環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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東日本大震災:80歳と16歳孫、救出、福島第一 2号機通電(朝日新聞 朝刊)

2011-03-21 12:31:36 | 自然災害
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今日の夕刊は「春分の日」のため休刊。


                              第6章の目次



第6章 エネルギー体系修正への挑戦

 100年前、スウェーデンはヨーロッパで最も貧しい国の一つでした。その主な理由は相当量の化石燃料が国内で発見されなかっために工業化が遅れたからです。この50年間でスウェーデンは世界で最も裕福な福祉国家の一つとなりました。しかし、化石燃料に恵まれない点は今も変わりありません。水力発電はスウェーデンの工業化に重要な役割を果たしました。増大する電力需要に対処するため火力ではなく、迷うことなく原子力を選択し、積極的に開発してきました。

 スウェーデンの統計によれば、現在、1次エネルギーの30%を電力(水力が15%、原子力が15%弱)が占め、総発電電力量の50%が水力、50%弱が原子力、残りの数%が火力です。スウェーデンの人口一人当たりの電力消費量はノルウェー、カナダについで世界第三位で、人口一人当たりの原子力依存度は世界一です。現在、稼働中の原子炉12基のうち、9基(BWR)がアセア・アトム社(現在のABB アトム社)製の国産技術によるもので、残りの3基(PWR)が米国のウェスティングハウス社製のものです。

 スウェーデンは人口850万の小国で、その社会規模、産業規模が小さいにもかかわらず、今、脱原発国の一つとして日本のエネルギー関係者だけでなく、一般の人々の注目をも集めています。2010年までに、順調に稼働している原子炉12基すべての廃棄を決めた世界最初の国だからです。

 わが国では、エネルギー問題を考える時に、エネルギーのことだけしか考えませんが、このような狭い考え方は問題です。環境政策、エネルギー政策など、国の重要な政策の背景には、必ず核になるその国の社会が存在します。ですから、エネルギー問題を議論する時にも、政治、行政、法制度などの社会システムを考慮に入れて考える必要があります。このような当たり前のことをすっかり忘れて、わが国ではエネルギーの供給や研究開発という狭い枠の中での硬直した議論が盛んに行われています。

 現在、私たちが関心をいだいているスウェーデンはその福祉社会を発展させてきた長い過程の中でさまざまな取捨選択を行いながら、社会制度の一つ一つに改良を加え、それらを成熟させてきた結果です。こうした理解なしにはスウェーデンのエネルギー政策を理解することはできませんし、また、なぜスウェーデンがそのエネルギー政策の中で、安全対策、廃棄物処理対策、設備利用率、被ばく対策など多くの面で世界の最高水準を行くといわれる原発を廃棄し、自らに厳しい条件を課しつつ、現行のエネルギー体系を将来に向けて新しいエネルギー体系に変えて行こうと模索しているのかを理解できないでしょう。