白夜の炎

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中谷宇吉郎『科学と社会』より 序

2016-04-22 12:40:48 | 政治
 中谷宇吉郎は「雪」の研究で著名な北海道大学の先生である。既になくなったが、彼が書いた「雪」を岩波新書で読んだ方は多いと思う。

 しかし彼が1949年に「科学と社会」という岩波新書をだしていたことは、今は殆どの人が記憶していないのではないだろうか。岩波でもとっくに絶版となり現在は中古市場でしか入手できない(先日調べたところ500円だった)。

 しかし敗戦と戦災による荒廃の中、自らと自らの仕事である科学に真摯に向き合って書かれたこの本はきわめて貴重な内容を持っている。

 以下では順に本の内容を載せていきたい。ただ全部ではなく一部省きつつ紹介する。これを読んで関心を持たれた方は、ぜひとも近くの図書館、あるいは古書でお読みいただきたい。

「序
 この書で私は、少し柄にないことであるが、敗戦日本の姿を描いてみようとした。・・・今までの日本の科学者は、あまりにも自分の仕事の社会的意義を考えなかった。学者はその研究が、社会の幸福に貢献してもしなくても、そんなことは考えてはいけない。ただ真理だけを追究すれば宵ということが、一部の人々の間では言われていた。そしてそれが純粋な偉い科学者ということになっていた。

 こういう表現は、言葉はある意味ではきれいであるが、ここで真理という文字が、全く無批判的に使われていることに、注意しなければならない。耕さずして食らい、織らずして着ている科学者は、やはり自分のためにそういう努力をしてくれる人々の幸福増進に、できるだけ貢献するように努力しなければならない。・・・・・

 終戦後、急に自分の仕事の社会的意義について考えるようになり、そういう目で周囲を見回してみると、いろいろなことが目に映った。そして現在の姿は、今少し科学的なものの考え方を導入するだけでも、かなりよくなるのではないかという気が多分にした。

 ・・以下略・・・

 昭和二十三年十月 札幌にて  中谷宇吉郎」


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