白夜の炎

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ショーンKの詐称問題/IWJ・メルマガより

2016-03-18 15:09:24 | 報道
「 おはようございます!IWJで記者をしている佐々木隼也と申します。

 またしても「文春砲」が炸裂しました。一昨日発売の『週刊文春』で、イケメンのテレビコメンテーターとして活躍する自称・経営コンサルタントの「ショーンK」さんこと、ショーン・マクアードル川上さんの「学歴詐称」が暴かれたのです。テレビでもネットでも大騒ぎとなっており、このニュースがいくつも目に入ります。

 その「詐称」の中身を見て、久々に「え~!」と驚きました。「ハーバード大学院(MBA)卒」や「パリ大学留学」が嘘で、実際はオープン授業やオープンキャンパスに行っただけだった、というのは言うに及ばず、「テンプル大学卒」が嘘どころか、実際には大学に行ったこともなく、高卒だったのですから。ものすごい「盛り方」ですね。

 さらに肩書きの「経営コンサルタント」というのも嘘で、実際は実態のないペーパーカンパニーであり、その会社の共同経営者としてHPに掲載されていた「ジョン・G・マクガバン」なる人物も実在せず、無関係な人物の写真を無断使用していたそうです。「学歴」だけでなく「職歴」「経歴」もまるまる詐称しているわけです。これは…もはや「詐欺師」といってもよいレベルですね…。さらには、日本と米国とのハーフという出自も嘘なのでは…?甘いマスクも、実は整形なのでは…?との疑惑まで囁かれています。

 しかし、この15年間、名だたる企業経営者や経済関係者向けに講演活動などを行っていたショーンさん。よくバレなかったですよね…。財界人といえば、賢い人たちの集まりだと思われていますが、経済や金融の世界といっても案外、「薄っぺらな知識」と「演技力(表現力?)」、そして「整った見た目」さえあればコロッとだまされてしまう、ということなのでしょうか。

 学歴を詐称することは、れっきとした犯罪であると冨本弁護士が、弁護士ドットコムのサイトで書いています。軽犯罪法1条15号には「『学位』を詐称した者は『拘留または科料に処する』」と書いてあるそうです。一昨日、岩上さんがツィートしています(岩上さんのツイート:http://bit.ly/1WtZbLy)。

 しかし、そうすると学歴や履歴が怪しい人が政界にもいます。あの人とか、あの人とか…。そういう人はどうなんでしょうか。気になりますね。なりますが、その話はまたにします。この問題では、また、ショーンさんを起用してきたテレビ局側の「責任」も問われています。

 真に経済に精通している専門家よりも、発言内容の中身より視聴率の稼げる「甘い声」「甘いマスク」という「ルックスの良さ」を重視する、そして日本の抱える経済問題の根本を真面目に分析したり問題点を真剣に指摘する人よりも、政治権力やスポンサーの機嫌を損なわないように、「当たり障りのないコメント」をしてくれる人物を選ぶ--。そうした「無難」なチョイスの積み重ねが、学歴・経歴を詐称し、中身がすっからかんの人物を報道ステーションのような国民的報道番組に起用するという失態に至ったのではないでしょうか。

 報道ステーションが、「官邸の圧力」に屈して(迎合して?)、元経済官僚の古賀茂明氏をコメンテーターから降板させたのは、ちょうど一年前の3月末のことでした。同時期に同じくテレビ朝日の「モーニングバード」を降板した岩上さんは、古賀さんの最後の出演の日に、テレ朝を出てきた直後の古賀さんを、青山墓地の前でつかまえて直撃インタビューしています。今、見直すと非常に感慨深いものがありますよ。ぜひ、アーカイブで御覧下さい。

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・2015/03/27 【速報】「報道ステーション」終了直後の古賀茂明氏に岩上安身が緊急直撃インタビュー!降板の内幕を衝撃暴露
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/240770
・2015/04/02 渦中の人が「報道ステーション」降板の全真相を激白! 「I am not
ABE」発言の真意――そして、官邸からの圧力の実態とは?~岩上安身による元経産官僚・古賀茂明氏インタビュー
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/241205
・2015/05/29 「官邸からみれば『報ステは抑えたから大丈夫』」 重要な審議も総理の暴言も報道されない!?
メディア介入強める安倍政権に古賀茂明氏が憤り~岩上安身インタビュー!
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/247178
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 あれから一年。メインキャスターの古舘伊知郎さんもこの3月末に降板します。そしてこの「学歴・経歴詐称」コメンテーター騒動…。昨日、今日、立ち腐れが始まったのではない、ということが実によくわかりますね。この問題はこうした「テレビの劣化」を浮き彫りにし、と同時に、それを許容してきた僕ら「情報を受け取る側の劣化」の結果ではないでしょうか。また、メディアに傲然と「圧力」を加える安倍政権を許してしまってきた「主権者・国民の劣化」でもあります。

 IWJは昨日、こうした権力(とそれが作り出す空気)におもねるテレビの劣化ぶりを象徴する、ある「怒り」の会見の動画記事をアップしました。高市早苗総務大臣の「電波停止」発言に対し、鳥越俊太郎さんなどテレビ関係者が立ち上がり、抗議の声をあげた会見です。この会見の質疑では、高市発言で一番影響を受けるはずのテレビ局から、誰一人として手が上がりませんでした。

 駆けつけたテレビ局が一様に沈黙する、この「異様」な会見の模様はぜひ、以下の記事よりご覧ください!

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・2016/02/29「これは、政治権力とメディアの戦争だ!」
田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏、金平茂紀氏、岸井成格氏、青木理氏、大谷昭宏氏らテレビ放送関係者が高市総務大臣「電波停止」発言に「怒り」の抗議会見!
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/289637
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 さらに鳥越さん、この会見でIWJ記者の直撃取材に応え、「IWJは、いつも読んでいる」とおっしゃっていただき、岩上さんによるインタビューも快諾していただきました!

 ということで、「岩上安身によるジャーナリスト・鳥越俊太郎氏インタビュー」、3月23日の13時から、中継します!!!みなさま、ぜひぜひ、ご覧になってください!!!!

 本日の日刊IWJガイドは以下の内容でお届けします!まずは気になる、ジャーナリスト・安田純平氏がシリアで拘束が確認されたニュースについて、原佑介記者からお伝えします!!…とその前に、中継番組表をご覧ください!」

彼にみなさんが騙された理由/小田島隆

2016-03-18 14:54:33 | 報道
「 テレビの情報番組などでコメンテーターとして活躍していた男性が、経歴を詐称していたということで、ちょっとした騒ぎになっている。

 この2日ほどのうちにいくつかのメディアが報道した内容を総合してみるに、件の人物の詐称はなかなか念が入っている。最初の学歴からはじまって、留学経験、MBA資格から、経営コンサルタントとしての業務実態、年商、オフィスの住所、本名、出自に至るまでの一通りの要素が「ウソ」であったことが既に明らかになっており、「イケメン」として厚遇される理由になっていた顔も、美容整形の結果である可能性が濃厚なのだという。

 この結果に世間が驚いているのかというと、もちろん驚いている人たちもたくさんいるのだが、ネット内の評判では

「そんな気がしていた」

 という声が、意外なほど大きい。

「最初からあやしいと思っていた」
「一目見てうさんくさいヤツだと確信していた」
「あの鼻はなにごとだと常々不審に感じていました」

 と、彼らは異口同音に、当該の人物について、以前から不審を感じていた旨を訴えている。

 無論、大方の事実が判明してから後乗りで自らの慧眼をアピールしにかかっている人たちもいるはずだ。
 そうでなくても、私たちは、おしなべて、そうなってしまってからそんな気がしていたような気持ちを抱きがちな傾きを備えているものだ。

 とはいえ、実際に

「ほら、2年前にオレは《うさんくさい》と書いてるぞ」
「オレなんか震災前から一貫して何回も《インチキくさい》と繰り返しアピールしている」

 と、目に見える証拠を提示した上で彼の人物への疑惑を語っている人々の例も少なくない。

 いずれにせよ、話題の彼が、ずいぶん前から、かなり広範囲の人々に、そこはかとなく怪しまれていたことは事実であるようだ。

 私自身は、なんとなく奇妙な印象を抱いてはいたものの、「怪しい」とまでは思っていなかった。
 というよりも、絵に描いたようなイケメンに偏見を抱きがちな自分の偏狭さをいましめていたりした。
 まして、経歴詐称を疑うところまではまったく踏み込めていなかった。
 まあ、人間を見る目がなかったということなのだと思う。無念だ。

 ずいぶん前に、人間についてではないが、食品偽装に関連して、「フェイク(偽物)はフォニー(インチキ)の周辺に発生する」という主旨の原稿を書いたことがある。フェイク商品(贋造品)が発生するのは、そもそも真似をされる側のブツがインチキくさいからだ、という、ちょっと乱暴なお話だ。

 松阪牛や関サバに偽装食品が発生するのは、オリジナルとされている食品の値段が、その品質に比して、不当に高価だからだ(と私は思っている)。
 適正な価格で販売されている良心的な商品にフェイクは発生しない。

 というのも、ギリギリの利益率で流通している商品をパクったところで、ほとんど差益は生まれないし、もともと高品質な商品をパクるためには高度な技術が必要で、その高度な技術を実現するためにはそれなりのコストがかかるからだ。

 とすれば、たいして品質が高いわけでもないのに分不相応な高値で売られているブツの偽物を作る方が仕事として有望であるに決まっているし、事実、フェイク業者は、ブランド信仰のゆえなのか、消費者の無知に由来するものなのか、異常な関税のしからしむるところなのか、理由はどうであれ、品質に比してはるかに高い取引価格で流通している物品の偽物をもっぱら製造・販売する方針で、彼らの商売をドライブさせているのである。

 たとえば、ある種のブランド物のバッグは、製造原価の数十倍以上の値段で販売されている。

 強力なブランドを持たない業者が手がければ5万円で売って十分に利益が出る商品を、ブランド販売業者は60万円だとか100万円という信じがたい価格で流通させている。

 この価格は、普通に考えればもちろんあからさまな不当価格であり、ブランドの評判そのものも、どこからどう見ても下駄を履いた評価だ。
 が、製造しているメーカーも、それを売る販売業者も、さらにはそれを購入することになる消費者も、全員がこの価格になぜなのか、納得している。

 メーカーおよび流通小売業者は、値段が高ければ高いほど儲けが大きくなるのだからして、著しく高価な価格設定に満足するのは当然だ。ここについては疑問はない。

 では、製造原価の何十倍もの高値でブツを買わされることになる買い手が、どうしてそのバカな価格に納得しているのかというと、彼(または彼女)が当該のバッグを購入する目的が、そのバッグを入れ物として使用するためというよりは、高価な持ち物として他人にひけらかすためだからだ。

 その種の衒示的消費のための商品の価格は、誰の目にも分かる形で高価さをアピールしていることが望ましい。

 かくして、世間で有名な高級ブランド物バッグは、その高品質ゆえにではなく、高価さゆえに珍重される。そして、それを買った人間は、高品質なバッグを選ぶ鑑識眼の高さを強調すること以上に、高価なバッグを持ち歩くことのできる経済力を内外に誇示しようとする。今さらあげつらうのもなんだが、まったく、なんというバカな話だろうか。

 情報番組のコメンテーターが経歴を詐称するに至る事情は、どこの馬の骨とも分からないそこいらへんの名もない牛肉(というのはたしかにちょっと変な言い方ではあるが)が松阪産であることを騙ったり、下町の町工場で作られている革製のバッグが、フランス名前のブランドの刻印を伴って市場に投入される経緯と似ていなくもない。

 どういうことなのかというと、実際にはたいしたスキルがなくてもできる仕事の背景を粉飾するための見せかけの看板である以上、それが詐称であったところでたいした違いは無いということだ。

 たとえばこれが、ガチなアカデミズムの世界だったり、実際にメスを手に取って患者の腹腔なり頭蓋なりを切り開いて施術をせねばならない臨床医の世界であれば、資格や学歴を詐称したところで、そんなことは何の役にも立たない。偽物は一発でバレてしまう。

 料理人の世界でも大工の現場でも同じだ。ウデの無い職人が、書類上の資格を偽造して職を得たところで、包丁を握るなり鋸を挽くなりしてみれば、その場で彼が偽物であることは誰の目にも明らかになる。

 ところが、コメンテーターの世界では、詐称がうまうまとまかり通る。
 MBAを持っているかのごとくふるまっていれば、見ている者には、そのように見える。
 年商三十億円の会社を切り回していますと言い張れば、言われた方は案外信用してしまったりする。

 出た学校の名前も、事務所の住所も、それがウソだったからといって、ただちに見破られるような属性でもない。
 なぜなら、しょせんは飾りだからだ。

 というよりも、「フェイクはフォニーの周辺に発生する」という原則に沿って述べるなら、テレビのニュースショーや情報ワイド番組の周辺に、フェイクな肩書を伴った人物が潜り込んだことは、そこで獲得できる仕事口が、ある程度誰にでもできる難易度の低い業務であるにもかからわらず、不相応に高い社会的評価と知名度をもたらすフォニーな仕事であったことを意味している。

 あるいは、経歴をそれらしく飾り立てるための能力と、ランダムに発生する事件にそれらしいコメントを添えてみせる能力は、そんなに遠いものではないということでもある。

 というのも、自分の専門分野と特段の関連もない日々の出来事に事寄せて、凡庸でこそないものの、独特過ぎることもない、最終的に無難なコメントをとっさのアドリブで供給し続けるために必要な資質は、経歴を詐称した状態で世間に対峙している病的な嘘つきが、自分の身辺の細部に散りばめられた大小のウソを、破綻させることなく運営していく中で培ってきた「場の空気を読む能力」とほとんど同じもので、つまるところ、ニュースへのコメントの大きな部分は、擬似的な大衆の反応をパイロットしてみせる感情の偽装みたいなものだからだ。

 いや、私は、ワイドショーのコメンテーターという職業が、詐欺師もどきのインチキ商売だと言っているのではない。
 全然違う。
 私は、優秀な詐欺師なら優秀なコメンテーターがつとまるはずだ、ということを申し上げているに過ぎない。

 似ているようでいて、この二つの意味するところはかなり違う。
 優秀な詐欺師は、優秀なコメンテーターとして通用する。
 が、優秀なコメンテーターだからといって、優秀な詐欺師になれるとは限らない。
 つまり、詐欺師の方が、より幅広い能力を要求される職業なのである。

 別の側面について言えば、コメンテーターに期待される資質の大きな部分はその誠実さに関連している。が、詐欺師の業務において、誠実さは、無能さと区別がつかない。

 私はコメンテーターを腐したいのではない。
 ただ、フォニーの周辺にはフェイクが発生するということをもう一度申し上げるのみだ。

 いやいや、どうせ適当なことを言うだけの仕事に、マジな肩書きもフェイクな肩書きもあるものか、と言いたいのではない。
 私がこの際強調しておきたいのは、コメンテーターがフェイクな肩書きを名乗ったのは、われわれ聴き手の側が、コメンテーターの言葉よりも、彼の肩書きを重視していたことの当然の帰結なのではなかろうかということだったりする。

 つまり、お互い様だということだ。

 もっとも、コメンテーターは、たぶんハタから見ているほど簡単な仕事ではない。
 彼らの仕事の大半は、無難なコメントを発信することに費やされているわけだが、すべてのコメントがあまりにも無難過ぎると、それはそれで商売にならない。

 時には、ビビッドな感情のきらめきや、スリリングな断言や、皮肉の効いたまぜっかえしや、アブないコメントを織り交ぜておかないと視聴者にナメられる。
 ストライクしか投げないピッチャーがいつしかつるべ打ちに遭う成り行きと同じだ。
 3球に1球はボール球を投げなければいけない。
 1シーズンにひとつやふたつはデッドボールも投げた方が良いのかもしれない。
 その方がピッチングに幅が出る。

 とはいえ、暴投はいけない。バッターのアタマに当てることも絶対に避けなければならない。
 とすると、ストライクゾーンの出し入れやら、変化球の切れ味やらを考えると、コメンテーターという商売も、これはこれで、なかなか精妙な技術を要する職人仕事なのかもしれない。

 問題は、コメンテーターの死命を決する能力である、ストライクゾーンを見極める目や、その日のアンパイヤの判定の傾向をいち早く感知するセンスにおいて卓抜な力を発揮するのが、フェイクな人たちだったりすることだ。

 嘘つきは、常に人々の顔色を見ている。

 誰が自分の言葉に不審を抱き、自分の発したどの言葉が相手にアピールしているのかを、他人を騙すことを生業としている人間たちは、四六時中見極めようとしている。というよりも、日常的にウソをついている人間は、ウソがバレるギリギリのボーダーを常に意識しているわけで、その意味において、空気読みの達人なのである。

 その点、正直な人間は、いまひとつ他人の評価に鈍感だ。
 自分が本当のことを言っていることを強く自覚している人間は、他人に好まれていようが疎まれていようが、たいして気にとめない。自分だけが正しければそれで十分だと思っている。

 そういう人間は、コメンテーターには向かない。
 視聴者の目から見て、独善的に映るからでもあるし、スタジオの空気を読むことを怠るからでもある。

 と、正直なコメンテーターは、時に舌っ足らずでもあれば、時に暴走することにもなるわけで、結局のところ、通常業務として穏当なコメントを安定供給することができない。

 詐欺師は、言葉を紡ぐ能力に秀でているだけでなく、他人の気持ちを先読みする能力にも長けている。
 彼は、対面している人間の感情を高揚させたり、落ち着かせたりする方法に精通しており、自分を囲む人間たちが望んでいる感情をその場で言葉にして手のひらの上に現出させる技術を生まれながらに身に着けている。

 別の言葉で言うなら、彼には「魅力」がある。
 とすれば、こんなに素敵なコメンテーターはいないではないか。

 詐称は、簡単なタスクではない。
 詐称によって得られるものと、詐称が発覚した時に失うものを勘案してみれば、ふつうの人間は、詐称をしようとは考えない。

 MBAを持っているからといって、それだけですべてが手に入るわけではない。自分の言葉に、ちょっとしたオーラを付け加える以上の効果は無いと言って良い。ひるがえって、MBA資格のアナウンスがウソであることが発覚した場合、彼は、すべてを失うことになる。
 こんな割に合わない取引があるだろうか。

 逆に言えば、これほどまでにリスキーなチャレンジに乗り出すのは、よほど並外れた自信家であるのか、でなければ、どこかしら精神を病んでいる人間に限られるということだ。

 経歴詐称は、ゴルフのスコア改竄に似ているかもしれない。
 スコアを1つか2つごまかしたからといって、得られるのは、その場のちょっとした虚栄心の満足だけだ。

 賭けゴルフに興じていた場合、何らかの報酬があるかもしれない。が、いずれにせよ、報酬は知れている。
 対して、改竄が発覚した場合のリスクはずっと大きい。
 おそらく、彼は、ほとんどすべてのゴルフ仲間を失うことになる。

 そうまでしてスコアをごまかす必要があるだろうか……という、この、普通の人間なら普通に持っているはずの普通の常識が、スコアをごまかす人間にとっては、つけ込みどころになる。彼らは、「スコアをごまかすゴルファーなんているはずがない」という常識を利用して、その裏をかく形で、スコアをごまかしている。このあたりの機微は、ゲームのようでもある。あるいは、病的な嘘つきは、このスリルに嗜癖しているのかもしれない。

 結論を述べる。
 詐欺師とコメンテーターという、よく似た資質を要求される対照的な仕事を割り振る上で、大切なのは、コメンテーターを起用する側のリテラシー(鑑識眼)だ。

 詐欺師もコメンテーターも、人間を扱う仕事で、だからこそ彼らは、人を誘惑するのが上手だ。
 とすれば、その彼らを起用する側の人間は、それ以上に人間を見る目の達人であらねばならない。

 この何年かの間に、「メディア・リテラシー」という言葉をメディアの人間が平気な顔で使う場面に遭遇してびっくりしたことが何度かある。

 メディアの人間がメディア・リテラシーを語ることは、評価される側の人間が評価の仕方を教えている話型の説教になる。これは、話のスジとしておかしい。個人的には、「ラーメンの味わい方」みたいな説教ポスターを店内に掲示しているラーメン屋みたいな傲慢さを感じさせて、大変によろしくないと思っている。

 受け手の側から見た「メディアの読み取り方」を意味する言葉だったはずの「メディア・リテラシー」は、いつしか、報道被害の責任や番組制作上の怠慢を視聴者の側に転嫁する際のキーワードになり、さらには「バカは黙ってろよ」という、送り手の増長慢を反映した捨て台詞に変化し、最終的には、メディア自身の自意識(リテラシー)の欠如を物語る、大変にたちの悪い用語になってしまっている。

 経歴詐称コメンテーターについて言えば、視聴者に対してメディア・リテラシーの向上を要求することの多くなったテレビの中の人たちが、自分たちの起用するタレントや文化人について、人間を見極めるリテラシーを欠いているのだからして、こんなに皮肉な話はないと思っている。

 ネット内の書き込みをしばらく掘り進めてみればわかることだが、今回の一連の報道で経歴詐称が公式に発覚する以前の段階で、話題のホラッチョタレントのうさんくささを指摘していた人たちは、ごく早い時期の書き込みを含めて、決して少なくない。

 液晶画面を通した印象だけで、これだけの人が疑念を抱いていたのに、現場で本人と直に接していた共演者や契約関係者は、誰一人として、彼のうさんくささに気づいていなかったのだろうか。

 あるいは、あやしいと内心思いながらも、無気力と惰性で現場の仕事を存続させることを優先させていたということなのだろうか。

 それとも、優秀な嘘つきは、遠くに立っている人間よりも、より近くにいる人間をより深く騙すものなのだろうか。

 経歴より大切なものがあることは、誰もが知っていることだ。
 が、その経歴よりも大切なものを見極める目を持っていない人間は、結局のところ、フェイクであれ、ホラッチョであれ、書類に書いてある経歴で人を判断することしかできない。

 ひとつはっきりしているのは、ホラッチョ氏の詐称で一番傷ついている被害者は、局の関係者でもスタジオの共演者でもなくて、人間を見極める目を持たない人たちの作った番組を見せられていた視聴者だったいうことだ。

 ホラッチョを疑っていなかった過去の自分を、いまになって疑わなければならなくなっている私などは、最も苛烈な被害を受けたひとりかもしれない。

 彼はとんでもないものを盗んでいきました。私の自尊心です。ああ悔しい。

(文・イラスト/小田嶋 隆)」

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/031700036/?P=1

子宮頸癌ワクチンの問題点

2016-03-17 17:21:41 | 報道
「 「NEWS23」が継続してお伝えしている子宮頸がん予防ワクチンをめぐる動きです。番組ではワクチンを接種した少女たちの記憶力などが低下する症状について取り上げてきましたが、国の研究班が16日、脳の障害に関する新たな研究結果を発表しました。

 利き手だった右手がうまく動かせなくなってから5年がたとうとしています。酒井七海さん(21)。足が思うように動かせず、車いすを使う生活が当たり前のようになりました。こうした症状を発症したのは、子宮頸がんワクチンを接種してからです。

 日本でこれまで接種した338万人のうち、副反応の報告があったのは2584人。2年前、酒井さんは別の病院に通院していました。現在はまた違う病院に。今回が22回目の入院となります。

 「足を真っすぐにすると震える・・・」(酒井七海さん)

 目に見える症状のほかに、今、深刻なのは、記憶の障害です。

 「(七海さんが)予定とかを忘れちゃうので・・・」(母親)
 「やったことを常にスマホに記録していて。11時40分に(取材が)来たので、とりあえずここ(スマホ)に書いておいて、夜、まとめて、ノートにきょう何時に何をしたというのを書いたりして」(酒井七海さん)

 これまで、国の検討部会はこうした症状を少女たちの心身の反応としてきました。そうした中、16日、厚生労働省で国の研究班の1つが新たな研究成果を発表しました。研究班の代表を務める池田修一信州大学医学部長。この1年間、全国の患者およそ140人の研究を進めてきました。そこでわかってきたのが、記憶力の低下などを訴える患者の傾向です。

 「『情報の処理速度』だけが極端に落ちている。正常の6割くらいまで落ちている」(国の研究班の代表 信州大学 池田修一医学部長)

 少女たちに何が起きているのでしょうか。実験用の特別なマウスを使って分析が行われました。マウスにそれぞれ、子宮頸がんワクチン「サーバリックス」、インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチンを打ったところ、子宮頸がんワクチンを打ったマウスにだけ脳に異常が発生していることがわかったといいます。

 「子宮頸がんワクチンを打ったマウスだけ、脳の海馬・記憶の中枢に異常な抗体が沈着。海馬(記憶の中枢)の機能を障害していそうだ」(国の研究班の代表 信州大学 池田修一医学部長)

 脳の画像データ。子宮頸がんワクチンだけ緑色に光る異常な抗体が出ています。

 「明らかに脳に障害が起こっている。ワクチンを打った後、こういう脳障害を訴えている患者の共通した客観的所見が提示できている」(国の研究班の代表 信州大学 池田修一医学部長)

 異常が見つかったのは脳だけではありません。子宮頸がんワクチンを打ったマウスの足の裏にある神経の束を撮影したもの。正常な神経は黒く太いバンドで取り囲まれています。しかし、マウスから見つかった異常がある神経は、正常のものと比較すると、黒いバンドの部分が壊れて亀裂が入り、膨らんでいるのがわかります。

 「この神経は情報が正確に早く伝わっていかないと考えられます」(国の研究班の代表 信州大学 池田修一医学部長)

 こうしたマウスの異常はワクチンを打ってから9か月ぐらいで現れたといいます。さらに研究班は、特定の遺伝子にも注目しています。記憶の障害を訴える33人の患者を調べたところ、そのおよそ8割で同じ型を保有していることがわかりました。

 「(注目している遺伝子は)中国・日本など東アジアの人に多い。子宮頸がんワクチンの副反応が日本でクローズアップされた遺伝的背景の1つの原因かもしれないと考えています」(国の研究班の代表 信州大学 池田修一医学部長)

 国の研究班は今後、今回、マウスなどで見られた異常と、ワクチンの成分との関係について、本格的な分析を進める予定です。(16日23:07)
最終更新:3月17日(木)11時13分TBS News i」

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20160317-00000008-jnn-soci

テレビテロップの間違いは放送局員のレベル低下の証

2016-02-23 13:54:17 | 報道
ちょっと気がついたことを一言。

最近テレビのテロップで間違いが目立つ。

例えば、「民俗」とすべきところを「民族」等。

変換ミスに気がつかずそのままにしているのは、単なるケアレスではなく、正しい表記を知らない連中が番組を作っているからではと思われる。

自戒を込めつつ申し上げます。

放送局関係者。

勉強しなさい。


古館伊知郎降板は菅官房長官の圧力

2016-01-01 01:28:37 | 報道
「テレビ朝日、報道ステーションのキャスター、古館伊知郎さん降板がニュースになりました。
昨日、朝日新聞論壇委員の井手英策さん(慶応大学教授(財政社会学))のご自宅に行く機会があり、古館さん降板の理由を伺いました。

報道ステーションでは朝日新聞論壇委員が入れ替わりで出演しています。
井手英策さんは、これを広めてほしいと、言ってらっしゃったので以下記述します。
古館さんは、官邸、主に菅官房長官の圧力によるものに耐え切れなったからだと。
報道ステーションが、今後、政権批判を出来なくなる可能性が非常に高くなります。
井手さんによると「ファシズム」です。
古館さんは井手さんの職場を訪れ「後を頼む」と。
今、井手さんのところには民主党や共産党から「どうしたら民主主義を取り戻せるか力を貸してほしい」と仕事が殺到しています。
また井手さんと仲の良い、総務省の平嶋彰英さんは事務次官の有力候補だったのですが、安倍政権になってから、総務省が成績表のようなものを導入しました。その結果、平嶋彰英さんは官邸の圧力により左遷されました。
安倍政権になってから、官邸が霞ヶ関に官庁の人事権を持ち、報道の自由を奪い異常な事態になっています。
もう今の自民党は「自由民主党」の名前にはふさわしくない、きつい書き方をすると、「ファシズム」であり、最悪な党だと私は考えています。」

安倍政権によるNHK統制/TIMES続報・・・「真実を探すブログ」より

2014-10-19 17:07:30 | 報道
「イギリスの新聞紙「Times」がNHKの内部文書を暴露しました。Timesが暴露した文章によると、NHKは安倍政権から南京大虐殺や慰安婦問題などへの言及を禁止されていたとのことです。安倍政権側はNHKに強く日本の保守的な民族主義と政府の立場を反映するように命令し、NHKもそれに従っていたと報じられています。

Timesは「イギリスでは話題になっている情報も取り上げられない」と述べ、安倍政権とNHKが癒着していることの問題性を指摘しました。

安部首相が政権を取ってから真っ先にやったことがNHKへの脅しだったので、今回の件も予想通りだと言えます。そして、この内部文章のお陰で、日本政府が南京大虐殺や慰安婦問題などを誤魔化そうとしていることが改めて分かりました。前に外務省がホームページの慰安婦関連の記述を削除するということがありましたが、これも政府の方針と何か関係がありそうです・・・。


☆Japan’s ‘BBC’ bans any reference to wartime ‘sex slaves’

URL http://www.thetimes.co.uk/tto/news/world/asia/article4239769.ece

引用:

A ban on reference to the Rape of Nanking is seen as a surrender of editorial independence by Japan’s public broadcaster, NHK Japan’s public broadcaster, NHK, has banned any reference to the notorious Rape of Nanking, to the country’s use of wartime sex slaves, and to its territorial dispute with China, in what critics see as a surrender of its editorial independence.

日本公共放送(NHK)は戦時慰安婦、中国との領土問題、悪名高い南京大虐殺への言及を禁止されていることが分かりました。英タイムズ紙が入手したNHKの内部文書によると、 英語記者が注目しているトピックについて厳密なルールがあるといいます。 規制は安倍総理が日本の保守的な民族主義と政府の立場を反映するように指示しているようです。
:引用終了」

http://saigaijyouhou.com/blog-entry-4207.html

公正さの確認が検証の核心/藤田博司

2014-10-06 20:11:17 | 報道
「朝日新聞が5月に報じたいわゆる「吉田調書」の記事に誤りがあったとして、記事を取り消し謝罪した。併せて8月来各方面から批判を浴びている慰安婦報道についても謝罪した。朝日にとってはこの上ない不名誉な事態だが、これは同時に日本のジャーナリズム全体にとっても教訓を突きつけている。

吉田調書は福島原発事故当時、原発の所長だった吉田昌郎氏(故人)が政府の事故調査委に対して行った証言をまとめたもので、朝日が5月20日付紙面で特報した。この時朝日は、原発職員の大半が「所長の命令に反して撤退した」と報じていた。

他のメディアは後追いをせず(できず)、約3か月後の8月になって、産経、読売、共同通信などが調書を入手、「命令に反して撤退」との朝日の報道は「誤報」と主張するニュースを流した。折から朝日が8月初めに公表した慰安婦報道に関する検証をめぐって朝日に批判が集中していたために、吉田調書の「誤報」問題にも注目が集まった。

9月11日に記者会見した朝日の木村伊量社長は、吉田調書報道と慰安婦報道について、あらためて第三者機関による検証をすることを約束した。一見、互いに関連性のない二つの報道だが、検証しなければならない問題の核心は、報道における公正さをどう担保するかという点で共通している。一連の問題の根っこを手繰っていくと、これらの報道にあたって正確な事実を伝えるためのジャーナリズムの基本原則である「公正さ」がおろそかにされてはいなかったか、というところにたどり着く。そしてこの問題は、朝日だけの問題ではなく、日本のメディア全体が共有する問題であることにも気づかされる。



未解明のたくさんの「なぜ」

木村社長は会見で吉田調書の報道について「現時点では、思い込みや記事のチェック不足などが重なったことが(誤報の)原因と考えている」と述べていた。ただ、これだけ重大なニュースの特報にあたって単なる思い込みやチェック不足に足をすくわれるほど朝日の報道体制が甘いとは思えない。取材班はおそらく調書の内容を吟味し見出しの立て方まで議論して報道に踏み切ったはずだが、12日の朝日の紙面からはそうした報道の過程をどのように検証したのか、読み取れない。

慰安婦問題報道については8月の検証で一連の報道のうち、虚偽と認めた証言に基づく一部の記事を取り消した。しかし、80年代初め、虚偽の証言を基に慰安婦問題を報道し始めたとき、現場の記者がなぜ虚偽を安易に信じたのか、その後90年代にはいって、証言が虚偽と伝えられた後もなぜ徹底した検証が行われなかったのか、などは未解明のままになっている。それが朝日に対する批判を一段と強める原因にもなった。

吉田調書、慰安婦問題の二つの報道の検証で決定的に欠けていると思われるのが、一連の報道でジャーナリズムの基本的規範である「公正」の原則が実践されていたかどうかの視点である。

ニュース報道の公正は、取材、編集、発信という報道のすべての過程で貫かれねばならない。具体的には、予断や偏見、思い込みを排し、可能な限り事実を正確に伝えることを記者は求められる。情報の確認と検証を怠らず、間違いがあれば速やかに訂正する。自社に不都合な問題があっても説明責任を果たす。そうした基本が守られたかどうか、といった視点からの検証なしには、二つの事例が遺した教訓はくみ取れない。

報道の公正は左右の間をとる公平や中立ではない。平たく言えば、人から後ろ指を指されない振る舞い、人に恥じることのない仕事を意味している。報道が人間の営みである以上、誤りはつきものだ。しかし作業の過程で右のような意味での公正を心がけて最大限の努力をしたときは、仮に結果が間違っていても公正は貫けたと考えていい。

朝日に限らず、日本の報道現場でも「公正」の原則が重要であることは十分理解されているに違いない。しかしそれが日々の仕事のなかで忠実に実践されているとは限らない。時間の制約や他社との厳しい競争環境のためにともすれば確認作業や検証作業がおろそかになる。記事をより魅力的に見せるために実体以上に飾り立てたい誘惑もある。公正な報道を妨げるそうした要因を排除するための仕事の仕組みを構築しておくことも、報道機関として留意しなければならない点だろう。



置き去りにされた本質の問題

慰安婦報道に加えて吉田調書報道が不祥事として浮かび上がってきたために、朝日に対する批判はいやがうえにも高まりを見せている。朝日を国賊、売国奴呼ばわりする罵詈雑言の類は論外としても、新聞に対する攻撃としては前例のない異様な空気を帯びている。しかし、批判が朝日の報道の失態に集中するあまり、二つの報道に関わる本質的な問題がほとんど議論の外に置き去りにされている。

慰安婦報道に関わる朝日批判は、慰安婦を強制連行したとする虚偽の証言に基づいて長期間、報道を続けたことと、最終的にその報道の誤りを認め取り消すまでに30年もの時間を要したこと―の二点に集約される。これらの点については、朝日は批判を甘受せざるを得まい。しかし強制連行の証言が虚偽とされても、日本軍が戦地で慰安所を管理、運営し、多数の慰安婦を働かせていた事実が消えるわけではない。日本政府が慰安婦問題に向き合い続けねばならない状況は変わらない。その事実が朝日批判の喧騒のなかでかき消されそうになっている。

吉田調書報道ではひたすら朝日の「誤報」が強調され、朝日による報道で調書の存在が明るみに出るまで政府がそれをひた隠しにしてきた事実、ひた隠すことによって歴史的原発事故の原因究明や将来の再発防止に向けての教訓を学ぶ機会を政府当局が妨げてきたことの責任などはほとんど論じられていない。原発再稼動の是非が目前の政治課題になっているいま、調書の公開に消極的だった政府の姿勢はもっと厳しく問われてもいいのではないか。

いま一つ、これらの報道についての朝日批判は、朝日による一連の報道が日本の国際的評価を下げ、(慰安婦報道では)日韓関係の悪化を招いたと主張している。安倍首相をはじめ閣僚や有力政治家も、朝日の報道が「日本人を貶め、日本の名誉を傷つけた」などの非難を繰り返している。

しかし少し冷静に考えれば、国際世論や外交関係に与える影響力は、新聞の報道より政府の持続的な外交政策、政府首脳の言動の方がはるかに大きいことは自明だろう。新聞の報道の影響力が皆無ではないにしても、政府や要人の振る舞いの持つ潜在的影響力には遠く及ばない。

安倍首相は朝日の吉田調書報道が「日本の名誉を損なった」と批判した。それと前後して、安倍改造内閣の女性閣僚二人が、日本のネオナチ組織の代表とのインタビューに応じ写真に納まっていたことが海外メディアに報じられた。閣僚と極右政党のつながりを海外で指摘されるのと原発職員の「撤退」が報じられるのと、いずれが日本のイメージに大きな打撃を与えるか、あらためて言うまでもあるまい。



報道の萎縮が心配だ

それにしても、吉田調書報道についての謝罪と記事取り消しは「羹に懲りてなますを吹く」の感を免れない。初報の見出しが不適切であったことは認めるにしても、虚偽証言に基づいて長期間報道を続けた慰安婦報道の罪と同等に扱うことはできない。慰安婦報道への対応の遅れに対する厳しい批判に過剰に反応した結果ではないかと思われるのである。

朝日がとった措置は、吉田調書の報道に関わった現場の記者たちへの影響はもとより、調査報道を含む朝日の報道全般のあり方にも影を落とすことになりかねない。「調査報道の死」を予言する声もある。それ以上に、朝日の報道現場全体が萎縮し、論議を呼びそうな取材、報道を避ける空気が広がる心配もある。朝日の紙面が当たり障りのない発表ものばかりで埋まるようになれば、新聞の総与党化につながりかねず、それこそ「ジャーナリズムの死」を意味することになるだろう。朝日たたきに精出してわが事成れりとしたり顔の他紙、他メディアも、気が付けばいつの間にか政府の掌のうえで踊っている状況がやってこないとも限らない。



(「メディア談話室」2014年10月号 許可を得て掲載)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye2782:141001〕」

http://chikyuza.net/archives/47738

ニュースを受動的に読む人が多いのが日本? 英ロイタージャーナリズム研究所のリポートから/小林恭子より

2014-06-26 14:38:06 | 報道
「 世界10カ国・地域を対象とした、デジタルニュースの利用についての調査で、日本はニュースをソーシャルメディアで共有したり、ウェブサイトにコメントを書く比率が他国と比べてかなり低いことが判明した。

 英ロイタージャーナリズム研究所が毎年出している「デジタルニュースリポート」の最新版は、各国の市民がどのようにネット上でニュースを閲覧しているかをさまざまな角度から分析している。(その概要については読売オンラインにまとめている。)

 調査の対象となった国・地域は、日本、米国、英国、ドイツ、フランス、デンマーク、フィンランド、スペイン、イタリア、ブラジル都市部。対象者は全部で約1万9000人。

 ニュースをどのように利用しているかについて調べたところ、「ニュースの参加度」という点では日本の数字が極端に低い。これは前年もそうだった。以下はリポートの中の「国別参加度」の表である(上記リポートの73ページ目)。




 左から、米国、英国、ドイツ、フランス、デンマーク、フィンランド、スペイン、イタリア、ブラジル都市部、日本の順だ。

 項目は、上から「ソーシャルメディアでシェアする」、「電子メールでシェアする」、「記事を評価する・いいねをつける」、「ソーシャルメディアでコメントする」、「ニュースサイト上でコメントする」、「ニュースについてブログ記事を書く」、「ソーシャルメディアに写真をアップロードする」、「ニュースサイトに写真をアップロードする」、「オンライン投票をする」、「キャンペーンをオンラインで行う」、「オンライン上で友人にニュースについて話す」、「誰かと会った時にニュースについて話す」だ。

 日本の項目を眺めると、ほとんどが一ケタ台で、「ニュースサイトにコメントを書く」は3%のみ。二ケタ台(14%)になったのは、「誰かと会った時にニュースについて話す」のみ。

 逆に、非常に活発にオンライン上で活動をするのがブラジル都市部の市民だ(会った時にニュースについて話す人は44%、ソーシャルメディアで共有は42%、ソーシャルメディアでコメントが33%)。イタリア、スペイン、米国の市民たちもネット上でニュースについて盛んに会話を行っている。

 リポートはなぜ日本で「ニュースの参加度」が低いのかについて、分析していない。ロイター研究所にはぜひこの点を解明していただきたいものだ。

 自分自身の体験から言えば、自分あるいは自分の友人たちあるいはフォロワー同士の反応を見ると、面白い、興味深いトピックがあれば、すぐにシェアがあるので、こうした結果は必ずしもぴんとは来なかった。ただ、「一部の人が盛んにシェアしている・ニュースを広めている」という状況にある可能性もある。ほとんどの人が、いわばニュースを受動的につまり、ただ読むだけという場合が圧倒的なのかもしれない。少なくとも、このリポートはそんな読み手の姿を浮き彫りにしている。

英国とスペインを比較

 日本の状況の分析はないのだが、その代わり、英国とスペインとの比較が出ている。

 そのきっかけは、米国と英国のニュースの参加度を見たときに、母語が同じ英語であり、ネットの接続度も同様であるのに、米国市民のほうが参加度が非常に高いことだった。これはもしかして、「プライバシーやネット上の透明性について、異なる感覚を持っているからではないか」と思ったそうだ。
 
 「英国人は自分の意見を表明したがらない傾向が(米国に比べて)強いのではないか」という仮説を立てた。そして、米国よりもいくつかの項目で参加度が高いスペインと英国とを比較した。
 
 「ニューサイトにコメントを残したときに、実名を使ったか」では、英国が9%、スペインが21%。

 「ソーシャルメディアで使うユーザーネームを使った(これで実名が分かる」は英国で8%、スペインが16%。

 分析の結果、スペインの市民と比べたとき、英国市民は「実名を使うよりも匿名を好む」傾向があったという。

 また、ニュースサイトにコメントを書き込むのは「若い男性」が主だという。英国の21-24歳の47%が、スペインの25-34歳の75%がコメントを書き込んだことがあると答えている。

 リポートは、結論として、米バズフィートのようなサイトはどれだけトピックが広がるかで成功の度合いを測っているけれども、これからのニュースサイトにとって重要になるのは「いかに利用者に参加してもらえたか」だろう、と書く。

 競争が激化する中で、「単にリーチや頻度で計測するのではなく、意味のあるエンゲージメント(従事度・没頭度)が鍵を握るだろう、と。エンゲージメントを高めるのは「コンテンツとブランドへの忠誠心」だという。平たく言えば、面白い・興味深い中身があることと、「このブランド=媒体=なら読みたい」と思う人を増やすことだろう。」

http://ukmedia.exblog.jp/

NHK取材に難色  米大使館が百田氏の発言理由に  報道現場に影響及ぶ

2014-02-17 18:27:23 | 報道
「 NHKがキャロライン・ケネディ駐日米大使のインタビュー取材を米国大使館(東京都港区)に申し込み、調整を進めていたところ、経営委員を務める作家 百田尚樹 (ひゃくた・なおき) 氏の東京裁判や南京大虐殺をめぐる発言を理由に大使館側から難色を示されていたことが14日、複数の関係者の話で分かった。

 NHK広報部は「取材・制作の過程に関わることについては回答を差し控える」とコメント。米国大使館は「大使のスケジュールはお話ししないことになっている」としている。

 NHKの最高意思決定機関である経営委員会委員の発言の影響が、報道の現場に及んでいることが明らかになったのは初めて。

 関係者によると、NHK報道局国際部の取材班は昨年11月15日のケネディ大使着任直後、大使館の報道担当官にインタビュー取材を申し込んだ。その後、大使館側から総合テレビの報道情報番組「クローズアップ現代」で放送するよう要請があり、交渉を続けていた。

 ところが2月上旬、取材班が大使館を訪問したところ、報道担当官から「百田氏の発言でインタビューの実現は困難になった。大使本人とワシントンの意向だ」との趣旨を伝えられた。その後、取材の可否について正式な連絡はないという。

 百田氏は3日、都知事選に立候補した元航空幕僚長の 田母神俊雄 (たもがみ・としお) 氏の応援演説をした際、米軍による東京大空襲や原爆投下を「大虐殺」とした上で「東京裁判はそれをごまかすための裁判だった」と述べた。

 さらに1937年末に南京を占領した旧日本軍が捕虜や市民らを虐殺した南京大虐殺に関しても「38年に〓(草カンムリに将の旧字体) 介石がやたらと宣伝したが、世界の国は無視した。そんなことはなかったからだ」と発言した。

 発言をめぐっては、米国大使館が8日、米政府の公式の統一見解として「非常識だ」と批判。中国外務省も南京大虐殺に関する発言に強く反発するなど、国際的に波紋が広がっている。
 (共同通信)」

http://www.47news.jp/47topics/e/250394.php

NHK、脱原発論に難色 「都知事選中はやめて」/東京新聞1月30日

2014-01-30 13:20:40 | 報道
 既にこのありさま。

 NHKが大本営発表一色になるのもすぐだろう。

「NHKラジオ第一放送で三十日朝に放送する番組で、中北徹東洋大教授(62)が「経済学の視点からリスクをゼロにできるのは原発を止めること」などとコメントする予定だったことにNHK側が難色を示し、中北教授が出演を拒否したことが二十九日、分かった。NHK側は中北教授に「東京都知事選の最中は、原発問題はやめてほしい」と求めたという。
 この番組は平日午前五時から八時までの「ラジオあさいちばん」で、中北教授は「ビジネス展望」のコーナーでコメントする予定だった。

 中北教授の予定原稿はNHK側に二十九日午後に提出。原稿では「安全確保の対策や保険の費用など、原発再稼働コストの世界的上昇や損害が巨額になること、事前に積み上げるべき廃炉費用が、電力会社の貸借対照表に計上されていないこと」を指摘。「廃炉費用が将来の国民が負担する、見えない大きな費用になる可能性がある」として、「即時脱原発か穏やかに原発依存を減らしていくのか」との費用の選択になると総括している。

 中北教授によると、NHKの担当ディレクターは「絶対にやめてほしい」と言い、中北教授は「趣旨を変えることはできない」などと拒否したという。

 中北教授は外務省を経て研究者となり、第一次安倍政権で「アジア・ゲートウェイ戦略会議」の座長代理を務めた。NHKでは「ビジネス展望」だけでなく、二〇一二年三月二十一日の「視点・論点」(総合テレビ)で「電力料金 引き上げの前に改革を」と論じたこともある。

 中北教授は「特定の立場に立っていない内容だ。NHKの対応が誠実でなく、問題意識が感じられない」として、約二十年間出演してきた「ビジネス展望」をこの日から降板することを明らかにした。
◆詳細は答え控える

<NHK広報局の話> 中北さんに番組に出演していただけなかったのは事実です。詳細は番組制作の過程に関わることなのでお答えを控えます。


【解説】公平公正 裏切る行為

 中北徹東洋大教授のNHK降板問題で、中北教授はNHK側に「都知事選期間中は原発の話はやめてほしい」と迫られたという。再稼働を進める安倍晋三政権の意向をくんで放送内容を変えようとした可能性は否定できない。

 選挙期間中であっても、報道の自由は保障されている。中北教授は予定原稿で「現状では原発稼働がゼロでもアベノミクスが成果を上げている。原発ゼロでも経済成長が実現できることを実証した」「経済学の観点から、巨大事故が起きた際の損害額のリスクをゼロにできるのは、原発を止めることだ」と指摘した。

 NHK側が問題視した中北教授の原稿は、都知事選で特定の候補者を支援する内容でもないし、特定の立場を擁護してもいない。

 NHKの籾井(もみい)勝人新会長は就任会見で「国際放送で日本政府の意向を伝える」としている。原発再稼働を強く打ち出している安倍政権の意向を忖度(そんたく)し、中北教授のコメントは不適切だと判断したとも推測できる。
 原発政策の是非にかかわらず受信料を払って、政府広報ではない公平公正な報道や番組を期待している国民・視聴者の信頼を裏切る行為と言えるのではないか。 (中村信也)
(東京新聞)」

もろい新NHK会長のご見解

2014-01-27 17:34:04 | 報道
 つまりNHKは政府のしもべ。政府のスピーカー。受信料を払っている市民のためのジャーナリズムではありません、ということらしい。

 確かに三井物産副社長、という経歴を考えると、政府に抗してでも言うべきことは言う、などという人物ではないな。そもそも見識らしきものがない人を選んだのだろう。政府としてはよい人選だ。

 でもこんな男の方針で運営されるNHKに受信料を払う義理はない。

 NHKよ、さようなら。

「2014年1月25日のNHK会長就任記者会見で、以下の発言を行った。

慰安婦について「今のモラルでは悪いんですよ」としつつ、補償問題は日韓基本条約で解決済みとの自身の見解を示し、「戦争をしているどこの国にもあった」としてフランス、ドイツの名を挙げた関連して「なぜオランダに今頃まだ飾り窓があるんですか」とも。

特定秘密保護法に関する報道が少ない・姿勢が政府寄り、との指摘には「(国会で)通ったこと。あまりカッカする必要はない」。

竹島問題・尖閣諸島問題について「日本の立場を国際放送で明確に発信していく、国際放送とはそういうもの。政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」。
放送内容については「日本政府と懸け離れたものであってはならない」。」

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%BE%E4%BA%95%E5%8B%9D%E4%BA%BA

日本は自由主義国家とは言えない-警報が鳴っている

2013-01-30 16:19:44 | 報道
「“報道の自由度”日本53位に大幅後退
1月30日 14時44分

ジャーナリストの国際団体「国境なき記者団」は、国や地域ごとにどれだけ自由な報道が認められているかを表す「報道の自由度」のランキングを発表し、日本は、東京電力福島第一原発の事故で開示される情報が限られているなどとして前の年の22位から53位へと大幅に順位が下がりました。

「報道の自由度」のランキングは、パリに本部を置く「国境なき記者団」が毎年発表しているもので、今回は179の国と地域が対象となりました。
このうち、日本は、東京電力福島第一原発の事故について、「透明性に欠け、個別取材に対して政府などから開示される情報があまりにも限られている」などとされ、前の年の22位から53位へと大幅に順位が下がりました。

これについて「国境なき記者団」は、「例年は上位に入っている日本の評価が急落したことは、警鐘が鳴らされたものと受け止めるべきだ」と指摘しています。

ほかの国や地域の順位を見ますと、1位のフィンランドを筆頭にヨーロッパ諸国が上位を占め、アジアでは、民主化が進むミャンマーが、当局による検閲が行われなくなったなどとして前の年から18順位を上げ、151位とされたほか、中国がほぼ横ばいの173位、北朝鮮は変わらず178位でした。」

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130130/k10015163951000.html

モスクワの路上-雪の結晶

2012-12-25 18:06:35 | 報道
 モスクワは厳寒。

 その路上の雪の結晶。→ http://thesuperslice.com/2012/12/07/macro-snowflake-photography-andrew-osokin/

 確かに素晴らしい。

 子供のころ中谷宇吉郎『雪』(岩波新書)で感銘を受けた。

 ちなみに同じ著者の『科学と社会』(岩波書店)は今絶版だと思うがぜひとも復刊してほしい。

 世事中の日本がいかに常軌を逸していたのかよくわかる。

サイレントプア/貧困女子

2012-12-14 14:33:23 | 報道


「NHKの朝の情報番組「あさイチ」で、11月5日放送に放送された特集「サイレントプア 声なき女性の貧困」。放送後も話題を呼び、同時期に雑誌『現代思想』11月号でも「女性と貧困」と題し特集が組まれるなど、女性の貧困問題が各所で注目を集めている。

 「サイレントプア」とは、当事者が声をあげない(あげられない)ため、手助けを求められず、貧困から抜け出せない状態のこと。

 日本では税金を除いた年収が112万円未満である場合を貧困とするが、これでいくと現在の独身女性の3人に1人は貧困状態となり、さらに母子世帯の場合は、貧困率が48パーセントにものぼるという。「あさイチ」では、一例として、病気により働けなくなった際の借金を返済するために、風俗店で働く40代の女性を紹介。人に頼ることもできず、社会から孤立するこの女性の姿は衝撃的なものだった。

 しかし、貧困を理由に身体を売るのは、風俗店で働く女性だけではない。11月29日に発売された『彼女たちの売春(ワリキリ)-社会からの斥力、出会い系の引力』(荻上チキ/扶桑社)によれば、出会い系サイトや出会い系カフェなどを利用した売春によって生計を立てる女性も多いというのだ。

 ワリキリは、出会い系メディアを使い、個人で売春を行うことを指す言葉で、「お金で割り切った体の関係」を意味する。本書はワリキリを行う女性100人以上にインタビューを実施しているのだが、ワリキリで得たお金のほとんどを子どもの将来の資金として貯金しているという女性や、子どもが小さいため外出できず、自宅に男性を呼びワリキリを行っているという女性など、シングルマザーのワリキリ事情も紹介。なかには貧困が母親から娘へと連鎖している例も取り上げられている。

 また、本書では、日本においては女性の売春を「道徳」や「気持ち」の問題として捉えて憤る人の多さにも触れ、「今の日本はすでに豊かな先進国のはずなのだから、それでも困難な状況に置かれているという者は、どこかで甘えているような例外的な人物」とされている現状にも言及。「売春する女性」は取り締まる対象として論じられこそすれ、福祉の対象として論じられる機会は少ないのではないかという問題提議を行っている。

 本書にもあるように、近年、メディアがクローズアップしてきた「年越し派遣村」や「ネットカフェ難民」などのワーキングプア問題は、その多くが「貧乏になってしまった男性の物語」として語られてきた。女性の場合、ホームレスになるには危険が伴うため、ワリキリで出会った男性の家を転々とする者も少なくはなく、目に見えにくいという問題もあるはずだ。働く女性の半数が非正規雇用であるという不安定な社会のいま、「女性の貧困」はもちろんのこと、「望まない売春」についても考えていく必要があるのではないだろうか。

(ダ・ヴィンチ電子ナビより)」


笹子トンネルからの脱出-NHK甲府支局の記者

2012-12-04 16:38:22 | 報道

 是非ともこの記者自身の記事を読みたいし、クローズアップ現代あたりで証言してほしい。

「 9人もの死者を出した中央自動車道・笹子トンネルの天井崩落事故。偶然その場に居合わせたNHK記者が事故の瞬間に乗っていた車のアクセルを思いっきり踏み込み、損傷は受けたものの奇跡的に脱出した。

乗っていた車はスバル「インプレッサ WRX STi」。ボディの剛性と加速性能のよさに、インターネットでは「さすが走りのスバル」と、賞賛する声が起こっている。

「崩落を見てアクセルを踏んだ」

「インプレッサ WRX STi」を運転していたのはNHK甲府放送局の記者。

 NHKニュースの電話取材で記者は、「トンネルの壁が突然剥がれ落ち、大きな衝撃を受けた。しばらくは何が起きたか、わからなかったが、車の助手席側が大きくへこんでいるのに気づいた」と話した。

トンネル内は崩落した天井の粉塵と火災による黒い煙が立ち込め、ほとんどなにも見えないような状況。そうした中で、「10台くらいの車を追い越し車線から抜いた途端に衝撃を感じ、崩落を見てアクセルを踏んだ。崩落を抜けたのは私の車だけ。トンネルから出てこられた後続車はいなかった」と明かす。

崩落に巻き込まれまいと、とにかく必死にアクセルを踏んだことが想像できる。

テレビに映し出された紺色の「インプレッサWRX STi」は後部から助手席側にかけて、リアウインドウが割れ、ボディは激しくへこんでいるものの、足回りはどうにか無事なようす。まさに間一髪だった。

もし走行車線を走っていたら、アクセルを踏むタイミングが一瞬でも遅れていたら、と運が味方したこともあるだろうが、「車に助けられた」ことも間違いではない。

この出来事にネットでは、
「クルマを見ると青いインプレッサWRX…あの加速でもギリギリって事かな」

「インプだからこそ間一髪逃げれたのかな」

「『インプレッサだから避けられた』とか、伝説ができたりして」

と、インプレッサの加速性能に驚き、また称えた。

富士重工業は「WRX STiは当社がかつて世界ラリー選手権への参戦を前提に製造した車なので、加速性能など極めて高い『走り』を備えています。そのため、通常のセダンに比べて(性能が)高いのは事実です」と話す。
インプレッサなどのスポーツモデルのユーザーは、こだわりが強い熱心なファンが少なくない。「メカニックに強く、詳しい人が多い」ため、その加速性能に自然と目が行ったようだ。

スバル車のキャビン部分はつぶれにくい?

ネットでは、
「インプWRXかぁ。確かにスバル車じゃなかったら全部つぶれてたかもしれんね。スバル車のキャビン部分はほんとつぶれにくいからなぁ」

と、スバル車の「剛性」に言及するコメントも見られる。

最近の車選びは、燃費性能や価格を重視する傾向にあるが、改めて車の剛性や運動性能など、トータルな安全性を考えてみる必要もありそうだ。

もっとも富士重工業は「ドライバーの方が九死に一生を得たのは本当に不幸中の幸いで、それがたまたまスバル車だったということでしょう」と話している。」


http://www.j-cast.com/2012/12/03156539.html?p=all