あたかも彼がエルサレムを解放したかのように、大騒ぎする(注、コロモはイスラム連邦)。ケニヤ、ギニア、或いはシエラレオネは、アラブ諸国が束になっても敵わない。22ヶ国がメダルひとつで大騒ぎするのに、彼等はその10倍はとり、更にその上をめざす。経済力からいえば全然比較にならない。いくつかの国―多分すべてのアラブが―ケニヤ、シエラレオネ等より収入が多いだろう。しかし何十億何百億という金は、スポーツクラブなどに浪費され、人材育成に投資されることはない。
我々は、前進する代りにすべての分野で逆走している。スポーツで劣り、芸術では誰もいない。政治の分野では人質同様、列強の言いなりである。動きを期待されれば動き、沈黙を要求されれば黙る。経済面でみると、我々は福祉国家ではない。イデオロギー面では我々が影響されることがあっても、影響力を及ぼすことはない。人道面では我々は他者を受入れず、拒否する。我々は、我々と考えの違う者を不信心者として非難する。我々は常に正しく、世界が我々を打倒するため、陰謀を企てているとし、物事を論理的に考えようとしない。論理的帰結を受入れず、避ける。我々は、我々を互いに傷つけ殺し合っているのは我々自身であることを、認めることができない。互いに殺し合い血を流すのは、先祖の遺産を口実にしている。かれこれ1500年程になろうか。さまざまな流れと宗派間に民族的宗教的紛争の種をまく意図ありという口実である…。
諸君、我々の車はギアが逆走状態になっているので、前へ進めない。この間世界はどんどん進んだ。もう数世紀、恐らくは10世紀も我々は遅れている。我々は現世代のための船に乗り遅れている。現世代を矯正することはできない。手遅れである。我々は目をはっきり覚まして、資金と人材を次世代のために投資しなければならない。そうできるか。それが問題である。
※1 2016年1月6日付 Al-Ghad(ヨルダン)
※2 アル・ラジ(Abu Bakr Al-Razi 865-92)はペルシアの哲学者。アラビア語で執筆し、ムスリム世界の卓越した医者のひとり。
※3 アル・ファラビ(Abu Nasr Al-Farabi 872-950)ムスリムの数学者、科学者、医者、哲学者で、心理学、社会学、宇宙論、論理学、音楽、の諸分野で貢献があった。知識においてアリストテレスに次ぐ人物といわれ、第二の師として知られた。
※4 イブン・シーナー(Abu `Ali Hussein Ibn Al-Sina 980-1035)。ペルシアの医者、哲学者、科学者。科学史家G・サートンは、「史上最高の思想家で、医学者のひとり」と評している。
※5 アル・キンディ(Abu Yousuf Al-Kindi 801-873)。アラブ・ムスリムの哲学者、数学者、音楽家、医師。「アラブの哲学者」と呼ばれ、アラブ・イスラム哲学の父と考えられた。
※6 イブン・ルシュド(Abu Al-Walid Ibn Rushd 1126-1198)。ムスリムの医者、哲学者。スペインのコルドバに生まれ育ち、そこで仕事をした。中世ヨーロッパ哲学に大きい影響を与えた。
※7 イブン・ハルドゥーン(`Abu Al-Rahman Ibn Khaldun 1332-1406)。著名なアラブ人歴家、史料編纂者。史料編纂、社会学、及び経済学研究の父祖のひとりと考えられる。」
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