黄昏オーディオ

ちょっとだけオーディオ。

妄想力

2007-04-17 00:01:55 | 書籍・読書
郵便配達夫 シュヴァルの理想宮
子供の頃、絵画教室の先生にフランスの片田舎の小さな村に郵便配達夫の建てた宮殿があるという話を聞いたことがある。何かの拍子に、ふと思い出して検索してみると、シュヴァルという郵便配達夫が33年をかけて建てた宮殿があるらしい。こうした曖昧な記憶から検索できるというのはネットならではですね。というわけで早速、郵便配達夫シュヴァルの理想宮という本を図書館に注文し、一気に読み終えた。
シュヴァル43歳のとき。配達の途中につまずいた石の不思議な形に魅せられて、仕事を終えると石探し、庭一杯に集めた石を眺めているうちに、夢の宮殿の建設を決意。それから33年、独りこつこつと夢の宮殿を作り続けた。さらに78歳にして、先立たれた妻をそこに埋葬できないと決まると、墓廟の建設に着工し、八年、86歳にして完成させる。
死後半世紀が経ち素人建築は、老朽化し崩壊の危機にさらされた。「気違いじみた妄想のどうしようもない寄せ集め」として「芸術」としての文化財の指定を阻む動きが多い中。時の文化担当国務大臣アンドレ・マルローによって1969年、国の重要建築物として指定され、崩壊を免れ世界各地から観光客にその姿を魅せている。マルローはその決定に対しての答弁で、「理想宮とは何か?それは素朴派芸術の建築における唯一の作例であります。…略…素朴派芸術が無視しえない現実となった時代にあって、世界で唯一の素朴派の建築を所有するという幸運に恵まれたのが、私どもフランスであるとしますれば、それを指定せず、崩壊するのを待っているなどどいうことはナンセンスでありましょう」
かくして、一介の郵便配達夫の建てた宮殿はベルサイユ宮殿同様に保存維持されている。
…43歳にはまだ少しある。
オーディオルームぐらいならこつこつ作れるだろうか…。どこに…。