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進化する魂

フリートーク
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「恋愛禁止条例」の意義を再考する ~フリーライダー問題~

2013-07-11 01:38:49 | AKB48_オピニオン


「恋愛禁止条例」の意義を、いつもとは異なる側面から考えてみたい。


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まず、繰り返しになるが「恋愛禁止条例」の定義について。

ここでいう「恋愛禁止条例」は、成文法的な明示的なルールのことではなく、慣習法の元となるようなAKB48グループ全体に共有されている「暗黙的なルール」もっと分かりやすく言えば「価値観」のことだと考えて頂きたい。

誰かが意図的に作り上げたものではなく、様々な人々の言動が相互に影響し合って創発的に形成されたパターンや価値観のことで、形があるわけではない。

「形があるわけではない」という意味は、その価値観は論理性によってのみ構築されているわけではなく、そこには非論理的な情緒的な感覚も大いに含まれるため、入力から出力は一意には決まらず、「A→B(AだからBだ)」というような図式が必ずしも成立しないということだ。

しかし、そこにいる人々にとっては、問題を明確に説明できないとしても、問題そのものについては互いに認識し共有し合うことができる暗黙知のような存在である。


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「恋愛禁止条例」が必要である理由は、↓下記のエントリで述べたように、メンバーやスタッフだけでなくファンも含めたAKB48グループに関わるステークホルダー全員の意識を方向性を持って統制するために有効であるからだ。

恋愛禁止条例 自己責任論に反対する
http://blog.goo.ne.jp/advanced_future/e/ea854ba7bd0c3c1f300f624ca48032a2


(有効)にも関わらず、「恋愛禁止条例の是非」がこれまでに大きな軋轢や議論を生み出してきたのは、理由がある。

一般的な言説によれば、「恋愛禁止条例」の定義の曖昧さとAKB48運営の一貫性のなさは常に議論の的であったし、↓下記のエントリで述べたような「保守的なアイドル観」による言論は時代が変わっても大きな派閥を占めると思われ、それが主な理由と考えられているが、

指原の速報1位が巻き起こした「リベラル vs. コンサバ」論争
http://blog.goo.ne.jp/advanced_future/e/de80fbc2ea31186b2ac691e94cf714b6


実は他にも理由があるのだ。

そして、その理由ゆえにAKB48グループは「恋愛禁止条例」の問題を放置できない。


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「恋愛禁止条例」に関するスキャンダルは「フリーライダー問題」なのである。

「恋愛禁止条例」を破る人々がいてもAKB48グループが成立するのは、その一方で「恋愛禁止条例」を守る人々がいるからである。

AKB48グループがリベラルなグループだから、AKB48グループはスキャンダルに寛容なのでは決してない。

AKB48がリベラルでいられるのは、多様性を養うだけの「高い生産力」と、アイドルグループとしてゲシュタルト崩壊が起きないように一体性を確保するための確固たる「アイドル価値基盤」を持っているからだ。

簡単に言うと、AKB48が多様で自由なアイドルグループでいられるのは、その裏でその分のコストを負担しているからであり、そのコストを負担するだけの力があるからだ。

それゆえ、そのコストを負担せずにタダ乗りしようとする者(フリーライダー)がいると、排斥する力が働く。

幾つかの日本論によれば、日本のコミュニティにはフリーライダーの発生を防ぐために、空気に同調しない者を村八分にする力が内在しているのだ。

フリーライダー問題は、人々に不平等感や不公平感から不安や憤りを覚えさせ、「信頼や協力の欠如」や「妨害行為」を招くだけではなく、、空気が水を差されれ雲散霧散してしまうと、みな興醒めしてしまい物語性に依拠した政策の効果がなくなってしまう。

それゆえ、たとえば(当Blogで取り上げたところでは)チャン・キムらによる『ブルーオーシャン戦略』では、「公正なプロセス」が必要だと説明している。

AKB48が挑戦している難しい問題 ~社会的複雑性(多様性の高まり)~
http://blog.goo.ne.jp/advanced_future/e/81af48ec44ccac04b031909ccd3327c3


信頼や協力が欠如すると、各人の考えが研ぎ澄まされ、全体としてよりよい発想が生まれる機会が妨げられ、各人の理解を引き出すことができなくなり、運営に対する信頼もなくなり、駆け引きやズルが横行するようになり、結果として組織は衰退する。


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「フリーライダー問題」として考えると、(払ったコストの妥当性には疑問がある人は多いとは思うが)指原や峯岸といった現役のスキャンダル・メンバーは少なくてもコストを払ったとは言える。

最悪なのは問題をスルーするなどして、見える形でのコストの負担をしないことだ。

実はファン側には見えない形で、密かに見えないコストを負担している場合もあるかもしれないが、「フリーライダー問題」の観点から考えると、問題の解決に全く繋がっていないことに注意が必要だろう。

とにかく何らかの形でコストを負担しなければならない。


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「フリーライダー問題」をどのように解決するか。

通常は制度的な不備を検討すべきだが、この問題の難しさをよく表している良い(?)例がある。

NHKの受信料の徴収問題だ。

視聴に関係なく受信契約が成立するという法的解釈が非難されているが、これも「公共放送のタダ乗り」を許すかどうかという意味で「フリーライダー問題」である。

一部でも払わない人々の存在が許容されてしまうと、他の視聴者にとっても「払わない」が合理的な選択肢となってしまうため、NHKは受信料の取立てを厳密に行うしか手がない。

受信料を税金化すればよいという意見も根強くあるが、この場合NHKは「国営放送」になってしまう。

NHKが国営でもなく民営でもなく「公共放送」なのは、太平洋戦争の教訓である。

「国営化」は国民の望むところではないだろう。(今でも実質国営だという指摘は有り得るが)

「民営化」して広告収入などでスポンサーシップを導入すると、(実際どうかは別として理念的に)中立性を担保することができない。
(海外のたとえばBBCでは広告収入の受け入れを容認しているケースも見られるようだ)

そのため、その中間(?)の「公共放送」なる曖昧な定義と、その理念実現のために税金のようで税金ではない「受信料」なる不思議な制度が継続されているのだ。

理想ではないが、現行制度の下での現実的な解として、NHKにはなんとしてでも受信料を取り立てる選択肢しか有り得ないのだ。


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ひるがえって「恋愛禁止条例」に関する「フリーライダー問題」はどうか。

前述したNHKの文脈でいうと、下記3つの道がある。

(1)国営化・税金

「恋愛禁止条例」を成文法化し、統一ルールで運用する。

コストは公平かつ厳密に負担する。

(2)民営化・使用に応じて料金を支払う

「恋愛禁止条例」の是非は民営化され、ルールは運用されない。(例:ファンが決める)

コストはファンがそれぞれに払う。

(3)公共放送・受信料

「恋愛禁止条例」は慣習法的に扱われ、暗黙的ルールで運用される。

コストは取り立てられる。名目上、例外はない。


どれも選択しだいだが、おそらく(2)はAKB48グループ自体が分化して、結果として衰退する道を辿ると私は思う。

さて、どういう選択をするかだ。




※「恋愛禁止条例」に限らず、スキャンダル全般に適用される話