「社説:「大阪都」住民投票 筋が通らぬ承認手続き
毎日新聞 2015年01月14日 02時30分
「大阪都構想」を議論する大阪府・市の法定協議会が制度設計案(協定書)を賛成多数で決定した。府・市の2月議会での承認を経て、大阪市民に是非を問う住民投票が5月に実施される見通しだ。住民投票で過半数が賛成すれば、大阪維新の会を率いる橋下徹大阪市長が唱えてきた都構想が実現する。
頓挫していた都構想が息を吹き返したのは、「反維新」で野党と連携してきた公明党が住民投票の容認に転じたためだ。維新は知事、市長、両議会議員でつくる法定協と両議会のいずれでも過半数に満たないが、公明党と組むことで優位に立った。
だが、なぜ設計案の決定をこんなに急ぐ必要があるのか。協定書は維新単独で作られ、昨年10月に両議会で公明党も反対して否決された内容とほぼ同じだ。
大阪の将来がかかる重要な構想なのに、十分な論議をしないまま設計案を決めてしまい、そのまま住民投票に臨むという手続きでは筋が通らない。4月には統一地方選が予定され、府議と大阪市議も改選される。有権者の意思が示される新たな議員構成でしっかり設計案を練り直すべきではないか。
それにしても公明党の態度は不可解だ。他の野党に同調して協定書に反対していたのに、昨年12月の衆院選の際、橋下氏らが公明党幹部と選挙区で対決するポーズを見せながら立候補を見送り、維新が大阪府内の比例で得票第1党になると、突然方向転換した。
公明党は、協定書には反対だが議会での採決では賛成し、住民投票では反対の投票を呼びかける方針だという。「最後は住民投票で決着をつけるべきだとの声に正面から向き合いたい」と説明する。しかしこんなわかりにくい行動では住民の理解を得るのは難しいだろう。
協定書は、大阪市を解体して五つの特別区に再編し、産業振興やインフラ整備などの市の権限と財源を「大阪都」に集約するものだ。維新は、広域行政の一元化で二重行政が解消され、特別区が住民に身近なサービスを提供できると主張する。だが、協定書に対しては少なくない懸念が指摘されている。
例えば、特別区によって人口や企業立地数に偏りがあり、そのまま移行すると税収格差が生じ、予算の公平な配分に難が生じる。財源の豊かな区から乏しい区に回すとしているが、先々、区同士で問題が生じる恐れがある。災害に対応した人員配置が考慮されているのかといった指摘もある。
「はじめにスケジュールありき」ではなく、府・市議会で丁寧な議論を重ねることが最後に判断する住民への責務であるはずだ。」
http://mainichi.jp/opinion/news/20150114k0000m070109000c.html