杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

護られなかった者たちへ

2021年10月06日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)

2021年10月1日公開 134分 G

東日本大震災から9年後、宮城県内の都市部で全身を縛られたまま放置され餓死させられるという凄惨な連続殺人事件が発生した。被害者はいずれも善人、人格者と言われていた男たちだった。宮城県警捜査一課の笘篠誠一郎(阿部寛)は、2つの事件からある共通項を見つけ出す。そんな中、利根泰久(佐藤健)が容疑者として捜査線上に浮かび上がる。利根は知人を助けるために放火、傷害事件を起こしたて服役し、刑期を終えて出所したばかりの元模範囚だった。犯人としての決定的な確証がつかめない中、第3の事件が起こってしまう。(映画.comより)

 

中山七里の同名ミステリー小説の映画化です。原作を先に読んで部屋で一人泣きました。これを俳優陣がどう演じてくれるのか楽しみに劇場へ足を運びました。映画化にあたり、犯人の性別が変わっていることはネタバレ読んで知っていました。非力な犯人が被害者を拉致監禁はちょっと無理がある気もしますが、スタンガン使ったり引きずったりの描写で成立させていました 強い復讐心の表現は目力もあり迫力がありました。

原作の被害者たちは、表向きの善人の顔の裏で規則や国の指示に盲従する冷徹な役人の顔がありましたが、映画の三雲(永山瑛太)と城之内(緒形直人)は善人の部分を強めに出していたように見えます。特に第三の被害者となった上崎(吉岡秀隆)は、過去の過ちを悔いてより良い未来のために働こうとしている人物になっていて、原作とはかなり異なっていてびっくりでした。

また、最後に登場する笘篠の息子と利根の意外な接点は原作にないエピソードだったような?そもそも、原作では妻が行方不明だったけれど、映画では息子になっていて、彼が来ていた黄色いパーカーというのがキーポイントになってますのでね。 避難所で笘篠・カンちゃん・利根がすれ違っているというのも映画ならではの設定ですね。

福祉予算がひっ迫している現状で、国が生活保護受給者を調整したり、申請を却下する「水際作戦」が行われていることが犯行の動機となっているのは原作通りで、最後に「あなたは一人ではない。何度でも勇気を持って声を上げてください。不埒な者が上げる声よりも、もっと大きく、図太く」と残すメッセージは作り手の共通する強い思いだと思いました。

笘篠の部下の蓮田(林遣都)・・ネタバレ知るまでは彼が犯人役かと思ってました・・は、組織からはみ出して行動する笘篠に当初反発していましたが、行動を共にするうちに同調していくようになります。

物語のキーパーソンとなる遠島けいを演じた倍賞美津子さんの演技は流石の一言。円山幹子役の清原果耶さんも峻烈な強さを印象付けています。

けいの悲惨さは本の方が想像の余地がある分、より悲惨に感じましたが、それでも十分に伝わってくるものがありました。

ただ本と映画だと、私は本の方がより哀しく切なく重く受け止めたかな


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