杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

九十歳。何がめでたい

2024年06月27日 | 映画(劇場鑑賞・新作、試写会)
2024年6月21日公開 99分 G

断筆宣言をした90歳の作家・佐藤愛子(草笛光子)は、新聞やテレビをぼうっと眺める鬱々とした日々を過ごしていた。同じ家の2階に暮らす娘・響子(真矢ミキ)や孫・桃子(藤間爽子)には、愛子の孤独な気持ちは伝わらない。同じ頃、大手出版社に勤める中年編集者・吉川真也(唐沢寿明)は、昭和気質なコミュニケーションがパワハラ、セクハラだと問題となり、謹慎処分に、妻・麻里子(木村多江)や娘・美優(中島瑠菜)にも愛想を尽かされ、仕事にプライベートに悶々とする日々。
そんなある日、吉川の所属する編集部では愛子の連載エッセイ企画が持ち上がり、吉川が愛子を口説き落として、晴れて担当編集に!このふたりの出会いが、新たな人生を切り開く――?!(公式HPより)


歯に衣着せぬ物言いで人気の直木賞作家・佐藤愛子が、日々の暮らしと世の中への怒りや戸惑いを独特のユーモアで綴ったベストセラー・エッセイ集『九十歳。何がめでたい』『九十八歳。戦いやまず日は暮れず』を原作に、90歳を迎えた草笛光子が熱演しています。
監映画『老後の資金がありません!』の前田哲。主題歌は木村カエラ「チーズ」


冒頭に映し出される愛子先生は、髪もボサボサで動作も鈍く、何をするのも億劫そうで覇気がありません。新聞の人生相談を読みながら回答者の海藤(清水ミチコ) にケチをつけるシーンで登場する相談者は・・・😁 久しぶりに美容師(LiLiCo)に髪をセットしてもらっても誰も自分に注意を払ってはくれないと気落ちする姿が小さく見えます。

吉川は、時代の空気に取り残されたザ・昭和男で、職場での言動がパワハラ&セクハラ判定を受け謹慎処分に。落ち込んで家に帰れば妻子と愛犬はおらず、テーブルには離婚届が入った封筒が。異動となった部署では、後輩の倉田(宮野真守)から何もせずに大人しくしてくれと言われる始末です。

愛子先生のエッセイ企画が持ち上がり、若手編集者の水野(片岡千之介)が洒落た手土産を持参してお願いに上がりますが、あっさり断られてしまいます。そこで自分の出番と張り切った吉川が手土産片手に日参します。毎度断りながらも手土産のお菓子だけはしっかり受け取る姿が笑えます。吉川の演技が功を奏し、彼に同情心を覚えて遂にエッセイを引き受けるんですね。

執筆を再会した愛子先生は背筋も伸びて表情も明るくなっていきます。
「書くこと」が生きる活力だったんですね。

吉川とジョギング中に出会った子供たちのこと、タクシー運転手(三谷幸喜)に愚痴をこぼしまくったことと、些細な電化製品のトラブルへの対処に憤ったこと(TVが壊れたと業者(オダギリジョー)を呼んだらリモコンのスイッチを間違って押していただけだったのに出張費を取られた、FAXの紙詰まりも同様)など、日常の小さな出来事に対しての鬱憤を連ねたエッセイは、本として出版されるとベストセラーとなります。
駅のホームで、書店で、太極拳をする人の手にまで本を手にした人達が溢れる図はちょっとやり過ぎな感もありますが、確かに発売当時はTVでもやたらと宣伝していた記憶があるなぁ。

娘から父親としての役割を果たしてこなかったことを責められ、前に進むために離婚してあげてと言われてショックを受けた吉川は、これまでの自分を反省します。

体調を崩した愛子先生が予約を入れていたのに病院で二時間以上待たされた挙句、検査を受けられずに帰ったエピソード(検査の注意事項を知らずに桃を食べていた)では、入れ違いにストレスで潰瘍になった吉川の姿が映し出されます。この時の石田ひかりが演じた病院職員のとっても事務的な対応が笑えるやら腹立たしいやら・・。

娘のダンス発表会を見に行った吉川。隣の席に座ってきたのは愛子先生。
彼女に励まされ、妻に復縁を申し出たものの瞬殺で断られます。「あなたのことが嫌いだから」・・「人生相談」で愛子先生の回答にリンクしていました。あれって先生の妄想じゃなくて現実だった??ともあれ吉川の中で何かが吹っ切れたようです。

旭日小綬章を受賞してのスピーチで、吉川に感謝を伝えた愛子先生。
実は彼女の小説は読んだことがないのですが、映画の原作であるエッセイは読んでみようかなと思いました。😉 

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