
2020年11月20日公開 フランス 109分 G
11歳の少年レミ(マロム・パキン)は、田舎の農村で優しいママ(リュデュヴィーヌ・サニエ)と貧しいながらも幸せに暮らしていた。ところがその家に、長い間パリへ出稼ぎに出ていたバルブラン(ジョナサン・ザッカイ)が帰ってきたところから、レミの運命が急変する。バルブランはレミに「お前は10年前にパリで、高級な産着にくるまれ捨てられていた赤ん坊だ」と告げ、旅回りの老芸人、ヴィタリス(ダニエル・オートゥイユ)に売り飛ばしてしまう。だが、情の深い親方ヴィタリスに歌の才能を見いだされ、犬のカピ、猿のジョリクールと親交を深めながら、懸命に旅を続けるレミ。さまざまな出会いや困難が渦巻く冒険の果てに、レミを待ち受けていた運命とは……?(公式HPより)
子供の頃に読んだ懐かしい名作が実写映画化されると知って劇場で観るつもりだったのに予定が合わずDVDになるのを心待ちにしていた作品です。
当時の記憶を辿りながら、登場人物や動物たちの名前や展開に「そうそう、そうだった!」と心の中で手を打ちつつ、微妙に原作と異なる気もして検索してみたところ、本当は長編小説なのを子供用に端折ったものを読んでいたことが判明。え~~??植木屋さんのアキアンのエピソード知らない 映画ではガロフォリ親方に預けられた場面もバッサリ切られているので当然マチアも出てこないです。更に白鳥号で出会うのは原作だとミリガン夫人とアーサー(本当の家族)なのですが、映画ではハーパー夫人(ヴィルジニー・ルドワイヤン)とリーズ(彼女も記憶の中のお話には登場してません)になってて大胆な改変がされていました。アーサーではなくリーズが股関節の障害のため車椅子という設定ですが、ロマンスの相手になるのは変わらないようです
映画は冒頭で、老いたレミ(ジャック・ペラン)が嵐の夜に雷に怯えて眠れない子供たちのためにお話しをする場面から始まります。最後にそこがヴィタリスの名を冠した孤児院であることが明かされていました。孤児院というと古い館に大勢の貧しい身なりの子供がひしめき、辛い扱いを受けるイメージですが、ここは全く違って、いかにも暖かく穏やかな暮らしぶりが覗えます。
棄てられていた赤ん坊の高級そうな産着に気付いたバルブランが、謝礼を期待して連れ帰りますが、当てが外れ引き取り手が現れません。でも我が子を亡くしていた夫人は夫の指示に背いてレミと名付けて育ててきました。ところが石切りの仕事で出稼ぎをしていた夫が怪我をして失業し、食い扶持を減らすためレミを孤児院へ入れようとします。それを知ったヴィタリス親方がレミを買い取って旅が始まります。彼は以前にレミの歌声を聴いてその才能を確信していたのですが、原作でも歌ってたっけ?
初めは逃げようとしたレミですが、次第に親方に信頼を寄せていき、カピやジョリクール(原作ではもう少し動物がいたような)とも家族のようになっていきます。レミの澄んだ歌声(メロディだけなのですが)が美しい農村の風景に溶け込んでいくシーンが良かったな
親方の本名はカルロ・バルザー二といい、高名なヴァイオリニストでしたが、身勝手な傲慢さから家族を失ったことを悔いて過去を捨て旅芸人として生きていました。村から村への旅の中で、親方はレミに生きる術を教え父親のように導いていきます。運河に浮かぶ「白鳥号」でのハーパー夫人と娘のリーズとの出会いは束の間の幸福な時間でしたが、理不尽な逮捕で牢に入れられていた親方が戻ってくると、レミはハーパー夫人の使用人となるより親方との旅を続けることを選びます。
ところが、親方が病(結核)を得て旅は過酷なものになっていき、ジョリクールも肺炎になってしまいます。親方は封印していたヴァイオリンの演奏をして宿代を稼ごうとしますがこの演奏も素晴らしかった 親方の過去を知る一人の貴婦人が現れ金貨を置いていくのですが、ジョリクールは・・・いつもは嫌がる衣装を自ら着けて死んでいたジョリクール。この場面は本でも最大の泣き所でしたが、映画でも
幸せと不幸が交互に訪れる展開はまるでジェットコースタームービーの様相です。
リーズに語っていた出生の秘密を聞いたハーパー夫人の計らいでレミの親が判明したかと思ったら、レミを攫った本当の叔父の悪巧みで殺されそうになったり、親方に救い出されたかと思ったら吹雪の夜に凍死しかけたり。でも最後は本当の母親であるミリガン夫人と再会して、叔父は逮捕され追放となりハッピーな結末が待っていました。
そもそも冒頭で大きな屋敷の暖かな暖炉の前に座る老人レミが登場するのだから、ハッピーエンドは最初からお約束ですが
育ての母との再会やリーズとのその後も描かれていて、ヴィタリスの最期は悲しかったけれど、レミの賢く優しい性質が彼の運命を切り拓き、愛や信頼の絆を育んでいく様子が、美しい風景とともに心に残りました。