2021年10月1日公開 アメリカ 164分 G
現役を退きジャマイカで穏やかな生活を送っていたボンド(ダニエル・クレイグ)のもとに、CIA出身の旧友フェリックス・ライター(ジェフリー・ライト)が助けを求めにやってきたことから、平穏な日常は終わりを告げる。誘拐された科学者を救出するという任務に就いたボンドは、その過酷なミッションの中で、世界に脅威をもたらす最新技術を有した黒幕を追うことになるが……。(映画.comより)
ジェームズ・ボンドの活躍を描いた「007」シリーズ25作目ですが、『007 カジノ・ロワイヤル』(2006年)、『007 慰めの報酬』(2008年)、『007 スカイフォール』(2012年)、『007 スペクター』(2015年)と15年にわたって6代目ボンドを務めてきたダニエルの最後の『007』映画です。監督は日系アメリカ人キャリー・ジョージ・フクナガで、サフィン(ラミ・マレック)のアジトには枯山水や盆栽、畳があり、身に着けていた能面や羽織っている衣装も日本風なのは監督の好みかしら?
彼の「007」シリーズはそれぞれの作品が互いにリンクしていて、最後にどう完結させるのかという楽しみもあります。丁度地上波で前作の放送があったので、復習もバッチリ
マドレーヌ(レア・セドゥー)との新たな生活のため、過去に区切りをつけようと、以前の恋人ヴェスパー(エヴァ・グリーン)の墓を訪れたボンドは、スペクターのマークが描かれたメッセージカードを見つけます。 直後、爆発が起こり、負傷しながらも犯人の追跡を振り切りホテルに帰ったボンドは、マドレーヌを疑い、彼女に一方的に別れを告げます。駅で別れる際、マドレーヌがお腹に手を当てていたのは伏線ですね
フェリックスの依頼を受けたボンドはキューバに向かい、現地のエージェントのパロマ(アナ・デ・アルマス)と合流。彼女との掛け合いがちょっとコミカルで束の間の安らぎを感じさせてくれました。 潜入したのはMIー6の管理下に身柄を拘束されている元スペクターの首領ブロフェルド(クリストフ・ヴァルツ)の誕生パーティーで、ボンドを殺すための毒で、スペクターのメンバーが次々と倒れます。誘拐された科学者オブルチェフが生物兵器のデータをすり替えていたのです。オブルチェフを救出してフェリックスたちと合流したボンドは彼を詰問してM(レイフ・ファインズ)が関わっていること、裏にアッシュと彼の背後の黒幕の存在を聞き出しますが、アッシュの裏切りでフェリックスが撃たれ船内に閉じ込められ船を爆破されます。フェリックスは死亡、船を脱出したボンドはロンドンに戻り、Mと対峙。オブルチェフが開発していた生物兵器「ヘラクレス」は、DNAに反応して対象に接触するだけで殺すことができ、サフィンはそれを大量生産しようとしていました。
アッシュの背後にいたのはサフィンです。彼は家族をマドレーヌの父親に殺され、その復讐のために幼かったマドレーヌとその母を殺しにやってきましたが、湖に落ちたマドレーヌを助けた過去があり、その礼をしろとマドレーヌに迫ります。ブロフェルドに唯一面会を許されていた彼女に再会したボンドの内面の揺れが伝わってきます。サフィンの思惑通り、ボンドが接触した(感情的になって首を絞めた)ブロフェルドは死亡。その直前に彼はボンドにヴェスパーの件にマドレーヌは無実だったことを語ります。マドレーヌの「ホーム」を訪ねたボンドはそこに青い目をした少女を見、彼女が娘であることに気付くの。
ボンドは謝罪し、愛を告げますが、サフィンにより二人が連れ去られてしまいます。Q(ベン・ウィショー)やペニー(ナオミ・ハリス)、タナー(ロリー・キニア)のバックアップのもと、新たな007のノーミ(ラシャーナ・リンチ)と共に日本とロシアの間の海域にあるサフィンのアジトへ潜入します。相変わらずボンドに振り回されるQと、番号に拘りながらもそれを悟らせたくないノーミとボンドの素振りもキュートです。
島全体が「ヘラクレス」の工場となっていて、壊滅させるには、ミサイル攻撃しかありませんが、防護壁を解除しなければなりません。 囚われていたマドレーヌとマチルドを助けて、ノーミに託したボンドは、防護壁の解除に向かいます。古いシステムだから慎重に手順を踏んでとのQの言葉を無視して手あたり次第にスイッチを入れ、結果解除しちゃうあたりはハイテクへの皮肉かしらん 脱出しようとしたボンドですが、サフィンにより再び防護壁が閉じ、二人の最終対決となります。この時毒液を浴びたボンドは、二度と愛する二人に接することが出来なくなったことを知り、またミサイル着弾まで時間もないため、マドレーヌとの交信で愛を告げて最期を迎えます。花火のようにミサイルが展開する中、「ランボー」のようにすっくと立った姿が超カッコイイ!! そしてまさにダニエル=ボンドが終わりを迎えたことが明確に示されたのです。
このシリーズは、ダニエル以前の「女王陛下のために任務を遂行してきた諜報員」としてではない、愛を知り愛に生きた一人の男として、時に粗削りで時に感情的な生身の人間らしいボンドになっていて、それまでのボンド像とは異なっているけれど、個人的には大好きなボンドでした。
アクションの面でも、Qがボンドに用意する車をはじめとした秘密兵器の道具の数々も楽しませてもらいました。
きっとこれからも新しいボンドが登場するのでしょうけれど、やっぱり私の中ではダニエル=ボンドが一番かも