杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

マリー・アントワネットに別れをつげて

2013年07月14日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2012年12月15日公開 フランス スペイン 100分

1789年7月14日。フランス革命が勃発したその日、ヴェルサイユの人々はまだ何も知らず、いつもと変わらぬ華やかな一日を送っていた。王妃マリー・アントワネット(ダイアン・クルーガー)は、悪夢に目覚め、早朝からお気に入りの朗読係、シドニー・ラボルド(レア・セドゥ)を呼び出す。自分に心酔するシドニーと話すうちに落ち着きを取り戻す王妃。7月15日。バスティーユ陥落の報と王妃を筆頭にポリニャック夫人(ヴィルジニー・ルドワイヤン)ら286人の処刑リストが出回り、騒然となるヴェルサイユ。王妃からポリニャックへの情熱的な恋心を打ち明けられたシドニーは、王妃のために、彼女を連れてくると申し出るが、爆睡するポリニャックの寝姿を嫉妬と羨望の思いで眺め、諦めて引き返す。取り乱しながら逃亡の準備をする王妃だったが、翌7月16日、王は逃亡せずに留まることを決定。王家の運命は新政府に委ねられ、絶望する王妃に光り輝く緑のドレスを纏ったポリニャック夫人が寄り添う。ところが、王妃が逃亡を勧めると、彼女は素直に応じてしまう。更なる混乱の一夜が明けた翌朝、シドニーは王妃から、召使いに変装してスイスに逃げるポリニャック夫人の身代わりとして彼女に同行するよう言い渡され・・


シャンタル・トマの小説『王妃に別れをつげて』が原作。
フランス革命の始まりの3日という限られた時間の中で、宮廷貴族たちの動揺を背景に、王妃の知られざる素顔を朗読係の少女の目を通して描いた物語です。

シドニーは孤児という設定ですが、全くの平民が宮廷で王妃の朗読係として採用されることってあるのかしら?本の知識はどこで身につけたの?という素朴な疑問は置いといて
王妃に心酔していたシドニーには、彼女の孤独も察するものがあったのかもしれません。
王妃の美点だけに目を向けて、王族の傲慢さや気紛れといったものは見ないふりをしていた気がします。

革命当日も、宮殿の日常は変わりません。ファッションカタログを朗読させ、刺繍の見本に熱中する王妃が事の深刻さを理解するのはもう少し後のことです。漠然とした不安が静かに宮殿を覆う中、シドニーにとっては王妃のための仕事こそが全てです。そんな彼女を痛ましげに見守るカンパン夫人(ノエミ・ルボフスキー)と図書室の記録係のモロー(ミシェル・ロバン)の視線が温かかったな

しかし翌日になり処刑リストが出回り、宮廷の動揺は深刻なものとなります。自殺する貴族や、逃亡する使用人が出る中、王妃自身も宮殿から逃げ出す準備を始めます。しかし夫である王は宮殿に留まる決意を固め、彼女の愛するポリニャック夫人はあっさりと王妃の逃亡の勧めを受け入れます。愛する者が自分から離れていこうとすることに苦しみながらも愛するが故に受け入れる王妃の姿をシドニーは静かに見つめています。彼女自身の王妃に対する想いを重ねていたのでしょうか。

そして三日目。王妃は愛するポリニャック夫人の身代りにシドニーを仕立てます。シドニーの忠誠を心得ているが故の残酷な仕打ちに、彼女の目から一筋の涙が流れるシーンが良かったな

馬車の中で殊更窓の外に乗り出すように顔を出し手を振るシドニーの胸中にはどのような想いがあったのかしら?そして無事脱出したあと、彼女はどう生きたのでしょうか。

本物のベルサイユ宮殿でも撮影され、王妃を初めとする貴族の豪華で華麗な衣装や、召使いたちの質素な部屋と衣装の対比など、宮廷の裏側の生活を覗き見る気分を味わえました。

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