ホワイトシェパード・アリエスの日々 ≪一雲日記≫

いつまでもどこまでも一緒に歩こう!

庭に訪ねておいでね

2019-05-08 | 11~12歳
窓からの風でレースのカーテンがふわりと膨らむと、アリエスはすかさずやってきて、カーテンの下に入り鼻を上に向けて匂いを楽しんだ。「スカートめくり」などと不謹慎な呼び方をして、私たちはその姿を楽しんだ。カーテンの舞うそよ風に、カタリと物が落ちる音に、まとわりついて離れない蝶々に、アリエスが訪ねてきたと思って目を凝らし耳を澄ます。

アリエスのために作り直した庭は、主を失くしたのにちゃんと芽吹き、花咲き、力強く季節をとらえている。私はただ淡々と世話をする。アリエスがそっと遊びに来るかもしれないから。アリエスの足元に邪魔にならないよう草を払い、日射しから避難できる木漏れ日の枝になるよう剪定する。白い花を植える。アリエスの白い花だよ。

アリエスのためにと思ってすることが、ひいては植物の助けになり、めっきり少なくなった緑を近隣にも楽しんでもらうことになり、わずかな面積でも地球を冷まし、小さな生き物の世界を作る。アリエスを入り口にして、私はいろんなことに関与していることになる。

仕事でもアリエスは、片時も私の心を離れない。アリエスを見るように人を見、アリエスに話しかけるように話し、アリエスに訊ねるように話を聴くようにしていると、相手が心を開いてくれるのがわかり、こんなにも違うのものかと驚く。

アリエスの腹時計に合わせた時間割は、今でも私たちの生活を規則正しく保つ。アリエスに出したごはんを1食遅れでありがたく戴く私は、どんなに嘆き悲しんでもやせ細ることはない。

アリエスは私の基盤であり循環する生命力であり、暮らしのいたるところで顔を出しては、きらめくようなエピソードを思い出させる。まだ涙は出るが、涙は、傷口を塞ぐかさぶたのようなものかもしれない。アリエスはきっと、涙でない何かで、それを埋めるようにと願っているだろうと思う。

私にとっては、やっぱりアリエスが季節をめぐらせ、自分の命のエンジンなのだと実感するのです。これからアリエスの姿のない初めての夏を迎え、秋を迎え、アリエスを失った冬もくる。大丈夫かな。大丈夫だと言おう。アリエスには絶対そう言おう。