杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

追憶 ネタバレあり

2017年12月19日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2017年5月6日公開 99分

1992年、冬。親に捨てられた13歳の少年・四方篤は、似た境遇の田所啓太、川端悟と共に、軽食喫茶を営む仁科涼子(安藤サクラ)と常連客の山形光男(吉岡秀隆)のもとで家族のように暮らしていた。しかしある事件をきっかけに幸せな日々は終わりを迎え、彼らは離れ離れになってしまう。25年後、成長して刑事になった篤(岡田准一)は、無残な刺殺体となって発見された悟(榎本佑)と再会を果たす。そして捜査が進められていく中、啓太(小栗旬)が容疑者として捜査線上に浮上し……。(映画.comより)


降旗康男監督によるヒューマンサスペンス。撮影は木村大作。ある殺人事件を追う刑事・容疑者・被害者として再会した幼馴染3人が、心の奥に封印してきた過去と向き合う様子を描いています。

涼子はヤクザな情夫の貴船から逃げてきた過去があるのですが、その貴船が涼子を追って現れたことから事件が起きます。男の暴力に怯える涼子を助けようと子供たちは貴船の殺害を企てます。男の逆襲に遭った子供たちを助けた涼子は三人に事件を忘れて別々の人生を歩くように言い含めます。

25年後。篤は富山県警の刑事になっています。妻の美那子(長澤まさみ)とは流産をきっかけにすれ違いの生活になっていて、幼い頃に自分を捨てた母(りりぃ)からお金の無心をされるなど孤独を抱えた日々を過ごしていましたが、ある日ラーメン屋で悟と再会します。子供の頃と同じようにメンマが嫌いで皿に寄せている篤を見て悟が声をかけてきたのです。酒を酌み交わしながら、悟は結婚してガラス店を継いでいるが資金繰りに困り金策のために啓太に会いに来たと話します。ところが翌日、悟の刺殺体が発見され、篤は彼との関係を言い出せないまま捜査に加わるのです。(関係を話せばあの事件に触れないわけにはいかないですが、刑事としてはその時点でoutな気がしますが)

輪島で働く啓太に単身会いに行った篤は彼を問い詰めますが、否定されます。情況的にはとっても怪しく見える・・こういう場合はたいていミスリードなのよね

啓太の妻(木村文乃)は出産を控えていて、啓太は新しい家を建てるため土地を買ってもいます。(実はその土地こそ涼子の営んでいた喫茶店のある場所だったことが後でわかるのです)

捜査の過程で、悟が「懐かしい人に会えた」と家族に電話で話していたことがヒントにもなります。

実はあの事件のあと、涼子は服役していて、出所後に山形と結婚していましたが、事故で障害を負い過去の記憶を失っていました。山形は再会した篤に「あっちゃんは忘れていいんだよ」と言葉をかけますが、それは悟が篤にかけた言葉と同じものでした。ここでも「真犯人は…山形?」と一瞬思ってしまいましたが、もちろんそんなわけはなく、実は悟の妻の小夜子(西田尚美)が従業員とできていて、保険金目的で殺害したというのが真相でした 家族のために必死だった悟にとってあまりにも残酷な結末ですね。

啓太の妻の素性も意外なものでした。彼女は里子に出された子でしたが、母親は涼子だったのです。涼子が刑務所で産んだ貴船との間の子供というわけ。事故に遭った涼子を見舞いに尋ねた啓太が山形から聞かされたことがきっかけで二人は出会い結婚しているのですが、妻は真実を知らないのです。啓太にとって、この事件で過去が掘り返されることは妻が真実を知ってしまうことに繋がるため、隠し通したいと願っていたのでしょうね。

被害者との関係を隠して捜査に加わっていた篤は刑事としては失格ですが、彼の本来の願望(愛されたい、抱きしめて欲しい)は、事件解決後に涼子と向き合った時に満たされます。今回の事件を通し、懐かしい人々と再会する中で、愛されるためにはまず自分が愛することを彼は学んだのだと思います。妻との関係にも修復の兆しが見える終わり方でした。

物語の背景として描かれる日本海の夕日の光景はまさに木村大作の真骨頂でしょう。冒頭に出てくる冬の荒れた情景からクライマックスでの柔らかな光を放つ夕日まで、登場人物の心情と合致する光景が印象に残りました。


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