いつか英国日記

英国を中心とした靴、鞄、時計、その他ファッションに関するブログ

英国アンティーク傘

2011-12-03 08:23:07 | 
冒頭の写真、美しいアールを描く
美しいアンティークな傘。

銀座のパーソナルテーラーのアトリエを
訪問した際、運悪く!?この傘を発見
思わず手にしたのが間違いでした。

握った瞬間、その手に吸い付くようなハンドル
そして余りにも細く巻ける美しい傘に
心を奪われてしまいました。



モデリストでありオーナーであるR.H総帥に
「この傘、今日入ったばかりだよ。」と言われ
この傘は私の為に英国からはるばるやってきたんだなと
確信してしまった次第、、、

そしていつの間にか手に入れてました。
いやいや、又、やってしまいました。

さて、冷静になってこの傘を仔細を見てみると
フレームはオリジナルパラゴンフレーム。




パラゴンフレームは
1950年代初頭までシェフィールドにあった
foxの工場で「手作り」されていて
年代と共に段々平面な形に変わっていきます。
この年代のモノは正に「蝙蝠傘」と言える
最も美しいアールだと思います。

そして、特徴的な美しいハンドル。



この鼈甲のような茶色の持ち手
素材はベークライトです。
ベークライト、所謂フェノール樹脂
平たく言えばプラスチックです。
ベークライトは1910年に商業化に成功。
このハンドルはベークライトが装飾的に
美しく成形して使われ始めた頃の
初期のモノだと思います。



そしてベークライトと傘の本体の間には
二つのスターリングシルバーのベルトを挟んで
マラッカが使われています。

アールデコを感じる
とてもエレガントな仕様だと思います。

スターリングシルバーのベルトには
ホールマークが打たれています。
ホールマークとはその銀製品の品質を保証する為に
打刻が義務づけられたもので
イギリスの銀器には基本的に必ず入っています。



左から「JH」の刻印、そして錨のマークとライオンのマーク
最後は英語の大文字で「D」とあります。

「JH」とはメーカーズマーク(Maker’s mark)です。
これは「Joseph Hicks」のモノ。

そして錨のマークは
アセイマーク(Assay Mark)といって産地刻印。
どのアセイ・オフィスで検定を受けたかを示す刻印です。
錨はバーミンガムを表しています。

そしてライオンのマーク。
これはスタンダードマーク(Standard Mark)といって
純度刻印でこの銀器が
スターリングシルバー(.925銀)であることを示しています。
1544年から横向きのライオン(Lion Passant:ライオン・パサント)が
用いられています。

そして最後の「D」。
これは年代を表しています。
年代により大文字になったり小文字になったりしながら
サイクリックに回っていきます。
この刻印から1928年製であることが分かります。

いや~正に、アールデコ全盛の一番良い時ですね~。

冒頭の写真の傘は
オリジナルの生地が張られていますが
流石に雨を通しそうなので
極々薄手のミッドナイトブルーの生地に
張り替えをしました。

この傘、思わず雨が降っていなくても
持ち歩きたくなる
ステッキを持つのはちょっと勇気がいるけど
この傘をステッキ代わりに使うなら
ありだと思います。

クラシックなスーツに
ステッキ代わりに使えるクラシックな傘。

雨の日が少しだけ愉しくなりそうです。



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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (sanmu)
2011-12-03 12:06:12
スターリングシルバーの質感が何とも言えず良いですね!
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いいですねぇ~ (bravo)
2011-12-03 20:21:48
らみい様

先日、パーソナルテーラーで仮縫いをご一緒ささせて頂いた者です。 今回、私も1つ譲って頂いたのですが、らみい様の傘いいですねぇ~。 私も、曲がりハンドルで、シャノピー(でしたでしょうか、傘布)の先が蝙蝠の羽のようにカーブしている「らみい様タイプ」をお願いしようと思いました。 因みに、私のものは、らみい様が撮影で使って下さった柄が一直線のもの(白と金のハンドル)です。 
返信する
う~~~ん (チャボ)
2011-12-03 21:50:13
さすがは英国紳士の象徴、シンプルながら重厚な雰囲気が漂っていますね。
適度の曇りと傷がある方が、ピカピカに輝いているより趣があるように思います。
昔の英国では、傘を細く巻くことを専門にする職業があったそうですね。
返信する
スターリングシルバー (らみい)
2011-12-04 05:15:03
sanmuさん
スターリングシルバーの輝き
ちょっと鈍い感じの光沢が
最高に渋いですね。
磨きすぎないのが
また良いのだと思います。
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そうでしたか (らみい)
2011-12-04 05:22:31
bravoさん そうでしたか
あの傘を入手されましたか。

アトリエに集まる傘はどれもこれも
今では手に入れる事が出来ない
逸品が集まっていますね。
神秘な入手経路です。

アールデコ時代の傘は
キャノピーの形が本当に素晴らしいと
思います。

飾るのではなく
お互いどんどん実用に使っていきましょう。
80年以上の時を経て
それこそあの時代の良さが蘇ると思います。
しかしどうして
この時代の傘は作りも丁寧で
しかも何と丈夫な事でしょう。

鍵の無い傘立てだけには
置かないように
お気をつけ下さい。

返信する
そうなんです、、、 (らみい)
2011-12-04 05:33:39
チャボさん
英国の傘、現代の物もそうですが
素敵な物が多くあります。

特にアンティークな物は
作りも良く雰囲気があると思います。

特にパラゴンフレームに代表される
キャノピーの豊かなアール
そして精緻を極めたハンドルに
象徴されます。

シルバーバンドひとつとっても
手抜きなしのスターリングシルバー。
しかも新品の時より
アンティークとなった今の方が
趣があります。

昔はイギリスでは
傘巻き職人がいて
美しく傘の山を揃え
とても細く巻く
傘巻き職人(職業)が
いたそうです。

勿論、お金がかかる訳なので
当時の人は雨が降っても
中々傘を開かなかったとか。

それがひいては
やせ我慢も含む
ダンディズムに繋がっていくのでしょうか。


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そうそう・・・ (チャボ)
2011-12-09 23:07:37
ライオンは英国王室の象徴なんだそうです。だから品質を保証するために、ライオンを打刻するのかもしれませんね。
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なるほどですね (らみい)
2011-12-10 08:18:02
チャボさん
なるほどですね。
しかし、英国はISOなど
品質保証の仕組みを作るのは
上手ですよね。
返信する

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