環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

東日本大震災:全号機で通電確認(朝日新聞 朝刊)、首相、摂取制限を指示(朝日新聞 夕刊)

2011-03-23 23:23:38 | 自然災害
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                              第6章の目次


共通する二つの誤解

 ここでは、多くの記事に共通する誤解を2つ挙げるにとどめます。第一は「スウェーデンの原発廃棄が国民投票によって決まった」とする点です。この点には2つの誤りが含まれています。その一つは国民投票の結果は12基までとの上限はあるものの、過半数(58.0%:第1案+第2案)が原発の存続に投票していること(204ページ表7参照)。もう一つはスウェーデンの国民投票は、スイスの国民投票とは違い、投票の結果が自動的に国会や政府を拘束するものではないことです。

 つまり、この誤解は「スウェーデンの国民投票とはどのようなものなのか」を理解していないという単純な理由によるものです。それでは、何がスウェーデンの原発廃棄を決めたのでしょうか? それは国民投票の3か月後、つまり1980年6月の「国会決議」で、この国会決議によって2010年までにスウェーデンの原子炉12基すべてを段階的に廃棄することが正式に決まったのです。

 第二はスウェーデンのエネルギー政策に関する英文資料にしばしば登場する「Energy Bill」とか、「Government Bill on Energy Policy」という言葉の中の「Bill」という単語の意味です。この場合の「Bill」をわが国のジャーナリズムやエネルギー関係者はほとんど例外なく「法案」と訳し、読者を混乱させています。「法案」が国会に提出され、国会を通過したので「法律」ができた、つまり、「エネルギー法」とか、わが国の最大の関心である原発のみに注目して「脱原発法」ができたという理解が多いのですが、実際はそうではありません。しかし、このように報じた一般紙もあります。

 この場合の「Bill」は「法案」ではなくて、法律とは何ら関係のない「政策案」と訳すべきものです。スウェーデンでは、国の重要な政策の決定に国会の承認が必要なので、政府は定められた時期に政府の政策案(Government Bill)を国会に上程し、その承認を得るという手順を踏みます。これら共通の誤りはスウェーデンの政策決定システムがわが国のそれと異なることを理解せずに、わが国の政策決定システムを頭においてスウェーデンを解釈していることから生じた単純な誤りなのです。わが国のジャーナリストや専門家と称される方々が書くスウェーデンのエネルギー政策に関する論文や記事の中には、スウェーデンの社会システムを考慮に入れないために生じた誤解や曲解の例が多々見受けられます。