2018年5月26日公開 アメリカ 130分
1950年代、ロンドン。英国ファッションの中心に君臨し、社交界から脚光を浴びる天才的な仕立て屋のレイノルズ(ダニエル・デイ=ルイス)。ある日、レイノルズはウェイトレスのアルマ(ビッキー・クリープス)と出会い、彼女を新たなミューズに迎え入れる。彼はアルマの“完璧な身体”を愛し、彼女をモデルに昼夜問わず取り憑かれたようにドレスを作り続けた。しかし、アルマの気持ちを無視して無神経な態度を繰り返すレイノルズに不満を募らせたアルマは、ある日朝食に微量の毒を混ぜ込む…。やがてふたりは、後戻りできない禁断の愛の扉を開き、誰もが想像し得ない境地へと向かう。この愛のかたちは、歪んでいるのか?それとも純愛なのか ?華やかなオートクチュール(高級仕立服)の裏側で、映画史上もっとも甘美で狂おしい愛の心理戦がはじまる!(公式HPより)
有名デザイナーと若いウェイトレスとの究極の愛がテーマの作品だとか。
デイ=ルイスは今作をもって俳優業から引退することを表明しています。 彼の端正で気品のある佇まいが映える作品です。
レイノルズの日常は、ドレスの仕立てを中心に回っています。規則正しく整然とした毎日が繰り返されることを望む彼にとって、相手が妻であろうと愛人であろうと、その静寂を乱すことは我慢がなりません。ところが、アルマとの出会いが彼の日常に変化の波を立てていきます。初め、彼女の(彼にとって)完璧な身体をレイノルズは愛しますが、次第にアルマ自身に深く惹きつけられていくのですね。
いわゆる上流階級の出ではないアルマの作法振る舞いは、レイノルズにとって騒音であり我慢の範疇を超えています。レイノルズの姉・シリル(レスリー・マンビル)の忠告に従っていたアルマですが、徐々に生来の自分が出てきます。そんな彼女の態度に苛立ちを募らせたレイノルズはシリルに愚痴をこぼしますが、それを耳にしたアルマは彼にキノコの毒を盛るんですね
でもそれは彼を殺そうという意図ではなく、弱った彼を看病することで自分の存在を誇示したい、彼の時間と愛を独占したいという思いからの行動です。まぁ、この時点で普通じゃないけど。いわゆる代理ミュンヒハウゼン症候群の気がしますが
この企みは成功し、レイノルズはアルマに求婚。二人は結婚します。しかし、アルマの振る舞いは徐々にレイノルズを疲弊させていきます。静寂を好む夫と、華やかで楽しいことを求める若い妻。両者の間に溝ができていくのも当然の成り行きです。
そしてアルマの二度目の「行為」はレイノルズの目の前で行われます。当然彼は気付いていますが、その料理が毒であることを知りながら口にするんですね。二人にとって、それは究極の愛の形なのかもしれませんが・・・こういう感情は私の理解の範疇外かな
(それよりも、毒の効果や量について素人の筈のアルマが、全て承知と言わんばかりの落ち着き払った態度の方が気になったりして)
何より、レイノルズの作るドレスの素敵なこと彼の邸宅の豪華な作りや華やかな社交界の様子は一見の価値ありでした。