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スティグリッツ教授の提言

2016-03-24 18:17:32 | 国際
 先の国際金融経済分析会合におけるスティグリッツ教授の報告は、ただ消費税に否定的な部分のみが取り上げられ報道されていたが、その内容はより広範な世界経済全体の分析に基づいており、アベノミクスそのものにも批判的である。

 次を参照していただきたい。政府のHPに乗せられた教授提出のパワポ資料の翻訳である。

 ⇒ https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusaikinyu/dai1/siryou2.pdf

 ちなみに先進国経済の問題点の指摘は以下の通り。

「大低迷(Great malaise)は、驚くほどに進展を 見せない、より深刻な問題を覆い隠している
• 気候変動
• 格差、多数の貧困層
• 富の不平等、健康の不平等(医療を民間の提供に依存する国においては)、 裁判へのアクセスの不平等、と多岐に渡る。
• 先進国では中間層が縮小。途上国においても中間層が縮小。
• これらの問題は、社会の主流から取り残された層や(しばしば)若年層では
特に深刻。
• 持続的成長を実現するためには、徹底的な「構造変革」(structural
• 市場経済に根付く問題が、生産性の停滞をもたらしている。
• 民間部門・公的部門の両部門における短期的志向。
• 基礎研究への投資の不足。そして、多くの国ではインフラへの投資の不足。
• 過度の金融化。過度の金融化は以下の過程の一部でもあり、原因の一部でも ある。
• 富と資本の間のギャップの広がり。
• 多くの国で産出に対する富の割合が高まる一方、産出に対する資本の比率が低下。
• 教育システムの適合の失敗。」

 また実施すべき政策の一部としてサプライサイドについて以下のように述べている。80-90年代のサプライサイド計画は失敗だとしている。

「機能するサプライサイドの施策
「需要」と一体となってこそ、機能することが多い。 • テクノロジーへの投資拡大
• 革新的経済(innovation economy)と学習社会(learning society)を作り出 す上で、とりわけ重要。
• 人間への投資の拡大-より健康でより生産性の高い労働力を創出する。 • 経済を再構築し、古い産業から新しい産業への移行に役立つ産業政策
• 市場だけでは、これらの変革は作り出せない。
• 競争政策-経済的な権力が合従することを防ぐ
• 独占は産出を阻害する。
• 金融市場改革
• 金融機関が他に害を及ぼすことを防ぐだけでは不十分。
• とりわけ中小企業のために期待される役割を果たし、金融を仲介し、民間 資金を提供するように金融機関に促すことが求められる。
• 債務よりも資本性の資金を促すことが求められる。

機能するサプライサイドの施策
• 労働参加を促進する施策 • 有効な公共交通システム • 育児休暇、有給病気休暇 • 子育て支援
• 被差別層・社会の主流から取り残された層の包摂 • 女性
• 少数派・マイノリティー • 移民


機能するサプライサイドの施策
• 効果的でない(または逆効果な)サプライサイドの施策が 多く存在する。
• 法人所得税率の引下げ。
• 例外として、投資をして雇用を創出させる企業には減税し、投資
や雇用創出に消極的な企業には増税する施策。 • 金融市場の規制緩和。
• 投資の減少、投機の拡大、市場の不安定化につながる。
• 貿易政策においてサプライサイドの効果は期待されてこなかっ
た。
• 効果は常に過大評価される。
• 米国にとってTPPの効果はほぼゼロと推計される。
• TPPは悪い貿易協定であるというコンセンサスが広がりつつあり、 米国議会で批准されないであろう
• 特に投資条項が好ましくない-新しい差別をもたらし、より強い成長や 環境保護等のための経済規制手段を制限する


他の逆効果なサプライサイド施策
• 後ろ向きなサプライサイド改革も機能しない。
• 米国における住宅の過剰供給(ネバダ砂漠の空き家)の削減
は、米国経済の回復に寄与していない。
• 韓国の経済危機(1998年)における半導体チップの過剰生産 能力の破壊は、同国経済の回復を遅らせた。
• オプションを持つことの価値は無視される。
• 競争相手を減らすことを望む向きがよく持ち出す議論。
• 「国の代表的企業」(“national champions”) という言葉は、 実のところは寡占事業者を意味するもの。


サプライサイド施策の失敗
• 1980年代初頭の米国(および他国)におけるサプライサ イド施策の失敗。
• 税収増加の約束は果たされなかった-実際には減収。
• 成長率を高める約束は果たされなかった-実際には低下。
• 貯蓄率低下。
• より最近の2000年代初頭における減税でも同じ結果がみられた。
• 労働参加率低下。
• サプライサイド施策の正当化よりも、サプライサイド施策 による格差への影響の懸念は最高潮に達している。」


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