杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

3月のライオン 前編

2017年11月24日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2017年3月18日公開 138分

春のある日、東京の将棋会館で、17歳のプロ棋士・桐山零(神木隆之介)は、義理の父で師匠の幸田柾近(豊川悦司)との対局に勝利する。9歳の時に交通事故で両親と妹を失った零を内弟子として引き取ったのが、父の友人の幸田だった。零は幸田家を出て、下町のアパートで一人暮らしを始めていた。1年遅れで再編入した高校では、会話を交わすのは担任の林田先生(高橋一生)だけだ。中学生でプロ棋士としてデビューした零は、史上5人目の天才ともてはやされているが、家も家族も友達もなかった。ある時、具合が悪くなって道に倒れていた見ず知らずの零を、近隣の町に住む川本あかり(倉科カナ)が自宅へ連れて帰り介抱してくれる。その日から、長女のあかり、次女のひなた(清原果耶)、末っ子のモモ(新津ちせ)の3姉妹、すぐ側で和菓子屋〈三日月堂〉を営む祖父の相米二(前田吟)と零との温かな交流が始まる。冬を迎えたある夜、零の部屋の前で義姉の香子(有村架純)が待っていた。妻のいるプロ棋士の後藤正宗(伊藤英明)と微妙な関係を続けている香子は、かつて弟の歩と共にプロ棋士を目指していた。二人が零に勝てなくなった時、幸田は自分の子供たちにプロへの道を諦めさせる。荒れる香子を見て零は家を出たのだが、香子も父親を避けて家をあけるようになっていた。新年を川本家で迎える零。楽しいお正月は、皆で初もうでに出かけた神社で、後藤と香子に出くわしたことで一変する。零は香子から、もし自分が獅子王戦トーナメントで後藤に勝ったら、家に戻るという約束を強引に取り付ける。獅子王戦─それは、将棋界の最高峰を決めるビッグタイトルの一つ。タイトル保持者の宗谷冬司(加瀬亮)と闘う挑戦者をトーナメントで決めるのだ。零が後藤に当たるには、島田開(佐々木蔵之介)を倒さなければならない。さらに幼い頃からのライバル、二海堂晴信(染谷将太)が「新人王になる」と宣戦布告した、新人戦トーナメントも待ち受けていた──。(公式HPより)

 

羽海野チカのコミックの実写映画化で二部作の前編です。

家族をいっぺんに喪った幼い零は、自分を引き取ってくれる者がないことを察知して、生きるために「将棋が好きだ」と嘘を付きました。プロ棋士である父の友人の幸田に引き取られた後も、そこでの居場所を作ろうと必死に将棋を学びますが、逆に幸田の子供たちと溝ができてしまいます。零より劣ると悟った幸田は子供たちにプロの道をあきらめさせるのですが、そのことで姉の香子はより強い憎しみを零に感じるようになるのです。彼女は少女の時から零を敵視してことあるごとに虐めますが、それは父親の愛情を取られてしまうことへの恐れだったのかな。

プロ棋士となった零は家を出て独り暮らしを始めていますが、その住まいは川を臨んだアパートで、窓からの眺めは素晴らしいものがありますがなぜかカーテンがない夜景の美しさが逆に孤独感を高める景色です。

幸田と対局して勝ったことがさらに零の孤独を高めます。飲めない酒を飲んで苦しんでいた彼をあかりが連れ帰ったことで川本家の姉妹や彼女たちの祖父と知り合い、そのアットホームな雰囲気に癒されていく零。川本家の食事風景がまた何とも美味しそうで和やかでいかにも下町の家族のあたたかさに満ちています

しかし、零は全く孤独というわけではないのね。林田先生は良き理解者だし、将棋の同輩や先輩にも恵まれています。癖のある棋士たちが次々登場するのも観ていて楽しかったなぁ。零のライバルで親友の棋士・二海堂晴信を演じた染谷将太は特殊メイクでまんまるな風貌ですが、「ヒカルの碁」の倉田さんと外見は似ていますが、難病を抱えているための体型なのね 

香子と不倫関係にある後藤は零に敵視されますが、実は彼は病床の妻に献身的な看病をしています。単純なヒール役ではなさそう。彼との対決に固執するあまり、島田を軽んじて臨んだ一局で、零は自分の甘さを思い知らされ、彼の研究会に入ります。前編のハイライトは何といっても島田八段と後藤九段の対局シーンです。加瀬亮演じる宗谷名人の静謐な佇まいに圧倒されてしまいました。(そういえば、こちらも「ヒカルの碁」の塔矢名人と似てるなぁ

原作者は、3月のライオンのテーマは将棋そのものではなく、将棋を職業とした一人の男の子の人生を描いたのだと語っています。後編ではさらに彼と彼を取り巻く人間模様が描かれるのかな?


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